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リゾートトラストとは

リゾートトラスト株式会社は、愛知県名古屋市中区に本社を置く、日本最大級の会員制リゾート企業であり、会員制リゾートホテル分野では国内首位の地位を確立している。リゾートトラストグループの中核企業として、ホテル、ゴルフ、メディカル、シニアライフなど幅広い事業を展開する総合リゾート会社である。
同社の最大の特徴は、会員制リゾートホテルにおいて1室を複数の会員で共有利用するタイムシェア制度を採用している点にある。この仕組みにより、安定した会員権販売収入を確保すると同時に、長期的な顧客囲い込みを実現している。主力ブランドには「エクシブ(XIV)」をはじめ、日本初の完全会員制リゾートホテルである「ベイコート倶楽部」、完全会員制の高級路線である「サンクチュアリコート」などがあり、全国の主要リゾート地や都市部で展開している。
日本国内におけるリゾート会員権市場ではシェア7割強を占め、日経MJのサービス業総合調査において会員制リゾートクラブ部門で30年以上にわたり売上高第1位を維持している。会員制ホテルを主軸としながら、ホテル業界全体の売上高ランキングでも上位に位置するなど、独自のビジネスモデルで規模と収益性を両立している点が強みである。
成長過程では、平成不況やバブル崩壊後の局面を活用し、リゾート地での大型施設建設や、過剰投資により破綻した企業からの物件取得を通じて事業規模を拡大してきた。2008年には東京都江東区有明に「東京ベイコート倶楽部」を開業し、都市型高級会員制ホテルという新たな市場を切り拓いた。2010年代以降は、老舗旅館や歴史的施設の跡地を活用した高付加価値ホテルの開発にも注力している。
海外展開としては、2014年に米国ハワイ州オアフ島の高級ホテル「ザ・カハラ・ホテル&リゾート」を取得・運営し、2020年にはそのブランドを冠した「ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜」を開業するなど、グローバルブランド展開にも取り組んでいる。
近年は健康領域への進出を積極的に進めており、会員制検診施設「ハイメディック」を中心とした予防医療・高度医療サービスを展開している。さらに、高級有料老人ホーム「トラストガーデン」などのシニアライフ事業にも注力し、リゾート、医療、介護を組み合わせた生涯型サービスモデルの構築を進めている。
リゾートトラストは、会員権販売によるストック型収益と、宿泊・飲食・医療・介護などのフロー収益を組み合わせた独自の事業構造を持ち、富裕層向けサービスを軸に高いブランド力と安定した収益基盤を築いてきた企業である。
リゾートトラスト 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 167,538 | 14,707 | 17,647 | -10,213 | -47.7 | 15 |
| 連22.3 | 157,782 | 8,693 | 11,123 | 5,775 | 27.1 | 15 |
| 連23.3 | 169,830 | 12,270 | 13,247 | 16,906 | 79.5 | 22.5 |
| 連24.3 | 201,803 | 21,119 | 21,807 | 15,892 | 75.0 | 27 |
| 連25.3 | 249,333 | 26,365 | 26,848 | 20,139 | 95.2 | 31 |
| 連26.3予 | 260,000 | 29,000 | 29,000 | 20,300 | 94.4 | 34 |
| 連27.3予 | 255,000 | 29,800 | 29,800 | 20,900 | 97.2 | 34〜38 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 24,285 | 6,314 | -30,995 |
| 2024.3 | 39,116 | -12,519 | -23,310 |
| 2025.3 | 36,691 | -30,936 | -9,272 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値/安値) | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 7.2% | 14.3% | 3.8% | – | – |
| 2024.3 | 10.4% | 12.2% | 3.3% | – | – |
| 2025.3 | 10.5% | 13.9% | 4.0% | 17.8倍/12.1倍 | 2.83倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
2024年3月期の業績を見ると、売上高は2,018億円、営業利益は211億円、経常利益は218億円、純利益は158億円となっており、コロナ禍からの需要回復と会員権販売の好調を背景に、収益水準は明確に回復局面に入っている。営業利益率は7.2%と過去と比べるとまだ高水準とは言い切れないものの、会員制リゾート事業という設備負担の大きい業態を考えれば、安定した利益を確保できている水準である。ROEは14.3%、ROAは3.8%と、資本効率は標準よりやや高めだが、突出して高い水準ではない。
2025年3月期には、売上高が2,493億円、営業利益263億円、経常利益268億円、純利益201億円へと大きく伸びており、利益成長が加速している。営業利益率は10.4%まで改善し、会員権販売と既存施設の稼働率向上が利益率を押し上げていることが読み取れる。一方でROEは12.2%、ROAは3.3%とやや低下しており、資産規模の拡大や先行投資の影響が出ていると考えられる。
2026年3月期予想では、売上高2,600億円、営業利益290億円、経常利益290億円、純利益203億円と、成長ペースはやや緩やかになるものの、利益は引き続き高水準を維持する見通しである。営業利益率は10.5%と2桁を維持し、ROEは13.9%、ROAは4.0%と再び改善が見込まれており、収益性は安定局面に入りつつある。
バリュエーション面を見ると、2025年実績ベースでPERは高値平均17.8倍、安値平均12.1倍と、会員制リゾートという安定性の高いビジネスモデルを考えれば概ね妥当なレンジにある。PBRは2.8倍とやや高めだが、ブランド力と会員基盤、長期ストック型収益を評価した水準と考えられる。
総合すると、リゾートトラストは営業利益率が1桁後半から2桁前半へと改善し、純利益も200億円規模に到達するなど、業績は明確な安定成長局面にある。一方で、ROE・ROAは極端に高いわけではなく、爆発的な成長を期待する銘柄ではない。現在のPER・PBR水準を踏まえると、割安感が強いとは言えないが、会員制ビジネスによる収益の見通しやすさを評価するなら妥当水準といえる。
投資判断としては、急成長や短期的な値幅取りを狙う銘柄ではなく、安定した利益成長とブランド力を背景に、中長期でじっくり保有することに向いた安定成長型銘柄、という位置づけになる。
配当目的とかどうなの?
