株価
ポーラ・オルビスホールディングスとは

ポーラ・オルビスホールディングスは国内化粧品メーカーの中で売上高第4位に位置する大手化粧品グループであり、高級化粧品のポーラと通信販売を主軸とするオルビスを二大中核ブランドとして事業を展開している。価格帯、販売チャネル、顧客層の異なるブランドを併せ持つ点が大きな特徴で、グループ全体としては安定性と成長性の両立を志向した経営が行われている。
グループの源流であるポーラは1929年に静岡市で創業し、1940年にポーラ化成工業として法人化された。戦後の1946年には化粧品販売事業を分離し株式会社ポーラ化粧品本舗を設立、女性の肌を深く研究する姿勢と訪問販売という独自の販売手法によって事業を拡大してきた。特に、一人ひとりの肌状態に合わせて処方を調整するオーダーメード化粧品シリーズであるポーラ・アペックスは研究開発力とカウンセリング販売を象徴する存在として知られている。
2006年には純粋持株会社であるポーラ・オルビスホールディングスを設立し、2007年から持株会社制へ移行した。これにより、ブランドごとの独立性を高めながら研究開発、資本配分、海外展開などの戦略をグループ全体で統括する体制を整えた。現在は持株会社が全体戦略を担い、各事業会社がそれぞれのブランド特性に応じた経営を行う形となっている。
ポーラ事業は高価格帯スキンケアを中心とするブランドで従来の訪問販売に加え、百貨店やファッションビル内のカウンター展開、エステティックサロンを併設した小型店舗であるPOLA THE BEAUTYの出店など、対面販売チャネルの多様化を進めている。美容部員によるカウンセリングと体験価値を重視した販売スタイルは価格競争に陥りにくい強みとなっている。
一方、オルビス事業は1985年に通販部門として設立され、無添加・高機能を特徴とした化粧品を通信販売やECで提供している。定期購入モデルによる安定したリピート需要を基盤としており、ポーラとは異なる顧客層を取り込むことでグループ全体の収益構造を補完している。訪問販売中心のポーラと、非対面・デジタル中心のオルビスという対照的なビジネスモデルを併せ持つ点は、ポーラ・オルビスグループの大きな特徴である。
育成ブランドとしてはTHREEなども展開しており感性やライフスタイル提案を重視したブランドづくりを通じて、新たな顧客層の開拓を進めている。過去にはコンビニやスーパー向けの日用品事業や食品事業にも取り組んでいたが、現在は化粧品事業への集中を進めブランドの選択と集中を図っている。
また、文化・芸術分野への取り組みも同グループの特徴であり、ポーラ文化研究所やポーラ美術振興財団を通じてポーラ美術館の運営などを行っている。こうした活動は直接的な収益事業ではないものの、企業文化の形成やブランド価値の向上という観点で重要な役割を果たしている。
総合すると、ポーラ・オルビスホールディングスは高級対面販売のポーラ、通販・EC主体のオルビスという異なるビジネスモデルを両輪とし、研究開発力とブランドポートフォリオを軸に成長してきた国内化粧品大手である。市場環境や消費行動の変化に対応しながら販売チャネルを多様化し、安定性と変化対応力を併せ持つグループ経営を特徴としている。
ポーラ・オルビスホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 EPS(円) |
一株当り配当 DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連22.12 | 166,307 | 12,581 | 14,928 | 11,446 | 51.7 | 52 |
| 連23.12 | 173,304 | 16,080 | 18,469 | 9,665 | 43.7 | 52 |
| 連24.12 | 170,359 | 13,810 | 16,083 | 9,286 | 42.0 | 52 |
| 連25.12予 | 171,500 | 14,500 | 13,700 | 8,500 | 38.4 | 52 |
