株価
クレスコとは

クレスコは、受託によるソフトウェア開発を主力とする独立系のITサービス企業である。東京都港区港南に本社を置き、特定のメーカーや系列に属さない中立的な立場で、幅広い業種の顧客に情報システムサービスを提供している。中でも金融機関向けシステムに強みを持ち、銀行・証券・保険といったミッションクリティカルな分野で長年の開発・運用実績を積み上げてきた点が特徴である。
事業の中核は、情報システムに関するコンサルティングから設計、開発、運用管理、保守までを一貫して担う受託型ビジネスである。顧客の業務要件を踏まえたシステム企画や改善提案を行い、実際のシステム構築だけでなく、稼働後の運用・保守、調査・分析、評価、技術支援までを継続的に提供している。単発の開発にとどまらず、長期的な取引関係を前提とした案件が多く、安定した収益構造を形成している。
また、金融系システムに加えて、情報家電や各種機器向けの組み込みソフトウェア開発も手がけている。組み込み分野では、高い信頼性やリアルタイム性が求められる開発に対応しており、業務システムとは異なる技術領域を取り込むことで、事業ポートフォリオの分散にもつながっている。
技術面では、将来を見据えた研究開発にも力を入れている。2012年に設立された技術研究所は、クレスコの将来の競争力となる技術を継続的に生み出す仕組みづくりを目的としており、先端技術に真摯に向き合うことで、顧客と自社の成長、さらには社会全体の技術発展への貢献を目指している。研究成果は実ビジネスへの応用も意識されており、現場力の底上げにつながっている。
さらに2024年6月には、生成AIビジネス変革研究室を新設し、生成AIの活用を軸とした戦略的な取り組みを開始している。単なる業務効率化にとどまらず、将来起こり得る事業環境の変化を先取りし、顧客や自社のビジネス変革につなげることを目的としており、中長期的な成長布石として位置づけられている。
全体としてクレスコは、金融系を中心とした受託開発と運用・保守による安定収益を基盤に、組み込み開発や先端技術研究を組み合わせた堅実型の独立系SIerである。急成長を狙うタイプではないが、技術力と長期顧客関係を強みに、着実に事業価値を積み上げていく企業といえる。
クレスコ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 百万円 |
営業利益 百万円 |
経常利益 百万円 |
純利益 百万円 |
一株益 円 |
一株配当 円 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 39,706 | 3,484 | 4,101 | 2,634 | 62.7 | 19 |
| 連22.3 | 44,450 | 4,457 | 4,782 | 3,236 | 77.0 | 22 |
| 連23.3 | 48,368 | 4,998 | 5,135 | 3,328 | 79.1 | 25 |
| 連24.3 | 52,755 | 5,121 | 5,658 | 3,728 | 90.1 | 26 |
| 連25.3 | 58,760 | 5,983 | 6,290 | 4,405 | 106.9 | 42 |
| 連26.3予 | 64,000 | 7,000 | 7,100 | 4,900 | 121.3 | 58 |
| 連27.3予 | 66,000 | 7,300 | 7,300 | 5,000 | 123.8 | 60 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 (百万円) |
営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023年 | 1,679 | -874 | -1,631 |
| 2024年 | 3,213 | 1,451 | -723 |
| 2025年 | 4,762 | -2,293 | -2,084 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROA | ROE | PER (倍) |
PBR (倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年 | 10.3% | 9.8% | 13.6% | – | – |
| 2024年 | 9.7% | 9.3% | 13.4% | – | – |
| 2025年 | 10.1% | 10.1% | 14.2% | 13.3(高) 9.1(安) |
2.23 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益水準を見ると、2024年3月期の営業利益は約51億円、経常利益は約56億円、純利益は約37億円である。2025年3月期には営業利益が約59億円、経常利益が約62億円、純利益が約44億円へと伸びており、2026年3月期予想では営業利益約70億円、経常利益約71億円、純利益約49億円と、利益は段階的に拡大する前提になっている。売上の拡大に伴い、利益も素直に積み上がっている点から、本業の成長力と収益構造は比較的健全と評価できる。
収益性の指標を見ると、営業利益率は2023年10.3%、2024年9.7%、2025年10.1%と、3年平均でおおむね10%前後を安定的に維持している。SIerとしては高水準であり、価格競争に巻き込まれにくい領域や、金融系を中心とした安定案件を多く抱えていることがうかがえる。ROEは13.6%、13.4%、14.2%と着実に二桁を維持しており、ROAも9.8%、9.3%、10.1%と高い水準にある。自己資本を使った効率、総資産を使った効率の両面で見ても、成熟したITサービス企業としては優秀な部類に入る。
評価面では、2025年時点の実績PERは高値平均で13.3倍、安値平均で9.1倍とされており、ROE14%前後の企業としては割高感は強くない。PBRは2.2倍程度と、資本効率の高さを考えれば妥当な水準で、過度に期待を織り込んだ評価にはなっていない。成長率は年率一桁後半から一割程度と見られ、急成長株ではないが、安定成長と高収益性を両立している点が特徴である。
以上を踏まえると、クレスコは営業利益率10%前後、ROE14%前後という質の高い収益力を持ちながら、PERは一桁後半から十倍台前半にとどまる局面もある、いわゆる割安感を伴いやすい安定成長株と位置づけられる。爆発的な株価上昇を狙うタイプではないものの、業績のブレが小さく、利益と配当の積み上げを通じて中長期で着実なリターンを狙う投資には適した銘柄という判断になる。
配当目的とかどうなの?
