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ウェザーニューズとは

株式会社ウェザーニューズは、千葉県千葉市美浜区の幕張新都心に本社およびグローバルセンターを構える、日本を代表する民間気象情報会社であり、世界最大級の気象情報サービス企業である。気象庁から予報業務許可を受けた数少ない民間事業者の一つであり、提供するサービスブランドは「ウェザーニュース」として広く認知されている。企業・自治体・インフラ事業者から一般個人に至るまで、気象を軸にした情報サービスを多層的に展開している点が最大の特徴である。
同社は1986年、石橋博良によって設立された。設立形態は、当時としては極めて珍しいMBO(マネジメント・バイ・アウト)であり、米国の海洋気象調査会社オーシャンルーツの日本法人から陸上・航空部門を買い取る形で独立した。創業の背景には、1970年に小名浜港を襲った爆弾低気圧による海難事故があり、「本当に役立つ気象情報があれば事故は防げたのではないか」という強い問題意識が事業理念の根幹にある。この思想は現在に至るまで一貫しており、単なる天気予報ではなく、実務判断に直結する気象情報の提供を重視している。
前身企業を含めると、その歴史は1953年創業のパシフィックウェザー・アナリシス・コーポレーションにまで遡る。これは世界初の民間気象情報会社とされており、ウェザーニューズは70年以上にわたる民間気象情報の系譜を受け継ぐ存在である。1993年には親会社であったオーシャンルーツを吸収合併し、名実ともに世界最大の民間気象情報会社となった。
祖業は海運向けの最適航路予測サービスである。気象衛星、独自の海上ブイ、各国気象機関との連携データを活用し、台風や爆弾低気圧を回避しつつ、燃費効率を高める航路を提案するサービスは、世界中の船会社に採用されてきた。この分野で培われた「気象を使ってコストとリスクを同時に下げる」という思想が、同社の全事業に共通する基盤となっている。
現在の事業構造は、法人向けと個人向けの両輪で成り立っている。法人向けでは、航空、航海、海上、道路、鉄道、建設、防災、放送、流通、電力、工場、農業、スポーツ、旅行、健康など、ほぼすべての産業分野をカバーする気象情報サービスを展開している。これらは単発の情報提供ではなく、年間契約を基本とするサブスクリプション型で提供されており、ストック型収益モデルが確立されている。
航空分野では、国内外の航空会社向けにフライトプラン作成支援や乱気流・悪天候回避情報を提供し、安全運航と燃費改善を支援している。海運分野では、航路最適化に加え、港湾停泊中の船舶を守るためのOPO(停泊船舶保全サービス)など、運航管理の高度化に踏み込んだサービスを展開している。
陸上インフラ分野では、道路・鉄道の速度規制判断や運行管理支援、除雪や保守作業の最適化など、現場判断を直接支援するサービスを提供している。防災分野では、河川防災、避難情報配信、自治体向けリアルタイム監視などを行い、大規模災害時でも情報供給が途切れない体制を構築している。
放送分野では、自社スタジオとグローバル気象予報センターを活用し、テレビ・BS・ケーブルテレビ・インターネット向けに気象番組やデータ放送を制作・配信している。国内テレビ局における気象情報提供のシェアは非常に高く、報道用ヘリコプターの運行管理システムなど、災害報道の中枢にも深く関与している点は他社にはない強みである。
個人向けでは、スマートフォンアプリや携帯電話向けのモバイルコンテンツサービスを展開しており、日本国内の有料お天気サービスとしては最大規模の会員基盤を持つ。ユーザー参加型の天気報告やライブ動画配信などを通じて収集される膨大なデータは、法人向け予測精度の向上にも活用されており、BtoCとBtoBが相互に価値を高め合う構造になっている。
さらに近年は、気候変動リスクへの対応が重要性を増しており、長期気候データや異常気象予測を活用した企業向けリスク管理、ESG・サステナビリティ対応支援といった分野にも力を入れている。農業分野では収穫計画や需給予測、電力・ガス分野では需要予測やエネルギー運用支援など、気象データを経営判断に組み込む用途が拡大している。
