株価
スカラとは

スカラ株式会社である。スカラはSaaS/ASP型サービスを中心としたストック型ビジネスモデルを基盤に事業を展開する持株会社であり、DX事業、人材事業、TCG事業、インキュベーション事業といった複数の事業領域を束ねる企業グループとして運営されている。
中核となるDX事業では、企業向けASPサービスとしてサイト内検索、FAQシステム、IVR(自動音声応答)、コンタクトセンター関連サービス、ECサイト運営支援などを幅広く手掛けている。特にサイト内検索やFAQシステムは、企業のWebサイトやECサイトにおけるユーザー利便性向上や問い合わせ対応の効率化を目的として導入されるケースが多く、長期契約を前提とした月額課金モデルにより安定したストック収益を生み出している。これらのサービスは景気変動の影響を比較的受けにくく、解約率が低い点が事業の強みとなっている。
人材事業では、採用支援や人材関連サービスを通じて、企業の人材確保や組織課題の解決を支援している。単なる求人広告型のビジネスではなく、企業のDX推進や業務改革と連動した人材サービスを志向している点が特徴であり、DX事業とのシナジーを意識した展開が行われている。IT人材不足が続く環境下では、企業の人材ニーズに応える役割を担う一方、景気動向の影響を受けやすい側面も併せ持つ事業領域である。
TCG事業では、トレーディングカードの買取・販売を中心としたEC事業を展開している。個人向けのBtoCビジネスとして位置付けられ、カードゲーム市場やコレクター市場の拡大を背景に、二次流通ビジネスとしての成長機会を狙っている。価格変動や在庫管理といったリスクはあるものの、DXや人材とは異なる収益源として事業ポートフォリオの多様化に寄与している。
インキュベーション事業は、新規事業の立ち上げやスタートアップ支援を通じて、将来の成長ドライバーを育成することを目的とした事業である。短期的な収益貢献よりも中長期的な企業価値向上を重視する位置付けであり、既存事業に依存し過ぎない事業構造を作るための役割を担っている。
グループ会社としては、スカラコミュニケーションズ、スカラプレイス、スカラサービスなどを擁し、それぞれがDX、人材、サービス運営といった分野で機能分担を行っている。持株会社体制を採ることで、各事業会社の独立性を保ちつつ、グループ全体としての戦略や資源配分を柔軟に行える体制を整えている点が特徴である。
スカラグループは、DXと人材を中心とした事業ポートフォリオを通じて、企業の業務効率化や社会課題の解決に貢献することを掲げている。顧客企業やパートナーと協業しながら、単なるシステム提供にとどまらず、価値創造型のビジネスを共創していく姿勢を打ち出している点も特徴的である。
本社所在地は東京都渋谷区渋谷2丁目21番1号であり、IT・サービス企業が集積するエリアを拠点として事業を展開している。総じてスカラは、企業向けSaaSによる安定収益を基盤にしつつ、人材、TCG、インキュベーションといった異なる性格の事業を組み合わせることで、リスク分散と成長機会の両立を図る多角化型のサービス企業と位置付けられる。
スカラ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
税前利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 EPS (円) |
一株配当 DPS (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023.6 | 12,644 | 259 | 233 | -218 | -12.6 | 37 |
| 2024.6 | 10,714 | -2,155 | -2,166 | -2,887 | -166.5 | 37.5 |
| 2025.6 | 8,179 | 751 | 724 | 982 | 56.6 | 16.5 |
| 2026.6 予 | 8,800 | 630 | 590 | 410 | 23.6 | 17 |
| 2027.6 予 | 9,000 | 700 | 660 | 440 | 25.3 | 17~17.5 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.6 | 601 | -214 | -2,250 |
| 2024.6 | 251 | 161 | -1,348 |
| 2025.6 | 589 | 778 | -3,598 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.6 | 2.0% | -2.8% | -1.2% | ― | ― |
| 2024.6 | -20.2% | -66.6% | -22.8% | ― | ― |
| 2025.6 | 9.1% | 20.4% | 9.6% | ― | 1.47倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益水準を億円ベースで整理すると、2024年6月期は営業利益が-21億円、税前利益が-21億円、純利益が-28億円と、極めて大きな赤字である。これに対して2025年6月期は営業利益7億円、税前利益7億円、純利益9億円と急回復しており、2026年6月期予想では営業利益6億円、税前利益5億円、純利益4億円と、黒字は維持するものの利益水準はやや縮小する見通しとなっている。
収益性を見ると、営業利益率は2023年6月期2.0%、2024年6月期-20.2%、2025年6月期9.1%と、振れ幅が非常に大きい。2024年の大赤字から2025年に一気に高水準まで回復しており、利益構造が安定しているとは言い難い。単年度で見れば2025年は優秀だが、この水準が継続できるかどうかは不透明である。
資本効率の面では、ROEが2023年6月期-2.8%、2024年6月期-66.6%、2025年6月期20.4%、ROAが同期間で-1.2%、-22.8%、9.6%となっている。2025年はROE・ROAともに高水準であり、数字上は資本効率が大きく改善しているが、直前期の巨額赤字との落差が大きく、構造的な改善と断定するには材料が不足している。
バリュエーション面では、2025年は実績PERが算出不能であり、利益水準を前提とした評価がしづらい。一方、実績PBRは1.4倍台で、赤字を経た企業としては決して低い水準ではなく、市場はすでに一定の回復を織り込んでいる状態と考えられる。
これらを総合すると、スカラは2024年の大幅赤字から2025年にかけてV字回復を示しているものの、利益水準はまだ小さく、2026年予想では減益見通しである点が気掛かりである。営業利益率・ROE・ROAの変動が激しいことから、収益の安定性は十分とは言えない。
投資判断としては、短期的な回復期待での値動きを狙う余地はあるが、中長期で安心して保有できる段階にはまだない。営業利益率が数%台後半で安定し、ROEが10%前後で継続的に確保できることが確認できるまでは、位置付けとしては様子見から中立が妥当と判断される。
配当目的とかどうなの?