| 連26.12予 | 178,000 | 15,200 | 15,400 | 8,900 | 40.2 | 52 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022.12 | 15,548 | -12,370 | -12,668 |
| 2023.12 | 14,423 | -18,734 | -12,375 |
| 2024.12 | 26,185 | -12,104 | -13,376 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 (%) |
ROE (%) |
ROA (%) |
PER (倍) |
PBR (倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.12 | 9.2 | 5.7 | 4.8 | – | – |
| 2024.12 | 8.1 | 5.6 | 4.6 | 42.2(高) 30.8(安) |
1.78 |
| 2025予 | 8.4 | 5.1 | 4.2 | 35.09 | – |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績規模を見ると、売上高は2023年12月期で1,733億円、2024年12月期で1,703億円、2025年12月期予想で1,715億円、2026年12月期予想で1,780億円と、全体としては横ばいから緩やかな回復基調にある。国内化粧品大手として一定の事業規模と安定感は維持しており、急激に縮小しているわけではないが、明確な成長軌道に入っているとも言いにくい。
利益面を見ると、営業利益は2023年の160億円から2024年は138億円へと減少し、2025年予想では145億円、2026年予想で152億円と回復基調ではあるものの、2023年の水準を大きく上回るところまでは至っていない。経常利益、純利益も同様に、減少後に持ち直す流れではあるが、力強い増益という印象は薄い。売上規模に対して利益の伸びが鈍く、収益力にやや課題を残す構造が数字から見て取れる。
収益性を示す営業利益率は、2023年の9.2%から2024年に8.1%へ低下し、2025年予想でも8.4%と一桁後半にとどまっている。化粧品業界として極端に低いわけではないが、高級ブランドのポーラと通販のオルビスという高付加価値モデルを持つ企業としては、突出した水準とは言えない。
資本効率の面では、ROEは2023年5.7%、2024年5.6%、2025年予想5.1%と5%前後で推移しており、ROAも4%台前半から後半にとどまっている。ブランド力や研究開発基盤を考えると、株主資本や総資産を十分に活用できているとは言い難く、効率性の面では物足りなさが残る。
一方で評価面を見ると、2024年実績PERは安値平均でも30.8倍、高値平均では42.2倍とかなり高い水準で推移していた。2025年予想PERも35.0倍と、利益水準に対して株価は高い期待を織り込んでいる状態にある。PBRは1.78倍と極端な割高感はないものの、ROEが5%前後にとどまる企業としては、割安と評価できる水準ではない。
これらを総合すると、ポーラ・オルビスホールディングスは、売上規模とブランドポートフォリオの安定感はあるものの、営業利益率、ROE、ROAはいずれも低位で、収益性と資本効率の改善が課題として残っている企業である。その一方で、株価評価はPER30倍超と高く、将来の成長やブランド価値を先取りする形で評価されている。
結論として、提示された数値だけで判断する限り、業績は安定しているが成長力や収益効率は高いとは言えず、にもかかわらず株価は高い期待を織り込んでいる状態にある。そのため、積極的に割安と判断して買いに行く局面ではなく、営業利益率やROEが明確に改善する兆しが見えるまでは慎重に構えるべき銘柄、もしくはブランド価値の中長期的な回復を信じて保有する前提の銘柄、という投資判断になる。
配当目的とかどうなの?