総合すると、ウェザーニューズは単なる天気予報会社ではなく、気象を社会インフラとして提供する情報サービス企業である。海運向け最適航路というニッチかつ高度な分野から出発し、現在では個人生活から産業・防災・エネルギーに至るまで幅広い領域を支えている。景気変動の影響を受けにくく、サブスクリプション型収益を軸にした安定性と、気候変動・防災需要という中長期テーマの両方を併せ持つ、極めて独自性の高い企業と位置づけられる。
ウェザーニューズ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 経常利益 | 純利益 | 一株益 | 一株配当 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.5 | 21,114 | 3,256 | 3,284 | 2,398 | 108.8 | 55 |
| 連24.5 | 22,242 | 3,270 | 3,341 | 2,437 | 110.4 | 60 |
| 連25.5 | 23,505 | 4,517 | 4,468 | 3,115 | 140.8 | 70 |
| 連26.5予 | 24,000 | 4,800 | 4,800 | 3,400 | 153.2 | 90 |
| 連27.5予 | 26,600 | 5,300 | 5,300 | 3,650 | 164.4 | 100〜110 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 年 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 2,384 | -254 | -1,100 |
| 2024 | 3,385 | -408 | -1,313 |
| 2025 | 4,427 | -269 | -1,436 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 15.4 | 13.0 | 11.4 | – | – |
| 2024 | 14.7 | 12.3 | 10.5 | – | – |
| 2025 | 19.2 | 14.4 | 12.0 |
高値平均 32.9 安値平均 20.6 |
3.82 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績規模を見る。24.5期の売上高は222億円、営業利益32億円、経常利益33億円、純利益24億円で、安定した高収益体制にある。25.5期は売上高235億円、営業利益45億円、経常利益44億円、純利益31億円と大きく伸びており、利益成長が明確に加速している。26.5期予想でも売上高240億円、営業利益48億円、経常利益48億円、純利益34億円と、成長はやや緩やかになるものの、利益水準はさらに積み上がる見通しである。
次に収益性と効率性を見る。営業利益率は2023年15.4%、2024年14.7%、2025年19.2%で推移しており、2025年にかけて大きく改善している。ROEは13.0%、12.3%、14.4%と一貫して2桁を維持し、ROAも11.4%、10.5%、12.0%と極めて高い水準である。これらの数値から、本業の収益力と資産・資本効率はいずれも非常に優秀であり、構造的に高収益なビジネスモデルであることが読み取れる。
評価指標を見ると、2025年の実績PERは高値平均32.9倍、安値平均20.6倍とレンジが広いものの、市場は同社を明確な成長・高付加価値企業として評価している。PBRは3.8倍で、資産価値から見れば割安ではないが、ROEが14%台まで上昇している点を踏まえると、一定の合理性はある水準といえる。
以上を総合すると、ウェザーニューズは売上規模こそ200億円台と中堅ながら、営業利益率約20%、ROE・ROAともに2桁という非常に高い収益性を持つ企業である。利益は年々積み上がっており、業績の安定性と成長性が同時に確認できる。一方でPER・PBRはすでに高水準で、株価は将来の成長や安定性をかなり織り込んでいる。
数値だけで判断するなら、ウェザーニューズは「事業内容・収益力は極めて優秀だが、評価面では安くはない銘柄」と位置づけられる。高い利益率と効率性を背景に、長期的な企業価値は堅調に伸びる可能性が高い一方、短期的には評価倍率の影響で株価の振れ幅が大きくなりやすい。したがって、割安株としてではなく、高品質・高収益企業を適正価格以上で保有する前提の中長期投資向きの銘柄という判断になる。
配当目的とかどうなの?