スカラの予想配当利回りは2026年6月期が4.35%、2027年6月期も4.35%とされている。水準だけを見ると日本株の中では明確に高配当ゾーンに入り、配当目的で関心を持たれやすい数字である。
一方で、配当の裏付けとなる利益水準を見ると注意が必要である。2024年6月期は営業利益-21億円、税前利益-21億円、純利益-28億円と大幅赤字であり直近では収益基盤が大きく揺らいだ実績がある。2025年6月期は営業利益7億円、税前利益7億円、純利益9億円と黒字に回復しているもののこれは前期の反動による回復色が強く、利益規模そのものはまだ小さい。2026年6月期予想では営業利益6億円、税前利益5億円、純利益4億円と減益見通しになっており、配当を安定的に増やせるほどの余力があるとは言い切れない。
収益性と資本効率の面でも営業利益率は2024年に-20.2%まで悪化した後、2025年に9.1%まで急回復しているが変動が極めて大きい。ROEも2024年は-66.6%、2025年は20.4%と振れ幅が大きく、安定した稼ぐ力が定着したとは判断しにくい。こうした数値からは配当が「安定収益から自然に出ている」というより、「方針として維持している」性格が強いと考えられる。
バリュエーション面では実績PERは算出不能で、PBRは1.4倍台である。高配当株としてよく見られるPBR0.5~0.8倍水準と比べると割安感は乏しく、配当利回りの高さだけで安全性が担保されているとは言いにくい。
以上を総合すると、スカラは配当利回り4%超という数字だけを見ると魅力的だが、その背景にある利益の安定性や資本効率には不安が残る。配当目的としての評価は、「高利回りだが持続性リスクがある銘柄」という位置付けになる。短期的に高配当を享受する目的であれば検討余地はあるものの長期で安心して配当を積み上げていくタイプの銘柄としては優先度は高くなく、業績の安定と利益水準の定着を確認してから判断するのが無難と考えられる。
今後の値動き予想!!(5年間)
スカラの現在値は390円である。DX領域を中核に企業向けSaaS/ASPサービスを展開し、サイト内検索、FAQ、IVRなどのストック型ビジネスを基盤とする一方で人材事業やTCG(トレーディングカード)ECといった変動性の高い事業も併せ持つ点が同社の特徴である。安定収益を生むDX事業と収益の振れ幅が大きい周辺事業が混在するポートフォリオ構造が業績のブレを生みやすい反面、回復局面では利益が跳ねやすい性格も持っている。
2024年に大幅赤字を経験した後、2025年にV字回復を示しており現在の株価は「回復初期段階」をある程度織り込んだ水準にある。こうした前提を踏まえ、現在の株価から今後5年間の動きを良い場合、中間、悪い場合の3つのシナリオで考えていく。
良い場合のシナリオでは、DX事業を中心としたストック型収益が安定的に積み上がり人材事業やTCG事業が利益面で足を引っ張らない状態が定着する展開を想定する。営業利益率は2025年に示した9%台が一過性に終わらず、5~7%程度で安定しROEも10%前後を継続的に確保できるようになる。この場合、市場はスカラを「赤字からの一時的回復企業」ではなく、「安定収益を持つ中小型DX企業」として再評価しやすくなる。PBRは1倍前後が許容され、配当利回り4%超という水準も下支えとして機能する。利益成長と評価の見直しが同時に進めば、5年後の株価は700円~1,000円程度まで上昇する余地があり、現在値から見ると株価2倍前後のリターンも現実的なシナリオとなる。
中間のシナリオでは、DX事業は安定するものの成長率は高まらず、人材事業やTCG事業の収益変動が引き続き業績のブレ要因として残る状況を想定する。営業利益率は3~5%程度、ROEも5~10%未満にとどまり、業績は黒字を維持するが明確な成長企業とは見なされにくい。この場合、市場評価は配当利回りを重視した落ち着いたものとなり、PBRは0.8~1.0倍前後で推移する可能性が高い。株価は300円~500円程度のレンジ内で上下を繰り返し、5年間を通して見ると配当を受け取りながら横ばいから緩やかな上昇にとどまる展開が想定される。
悪い場合のシナリオでは、DX事業の成長が鈍化する一方で人材事業やTCG事業の収益悪化が再び表面化し、利益の安定性が損なわれる展開を想定する。営業利益率は2%前後まで低下し、ROEも低水準にとどまることで市場は「収益が安定しない企業」との評価を強める。この場合、PBRは0.7倍を下回りやすくなり、配当利回りの高さも将来不安を完全には打ち消せなくなる。株価は200円~300円台まで下押しされ、配当維持に対する警戒感が強まる局面も想定される。
総合すると、スカラは「業績の振れ幅が大きい回復初期型の中小型株」であり、5年間の株価はDX事業の安定度と周辺事業の収益ブレをどこまで抑えられるかに大きく左右される。良い場合は700円~1,000円、中間では300円~500円、悪い場合は200円台までの下振れもあり得るという三分岐の構図になる。配当利回りは4%超と高くインカム面の魅力はあるものの投資リターンの本質は「配当+業績安定化による評価改善」が同時に進むかどうかにかかっており、安定高配当株というよりは「回復を見極める中期向け銘柄」と位置付けられる。
この記事の最終更新日:2025年12月29日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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