株価
中国塗料とは

中国塗料は、船舶用塗料を中核とする日本有数の塗料メーカーで、塗料業界では国内3位クラスに位置づけられる企業である。本社は広島県大竹市に置き、東京・虎ノ門にも本社機能を構えている。社名の「中国」は中国地方に由来しており、中国市場を意味するものではない。創業は1917年と非常に古く、日本の近代工業化とともに歩んできた歴史を持つ老舗企業である。
最大の特徴は船舶用塗料事業であり、国内では約6割という圧倒的なシェアを誇る。世界市場でもトップクラスの存在感を持ち、船舶用塗料分野では世界第2位とされる。特に船底防汚塗料や防食塗料といった高付加価値製品に強みがあり、燃費性能の改善、航行効率の向上、メンテナンス周期の長期化といった船主側のニーズに応える技術力が評価されている。近年は新造船向けだけでなく、既存船の修繕・メンテナンス向け需要が拡大しており、景気変動の影響を受けにくい収益構造を形成しつつある。
事業内容は、船舶用塗料を軸に、工業用塗料、コンテナ用塗料の製造・販売を行うほか、塗装関連装置の販売、船舶や一般構造物の塗装管理、工事請負、塗装仕様のコンサルティング、表面処理や塗装検査業務など多岐にわたる。単に塗料を供給するだけでなく、塗装工程全体をサポートするトータルサービスを提供できる点が同社の競争力となっている。
研究開発面では、広島県大竹市の大竹研究センターや滋賀県の研究拠点を中心に、環境対応型塗料や次世代船底塗料の開発を進めている。国際海事機関(IMO)による環境規制の強化を背景に、低摩擦・低燃費型塗料や環境負荷の少ない防汚技術への対応は重要なテーマとなっており、中国塗料はこの分野で長年培ってきた技術力を活かし、競争優位を維持している。
生産拠点は国内では広島、滋賀、九州などに展開しており、海外ではアジア、欧州、中東、北米など世界約20カ国に進出し、約60拠点のグローバルネットワークを構築している。特に韓国、中国、シンガポールなど、造船や修繕船が集中する地域での事業基盤が強く、世界の海運・造船市況と密接に連動するビジネスモデルを持つ。一方で修繕船向け需要の比重が高まることで、景気変動に対する耐性も徐々に高まっている。
総合すると中国塗料は、船舶用塗料という専門性の高い分野で国内トップ、世界でも有数の地位を確立したニッチトップ型企業であり、環境規制対応や修繕船向け需要の拡大を追い風に、安定性と技術力を兼ね備えた塗料メーカーとして位置づけられる。
中国塗料 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 82,442 | 6,506 | 6,376 | 3,279 | 57.7 | 34 |
| 連22.3 | 84,295 | 687 | 1,012 | 257 | 4.9 | 35 |
| 連23.3 | 99,481 | 3,887 | 4,351 | 3,848 | 76.7 | 35 |
| 連24.3 | 116,174 | 12,185 | 13,025 | 9,892 | 199.6 | 80 |
| 連25.3 | 131,152 | 15,381 | 16,481 | 13,721 | 276.8 | 97 |
| 連26.3予 | 137,000 | 17,500 | 17,700 | 11,500 | 231.8 | 97 |
| 連27.3予 | 141,000 | 18,800 | 19,300 | 12,500 | 251.9 | 100 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 29 | 514 | -654 |
| 2024.3 | 12,388 | -1,625 | -1,980 |
| 2025.3 | 14,539 | -103 | -12,480 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 3.9 | 6.6 | 3.4 | — | — |
| 2024.3 | 10.4 | 14.0 | 7.4 | — | — |
| 2025.3 | 11.7 | 16.4 | 9.4 | 12.1(高値平均)/ 7.1(安値平均) | 2.58 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績面を見ると、2024年3月期の売上高は約1,161億円、営業利益は約121億円、経常利益は約130億円、純利益は約98億円となっている。2025年3月期には売上高が約1,311億円、営業利益が約153億円、経常利益が約164億円、純利益が約137億円まで拡大しており、利益水準が一段引き上がっている。2026年3月期予想では売上高約1,370億円、営業利益約175億円、経常利益約177億円、純利益約115億円と、利益はやや減少するものの高水準を維持する見通しになっている。
収益性を見ると、営業利益率は2023年の3.9%から2024年に10.4%、2025年には11.7%まで大きく改善しており、構造的に稼ぐ力が強まっていることが分かる。ROEも6.6%→14.0%→16.4%と明確な上昇基調にあり、株主資本を使った利益創出力は大きく改善している。ROAも3.4%→7.4%→9.4%と資産効率の改善がはっきりしている。
一方、バリュエーション面では、2025年実績PERは高値平均で12.1倍、安値平均で7.1倍と、業績の伸びに対して割高感は強くない水準にある。ただしPBRは2.6倍と、資本効率改善を織り込んだ評価になっており、すでに過去の低収益期とは異なるポジションで評価されている。
これらを総合すると、中国塗料は船舶用塗料を中心に業績回復から成長局面に入り、営業利益率・ROE・ROAのいずれも大きく改善している点が最大の強みである。足元の利益水準を見る限り、事業の地力は以前より明らかに強く、PER水準も利益成長を考えれば許容範囲にある。一方でPBRはすでに2倍台後半まで上昇しており、今後はさらなる利益成長が続かなければ評価の上振れ余地は限定的になりやすい。
結論として、現状の中国塗料は「業績回復・収益性改善を背景に再評価が進んだ成長寄りの銘柄」と位置づけられる。低評価是正局面は一巡しつつあり、今後は高い利益率を維持できるかが株価の持続的上昇のカギになる。割安株というより、改善した収益力をどこまで信じられるかを見極めながら中期で保有を検討するタイプの投資対象、という判断になる。
配当目的とかどうなの?