まず利回り水準を見ると、2026年3月期予想で約3.30%、2027年3月期予想で約3.42%と、東証プライムの中では明確に「高配当寄り」の水準に入ってくる。いわゆる5%超の高配当株ではないものの、安定企業としては十分に魅力を感じやすいラインである。
次に、配当の裏付けとなる収益力を見ると、営業利益は2024年約51億円、2025年約59億円、2026年予想で約70億円と拡大基調にあり、営業利益率も3年間を通じておおむね10%前後を維持している。SIerとしては高い利益率で、本業の稼ぐ力が安定している点は、配当継続性の観点で大きなプラス要素になる。
ROEは13%台から14%台、ROAも9%台から10%台と、資本効率はかなり良好である。単に内部留保を積み上げるだけでなく、利益を出しながら株主還元も可能な体力を持っている企業と評価できる。実際に配当額も近年は増配基調にあり、2025年の42円から2026年予想58円、2027年予想60円と、利益成長に沿った形で引き上げられている。
評価面では、PERが9倍から13倍程度と、配当利回りを考慮すると過度に割高ではない水準にある。PBRは2倍台とやや高めだが、ROE14%前後を安定して出せる企業であれば、無理のある水準ではない。むしろ業績が堅調な局面では、利回り3%台を維持しながら株価も安定しやすい構造と言える。
総合すると、クレスコは「高利回り一本狙い」の銘柄ではないが、業績の安定性、利益成長、ROEの高さを背景に、3%台前半の配当利回りを中長期で受け取り続ける目的には相性が良い銘柄と評価できる。値動きの大きさよりも、配当と業績の積み上げを重視する投資家にとっては、安心感のある配当株という位置づけになる。
今後の値動き予想!!(5年間)
クレスコについて、現在株価1,753円前後を起点に、今後5年間の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで整理する。まず前提として、クレスコは金融系を中心とした受託ソフト開発を主力とする独立系SIerであり、営業利益率は10%前後、ROEは14%前後と、ITサービス企業としては収益性と資本効率がともに高い水準にある。業績は急成長型ではないが、売上・利益ともに着実な拡大が続いており、配当も増配基調で推移している。
良い場合のシナリオでは、金融機関向けシステム更新需要やDX投資が底堅く推移し、既存顧客との長期取引が安定的に拡大する。生成AIや先端技術の研究成果が実案件に結びつき、付加価値の高い案件比率が上昇することで、営業利益率は10%台前半を維持、ROEも14~15%程度で安定する。この場合、市場からは「高収益・安定成長の優良SIer」として評価され、PERは14~16倍程度まで切り上がる可能性がある。利益成長と評価見直しが重なれば、5年後の株価は2,400円から2,800円程度を目指す展開が想定される。配当を含めたトータルリターンはかなり堅実なものになる。
中間のシナリオでは、業績は会社計画に沿って順調に推移し、売上・利益ともに年率一桁後半の成長にとどまる。営業利益率は10%前後、ROEは13~14%程度で安定し、評価面ではPER12~14倍に落ち着く。この場合、株価は大きな上昇トレンドは描かず、増配による下支えを受けながら緩やかに水準を切り上げ、5年後の株価は2,000円から2,200円程度に収れんする中立的なシナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、金融機関のIT投資が想定以上に抑制され、人件費上昇などが利益率を圧迫する。営業利益率は9%台まで低下し、ROEも12%前後で頭打ちとなる。この場合、市場は成長性をあまり評価せず、PERは10~11倍程度まで低下する可能性がある。ただし、業績が赤字に転落するような構造ではなく、配当利回りは相対的に高まるため、株価の下値は一定程度支えられる。この場合の5年後の株価は1,500円から1,700円程度にとどまる、もしくは一時的に1,500円近辺を試す弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価1,753円前後を起点としたクレスコの5年間の値動きは、良い場合で2,400円から2,800円前後、中間で2,000円から2,200円、悪い場合で1,500円から1,700円程度といったレンジが想定される。急成長や株価倍増を狙う銘柄ではないが、営業利益率10%前後、ROE14%前後という高い事業の質と、3%台の配当利回りを背景に、配当を受け取りながら中長期で安定したリターンを積み上げていく投資と相性の良い銘柄、という評価になる。
この記事の最終更新日:2025年12月26日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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