ウェザーニューズを配当目的という観点で見ると結論は「主目的としてはやや弱く、補助的には可」という評価になる。予想配当利回りは26.5期で2.42%、27.5期で2.69%と東証全体や高配当株と比べると中位水準にとどまる。一般に配当目的で重視される3.5%以上には届かず、配当そのものを最大のリターン源とする投資にはやや物足りない水準である。
一方で配当の質は良好である。営業利益率は15%から19%と高水準で、ROE・ROAはいずれも2桁を安定して維持している。営業キャッシュフローも年々増加しており、配当原資には十分な裏付けがある。無理な配当や一時的な還元ではなく、利益とキャッシュ創出力に基づいた持続性の高い配当といえる。
事業内容も配当の安定性を支えている。気象情報という社会インフラ性の高い分野を中核とし、法人向けのサブスクリプション収益が中心であるため景気変動の影響を受けにくい。急激な業績悪化や配当の大幅な減少が起こりにくい構造になっている点は配当投資としてプラス要因である。
ただし、同社は成長投資やサービス高度化を重視しており、高配当を最優先する企業ではない。配当利回りの上昇よりも、事業価値の積み上げと安定した増配を重視するスタンスが数字から読み取れる。総合すると、ウェザーニューズは高配当株ではないが安定した業績とキャッシュフローを背景に、着実で持続性の高い配当を期待できる銘柄である。配当を主目的に据える投資には向かないものの、成長性と安定配当を組み合わせた中長期投資には適した銘柄と評価できる。
今後の値動き予想!!(5年間)
ウェザーニューズの現在値は3,715円である。気象情報という社会インフラ性の高い分野を事業基盤とし、法人向けサブスクリプションを中心に安定した収益構造を持つ企業である。営業利益率は15〜20%、ROE・ROAはいずれも2桁と高水準で、利益の質は非常に高い。一方でPER・PBRは高めで、市場はすでに同社の高収益性と安定性を織り込んだ評価を与えている。この状況を踏まえ、今後5年間の株価について良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオを想定する。
良い場合のシナリオでは、気候変動・防災需要の高まりを背景に法人向け気象情報サービスの単価上昇と契約拡大が進む展開を想定する。海運・航空・インフラ分野に加え、エネルギー、自治体、防災関連での利用が拡大し営業利益率は20%前後を維持する。利益成長が続くことで市場評価も安定し、PERは30倍前後を許容される水準で推移する。この場合、株価は緩やかながら着実に切り上がり、5年後には4,800円〜5,800円程度まで上昇する余地があると考えられる。
中間のシナリオでは、既存事業は安定的に推移するものの、大きな成長加速は見られず売上・利益は年率数%程度の伸びにとどまる展開を想定する。営業利益率やROEは現在の高水準を維持するが、評価倍率の拡大は起こらずPERは20倍台後半から25倍前後に収れんする。この場合、株価は配当と利益成長に支えられつつも大きくは動かず、5年後の水準は3,800円〜4,500円前後になる可能性が高い。値動きは比較的穏やかで、中長期保有向きの展開となる。
悪い場合のシナリオでは、気象情報サービスの差別化が進まず、価格競争やコスト増により利益率が低下する展開を想定する。成長期待が後退すると市場評価は切り下がり、PERは20倍前後まで低下する可能性がある。この場合、株価は評価調整局面に入り5年後の水準は2,800円〜3,300円程度まで下落するリスクがある。ただし、サブスクリプション型収益と社会インフラ性の高い事業特性から業績が急激に崩れる可能性は低く、下値は比較的限定的と考えられる。
総合すると、ウェザーニューズは5年間の中長期で見れば、高い収益性と安定した事業基盤を背景に緩やかな成長を続ける可能性が高い銘柄である。良い場合には5,000円台後半、中間シナリオでは4,000円前後、悪い場合でも3,000円前後までのレンジで推移する可能性が高く、爆発的な値上がりよりも、安定した企業価値の積み上げを評価する投資に向いた銘柄と位置づけられる。
この記事の最終更新日:2025年12月29日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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