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デジタルガレージとは

デジタルガレージは、東京都渋谷区に本社を置くインターネット関連企業で、決済、広告・マーケティング、ベンチャー投資といったネットビジネス周辺領域で多角的に事業を展開している。1995年の創業以来、日本のインターネット黎明期から事業を拡大してきた企業であり、単一事業に依存しないポートフォリオ型の経営を特徴としている。りそなホールディングスの持分法適用会社である点も特徴で、金融分野との関係性が事業基盤の安定性を高めている。
拠点は東京を中心に、渋谷パルコのビル上部や代官山デジタルゲートビルに構え、さらに米国サンフランシスコにも拠点を持つなど、国内外をまたぐ活動を行っている。前身はプロモーション会社のフロムガレージであり、伊藤穰一が共同創業者として関わった経緯からも、テクノロジーとカルチャー、ビジネスを横断する企業文化を色濃く残している。
事業の中核は決済であり、日本最大級規模の決済代行事業者として、オンライン・オフラインを問わない総合決済プラットフォームを提供している。EC事業者や実店舗向けの決済、送金、公金領域など幅広い分野に対応しており、決済取扱高の拡大に応じて収益が積み上がるストック型ビジネスモデルが同社の収益の土台となっている。この決済事業を軸に、広告やプロモーション支援など、データとテクノロジーを活用した付加価値サービスも展開している。
また、マーケティング分野では、デジタルとリアルを横断したソリューションを提供し、企業の広告・プロモーション活動を支援している。決済データやメディア資産を活用したマーケティング施策を強みとしており、単なる広告代理業とは異なる立ち位置を築いている。グループ会社にはカカクコムなども含まれ、価格.comや食べログといった大規模メディアの顧客基盤との連携も特徴的である。
さらに、スタートアップ投資・育成事業にも積極的で、国内外の有望なベンチャー企業への投資を行っている。DGベンチャーズやOpen Network Labなどを通じて、資金提供だけでなく、教育プログラムやワーキングスペースの提供、事業支援までを行う点が特徴である。サンフランシスコのDG717をはじめ、東京、欧州、アジア、北欧までネットワークを広げ、グローバルな視点でスタートアップを発掘・育成する体制を構築してきた。実際に出資先企業が上場するなど、一定の実績も積み上げている。
加えて、DG Labというオープンイノベーション型の研究開発組織を運営し、ブロックチェーン、AI、xR、セキュリティ、バイオヘルスといった先端分野で研究と事業化を進めている。研究、投資、事業運営を循環させることで、新たな事業の芽を継続的に生み出そうとする姿勢が同社の特徴である。
全体としてデジタルガレージは、決済という社会インフラ性の高い安定事業を軸に、広告・マーケティングとベンチャー投資を組み合わせた多角化モデルを採用している企業である。投資事業の評価変動などにより短期的には業績が振れやすい側面はあるものの、中長期ではフィンテックやインターネットビジネスの成長を取り込むポジションにあり、安定性と成長性を併せ持つ独自色の強いネット企業といえる。
デジタルガレージ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株当り配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 20.3 | 30,707 | 10,293 | 10,008 | 7,420 | 161.4 | 38記 |
| 21.3 | 35,976 | 14,569 | 14,317 | 9,786 | 212.5 | 32 |
| 22.3 | 53,099 | 32,582 | 45,393 | 30,330 | 654.8 | 35 |
| 23.3 | 25,128 | -5,814 | -13,881 | -9,058 | -193.3 | 37 |
| 24.3 | 31,378 | 4,804 | 6,298 | 5,806 | 126.8 | 40 |
| 25.3 | 32,201 | -5,611 | -10,216 | -7,190 | -155.3 | 53記 |
| 26.3予 | 39,000 | 5,000 | 5,300 | 4,600 | 100.2 | 47 |
| 27.3予 | 45,000 | 8,000 | 8,000 | 5,600 | 122.0 | 50〜55 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 23.3 | 13,473 | 1,628 | -5,214 |
| 24.3 | -11,032 | -8,763 | 15,931 |
| 25.3 | 31,726 | -10,003 | -14,914 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率(%) | ROA(%) | ROE(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 23.3 | -19.4 | -4.2 | -11.4 | ― | ― |
| 24.3 | 15.3 | 2.5 | 6.5 | ― | ― |
| 25.3 | -14.7 | -3.2 | -9.6 |
高値平均 38.9 安値平均 21.9 |
1.68 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績水準を見る。24.3期の売上高は313億円、営業利益は48億円、経常利益は62億円、純利益は58億円でありこの年は本業・最終ともにしっかりと利益を出している。一方で25.3期になると、売上高は322億円と微増したものの、営業利益は-56億円、経常利益は-102億円、純利益は-71億円と大幅な赤字に転落している。売上規模は維持されているにもかかわらず利益が急激に悪化しており、デジタルガレージの収益構造は振れ幅が極めて大きいことが分かる。26.3期予想では、売上高390億円、営業利益50億円、経常利益53億円、純利益46億円と再び黒字回復が見込まれており、業績はV字回復を前提とした計画になっている。
