株価
日本空調サービスとは

日本空調サービス株式会社は、空調設備を中心とした建物設備のメンテナンスを主力事業とする独立系の設備サービス企業である。新築工事主体の設備会社とは異なり、既存建物の維持管理を軸に事業を展開しており、景気変動の影響を受けにくいストック型ビジネスモデルを特徴としている。
主な事業内容は、空調・給排水・電気・衛生設備などの建物設備メンテナンスであり、定期点検、保守、修理、運転管理までを一貫して提供している。病院や研究施設、データセンターなど、設備停止が許されない施設を多く手がけている点が特徴で、長期契約による安定的な保守収入が収益の中核となっている。
これに加え、老朽化した設備の更新や省エネルギー化を目的としたリニューアル工事も重要な事業分野となっている。既存顧客との継続的な取引関係を背景に、メンテナンスから更新工事へと自然につながる受注構造を構築しており、新築設備工事への依存度は相対的に低い。設備の延命、エネルギーコスト削減、環境負荷低減といったニーズの高まりを受け、リニューアル関連の需要は中長期的にも堅調と見られている。
また、空調を軸とした環境管理業務も行っており、温度・湿度・清浄度の管理、省エネ運転の提案などを通じて、建物全体の快適性と効率性の向上を支援している。設備管理のノウハウを活かした付加価値サービスとして位置付けられている。
国内では、東北、北陸、中部などに地域子会社を持ち、全国をカバーするサービス体制を整えている。グループ企業には、日本空調東北、日本空調北陸、日本空調システム、イーテック・ジャパン、日空ビジネスサービスなどがあり、地域密着型の保守対応力を強みとしている。海外については、中国を含む6カ国に進出しており、海外拠点を通じて設備メンテナンスや関連業務を展開している点も特徴の一つである。
さらに、事業の安定化と多角化の一環として太陽光発電事業にも取り組んでおり、富山県内に5カ所、愛知県内に1カ所の自社所有発電所を保有している。規模は限定的ながら、再生可能エネルギー分野への対応や安定収益源の補完として位置付けられている。全体として、日本空調サービスは、空調設備メンテナンスを中核に、リニューアル工事、環境管理、再生可能エネルギー事業までを展開する独立系の建物設備サービス企業であり、長期契約を基盤とした安定収益と堅実な事業運営を特徴とする企業といえる。
日本空調サービス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 百万円 |
営業利益 百万円 |
経常利益 百万円 |
純利益 百万円 |
一株益 円 |
一株配当 円 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 49,152 | 3,007 | 3,142 | 1,998 | 56.8 | 28.5 |
| 連22.3 | 49,886 | 2,617 | 2,801 | 2,821 | 81.4 | 41.5(特) |
| 連23.3 | 52,886 | 2,847 | 3,051 | 1,940 | 56.7 | 28 |
| 連24.3 | 58,232 | 3,630 | 3,863 | 2,725 | 79.4 | 39 |
| 連25.3 | 64,438 | 4,191 | 4,373 | 3,102 | 90.0 | 45 |
| 連26.3予 | 67,000 | 4,400 | 4,600 | 3,250 | 93.8 | 46 |
| 連27.3予 | 68,500 | 4,600 | 4,800 | 3,350 | 96.7 | 46〜47 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 (百万円) |
営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023年 | 921 | -697 | -1,016 |
| 2024年 | 2,421 | -1,798 | -287 |
| 2025年 | 4,961 | -3,470 | 378 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROA | ROE | PER (倍) |
PBR (倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年 | 5.3% | 5.1% | 9.0% | – | – |