ポーラ・オルビスホールディングスを配当目的という観点で見ると結論としては「配当目的には比較的向いているが、成長や増配を期待する銘柄ではない」という評価になる。予想配当利回りは2025年12月期、2026年12月期ともに3.99%とされており、日本株全体で見ても明確に高めの水準にある。高配当株と呼べる水準に近く、配当収入を重視する投資家にとっては十分に魅力のある数字である。
業績とのバランスを見ると売上高は1,700億円前後で安定しており、営業利益も140〜150億円規模を維持している。営業利益率は8%台、ROEは5%前後、ROAは4%台と収益性や資本効率は高いとは言えないものの、極端に悪化しているわけでもない。営業キャッシュフローも安定して黒字を確保しており、配当の原資という点では一定の安心感がある。
一方で注意点もある。ROEが5%前後にとどまる企業としては配当性向は相対的に高めになりやすく、今後の大幅な増配余地は小さいと考えられる。実際、配当は52円で固定されており、将来も「増配を積極的に狙う銘柄」というより「現在の高めの配当水準を維持する銘柄」として捉えるのが現実的である。
また、評価面ではPERが30倍超と高く、株価は成長期待やブランド価値を強く織り込んだ水準にある。そのため、配当利回りが高く見えても株価下落による含み損リスクが小さいわけではない。配当狙いで保有する場合でも、株価変動によるトータルリターンのブレは意識しておく必要がある。
総合すると、ポーラ・オルビスホールディングスは利回り約4%という点から見て配当目的には十分に適しており、安定したインカムを得たい投資家の候補にはなり得る。一方で、業績成長や増配によるリターン拡大を期待する銘柄ではなく、あくまで「配当維持型」の銘柄として位置付けるのが妥当である。
今後の値動き予想!!(5年間)
ポーラ・オルビスホールディングスの現在値は1,302.0円である。同社は国内化粧品メーカー売上高4位の規模を持ち、高級対面販売のポーラと通販・EC主体のオルビスという異なるビジネスモデルを両輪に事業を展開している。直近数年の数字を見る限り売上規模は1,700億円前後で安定している一方、営業利益率は8%台、ROEは5%前後と収益性や資本効率は高いとは言えない。ただし、営業キャッシュフローは安定しており、配当利回りは約4%と高水準で株価は「成長期待」よりも「配当とブランド安定性」を重視した評価に近い水準にある。こうした前提を踏まえ、現在値1,302円を起点に今後5年間の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで整理する。
良い場合のシナリオでは、国内外の化粧品市場が想定以上に底堅く推移し、特に高付加価値スキンケアへの需要が回復・拡大する展開を想定する。ポーラ事業では百貨店やPOLA THE BEAUTYといった対面チャネルが安定的に機能し、単価の高い主力商品が再評価される。オルビス事業でもECの効率化や定期購入の拡大によって収益性が改善し、グループ全体の営業利益率が9%台前半まで戻る可能性がある。この場合、ROEやROAも緩やかに改善し、市場は「低成長だが安定した高配当企業」として評価を引き上げる。PERがやや切り下がりつつも利益の回復で株価が上昇し、5年後の株価は2,000円〜2,400円程度まで上昇する可能性がある。このシナリオでは、配当を受け取りながら株価上昇も狙える局面となる。
中間のシナリオでは、化粧品市場は成熟したまま大きな成長はなく、同社の売上・利益も横ばいから微増にとどまる展開を想定する。営業利益率は8%台前半で安定し、ROE・ROAも5%前後で推移する。配当52円は維持され、利回りは3%台後半から4%前後を確保するが増配余地は乏しい。この場合、市場評価は落ち着き、PERは20倍台後半から30倍前後に収れんしやすい。株価は現在値を中心に上下し、5年間では1,100円〜1,500円程度のレンジで推移する可能性が高い。値上がり益は限定的だが、配当収入を重視する投資家にとっては比較的安心感のあるシナリオである。
悪い場合のシナリオでは、国内消費の停滞や競争激化により、高価格帯のポーラブランドが伸び悩みオルビス事業でも顧客獲得コストの上昇などで利益が圧迫される展開を想定する。営業利益率は7%台まで低下し、ROE・ROAもさらに低下する可能性がある。この場合、市場は成長期待を大きく後退させ、PERは20倍を下回る水準まで切り下がる。配当は維持される可能性が高いものの株価下落の影響が大きく、5年後の株価は800円〜1,000円程度まで下押しされるリスクがある。配当利回りは上昇するが、トータルリターンでは厳しい結果になりやすい。
総合すると、現在値1,302円はポーラ・オルビスホールディングスの「安定した事業基盤と高めの配当」を評価した中間シナリオ寄りの水準にある。大きな成長が実現すれば2,000円台への上振れ余地はあるものの、構造的に高成長は期待しにくく、株価上昇のスピードは緩やかになりやすい。一方で、配当が下支えとなりやすく、急落リスクは限定的と考えられる。今後5年間の値動きは、利益率の改善度合いと、市場が許容する評価倍率がどこに落ち着くかが最大の分岐点となる銘柄である。
この記事の最終更新日:2025年12月30日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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