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アイティフォーとは

アイティフォーは独自ソフトウェアを核として、地方金融機関、自治体、百貨店を中心にシステムを展開する独立系の総合ITベンダーである。システムインテグレーションにとどまらずITコンサルティング、ソフトウェア開発、ネットワーク構築、運用・業務受託までを一貫して手がけており、特に債権管理や決済分野における高い専門性と実績を強みとしている。
同社は1972年に高千穂交易から分離独立し、千代田情報機器として事業を開始した。その後、流通・金融分野を中心に事業領域を拡大し、2000年に現在の社名である株式会社アイティフォーへ商号変更。2005年に東京証券取引所第二部へ上場し翌2006年には第一部へ指定替えされるなど、比較的短期間で上位市場へ移行した成長企業である。
事業の原点は流通システムにあり国内初のPOSシステムを開発した実績を持つほか、丸井向けシステムを長年にわたり手がけるなど小売業務への深い理解とノウハウを蓄積してきた。この流通分野で培った業務知識とシステム構築力が、後の金融・EC・コンタクトセンター分野への展開の土台となっている。
現在の事業構成はネットワークシステム事業を基盤に、フィナンシャルソリューション、コンタクトセンターシステム、流通システム、eコマースシステムの5事業を主軸としている。ネットワークシステム事業ではLANやWANを中心としたITインフラ構築を担い、コンサルティングから設計、構築、運用・保守までを一気通貫で提供することで顧客の情報基盤全体を支えている。
フィナンシャルソリューション事業は同社の収益性と競争力を象徴する分野であり、金融機関向け延滞債権管理システムを主力製品としている。電話や文書による督促機能、法定利息の引き直し、法務文書作成といった機能を備え、地方銀行では約7割、全銀行ベースでも約半数という高いシェアを有する。銀行に限らず、クレジットカード会社、信販会社、リース会社、保証会社、サービサーなどにも広く導入されており、民間向け債権管理システムでは業界トップクラスの地位を確立している。加えて、個人信用情報照会、融資審査、住宅ローン審査など周辺システムも数多くの稼働実績を持つ。
コンタクトセンターシステム事業では、インバウンドおよびアウトバウンド双方に対応したコールセンターシステムを提供している。電話、FAX、メールなど複数チャネルを統合管理し、オペレーターへの自動振り分けや音声ガイダンスによる最適接続を実現する仕組みを構築。アウトバウンドでは営業、アンケート、DMフォロー、金融機関の督促業務などで高い効率性を発揮する。また、通話録音やオペレーター評価システムを組み合わせることで、応対品質向上やコンプライアンス強化にも寄与している。
流通システム事業では小売業向け基幹パッケージRITSを展開し、百貨店、大型商業施設、スーパー、専門店など幅広い業態に対応している。販売管理、商品管理、物流、在庫、CRM、会計、給与、クレジットなど、小売業務に必要な機能をほぼ網羅しており、長期利用を前提とした基幹システムとして安定したストック収益を生み出している。
eコマースシステム事業ではECサイト構築パッケージを提供し、実店舗システムとの連携を含むオムニチャネル対応に強みを持つ。流通システムで培った業務ノウハウをEC分野に転用することで、百貨店や専門店など難易度の高い案件にも対応可能としている。
このほか、店舗BGMシステムや映像解析によるセキュリティシステムなど、社会インフラや公共性の高い分野向けのソリューションも展開しており国内外の重要施設で導入実績を持つ。全体として、特定業務に深く入り込む独自ソフトと、保守・運用・業務受託を組み合わせたストック型ビジネスを基盤とし、景気変動に比較的強い安定収益構造を築いている企業と位置づけられる。
アイティフォー 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 EPS (円) |
一株当り配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 21.3期 | 16,289 | 2,186 | 2,317 | 1,683 | 61.6 | 23 |
| 22.3期 | 17,021 | 3,031 | 3,106 | 2,112 | 76.8 | 30 |
| 23.3期 | 18,322 | 3,217 | 3,278 | 2,291 | 83.0 | 30 |
| 24.3期 | 20,652 | 3,737 | 3,846 | 2,770 | 101.8 | 40 |
| 25.3期 | 20,552 | 3,532 | 3,668 | 2,914 | 108.1 | 50 |
| 26.3期予 | 24,000 | 4,100 | 4,200 | 3,000 | 113.3 | 80 |
| 27.3期予 | 26,000 | 4,500 | 4,600 | 3,300 | 124.6 | 80〜90 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 23.3期 | 1,714 | -758 | -744 |
| 24.3期 | 2,836 | -504 | -1,623 |
| 25.3期 | 2,609 | -2,508 | -2,672 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 (%) |
ROA (%) |
ROE (%) |
PER (倍) |
PBR (倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 23.3期 | 17.5 | 10.5 | 13.3 | ― | ― |
| 24.3期 | 18.0 | 11.5 | 14.7 | ― | ― |
| 25.3期 | 17.1 | 12.1 | 15.3 | 9.2~13.2 | 2.30 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益水準を見ると営業利益は24.3期で約37億円、25.3期で約35億円と一時的に足踏みしたが、26.3期予想では41億円まで回復する見通しとなっている。経常利益・純利益も同様に25.3期に小幅な調整を挟みつつ、26.3期は増益基調に戻る構図であり利益トレンド自体は中期的に右肩上がりと評価できる。売上が横ばいの年でも利益が大きく崩れていない点から、収益構造は安定している。
収益性の面では、営業利益率は23.3期17.5%、24.3期18.0%、25.3期17.1%と高水準を維持している。26.3期予想の利益計画を前提にしても17%前後の水準が続くと考えられ、SI企業としてはかなり高い部類に入る。価格競争に巻き込まれにくい業務特化型モデルが機能していると読み取れる。
資本効率を見ると、ROEは13.3%から15.3%へ段階的に上昇しROAも10.5%から12.1%へ改善している。自己資本を積み上げながら効率を高めている点は評価が高く、成熟企業でありながら経営効率が悪化していない状態といえる。
バリュエーション面では25.3期実績ベースのPERは9.2倍から13.2倍のレンジにあり、PBRは2.3倍となっている。ROEが15%水準まで高まっていることを踏まえると、PBR2倍超は理論的に許容範囲で極端な割高感はない。一方で、PERが13倍近辺では成長期待もある程度織り込まれており、評価余地は限定的になる。
以上を踏まえると、アイティフォーは高い営業利益率と安定した利益水準を持ち、ROE・ROAの改善が続く堅実型のIT企業と判断できる。急成長株ではないものの、PERがレンジ下限に近い水準では中長期の安定投資に向きレンジ上限付近では業績の安定性や配当を重視した保有向け銘柄という位置づけになる。
配当目的とかどうなの?