| 2024年 | 6.2% | 6.3% | 11.4% | – | – |
| 2025年 | 6.5% | 6.3% | 12.0% | 13.0(高) 10.1(安) |
1.62 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
提示された数値だけを前提にして見ると、日本空調サービスはここ数年で業績の質が一段と良くなってきている会社だと判断できる。連24.3から連26.3予にかけて、売上高は582億円から670億円へと着実に伸びており、それ以上に営業利益が36億円から44億円へ増えている点がまず目につく。売上の伸びに対して利益の伸びが上回っており、単なる規模拡大ではなく、収益性の改善を伴った成長になっている。
営業利益率を見ると、2023年の5.3%から2024年に6.2%、2025年には6.5%まで上昇しており、設備メンテナンス主体の企業としてはかなり安定感のある水準に入ってきている。劇的に高い利益率ではないものの、年々積み上げる形で改善している点は評価でき、価格競争に巻き込まれて利益が削られているような状況ではないことがうかがえる。
資本効率の面でも改善は明確で、ROEは9.0%から11.4%、12.0%へと上昇している。ROE12%という水準は、日本株全体で見ても決して低くなく、安定型の設備サービス企業としては十分に合格点といえる。ROAも5.1%から6.3%へ改善し、その後は6%台で安定しており、資産を増やし過ぎて利益が出ていないという印象はない。借入に依存した無理な収益構造ではなく、堅実に稼いでいる姿が数字から読み取れる。
利益の絶対額を見ても、純利益は24.3期の27億円から25.3期は31億円、26.3期予想では32億円と、緩やかだが確実な増益が続いている。一株益も79円から90円、93円と積み上がっており、配当も39円、45円、46円と連動して増えている。このあたりは、業績の伸びが株主還元にも素直に反映されている形で、数字だけを見る限り違和感はない。
バリュエーション面では、2025年実績ベースのPERが高値平均で13.0倍、安値平均で10.1倍となっている。ROEが12%まで上がってきていることを踏まえると、このPER水準は割高とは言いにくく、むしろ業績の安定性を考えれば妥当からやや控えめな評価と感じられる。PBRは1.6倍で、成長性を一定程度評価されてはいるものの、過度な期待が織り込まれている水準ではない。
これらを総合すると、急成長株やテーマ株のような派手さはないが、売上・利益・収益性・資本効率が揃って改善しており、数字の並びは非常にきれいだ。高成長を前提にした割高株ではなく、業績の積み上がりに対して株価評価は落ち着いている印象で、短期で大きな値幅を狙うよりも、中長期で業績と配当を確認しながら保有するタイプの銘柄といえる。
少なくとも、提示された数値だけから判断する限りでは、割高感を理由に避ける局面ではなく、安定成長と収益改善を評価して保有、あるいは押し目での買いを検討できる水準にある、というのが妥当な投資判断になる。
配当目的とかどうなの?
配当目的という観点で見ると、日本空調サービスは「高配当株」ではないが、「安定配当を積み上げていくタイプ」としてはかなり相性がいい部類に入る。まず水準そのものを見ると、連26.3予、連27.3予ともに予想配当利回りは3.50%で、銀行預金や国債と比べれば十分に魅力があり、東証プライム全体の平均と比べてもやや高めから同程度の水準にある。極端に高利回りをうたう銘柄ではない分、無理な配当を出している印象はない。
中身を見ても、配当は39円から45円、46円へと段階的に引き上げられており、業績の伸びに合わせて素直に増配している。純利益は24.3期で27億円、25.3期で31億円、26.3期予で32億円と安定して増えており、配当原資に不安は感じにくい。一時的な利益で無理に高配当を演出している形ではなく、継続性を重視した配当方針といえる。
一株益93円に対して配当46円という水準を見ると、配当性向はおおむね5割前後と推測される。この程度であれば、成長投資と株主還元のバランスは取れており、将来の業績悪化局面でも減配リスクが比較的抑えられる水準だ。設備メンテナンス主体という事業特性を考えても、キャッシュフローの振れが小さく、配当を維持しやすい構造になっている。
一方で、配当利回りだけを最重視する投資家、例えば4.5%や5%超を狙う高配当投資の軸として見ると、物足りなさは残る。その意味では、JTや商社株のような「最初から高利回り」を狙う銘柄とは役割が異なる。
