株価
refreshToken未設定サカタインクスとは

サカタインクスは、印刷インキを中核事業とする日本の化学メーカーで、売上高ベースでは国内・世界ともに3位に位置する大手インキメーカーである。本社は大阪府大阪市中央区および東京都文京区に置かれ、登記上の本店は大阪市西区に所在している。1896年に日本初の新聞インキ専業メーカーとして創業し、100年以上にわたり印刷インキ分野を軸に事業を拡大してきた。
現在の主力は食品パッケージ向けを中心とした印刷用インキであり、新聞、書籍、雑誌、段ボール、飲料缶など幅広い用途に対応している。特にパッケージ用インキに強みを持ち、フレキソインキやグラビアインキといった包装分野向け製品で高い競争力を有している。また、新聞や商業印刷など紙媒体向けインキでも高いシェアを維持している。
海外展開に早くから注力してきた点も特徴で、北米やアジアを中心に積極的に事業を拡大してきた。世界全体での売上高は印刷インキメーカーとして3位に位置し、北米では2016年時点でシェア3位、アジア各国でも高いシェアを確保している。海外売上比率が高く、国内市場の成熟を補う形でグローバル展開が成長ドライバーとなっている。
事業面では、DICと国内事業の効率化に向けて提携関係にあり、競合でありながらも合理化や生産効率向上では協調する関係を築いている。一方で、印刷インキ依存からの脱却を意識し、非インキ事業の育成にも力を入れている。インクジェットプリンター用インキ、トナー、カラーフィルタ用顔料分散液、機能性コーティング剤、エレクトロニクス向け材料など、印刷技術や分散技術を応用した高付加価値分野への展開を進めている。
製造・研究体制としては、国内に複数の工場と研究部門を持ち、東京工場には第一研究部、大阪工場には第二・第三研究部を併設するなど、研究開発機能を重視した体制を構築している。滋賀工場を含めた国内拠点と、海外の生産・販売拠点を組み合わせることで、グローバルに安定供給できる体制を整えている。
このようにサカタインクスは、印刷インキで世界3位の地位を持つ一方、北米・アジアなど海外を先行して開拓してきたグローバル展開力と、非インキ分野を育成する戦略を併せ持つ企業であり、成熟市場である印刷分野に依存し過ぎない事業構造への転換を進めている素材系メーカーと位置づけられる。
サカタインクス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連22.12 | 215,531 | 4,125 | 4,961 | 4,555 | 85.5 | 30 |
| 連23.12 | 228,311 | 11,398 | 13,634 | 7,466 | 149.2 | 35 |
| 連24.12 | 245,570 | 13,161 | 12,893 | 9,006 | 180.6 | 70 |
| 連25.12予 | 270,000 | 16,000 | 17,000 | 11,400 | 232.0 | 94 |
| 連26.12予 | 280,000 | 18,000 | 19,000 | 12,700 | 258.5 | 115 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022.12 | 4,945 | -1,666 | -3,897 |
| 2023.12 | 15,372 | -7,590 | -4,299 |
| 2024.12 | 8,904 | -14,846 | 4,214 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値/安値平均) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.12 | 4.9% | 7.5% | 3.8% | ― | ― |
| 2024.12 | 5.3% | 8.0% | 4.0% | 11.2倍/7.7倍 | 1.06倍 |
| 2025.12 | 5.9% | 10.1% | 5.1% | 11.52倍 | ― |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の流れを見ると、23.12期は売上高2283億円、営業利益113億円、経常利益136億円、純利益74億円で、成熟産業に属しながらも安定した黒字を確保している。24.12期には売上高2455億円、営業利益131億円、経常利益128億円、純利益90億円と、売上・利益ともに着実に伸びている。25.12期予では売上高2700億円、営業利益160億円、経常利益170億円、純利益114億円、26.12期予では売上高2800億円、営業利益180億円、経常利益190億円、純利益127億円と、急成長ではないものの、無理のないペースで利益を積み上げていく見通しになっている。
収益性を見ると、営業利益率は2023年4.9%、2024年5.3%、2025年5.9%と毎年改善しており、印刷インキという成熟分野にありながら、価格転嫁や高付加価値品の比率上昇によって体質が確実に良くなっていることが分かる。ROEも7.5%から8.0%、10.1%へと上昇しており、25年には日本企業の一つの目安とされる10%水準に到達する見込みである。ROAも3.8%から5.1%まで改善しており、資産効率も着実に向上している。
評価面では、24年実績のPERは高値平均11.2倍、安値平均7.7倍と低く、PBRも1.0倍強の1.06倍にとどまっている。25年のPERも11.5倍程度とされており、市場はこの銘柄を高成長株としてではなく、安定収益型の素材メーカーとして見ている。すでに過度な期待は織り込まれておらず、評価はかなり現実的な水準にある。
これらの数値だけで判断すると、サカタインクスは業績が安定して伸びており、営業利益率、ROE、ROAが同時に改善している点が大きな特徴といえる。一方で、営業利益率は6%前後、ROEも10%前後という水準で、構造的に高収益企業へ変貌したとは言い切れず、PERが大きく切り上がるような成長ストーリーは見えにくい。
総合すると、この銘柄は急騰を狙うタイプではなく、業績の安定成長と適正水準の評価を前提に、時間をかけてリターンを積み上げていくタイプの投資に向いている。大きく外しにくい一方で、大きく跳ねる期待も小さく、堅実さを重視する投資家にとって納得感のある銘柄、という位置づけになる。
配当目的とかどうなの?
