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ネクセラファーマ(4565)の株価は割安?決算推移・配当・今後5年の株価予想

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株価

ネクセラファーマとは

ネクセラファーマ株式会社は、日本の創薬バイオベンチャーの中でも草創期から活動してきた老舗企業で、創薬研究を中核としながら、買収を通じて事業構造を大きく進化させてきた点が最大の特徴である。2024年4月にそーせいグループ株式会社から商号変更し、現在はNxera Pharmaとしてグローバル展開を本格化させている。

同社は、元ジェネンテック日本法人社長で藤沢薬品工業出身の田村眞一氏によって創設され、当初から国際的なバイオベンチャーを目指して研究開発、ライセンス活動、M&Aを積極的に展開してきた。2004年に上場し、アンジェスに次ぐ有力な創薬ベンチャーとして注目を集めたが、初期には主力パイプラインであったCOPD治療薬シーブリやウルティブロの開発遅延に苦しみ、長期にわたる赤字と株価低迷、度重なる増資を経験している。

その後、ノバルティスとの提携を通じてマイルストーン収入を着実に積み上げ、シーブリ、ウルティブロの上市により世界的に想定を上回る売上を達成したことで財務体質は大きく改善した。加えて、緊急避妊薬ノルレボ錠の販売開始もあり、黒字化を実現した後に公募増資を行うなど、経営の立て直しに成功した。この過程で、創薬ベンチャーとしては異例の規模感と存在感を示し、市場では「バイオベンチャーのソフトバンク」と評されるようになった。

成長の転機となったのが、2015年に実施した英国ヘプタレス・セラピュティクス社の買収である。総額480億円という当時の日本の創薬企業として過去最大規模の買収を行い、GPCR創薬における世界有数の研究基盤を手に入れた。ヘプタレスは高い研究開発力を持ち、マイルストーン収入を安定的に獲得したことで、同社の売上と市場評価は一段と押し上げられ、東証一部の大型株を凌ぐ売買代金を記録する局面も生まれた。

さらに2023年には、スイスの製薬会社イドルシアの日本法人および韓国法人、ならびにAPAC事業を約650億円で取得し、睡眠薬ダリドレキサントをはじめとする後期開発段階のパイプラインを獲得した。この買収により、従来の英国を中心とした創薬研究事業に加え、日本を柱とする後期治験、製造販売を担う事業が本格的に加わり、研究開発型バイオベンチャーから、より製薬会社に近い事業構造へと変貌している。

現在の事業内容は、自社創薬および導入品によるパイプライン開発と、提携先への導出によるマイルストーン・ロイヤルティ収入、さらに日本・アジア地域での医薬品販売を組み合わせた多層的な構造となっている。主要パイプラインには、COPD治療薬のシーブリ、ウルティブロ、緊急避妊薬ノルレボ錠、口腔咽頭カンジダ症治療薬オラビ錠、脳血管攣縮発症抑制薬ピヴラッツ、睡眠薬ダリドレキサントがあり、精神疾患領域では統合失調症治療薬候補NBI-1117568をニューロクライン・バイオサイエンシズへ導出している。

全体としてネクセラファーマは、創薬ベンチャーとしての高い研究力とリスクの大きさを内包しつつ、M&Aによって後期開発品や販売事業を取り込み、収益の安定性を高めてきた企業である。純粋な研究開発型バイオから、研究・開発・販売を併せ持つハイブリッド型のグローバル創薬企業へ進化する過程にあり、成功時のリターンと同時に事業運営の複雑さも増した段階にある企業と位置づけられる。

ネクセラファーマ 公式サイトはこちら

直近の業績・指標

決算期 売上高(百万円) 営業利益(百万円) 経常利益(百万円) 純利益(百万円) 一株益(円) 一株配当(円)
◇21.12 17,712 3,775 433 1,017 12.5 0
◇22.12 15,569 3,436 1,078 382 4.7 0
◇23.12 12,766 -9,526 -10,680 -7,193 -87.2 0
◇24.12 28,835 -5,423 -4,662 -4,838 -53.9 0
◇25.12予 34,000 -2,700 -3,700 -2,700 -29.8 0
◇26.12予 36,000 2,000 1,500 500 5.5 0