総合すると、日本空調サービスは「今すぐ高配当を最大化したい」人向けではないが、「業績が伸びる会社を持ちながら、3.5%前後の配当を安定的にもらい、将来的な増配も期待する」タイプの配当目的にはかなり向いている。値動きの派手さよりも、配当と業績を静かに積み上げたい投資家にとっては、安心感のある配当銘柄という位置づけになる。
今後の値動き予想!!(5年間)
日本空調サービスについて、現在株価1,312円前後を基準に見ると、創薬バイオや先端半導体のように研究開発投資の成否で業績が大きく振れる企業とは性格が大きく異なり、空調設備を中心とした建物設備メンテナンスを中核とする、典型的な安定収益型の設備サービス企業と位置づけられる。病院、研究施設、データセンター、オフィスビルなど、設備停止が許されない建物を主要顧客としており、長期保守契約と更新需要を背景に、景気循環の影響は受けるものの、業績のブレは比較的小さい構造になっている。
直近の数値を見ると、売上高は年率3%前後のペースで着実に拡大しており、営業利益、経常利益、純利益はいずれも安定的に増加している。営業利益率は2023年の5.3%から2025年には6.5%まで改善しており、設備メンテナンス主体の企業としては堅実かつ着実な収益性向上が続いている。ROEも9%から12%まで上昇し、ROAは6%台で安定しており、派手さはないが、資本効率は年々底上げされている。一方で、アルプス技研のように高利益率・高ROEを誇るタイプではなく、成長率自体は緩やかで、事業規模が急拡大する企業ではない。
バリュエーション面では、2025年実績ベースのPERは10倍台前半から13倍程度、PBRは1.6倍前後と、業績の安定性や改善傾向を考えると市場評価は比較的控えめである。高収益を前提に高い倍率が付いている状態ではなく、「安定はしているが地味」という評価にとどまっている。この前提を踏まえ、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、病院やデータセンター向けを中心に保守需要が底堅く推移し、老朽設備の更新や省エネ関連のリニューアル工事が順調に積み上がる。営業利益率は6.5%から7%前後へ緩やかに改善し、ROEも13%前後まで上昇する。市場からは「安定成長・安定配当のディフェンシブ銘柄」として評価が見直され、PERは14〜15倍程度まで切り上がる。この場合、配当を受け取りながら株価もじわじわと上昇し、5年後の株価は1,650円から1,850円程度を目指す展開が想定される。大きな成長はないが、トータルリターンは堅実なシナリオである。
中間のシナリオでは、業績は会社計画に近いペースで推移し、営業利益率は6%台前半、ROEは12%前後で安定する。市場評価も大きくは変わらず、PERは10〜13倍レンジにとどまる。この場合、株価は大きな上昇トレンドを描かず、配当を受け取りながら緩やかに推移し、5年後の株価は1,300円から1,500円程度に収れんする中立的なシナリオとなる。値上がり益は限定的だが、配当込みでは安定したリターンが期待できる。
悪い場合のシナリオでは、景気後退や価格競争の影響で更新工事のペースが鈍化し、営業利益率が6%を割り込む局面が出てくる。ROEも10%前後まで低下し、市場は成長性をほとんど評価しなくなる。この場合、PERは9〜10倍程度まで低下する可能性がある。ただし、事業特性上、需要が急減する可能性は低く、配当利回りが上昇することで株価の下値は一定程度支えられる。このケースでも、5年後の株価は900円から1,100円程度にとどまる、もしくは一時的にその水準を試す弱気シナリオにとどまると考えられる。
総合すると、現在株価1,312円前後を起点とした日本空調サービスの5年間の値動きは、良い場合で1,650円から1,850円前後、中間で1,300円から1,500円、悪い場合で900円から1,100円程度といったレンジが想定される。急成長や株価倍増を狙う銘柄ではないが、業績の安定性、改善傾向にある収益性、3.5%前後の配当利回りを背景に、配当を受け取りながら中長期で安心して保有する投資と相性の良い銘柄、という評価になる。
この記事の最終更新日:2025年12月26日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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