次に収益性と効率性を見る。営業利益率は2023年-19.4%、2024年15.3%、2025年-14.7%と黒字と赤字を行き来する非常に不安定な推移である。ROEは2023年-11.4%、2024年6.5%、2025年-9.6%、ROAは2023年-4.2%、2024年2.5%、2025年-3.2%となっており24.3期のみ資本効率・資産効率がプラスに転じているが、持続性には乏しい。数値だけを見る限り、デジタルガレージは安定的に高収益を生み出す体質にはなっていない。
評価指標を見ると25.3期は赤字であるにもかかわらず、実績PERは高値平均38.9倍、安値平均21.9倍とかなり高いレンジで評価されている。PBRは1.6倍で、純資産から見れば極端な割高感はないが、利益の安定性を考えると決して割安とは言い切れない水準である。この評価は、足元の利益ではなく26.3期以降の黒字回復や中長期の成長期待を強く織り込んだものと考えられる。
以上を総合すると、デジタルガレージは売上規模は300〜400億円台で安定している一方、営業利益率・ROE・ROAが年ごとに大きく振れ黒字と赤字を繰り返す非常に変動の大きい収益構造を持つ企業である。26.3期予想では再び黒字に戻る前提だが過去の推移を見る限りその利益が継続的に定着するかは不透明である。にもかかわらずPERは20〜30倍台、PBRも1倍台後半と、評価はすでに一定の回復シナリオを織り込んでいる。
結論として、数値だけで判断するならデジタルガレージは安定成長や配当を重視する投資には向かない。業績の振れを許容し黒字回復と将来の成長シナリオに賭ける投資であれば検討余地はあるが、評価は決して割安ではなく期待先行型の性格が強い。したがってデジタルガレージは業績回復が当たればリターンはある一方で、外れた場合の下振れも大きい変動性の高い中リスク銘柄という位置づけになる。
配当目的とかどうなの?
デジタルガレージを配当目的という観点で見ると結論はやや慎重寄りになる。予想配当利回りは26.3期で1.70%、27.3期で1.81%と数値だけ見ればゼロではなく一定の水準にある。ただし、いずれも高配当と呼べる水準ではなく、インカムゲインを主目的とする投資家にとって魅力的とは言いにくい。
過去の業績推移を踏まえると、デジタルガレージは黒字と赤字を繰り返しており利益の安定性が低い。25.3期には大幅な赤字を計上しており、その直後の26.3期、27.3期の配当予想はあくまで業績回復を前提としたものである。営業利益率、ROE、ROAが年ごとに大きく振れている点を考えると配当の持続性には不確実性が残る。
また、配当利回り1%台後半という水準は同じ水準のリスクを取るのであれば、より安定した収益基盤を持つ企業や配当実績が長期にわたって継続している企業と比較すると見劣りする。配当を受け取りながら長期保有するタイプの投資とは、やや相性が悪い。
総合すると、デジタルガレージは配当を主目的に保有する銘柄ではない。配当はあくまで「業績が計画どおり回復した場合のおまけ」と捉えるのが妥当であり、投資の主眼は株価の変動や業績回復による評価変化に置くべき銘柄である。配当重視の投資家にとっては優先度は低く、成長や回復局面を狙う投資家向けの性格が強いといえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
デジタルガレージの現在値は2,758.0円である。決済を中核に、広告・マーケティング、投資・インキュベーションを組み合わせた事業構造を持ち、業績は黒字と赤字を行き来する振れの大きさが特徴となっている。これを前提に、今後5年間の株価について良い場合・中間・悪い場合のシナリオを想定する。
良い場合のシナリオでは、決済事業が安定的に拡大し、取扱高の増加が利益として着実に積み上がる展開を想定する。加えて、投資・インキュベーション領域で評価益や回収が進み、業績のブレが徐々に小さくなるケースである。この場合、営業利益率やROEがプラス圏で定着し、市場からは「不安定なネット企業」から「決済を軸とした成長企業」へと評価が切り替わる可能性がある。PERは20倍台後半から30倍前後で評価され、利益成長とともに株価は中長期で切り上がり、5年後の株価は4,000円〜5,000円程度まで上昇する余地がある。
中間のシナリオでは、決済事業は堅調だが、投資・インキュベーションの評価損益による業績の振れは引き続き残る展開を想定する。黒字の年と利益が伸び悩む年が混在し、営業利益率やROEも安定しきらない。この場合、市場評価は抑制的となり、PERは20倍前後で推移しやすい。株価は大きくは上がらないものの、事業継続への信頼から大崩れもしにくく、5年後の株価は2,500円〜3,500円前後のレンジで上下する可能性が高い。
悪い場合のシナリオでは、決済事業の成長が鈍化し、投資・インキュベーション領域での損失が重なる展開を想定する。業績の赤字局面が長期化すると、市場は再び不安定さを強く意識し、評価倍率は切り下がる。この場合、PERによる評価は難しくなり、PBRを基準とした低評価が進む可能性がある。株価は調整が続き、5年後には1,500円〜2,000円程度まで下落するリスクがある。
総合すると、デジタルガレージは5年間で見た場合、決済事業の安定成長がどこまで業績全体を支えられるかが株価の分かれ目となる。良い場合には4,000円超への上昇余地がある一方、中間では現状近辺での推移、悪い場合には2,000円割れも視野に入る。配当利回りは1%台後半と控えめであり、リターンの中心は配当ではなく株価変動となるため、安定投資よりも業績回復や成長を見込む中長期向けの銘柄といえる。
この記事の最終更新日:2025年12月28日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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