アイティフォーについて、配当目的に向いているかという観点で提示された数値だけを基に考えると、結論としては配当狙いにはかなり相性の良い銘柄と言える。まず配当利回りを見ると26.3期予想、27.3期予想ともに4.7%台と東証プライム全体の平均と比べても明確に高い水準にある。IT系企業でありながらこの利回りを継続的に提示できている点は、事業の安定性と株主還元姿勢の両面がそろっていないと実現しにくく配当目的の投資家にとっては大きな安心材料になる。
業績面を見ても営業利益率は直近3年で17%台後半から17%台前半と高水準を維持しており、ROEは15%台、ROAも12%台まで着実に改善している。これは、利益そのものが安定して出ているだけでなく、資本や資産を効率よく使えている状態であり配当の原資となる収益力が構造的に確保されていることを示している。
バリュエーション面では25.3期の実績PERが9.2倍から13.2倍のレンジ、PBRが2.3倍となっている。高成長を期待される銘柄のような割高感はなく、一方で極端な割安放置でもない水準で市場からは「安定収益・安定配当企業」として妥当な評価を受けている状態と考えられる。このため、株価の大幅上昇を狙う局面ではないが、配当を受け取りながら保有する前提では価格変動リスクも比較的抑えやすい。
総合すると、アイティフォーは急成長株ではないものの高い営業利益率と改善が続くROE・ROAを背景に、4%台後半の配当利回りを維持できる体力を持つ銘柄と判断できる。値上がり益を狙う投資よりも配当を積み上げていくインカムゲイン重視の長期保有に適したタイプであり、高配当株ポートフォリオの中核候補として検討する価値は十分にある。
今後の値動き予想!!(5年間)
アイティフォーについて現在値1,694円を基準に、今後5年間の株価推移を想定した値動き予想を良い場合・中間・悪い場合の3つに分けて整理する。数値はあくまでシナリオベースであり、確定的な予測ではなくこれまで示されてきた業績水準、収益性、配当水準、市場評価を前提に組み立てている。
まず良い場合を考える。金融機関向けの債権管理や決済関連システムが引き続き安定収益源として機能し、既存顧客からの保守・運用収入が堅調に積み上がると同時にDX対応やシステム刷新案件の受注が想定以上に進むケースである。営業利益率が17%台を維持しつつ、利益額が着実に増加すればROEは15%台後半から16%近辺まで意識される可能性がある。こうした状況では、現在9倍台から13倍台にあるPERレンジがやや切り上がり、市場からは高収益・高配当の安定成長株として再評価されやすい。配当利回りが4%台を維持されたまま評価が上がると株価は中期的に水準訂正が進み、5年後には3,500円から4,000円前後まで上昇する展開が考えられる。これは現在値から見ると2倍超の水準であり、インカムとキャピタルの両立が実現するシナリオとなる。
次に中間のケースでは、現在の事業環境が大きく変わらず、既存システムの更新需要と保守収入を中心に緩やかな成長が続く状況を想定する。売上・利益は横ばいから微増にとどまり、営業利益率やROE、ROAも現在の高水準を維持するが目立った成長ストーリーが市場に提示されない。この場合、株価評価は引き続き安定株・高配当株としての位置づけに収まり、PERは10倍前後から低めで推移しやすい。配当利回りが株価の下支えとなる一方、上値も限定され、株価は1,500円から2,300円程度のレンジで推移する可能性が高い。5年後の水準としては、1,900円から2,200円前後と現在値に対して小幅な上昇にとどまる展開が想定される。
最後に悪い場合を考える。国内IT投資の抑制や金融機関のシステム更新延期が重なり、受注環境が想定以上に悪化するケースである。利益成長が止まり営業利益率が17%台から15%台へ低下、ROEやROAも鈍化すると市場評価は一段と慎重になる。高配当が維持されたとしても成長性の乏しさが意識され、PERは一桁台前半まで低下する可能性がある。その結果、株価は現在値を下回る水準で推移し、5年後には1,000円から1,300円程度まで調整するリスクが出てくる。この場合、配当によるインカムは一定程度確保できるものの、株価下落によってトータルリターンは伸び悩む。
総合すると、アイティフォーの5年後の株価は事業環境と市場評価次第で幅を持った結果になりやすい。良い場合は3,500円から4,000円前後、中間では2,000円前後、悪い場合は1,000円台前半というレンジが現実的な想定となる。急成長を前提とした銘柄ではないが高い利益率と安定した配当を背景に下値は比較的限定されやすく、配当を受け取りながら中長期で構える投資との相性が良い銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月28日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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