株価
ACCESSとは

株式会社ACCESSは、東京都千代田区に本社を置くソフトウェア企業で、組み込みソフトウェアおよびネットワークソフトウェアを中核とした事業を展開している。インターネット接続機能を持つ家電や情報端末向けのウェブブラウザ「NetFront」シリーズで知られ、日本のインターネット黎明期から組み込み機器向けソフトウェア分野で事業を拡大してきた企業である。
同社は1979年に創業者の荒川亨が設立した個人事務所「荒川設計事務所」を起点とし、1984年に有限会社アクセス、1996年に株式会社アクセスへと組織変更、2000年に現在の英字商号である株式会社ACCESSに変更している。2005年にはPalm OSを開発していたPalmSourceを買収し、2006年には米国のネットワークソフトウェア企業IP Infusionを買収するなど、海外企業の買収を通じて事業領域を拡大してきた。
現在の事業の柱は、北米拠点を中心としたネットワーク事業である。特に、IP Infusion由来の通信機器向けソフトウェアやネットワークOSは、通信事業者や機器メーカー向けに展開されており、海外売上比率の高いビジネスモデルを形成している。これに加え、IoTデバイス向けの受託開発や、車載機器向けのプラットフォームソフトウェアも重要な事業領域となっている。
製品面では、組み込み機器向けWebブラウザ「NetFront Browser」「NetFront Browser NX」、Linuxベースの統合基盤である「ACCESS Linux Platform」、通信機器向けソフトウェアルータ「ZebOS」などを展開している。また、Beacon関連の「ACCESS Beacon Framework」、ECHONET Lite対応ミドルウェア、デジタルサイネージ、IoT・位置情報関連ソリューションなど、組み込み・ネットワーク技術を応用した幅広い製品群を有している。
一方で、経営面では大きな課題を抱えている。2019年1月期以降、経常損失および最終赤字が継続しており、2025年1月期には過去最大となる約53億円規模の最終赤字を計上している。また、過去の不適切会計問題により、2025年8月には東京証券取引所から特別注意銘柄の指定を受け、株価指数からも除外されるなど、ガバナンス面での信頼回復が大きなテーマとなっている。
総じてACCESSは、組み込みソフトウェアやネットワーク分野において長年の技術蓄積と国際展開力を持つ企業であり、北米ネットワーク事業、IoT、車載プラットフォームといった分野に事業の軸足を置いている。一方で、継続的な赤字とガバナンス問題を抱えており、現状では成長企業というよりも、事業再構築と収益体質の立て直しが最大の焦点となっている企業と位置づけられる。
ACCESS 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株当り配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 21.1 | 7,516 | -2,641 | -2,337 | -2,537 | -65.2 | 0 |
| 22.1 | 9,853 | -3,219 | -2,646 | -3,049 | -78.0 | 0 |
| 23.1 | 13,060 | -1,707 | -1,337 | -2,684 | -69.9 | 0 |
| 24.1 | 16,573 | -105 | -12 | -280 | -7.5 | 0 |
| 25.1 | 15,930 | -2,259 | -1,884 | -5,383 | -143.1 | 0 |
| 26.1予 | 20,500 | -700 | -900 | -1,400 | -37.4 | 0 |
| 27.1予 | 22,000 | -200 | -400 | -400 | -10.7 | 0 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 23.1 | 953 | -2,920 | -1,322 |
| 24.1 | 2,242 | -3,717 | -27 |
| 25.1 | 1,134 | -1,068 | -50 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 23.1 | -13.1 | -12.2 | -10.7 | ― | ― |
| 24.1 | -0.7 | -1.3 | -1.1 | ― | 2.94 |
| 25.1 | -14.2 | -53.8 | -25.1 | ― | ― |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の水準を見ると、連24.1の売上高は165.7億円で、営業利益は-1.0億円、経常利益は-0.1億円、純利益は-2.8億円となっている。この年は赤字ではあるものの、営業段階ではほぼ損益分岐点に近い水準まで改善しており、一時的には立て直しの兆しが見えていたといえる。しかし、連25.1になると売上高は159.3億円とやや減少し、営業利益は-22.5億円、経常利益は-18.8億円、純利益は-53.8億円と損失が一気に拡大している。特に純利益の大幅な悪化は、事業構造の不安定さを強く示している。
連26.1予では売上高が205.0億円まで回復・拡大する見通しとなっており、営業利益は-7.0億円、経常利益は-9.0億円、純利益は-14.0億円と、損失幅の縮小が見込まれている。さらに連27.1予では売上高220.0億円、営業利益-2.0億円、経常利益-4.0億円、純利益-4.0億円と、赤字は続くものの規模はかなり小さくなる想定である。売上規模そのものは着実に拡大しており、事業需要が完全に失われているわけではないことが数字から読み取れる。
一方で、収益性と効率性を見ると状況は厳しい。営業利益率は2023年が-13.1%、2024年が-0.7%、2025年が-14.2%と、黒字化には至っておらず、改善と悪化を繰り返している。ROEは2023年-12.2%、2024年-1.3%、2025年-53.8%、ROAは2023年-10.7%、2024年-1.1%、2025年-25.1%となっており、資本効率・資産効率はいずれも大きく低下している。特に2025年のROEとROAの急激な悪化は、損失が自己資本や資産に強く影響していることを示している。
評価指標の面では、赤字が続いているためPERは算出不能であり、利益を基準とした株価評価ができない状態にある。PBRは2倍台とされているが、これは現在の収益力を反映したものではなく、将来の黒字転換や事業再建への期待のみで成立している水準と考えるのが妥当である。
これらを総合すると、ACCESSは売上規模は拡大しているものの、利益構造が極めて不安定で、営業利益率・ROE・ROAはいずれも投資対象として評価できる水準に達していない。26.1予、27.1予では損失縮小が見込まれているが、現時点では「黒字化が明確に視野に入った」と判断できる段階ではない。
投資判断としては、配当や安定成長を目的とした投資には不向きであり、業績に基づくバリュエーション評価も成立していない。株価は業績よりも、事業再編や黒字転換への期待といった材料に左右されやすく、値動きは大きくなりやすい。提示された数値だけで判断するなら、ACCESSは再建期待先行型の高リスク銘柄であり、明確な黒字転換と収益性指標の改善が確認されるまでは、慎重姿勢、もしくは見送りが妥当という結論になる。
配当目的とかどうなの?