リゾートトラストについて、配当目的という観点だけで見ると、結論から言えば「主目的にはやや弱いが、全否定するほど悪くはない」という位置づけになる。まず数値面を見ると、2026年3月期・2027年3月期ともに予想配当利回りは1.72%と、東証プライム全体や高配当株と比べると明確に低い水準である。インカムゲインを最優先する投資、たとえば3%超の利回りを安定的に取りにいくような配当目的投資とは、方向性が合わない。
一方で、配当水準そのものが不安定かというと、そうとも言い切れない。直近数年を見ると、利益の回復とともに配当額は着実に引き上げられており、2024年3月期27円、2025年3月期31円、2026年3月期予想34円と、増配基調がはっきりしている。利益成長に合わせて配当も素直に増やす姿勢は見て取れるため、減配リスクは相対的に小さい。
ただし、同社は会員制リゾートホテルという資本集約型ビジネスであり、新規施設開発や改修投資、健康・医療領域への展開など、今後も資金需要は大きい。実際、ROAが3〜4%台にとどまっていることからも、内部留保を成長投資に回す必要性が高い企業である。そのため、利益が伸びても配当性向を大きく引き上げて高利回り化する可能性は高くない。
総合すると、リゾートトラストは「高配当株」として買う銘柄ではない。利回り1.7%台では、配当そのものを目的に新規投資する魅力は乏しい。一方で、業績拡大に伴う緩やかな増配を受け取りながら、株価の安定や中長期の企業価値向上もあわせて狙うのであれば、補助的な配当銘柄としては成立する。つまり、配当を主目的に据えるなら他銘柄を優先すべきで、成長と安定を重視した中長期保有の「おまけとしての配当」を評価する投資スタンスであれば相性は悪くない、という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
リゾートトラストについて、現在株価1,974円前後を基準に見ると、創薬バイオや新興ITのように短期的な技術革新や研究開発の成否で業績が大きく振れる企業とは性格が異なり、会員制リゾートホテルを中核としたストック性の高いビジネスモデルを持つ、比較的安定収益型のサービス企業と位置づけられる。エクシブやベイコート倶楽部、サンクチュアリコートといった完全会員制・準会員制の高級リゾートブランドを展開し、富裕層を主な顧客基盤としている点が大きな特徴である。
会員権販売によるフロー収益と、宿泊・飲食・付帯サービスによるストック収益を組み合わせたモデルであり、景気変動の影響は受けるものの、一般的なホテル運営会社に比べると収益の見通しが立てやすい構造になっている。この前提を踏まえ、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、国内外の富裕層向けレジャー需要が底堅く推移し、会員権販売が計画通り進むとともに、既存施設の稼働率も高水準を維持する。加えて、医療・健康・シニアライフ関連事業が徐々に収益貢献し始め、グループ全体の付加価値が高まる。営業利益率は10%台後半、ROEも15%近辺まで改善し、市場からは「高付加価値・安定成長型サービス企業」として評価が高まる。この場合、PERは18〜20倍程度まで切り上がり、配当を受け取りながら株価も緩やかに上昇し、5年後には3,000円から3,500円程度を目指す展開が想定される。
中間のシナリオでは、業績は会社計画に近いペースで推移し、会員制リゾート事業は堅調だが大きな上振れはない。営業利益率は10%前後、ROEは12〜14%程度で安定し、評価面ではPER12〜15倍程度に落ち着く。この場合、株価は急騰することはなく、配当を受け取りながら徐々に水準を切り上げ、5年後の株価は2,300円から2,600円程度に収れんする比較的穏やかなシナリオとなる。
悪い場合のシナリオでは、景気後退や富裕層消費の鈍化により会員権販売が想定を下回り、稼働率にもやや陰りが出る。新規施設の投資負担が先行し、営業利益率は9%前後、ROEも10%台前半に低下する。この場合、市場は成長性を慎重に見るようになり、PERは10倍前後まで低下する可能性がある。ただしブランド力と既存会員基盤があるため、業績が急崩れする可能性は低く、株価の下値も一定程度で支えられる。この場合でも、5年後の株価は1,500円から1,800円程度にとどまる。もしくはその近辺を推移する弱気シナリオとなる。
総合すると、現在株価1,974円前後を起点としたリゾートトラストの5年間の値動きは、良い場合で3,000円から3,500円前後、中間で2,300円から2,600円、悪い場合で1,500円から1,800円程度といったレンジが想定される。急成長や株価倍増を狙う銘柄ではないが、会員制リゾートという独自性の高いビジネスモデルとブランド力を背景に、配当を受け取りながら中長期で比較的安定したリターンを積み上げていく投資と相性の良い銘柄、という評価になる。
この記事の最終更新日:2025年12月26日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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