中国塗料を配当目的で見ると、結論としては「配当はあるが、純粋な高配当株ではない」という位置づけになる。予想配当利回りは2026年3月期で約2.2%、2027年3月期でも約2.2%台と、東証全体や高配当株と比べると特別に高い水準ではない。インカム狙いで最優先に選ぶ銘柄というより、あくまで業績改善の結果として一定の配当が付いてくる、という性格が強い。
一方で、足元の利益水準を見ると営業利益率は10%超、ROEは16%台まで上昇しており、配当の原資となる収益力自体はかなり強くなっている。これまでの回復局面を経て、利益体質が改善している点は、将来的な増配余地という意味ではポジティブだ。ただし現時点では、配当性向を大きく引き上げてインカム株路線に振り切っているわけではなく、事業成長や内部留保とのバランスを重視している段階と見られる。
そのため、中国塗料は「安定した高配当を長期で受け取りたい人向け」というより、「業績回復・成長をメインに見つつ、2%台前半の配当を補助的に受け取る銘柄」に近い。値上がり益と配当の両取りを狙う中間型の投資には合うが、配当利回りそのものを目的に据えるなら、同業他社や他業種の高配当株の方が優先順位は高くなる、という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
中国塗料について、現在株価4,460円前後を起点に、今後5年間の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで考える。まず前提として、中国塗料は船舶用塗料を中核とするグローバル企業で、足元では修繕船需要の拡大を背景に業績が大きく回復している。営業利益率は10%超、ROEも2桁半ばまで改善しており、収益力は明確に底打ちから回復局面にある。一方で、配当利回りは2%台前半にとどまり、評価軸はインカムよりも業績とバリュエーションの変化に置かれる銘柄と言える。
良い場合のシナリオでは、世界的な船舶修繕需要の堅調さが続き、環境対応型塗料や高付加価値品の比率上昇によって利益率がさらに改善する展開を想定する。営業利益率は12%前後まで上昇し、ROEも15%超で安定。市場からは構造的に収益性が高まった企業として評価され、PERは12~14倍程度まで許容されやすくなる。この場合、業績成長と評価見直しが重なり、株価は段階的に切り上がり、5年後には6,000円~6,800円程度を目指す展開が考えられる。業績回復が一過性でないと市場に認識された場合の強気シナリオになる。
中間のシナリオでは、修繕船需要は底堅いものの、市況の波や原材料コストの影響で利益率の上昇は一服するケースを想定する。営業利益率は10~11%程度、ROEは13~15%前後で安定し、現在の高水準を維持するが、さらなる上振れは限定的。この場合、PERは9~11倍程度で落ち着きやすく、株価は大きなトレンドを描きにくい。5年後の水準は4,800円~5,500円程度と、現在値から緩やかな上昇にとどまる中立的なシナリオになる。
悪い場合のシナリオでは、世界景気の減速や船舶投資の停滞、競争激化などにより、修繕需要が鈍化する展開を想定する。営業利益率は再び1桁後半まで低下し、ROEも10%を下回る水準にとどまる。この場合、市場は業績ピークアウトを警戒し、PERは7~8倍程度まで切り下げられる可能性がある。株価は調整色が強まり、5年後には3,300円~3,800円程度にとどまる弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価4,460円を基準とした中国塗料の5年間の値動きは、良い場合で6,000円~6,800円前後、中間で4,800円~5,500円、悪い場合で3,300円~3,800円といったレンジが想定される。配当利回りは安定しているものの高配当とは言えず、投資の軸はインカムよりも業績回復の持続性と評価水準の変化になる。高収益体質への転換が定着するかを見極めながら、中長期で値上がり益を狙う投資と相性の良い銘柄、という評価になる。
この記事の最終更新日:2025年12月26日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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