配当目的という観点で見ると結論はかなりはっきりしている。連26.1の予想配当利回りは0.00%、連27.1の予想配当利回りも0.00%となっており、少なくとも向こう数年は無配が前提の銘柄である。配当収入を得るという目的では、投資対象として成立していない。
業績面を踏まえても状況は同じで、営業利益・経常利益・純利益はいずれも赤字が続いており営業利益率、ROE、ROAもすべてマイナスで推移している。利益が出ていない以上、配当原資そのものがなく仮に一時的に配当を出したとしても持続性は期待できない。現実的には、当面は配当よりも事業の立て直しや資金繰りの安定が優先される局面にあると見るのが自然である。
また、配当利回りが0.00%である一方、株価はPBR2倍台と利益水準から見れば決して割安とは言えない評価が付いている。これは配当や足元の収益力を評価しているのではなく、将来の黒字転換や事業再建への期待だけで株価が成り立っている状態である。そのため、配当を目的に保有しても、リターンは一切得られず株価変動リスクだけを負う形になる。
総合すると、ACCESSは配当目的では完全に不適格な銘柄である。インカムゲイン狙い、配当を積み上げる投資、安定収益を重視するポートフォリオとは相性が極めて悪い。仮に投資を検討するとすれば、それは配当目的ではなく黒字転換や事業再編といった将来の変化を期待した値動き狙いに限定される。結論として、配当目的という視点では「検討の余地なし」。配当を重視する投資家にとっては、最初から選択肢に入れるべき銘柄ではない。
今後の値動き予想!!(5年間)
ACCESSの現在値は573.0円である。長期にわたる赤字基調が続き営業利益率・ROE・ROAはいずれもマイナス、配当も無配が前提となっている。一方で、売上高は回復・拡大傾向にあり、北米拠点のネットワーク事業やIoT・車載プラットフォームといった分野に将来の立て直し余地を残している。この状況を踏まえ、5年間の株価について良い場合・中間・悪い場合のシナリオを想定する。
良い場合のシナリオでは、北米ネットワーク事業が安定成長軌道に乗り、IoTデバイス受託開発や車載プラットフォーム分野での案件拡大が進む展開を想定する。赤字幅が予想どおり縮小し、5年以内に営業黒字化が視野に入ることで市場の見方が大きく変わるケースである。この場合、PERは黒字転換後に再び算出可能となり、再建期待が評価に反映される。PBR水準の切り上がりと期待先行の買いが重なり、5年後の株価は1,200円〜1,800円程度まで上昇する余地があると考えられる。
中間のシナリオでは、売上高は拡大するものの黒字化には至らず、赤字が小幅に残る状態が続く展開を想定する。事業は継続できているが利益体質の改善が不十分で、市場の評価も限定的なまま推移するケースである。この場合、株価は再建期待と業績不安が拮抗し、レンジ相場になりやすい。5年後の株価は500円〜800円前後で推移する可能性が高く、現在水準からは大きなリターンも損失も出にくい状態が続くと見込まれる。
悪い場合のシナリオでは、ネットワーク事業やIoT分野での成長が鈍化し、赤字が長期化する展開を想定する。資金消耗が続き、追加の資金調達や事業整理が意識される局面に入ると市場の再建期待は急速に後退する。この場合、PBRはさらに切り下がり、株価は低位株として見られる可能性が高い。5年後の株価は200円〜400円程度まで下落するリスクがある。
総合すると、ACCESSは5年間で見た場合、事業再建の成否によって株価レンジが大きく分かれる典型的な再建期待銘柄である。良い場合には1,000円台後半までの上昇余地がある一方、中間では現状近辺の停滞、悪い場合には大きな下振れリスクも残る。配当は期待できず投資リターンはすべて株価変動に依存するため安定投資ではなく、高リスク・高変動を許容できる投資家向けの銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月28日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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