出典元:四季報オンライン

キャッシュフロー

決算期(百万円) 営業CF 投資CF 財務CF
2022 9,952 1,043 -4,887
2023 -5,273 -63,791 48,329
2024 -7,718 -4,763 -6,854

出典元:四季報オンライン

バリュエーション

決算期 営業利益率 ROE ROA PER(倍) PBR(倍)
2023 -74.7% -10.8% -4.6%
2024 -18.9% -7.1% -3.2% 490.2(高)/211.8(安) 1.15
2025 -8.0% -4.0% -1.8%

出典元:四季報オンライン

投資判断

まず利益水準を見ると、23.12は営業利益-95億円、経常利益-106億円、純利益-71億円と大幅な赤字で、創薬バイオとして研究開発負担が強く表れている。24.12では売上が288億円まで拡大した一方、営業利益は-54億円、経常利益は-46億円、純利益は-48億円と赤字は続いているが、損失額は明確に縮小している。25.12予では営業利益-27億円、経常利益-37億円、純利益-27億円とさらに赤字幅が縮小する想定で、26.12予では営業利益20億円、経常利益15億円、純利益5億円と黒字転換を見込んでいる。損益の流れだけを見ると、底は23.12で、その後は段階的に改善し、26.12でようやく利益が出る構図になっている。

収益性の指標を見ると、営業利益率は2023年-74.7%、2024年-18.9%、2025年-8.0%と急速に改善しているものの、依然としてマイナス圏にある。ROEも-10.8%、-7.1%、-4.0%、ROAも-4.6%、-3.2%、-1.8%と、資本効率・資産効率はいずれも赤字を反映した低水準が続いている。ただし、これらの指標は一貫して改善しており、構造的な悪化というよりは、事業転換期にある企業の数値と見るのが自然である。

次にバリュエーションを見ると、24年の実績PERは高値平均490.2倍、安値平均211.8倍と極端に高く、利益がほとんど出ていない中で株価だけが先行している状態を示している。PBRは1.1倍で、赤字企業としては資産価値に対して大きく割り引かれているわけでもなく、将来の事業価値を一定程度織り込んだ評価になっているといえる。25年は予想PERが算出不能であり、この段階ではPERによる割安・割高判断は実質的に意味を持たない。

これらを総合すると、ネクセラファーマは現時点では明確な利益回収フェーズに入っておらず、数値上はまだ赤字の創薬バイオ企業である。ただし、売上の拡大と赤字幅の急速な縮小、26.12予での黒字転換見込みという流れを見る限り、事業構造が変わりつつある途中段階にあることははっきりしている。一方で、PERが数百倍になるほど利益が薄い局面での投資は、業績が計画どおり進まなければ評価が急落するリスクも大きい。

投資判断としては、安定収益や配当を期待する投資対象ではなく、26.12以降の黒字定着をどこまで信じられるかが最大の判断軸になる銘柄である。黒字転換が実現し、営業利益率やROE、ROAがプラス圏に定着すれば評価が大きく変わる余地がある一方、計画がずれれば期待が剥落しやすい。したがって現時点では、安定型投資には不向きで、業績回復と事業転換の成功を前提にした高リスク・高リターン型の投資対象という評価になる。

配当目的とかどうなの?

まず結論から言うと、配当目的にはまったく向かない。予想配当利回りは25.12、26.12ともに0.00%であり、少なくとも向こう数年は配当によるリターンを期待できない構造になっている。インカムゲインを重視する投資家にとっては、検討対象に入らない水準である。

その背景を数字から見ると、同社は依然として赤字フェーズにあり、営業利益率、ROE、ROAはいずれもマイナス圏にある。23.12から25.12にかけて赤字幅は縮小しているものの、これは配当原資が生まれてきたという段階ではなく、あくまで損失のコントロールと事業構造の転換が進んでいる途中段階にすぎない。26.12予で黒字転換を見込んでいるとはいえ、純利益は5億円規模と小さく、まずは研究開発投資や財務の安定化を優先する局面と考えるのが自然である。