サカタインクスについて、配当目的という観点だけで見るとかなり相性は良い部類に入る。予想配当利回りは25.12期で3.87%、26.12期で4.74%と、いずれも日本株の中では高めの水準にある。特に26.12期の4%後半という利回りは、単発の特別配当に依存せず、通常配当の積み上げで到達している点が重要になる。
これまでの業績推移を見ると、純利益は23.12期74億円、24.12期90億円、25.12期予114億円、26.12期予127億円と、安定して拡大している。営業利益率も5%前後まで改善しており、ROEは25年に10%超まで上がる見通しになっている。数字だけを見る限り、現在の配当水準は利益に対して無理をしている印象はなく、配当の原資は比較的しっかりしている。
また、評価面ではPERが11倍前後、PBRが1倍前後と、株価は成長期待を大きく織り込んでいない。そのため、配当利回りは株価が割安だから一時的に高く見えているわけではなく、利益成長と配当増加が同時に進んで利回りが上がっている形になっている。この点は、配当目的で見る場合に安心材料になる。
一方で注意点もある。事業は印刷インキを中核とする成熟産業であり、急激な利益拡大は期待しにくい。配当利回りは今後も3〜5%程度が現実的なレンジで、将来的に大きく跳ね上がるタイプではない。また、景気や原材料価格の影響は受けるため、業績が鈍化すれば配当成長も緩やかになる可能性はある。
以上を踏まえると、この銘柄は高配当を一時的に狙う銘柄ではなく業績の安定成長を背景に、配当をじわじわ積み上げていくタイプといえる。配当を主目的に中長期で保有し、株価の大化けは狙わずインカムを重視する投資スタイルとは相性が良い。一方で、短期での配当妙味や急激な利回り上昇を期待する投資には向かない、堅実寄りの配当株という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
サカタインクスについて、現在株価2,425円前後を基準に見ると、研究開発主導で業績が大きく振れるバイオ株やハイテク株とは性格が大きく異なり、印刷インキを中核にパッケージ用途を中心とした安定需要を背景に、着実な利益成長と配当を積み上げていく堅実型の素材メーカーと位置づけられる。印刷インキは成熟産業ではあるが、同社は北米・アジアを中心とした海外展開を早期に進め、非インキ事業や機能性材料の育成も並行して行っており、業績のブレは比較的小さい構造になっている。今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、海外パッケージ市場の拡大が続き、北米・アジアでの収益性改善が着実に進む。非インキ事業や機能性材料が想定以上に利益貢献し、営業利益率は6%台前半で安定、ROEも10%前後を継続的に維持する。市場からは「成熟産業だが安定して稼ぎ、配当も厚い優良株」として再評価され、PERは13〜15倍程度まで切り上がる。この場合、配当を受け取りながら株価も段階的に上昇し、5年後には3,500円から4,200円程度を目指す展開が想定される。派手さはないが、トータルリターンは高いシナリオとなる。
中間のシナリオでは、業績は会社計画に近いペースで推移し、営業利益率は5〜6%台、ROEは9〜10%前後で安定する。評価面ではPER11〜13倍、PBR1倍前後に落ち着き、市場の位置づけは「堅実な高配当株」にとどまる。この場合、株価は大きな上昇トレンドは描かず、配当を受け取りながら緩やかに水準を切り上げ、5年後の株価は2,800円から3,200円程度に収れんする中立的なシナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、原材料価格の上昇や価格転嫁の遅れ、海外市場での競争激化により、利益率の改善が止まる。営業利益率は4%台にとどまり、ROEも8%前後で頭打ちになる。この場合、市場は成長性を評価せず、PERは9〜10倍程度まで低下する。配当利回りは相対的に高く見えるものの、株価の上値は重く、5年後でも2,000円から2,400円程度にとどまる、もしくは一時的に2,000円割れを試す弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価2,425円を起点としたサカタインクスの5年間の値動きは、良い場合で3,500円から4,200円前後、中間で2,800円から3,200円、悪い場合で2,000円から2,400円程度といったレンジが想定される。急成長や評価の大ジャンプを狙う銘柄ではないが、業績の安定性と配当を重視し、時間をかけて着実にリターンを積み上げていく投資とは非常に相性の良い銘柄、という評価になる。
この記事の最終更新日:2025年12月26日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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