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セントラルスポーツとは

セントラルスポーツは、プールを備えた総合型スポーツクラブの運営を主力とする日本の大手フィットネス企業であり、特に水泳スクール分野で強いブランド力と長年の実績を持つ企業である。本社は東京都中央区に置き、全国各地で直営および業務受託によるスポーツクラブを展開している。2012年3月末時点では、全国に155店舗を運営しており、そのうち約40店舗は自治体や団体からの業務受託による施設である。
同社は1964年東京オリンピックの水泳日本代表選手であった後藤忠治を中心に、体操界の小野喬、小野清子、遠藤幸雄といったトップアスリートが参画し、「世界に通用する水泳と体操の選手を育てる」ことを目的として設立された。水泳や体操を単なる習い事ではなく、体系化された教育・育成プログラムとして提供し、いわゆるスイミングスクールをビジネスとして初めて成功させた企業として知られている。この流れは現在も続いており、水泳スクールは同社の中核事業であり、安定的な会員基盤を支える重要な収益源となっている。
経営体制の面では、創業の中心人物である後藤忠治が現在も代表取締役会長を務めており、創業家の影響力が強い点が特徴である。株主構成においても、後藤家の資産管理・投資会社であるセントラルトラスト社が発行済株式の28%超を保有する筆頭株主となっており、長期的な視点での経営が行われやすい体制となっている。
事業内容の中心は、会員制スポーツクラブ事業である。各店舗にはプール、トレーニングジム、スタジオを基本設備として備え、地域特性や立地条件に応じて、スパ施設やリラクゼーション設備などを併設するケースもある。水泳、フィットネス、エアロビクス、ヨガ、筋力トレーニングなど、多様なプログラムを提供し、子どもから高齢者まで幅広い年齢層を対象としている。
水泳スクールは同社の最大の強みであり、幼児・児童向けを中心に高い継続率を誇る。水泳は基礎体力づくりや安全教育の観点からも需要が根強く、親世代からの信頼も厚い。このスクール事業によって獲得した会員が、成長後にフィットネス会員へ移行するケースも多く、長期的な顧客育成モデルが形成されている。
また、近年では従来の大型総合スポーツクラブに加え、小型の24時間営業ジムの展開にも取り組んでいる。これは、低価格・短時間利用を志向する若年層やビジネスパーソンの需要を取り込む狙いがあり、従来型クラブとは異なる補完的な業態として位置づけられている。
このほか、自治体からの指定管理者制度を活用した公共スポーツ施設の運営受託事業も行っており、プールや体育館、トレーニング施設などの管理・運営を担っている。民間クラブ運営に比べて収益性は高くないものの、安定した受託収入を確保できる点が特徴である。
全体としてセントラルスポーツは、水泳スクールという明確な強みを核に、総合型スポーツクラブ、24時間ジム、公共施設運営を組み合わせた事業構造を持つ企業である。健康志向の高まりや高齢化社会を背景に、フィットネス・健康分野での需要は中長期的に底堅く、同社は長年培ってきた指導ノウハウとブランド力を武器に、安定したポジションを築いている企業と位置づけられる。
セントラルスポーツ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 EPS (円) |
一株当り配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 21.3期 | 36,027 | 878 | 752 | -2,363 | -211.0 | 5 |
| 22.3期 | 40,338 | 1,517 | 2,595 | 1,540 | 137.5 | 41 |
| 23.3期 | 43,602 | 1,850 | 1,346 | 793 | 70.9 | 31 |
| 24.3期 | 45,379 | 2,653 | 2,181 | 1,160 | 103.6 | 36 |
| 25.3期 | 46,595 | 1,946 | 1,524 | 1,359 | 121.4 | 50 |
| 26.3期(予) | 49,500 | 2,600 | 2,200 | 1,200 | 107.1 | 40~50 |
| 27.3期(予) | 51,800 | 3,000 | 2,600 | 1,400 | 125.0 | 40~50 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 23.3期 | 2,097 | -346 | -3,010 |
| 24.3期 | 3,120 | -1,177 | -2,577 |
| 25.3期 | 2,064 | -1,953 | -2,195 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 (%) |
ROA (%) |
ROE (%) |
PER (倍) |
PBR (倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3期 | 4.2 | 1.8 | 3.3 | — | — |
| 2024.3期 | 5.8 | 2.7 | 4.6 | — | — |
| 2025.3期 | 4.1 | 3.3 | 5.2 | 24.1~27.7 | 1.04 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績水準を確認する。24.3期の売上高は約453億円、営業利益は約26億円、経常利益は約21億円、純利益は約11億円である。25.3期は売上高約465億円に対し、営業利益は約19億円、経常利益は約15億円、純利益は約13億円と売上は伸びたものの利益は一時的に低下している。26.3期予想では売上高約495億円、営業利益約26億円、経常利益約22億円、純利益約12億円と再び利益水準が回復する計画になっている。
次に収益性を見ると営業利益率は23.3期4.2%、24.3期5.8%、25.3期4.1%と5%前後で推移しており、製造業やIT企業と比べると低い水準である。ROEは3.3%から4.6%、5.2%へと緩やかに改善しており、ROAも1.8%から2.7%、3.3%へと上昇しているが依然として資本効率は高いとは言えない。事業特性上、設備投資や固定費の比率が高く、高収益体質になりにくい構造が数値に表れている。
バリュエーション面では25.3期実績PERは24.1倍から27.7倍、PBRは約1.0倍である。PBRはほぼ1倍と資産価値面では割安感がある一方、PERは営業利益率やROEの水準に対して高く将来の業績回復を織り込んだ評価になっている。
これらを総合すると、セントラルスポーツは業績回復途上にある安定型企業であり、高収益・高成長株ではない。26.3期にかけて利益回復は見込まれるものの、営業利益率は4%台、ROEも5%前後にとどまる見通しであり、この収益性でPER25倍前後を正当化するのはやや難しい。
投資判断としては、業績の底打ちと回復を評価するなら中立、成長株視点では割高、資産価値と事業の安定性を重視するなら下値は比較的限定的という位置づけになる。大きな値上がりを狙う銘柄ではなく、業績回復の進捗を確認しながら押し目を待つもしくは配当や安定性を重視した補助的ポジションとして検討するのが妥当と判断できる。
配当目的とかどうなの?