また、これまでのキャッシュフローを見ると、研究開発やM&Aに伴う投資負担が大きく、資金の使い道は成長投資と事業基盤の構築に向けられている。こうした企業が黒字転換直後に配当を出すケースはまれであり、仮に利益が出始めたとしても、当面は内部留保や追加投資に回る可能性が高い。

したがって、ネクセラファーマは配当をもらいながら保有する銘柄ではなく、配当目的の投資とは明確に性格が異なる。投資リターンは、配当ではなく、黒字転換の実現、その後の利益拡大やパイプライン進展による株価評価の変化に全面的に依存する。インカム狙いではなく、事業転換が成功した場合の値上がりを狙うキャピタルゲイン型、しかも高リスク・高リターン前提の投資と相性が良い銘柄、という評価になる。

今後の値動き予想!!(5年間)

ネクセラファーマについて、現在株価837円前後を基準に見ると、安定配当や足元の利益水準を評価して投資する一般的な製薬株とは性格が大きく異なり、創薬ベンチャーとして長年の赤字を経て、ようやく事業転換と黒字化を目指す局面にあるハイリスク型の医療・バイオ企業と位置づけられる。英国の創薬研究事業を中核に、買収を通じて後期治験段階や日本・アジアでの製造販売事業を取り込み、従来の研究開発一本足から、より製薬会社に近い事業構造へと変化しつつある。

一方で、直近まで営業利益率、ROE、ROAはいずれも大きなマイナスが続いており、現時点では稼ぐ力が確立された段階とは言えない。配当は無配が続き、投資リターンは完全に株価の変動、すなわち黒字転換とその後の成長が実現するかどうかに依存する構造になっている。この前提を踏まえて、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。

良い場合のシナリオでは、26.12期に見込まれている黒字転換が計画どおり実現し、その後も後期治験品や導入済みパイプラインが着実に収益貢献する展開を想定する。営業利益率はマイナス圏からプラス圏に定着し、ROEやROAも数%ながら安定的に改善する。この場合、市場はネクセラファーマを単なる赤字バイオから、研究・開発・販売を併せ持つハイブリッド型の創薬企業として再評価しやすくなる。PERは利益水準がまだ小さいため高く見える局面が続くものの、将来成長を織り込む形でPBRは1倍台前半から中盤が許容されやすくなる。黒字定着と事業モデル転換が評価されれば、株価は段階的に切り上がり、5年後には1,500円から2,000円程度を目指す展開が考えられる。これは事業転換が順調に進んだ場合の強気寄りのシナリオになる。

中間のシナリオでは、黒字転換は一度達成するものの、その後の利益成長は緩やかで、研究開発費や統合コストの影響もあり、利益水準は小幅にとどまるケースを想定する。営業利益率やROE、ROAは改善するが低水準にとどまり、市場の評価も慎重なままとなる。この場合、バリュエーションは明確に定まりにくく、PBRは1倍前後、株価は期待と失望を繰り返しながらレンジ内で推移しやすい。5年後の水準は900円から1,200円程度と、現在値から小幅な上昇にとどまる中立的なシナリオとなる。

悪い場合のシナリオでは、黒字転換の時期が後ろ倒しとなり、研究開発や買収に伴う負担が想定以上に重くのしかかる展開を想定する。営業利益率は再び大きくマイナスに振れ、ROEやROAの改善も止まる。この場合、市場は成長ストーリーを大きく見直し、PERは意味を持たず、PBRも1倍を割り込む可能性が高い。資金調達懸念が再燃すれば評価は急速に冷え込み、株価は下押し圧力を受けやすくなる。5年後には400円から600円程度にとどまる弱気シナリオとなる。

総合すると、現在株価837円を起点としたネクセラファーマの5年間の値動きは、良い場合で1,500円から2,000円前後、中間で900円から1,200円、悪い場合で400円から600円といったレンジが想定される。配当利回りは期待できず、投資妙味はインカムではなく、黒字転換と事業モデル転換が評価されるかどうかに尽きる。安定志向の製薬株というより、創薬ベンチャーから製薬企業への進化が成功するかを見極める、中長期かつ高リスク前提の値上がり狙い投資と相性の良い銘柄、という評価になる。

この記事の最終更新日:2025年12月25日

※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。


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