株価
TDCソフトとは

TDCソフトは、金融関連ソフトウェアの開発に強みを持つ独立系システムインテグレーターであり、東京都千代田区に本社を置く。東京証券取引所プライム市場に上場しており、特定のハードウェアメーカーや巨大ITベンダーの系列に属さない独立系という立場を活かし、顧客企業の業務に密着したシステム開発と運用を長年にわたって手がけてきた企業である。派手な知名度や急成長性はないものの、金融・公共分野というミッションクリティカルな領域を中心に安定した受注基盤を持つ、堅実型のSI企業と位置づけられる。
同社の事業は、ITコンサルティング&サービス、金融ITソリューション、公共法人ITソリューション、プラットフォームソリューションなどで構成されている。特に金融分野における実績は厚く、銀行、証券、保険といった分野で勘定系・情報系・周辺業務システムの開発や保守を担ってきた。これらの分野は一度システムが導入されると長期間にわたり運用が続くため、短期的な景気変動の影響を受けにくく、継続的な保守・改修需要が発生しやすい。この構造が、TDCソフトの安定した売上と収益を支える基盤となっている。
公共法人向けITソリューションにおいても、官公庁や公的機関向けの業務システム開発・運用を手がけており、信頼性や品質が重視される領域で実績を積み重ねてきた。金融・公共のいずれも、高い業務理解力と安定したプロジェクト管理能力が求められる分野であり、TDCソフトは人材育成とノウハウの蓄積によって、この分野での競争力を維持している。
一方で近年の同社の大きなテーマは、従来型の受託開発中心のビジネスモデルからの脱却である。人月ベースで売上が決まりやすいSIビジネスは、安定性がある反面、利益率や成長性に限界があるため、TDCソフトはクラウドに対応した自社製品・サービスの育成に注力している。業務アプリケーションを柔軟に構築できるPaaS型クラウドサービスTrustproをはじめ、申請業務を効率化するクラウド型ワークフローStyleflow、IT企業向けのスキル管理や調達業務を支援するMeeepa、タレントマネジメントシステムHuTaCT、ストレスチェック支援ソリューションM-Check+、IT企業向け購買管理システムBP-LINKSなど、企業の業務効率化や人材管理をテーマとした複数のクラウドサービスを展開している。
これらの自社製品群は、いずれもクラウドを前提としたストック型収益を志向しており、ライセンス販売やサブスクリプションを通じて、将来的には受託開発に依存しない収益源となることが期待されている。ただし、現時点ではこれらの製品事業が業績の柱になっているわけではなく、成長途上の段階にある。TDCソフトにとっては、既存のSI事業で安定収益を確保しながら、時間をかけて自社製品を育てていくという、比較的保守的だが現実的な戦略を取っているといえる。
また、関連会社としてTDCフューテック株式会社、エールビジネスコンサルティング株式会社を擁し、システム開発にとどまらず、コンサルティングや業務改善支援まで含めた体制を構築している。これにより、単なる開発請負ではなく、顧客の業務課題の整理からシステム導入、運用・改善までを一貫して支援できる点も同社の強みとなっている。
総合すると、TDCソフトは、金融・公共分野に強い独立系SIとしての安定基盤を持ちながら、クラウド対応の自社製品育成によって中長期的な事業構造の高度化を目指している企業である。急成長や大きな変化を期待する銘柄ではないが、業績の安定性、顧客との長期取引、堅実な経営姿勢を評価する投資家にとっては、時間をかけて付き合いやすいタイプのIT企業といえる。
TDCソフト 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 27,292 | 2,358 | 2,564 | 1,711 | 35.5 | 12 |
| 連22.3 | 30,925 | 2,967 | 3,082 | 2,069 | 42.9 | 15 |
| 連23.3 | 35,242 | 3,458 | 3,714 | 2,490 | 52.2 | 22.5(記) |
| 連24.3 | 39,698 | 3,807 | 4,253 | 3,089 | 64.9 | 24 |
| 連25.3 | 44,417 | 4,772 | 4,876 | 3,433 | 72.9 | 27 |
| 連26.3予 | 48,500 | 5,300 | 5,400 | 3,650 | 77.1 | 30〜31 |
| 連27.3予 | 53,500 | 5,600 | 5,700 | 3,750 | 79.3 | 30〜34 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(百万円) | 営業キャッシュフロー | 投資キャッシュフロー | 財務キャッシュフロー |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 1,951 | -354 | -1,440 |
| 2024.3 | 3,022 | -296 | -1,357 |
| 2025.3 | 2,962 | -1 | -1,089 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 9.8 | 15.1 | 10.9 | – | – |
| 2024.3 | 9.5 | 16.7 | 12.1 | – | – |
| 2025.3 | 10.7 | 16.4 | 12.1 | 11.2〜18.8 | 2.99 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
TDCソフトを直近の利益水準と収益性指標から見ると、着実な成長と安定した資本効率を両立していると堅実な成長型SI企業と評価できる。まず利益の推移を見ると、営業利益は連24.3期の38億円から連25.3期47億円、連26.3期予想では53億円へと増加が続いている。経常利益も42億円→48億円→54億円、純利益も30億円→34億円→36億円と、利益水準は年を追って切り上がっており、事業規模の拡大とともに収益力が着実に強化されていることが分かる。SI企業としては比較的高い成長率を維持しており、業績面での不安材料は見当たらない。
収益性を見ると、営業利益率は2023年9.8%、2024年9.5%から2025年10.7%へと改善しており、二桁水準に達している。SI業界全体を見渡すと、この水準は明確に上位に位置する。人月型ビジネスの比率が高い中で利益率を引き上げている点は評価でき、付加価値の高い案件や効率化が進んでいることがうかがえる。
資本効率の面では、ROEは15.1%→16.7%→16.4%、ROAは10.9%→12.1%→12.1%と、いずれも高水準で安定している。特にROEが継続して15%超を維持している点は、資本を有効に使いながら利益を積み上げていることを示しており、成熟企業というよりは「効率よく稼げる成長企業」に近い印象を与える。
バリュエーション面では、2025年実績ベースのPERは11.2倍〜18.8倍とレンジがあり、PBRは2.9倍となっている。ROEが16%台であることを踏まえると、PBR3倍弱は過度に割高とは言えず、成長性と資本効率を織り込んだ妥当な評価水準といえる。PERについても、安値圏では割安感があり、高値圏ではやや期待先行だが、利益成長が続く限り許容されやすいレンジにある。
以上を踏まえた投資判断としては、TDCソフトは、利益成長、営業利益率の改善、ROE・ROAの高さが揃っており、業績面から見た企業体質は良好である。高成長IT企業のような爆発力はないものの、SI企業としては収益性・効率性ともに一段上の水準にあり、評価も極端に割高ではない。そのため、短期的な値幅狙いよりも、業績成長を背景に中長期で株価水準を切り上げていくタイプの銘柄と判断される。高配当を目的とするより、着実な利益成長と資本効率の高さを評価して保有する投資に向いた銘柄である。
配当目的とかどうなの?