セントラルスポーツについて配当目的に向いているかを提示されている数値のみを前提に整理する。まず予想配当利回りを見ると26.3期・27.3期ともに1.63%と日本株全体で見ると低水準に位置する。一般に配当目的として意識されやすい利回り3%前後と比べると、インカムゲインとしての魅力は明確に弱い。
配当の原資となる収益力を見ると営業利益率は4%前後、ROEは5%前後、ROAは3%前後と、改善傾向にはあるものの依然として低い水準である。利益は黒字で安定しているが事業特性上、設備投資や固定費負担が重く、配当に大きく回せるほどの高い収益性はない。
また、PERは24~28倍程度と高めでPBRは1倍前後と資産価値並みの評価にとどまっている。この組み合わせは「配当を厚く出す余地が大きい企業」というより、「業績回復を株価が先に織り込んでいる企業」の状態に近い。現状の収益性を考えると、配当を大きく増やして利回りを引き上げる余力は限定的と考えられる。26.3期・27.3期ともに配当利回りが同水準で想定されている点からも、会社側は増配よりも業績安定や財務体質の維持を優先していると読み取れる。減配リスクは高くない一方で、配当成長を期待する銘柄ではない。
総合すると、セントラルスポーツは配当目的にはあまり向かない銘柄である。1%台半ばの利回りでは、インカム狙いとしての魅力は乏しく、配当を主目的に保有するよりも、業績回復や事業の安定性を評価する補助的な位置づけが妥当である。配当重視であれば、同程度のリスクでより高利回りの銘柄を選択したほうが効率的と判断できる。
今後の値動き予想!!(5年間)
セントラルスポーツの現在値は2,440円である。同社はプールを備えた総合型スポーツクラブの大手として水泳スクールを中核に安定した会員基盤を持つ一方、近年は24時間型の小型ジム展開などで業態の補完も進めている。コロナ禍で一時的に業績が悪化したものの、その後は会員数の回復とコスト調整によって黒字基調に戻っており直近では売上・利益ともに回復局面にある。
ただし、営業利益率は4〜5%台、ROEは5%前後、ROAも3%前後と収益性は高いとは言えず、事業構造としては「安定型・低収益モデル」に近い。株価はPBR1倍前後と資産価値に近い水準にある一方、PERは20倍台後半と収益性に対してはやや高めの評価が付いている。配当利回りは1.6%前後と低く、株価の評価軸は配当よりも業績回復の持続性に置かれている。こうした前提を踏まえ、今後5年間の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで整理する。
良い場合のシナリオでは、国内の健康志向の高まりや子ども向け水泳スクール需要が安定的に拡大し、会員数が着実に増加する展開を想定する。加えて、24時間ジムなどの小型業態が既存店の補完として機能し、固定費の吸収が進むことで営業利益率が5%台後半から6%近辺まで改善する。ROEやROAも緩やかに上昇し収益性の底上げが進むことで、市場からは「安定回復が定着した企業」として再評価される。この場合、PERは25倍前後、PBRは1.2倍程度まで切り上がり利益成長と評価改善が重なれば、5年後の株価は3,200円〜3,800円程度まで上昇する余地がある。大きな成長株ではないものの、着実な業績改善を背景とした中期的な株価上昇が見込まれる。
中間のシナリオでは、会員数は安定するものの大きな成長は見られず業績は緩やかな回復にとどまる展開を想定する。営業利益率は4%台前半から5%台前半で推移し、ROE・ROAも現在水準で頭打ちとなる。市場評価は落ち着き、PERは20倍前後、PBRは1倍前後に収れんする。この場合、株価は業績回復を反映して緩やかに推移し5年後のレンジは2,600円〜3,000円程度が現実的な水準となる。値動きは大きくなく、ディフェンシブ寄りの銘柄としての位置づけが強まる。
悪い場合のシナリオでは、フィットネス業界の競争激化や人件費・光熱費の上昇が収益を圧迫し、利益率の改善が進まない展開を想定する。営業利益率は4%を下回り、ROE・ROAも低迷することで、市場は成長期待を後退させる。この場合、PERは15倍前後、PBRも0.9倍程度まで低下し、株価は評価調整を受ける可能性がある。5年後の株価は1,800円〜2,200円程度まで下落するリスクがあり、業績の回復力が弱いと判断されれば長期的に低位で推移する可能性もある。ただし、会員制モデルと一定のブランド力があるため、急激な崩壊的下落にはなりにくい。
総合すると、セントラルスポーツは高成長を狙う銘柄ではなく、業績回復と安定性を評価するタイプの企業である。良い場合には3,200円〜3,800円、中間では2,600円〜3,000円、悪い場合でも1,800円〜2,200円程度が一つの目安となる。配当利回りは低いためリターンの中心は株価の回復度合いとなり、成長株というより「回復局面の安定型銘柄」として、値動きの緩やかさを許容できる投資家向けの銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月28日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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