配当目的で見ると、TDCソフトは成立はするが主役にはなりにくい銘柄という位置づけになる。連26.3期、連27.3期ともに予想配当利回りは2.16%で、日本株全体の平均と比べればやや高めだが、高配当株と呼べる水準ではない。インカム狙いとして最低限の水準は満たしているものの、配当そのものを主目的にすると物足りなさは残る。
利回り重視の観点では、商社やメガバンク、海運といった配当特化型銘柄と比べて見劣りする。生活費補填や配当収入を重視した運用では効率が良いとは言えず、高配当ポートフォリオの中核に据えるタイプの銘柄ではない。
一方で、この配当水準は業績に裏付けられている点が評価できる。営業利益率は10%前後、ROEは16%台、ROAも12%前後と、SI企業としてはかなり高い水準を維持しており、無理に配当を出している印象はない。利益成長に合わせて配当を積み上げている形であり、減配リスクは相対的に低く、継続性の面では安心感がある。
整理すると、TDCソフトは高配当目的には向かないが、安定した配当を受け取りながら成長も取りに行く投資には向いている銘柄といえる。配当を主役にするのではなく、業績の積み上がりと株価の水準訂正を主眼に置き、配当は安心材料として受け取る。そのくらいの距離感で付き合うのが最もしっくりくる。
今後の値動き予想!!(5年間)
TDCソフトについて、現在株価1,387円前後を基準に見ると、創薬バイオや新興ITのように技術トレンドや研究開発投資の成否で業績が大きく振れる企業とは性格が異なり、金融・公共分野を中心とした業務システム開発を軸に、安定した受注を積み上げていく独立系SI企業と位置づけられる。銀行や保険などミッションクリティカルな分野に強みを持ち、顧客業務に深く入り込むことで長期取引につながりやすいビジネスモデルであり、景気変動の影響を比較的受けにくい点が特徴である。この前提を踏まえ、今後5年間の値動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考える。
良い場合のシナリオでは、金融向け案件を中心に受注が底堅く推移し、売上・利益ともに想定以上のペースで成長する展開を想定する。営業利益率は10%前後を安定的に維持し、ROEも15%台後半で推移する。加えて、クラウド対応の自社製品が徐々に収益貢献を高め、単なる受託開発企業からの脱却が評価される。この場合、市場の評価は切り上がり、PERは18倍前後まで許容される。株価は業績の積み上がりに沿って緩やかに上昇し、5年後には2,100円から2,400円程度を目指す展開が想定される。値動きは穏やかだが、着実な右肩上がりとなる強気シナリオである。
中間のシナリオでは、業績は会社想定に近いペースで推移し、SI事業の安定成長が続く一方で、自社製品の立ち上がりは緩やかにとどまる。営業利益率は10%前後、ROEは15%前後で安定し、高収益だが突出した成長性はないという評価に落ち着く。この場合、PERは14〜16倍程度に収れんし、株価は大きなトレンドを描かず、上下を繰り返しながら水準を少しずつ切り上げる。5年後の株価は1,600円から1,900円程度となる中立的なシナリオが現実的である。
悪い場合のシナリオでは、景気減速や企業のIT投資抑制により、金融向け案件の伸びが鈍化する展開を想定する。売上は維持されるものの利益成長が止まり、営業利益率は一桁台後半まで低下する。この場合、市場の評価は慎重になり、PERは11〜12倍程度まで切り下がる可能性がある。業績が大きく崩れるわけではないため急落はしにくいが、株価は1,100円から1,300円程度で推移する弱気シナリオとなる。ただし、受注基盤の安定性から下値は比較的堅いと考えられる。
総合すると、現在株価1,387円前後を起点としたTDCソフトの5年間の値動きは、良い場合で2,100円から2,400円程度、中間で1,600円から1,900円、悪い場合でも1,100円から1,300円程度というレンジが想定される。急成長や株価倍増を狙う銘柄ではないが、安定した業績基盤と比較的高い収益性を背景に、値下がりリスクを抑えつつ中長期で着実なリターンを狙う投資と相性の良い銘柄、という評価になる。
この記事の最終更新日:2025年12月27日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す