株価
コニシとは

コニシは「ボンド」ブランドで広く知られる国内最大手クラスの接着剤メーカーであり、家庭用から工業用、建築用まで幅広い接着剤を手がける老舗企業である。現在は接着剤メーカーとしての印象が強いが、もともとは1870年に製薬業を営む「小西屋」として創業しており、創業初期には医薬品に加えて洋酒や食品、さらにはビール製造にも関わるなど、非常に多角的な事業を行っていた歴史を持つ。その後、工業薬品やアルコールの卸売を中心とする事業へと軸足を移し、1925年に法人化、1976年に現在の社名であるコニシに改称している。
1952年に合成接着剤「ボンド」を発売したことが大きな転機となり、日本を代表する接着剤メーカーへと成長した。特に「木工用ボンド」は同系統の接着剤の代名詞的存在となっており、「ボンドのコニシ」というブランドイメージを強固なものにしている。一方で、木工用ボンドの知名度が突出しすぎたことから、同社自身が「木工用ボンドだけ有名で困っている」と表現するほど、実際には多種多様な製品ラインを持っている。
事業の中核となるボンド事業では、家庭用接着剤だけでなく、工業用接着剤、建築用接着剤、シーリング材、接着テープ、塗料、ワックス類などを幅広く展開している。特に住宅・建築分野との結びつきが強く、内装・外装工事向けの接着剤やシーリング材に加え、耐震補強や補修・補強工法といった技術を持つ点が大きな特徴である。インフラの老朽化対策や耐震需要の高まりは、同社にとって中長期的な追い風になりやすい分野といえる。
また、コニシはメーカー機能だけでなく、化成品商事という商社的な機能も併せ持っている。工業薬品や合成樹脂、電子材料などを扱う化成品事業は、接着剤事業とは異なる収益源となっており、景気変動に対する耐性を高めている。さらに、東亞合成との業務提携による「ボンド・アロンアルフア」の展開など、外部企業との連携を活かした商品戦略も特徴的である。
拠点面では大阪本社を中心に、関東支社や名古屋支店など全国に事業所を構え、住宅・建築市場に密着した営業体制を築いている。みどり会会員で三和グループに属するなど、長年にわたる企業ネットワークの中で事業を展開している点も、老舗企業らしい安定感につながっている。
総合すると、コニシは単なる家庭用接着剤メーカーではなく、強力なブランド力、住宅・建築分野に根ざした技術力、化成品商事という複数の収益源を併せ持つ企業である。派手な成長は見込みにくいものの、インフラ補修や住宅関連需要を背景に、安定した事業基盤を長期的に維持しやすい企業と位置付けられる。
コニシ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 EPS(円) |
一株当り配当 DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 133,736 | 7,285 | 7,428 | 4,934 | 68.8 | 20 |
| 連22.3 | 113,671 | 7,298 | 7,822 | 5,135 | 72.1 | 22 |
| 連23.3 | 123,339 | 7,421 | 7,927 | 10,032 | 141.0 | 24.5 |
| 連24.3 | 132,969 | 10,286 | 10,806 | 7,344 | 108.9 | 33 |
| 連25.3 | 135,876 | 10,649 | 11,194 | 8,084 | 121.0 | 38 |
| 連26.3予 | 136,300 | 10,200 | 10,800 | 7,560 | 118.7 | 38 |
| 連27.3予 | 142,400 | 11,000 | 11,600 | 8,120 | 127.5 | 38 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 4,606 | 3,549 | -2,476 |
| 2024.3 | 8,139 | -5,225 | -8,603 |
| 2025.3 | 7,174 | -7,310 | -5,621 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 (%) |
ROE (%) |
ROA (%) |
PER (倍) |
PBR (倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 6.0 | 13.0 | 7.5 | – | – |
| 2024.3 | 7.7 | 9.2 | 5.2 | – | – |
| 2025.3 | 7.8 | 9.3 | 5.9 | 14.1(高) 8.0(安) |
0.99 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず規模感を見ると、2024年3月期の売上高は約1,329億円、営業利益は約102億円、経常利益は約108億円、純利益は約73億円である。営業利益率は7.7%前後の水準にあり、接着剤・建築資材系メーカーとしては比較的しっかりした収益力を持っている。2025年3月期は売上高約1,358億円、営業利益約106億円、経常利益約111億円、純利益約80億円と増収増益で、営業利益率は7.8%程度まで改善している。2026年3月期予想では売上高約1,363億円、営業利益約102億円、経常利益約108億円、純利益約75億円とやや調整するものの、高水準を維持する見通しとなっている。
収益性を見ると、営業利益率は2023年の6.0%から2024年7.7%、2025年7.8%と明確に改善しており、事業構造の安定性と価格転嫁・高付加価値分野の寄与が数字に表れている。住宅・建築分野やインフラ補修向けの需要を背景に、極端なブレが出にくい点は評価できる。
資本効率の面では、ROEは2023年13.0%と高水準だった後、2024年9.2%、2025年9.3%とやや低下しているものの、依然として9%台を維持している。ROAも5〜6%台で推移しており、製造業としては悪くない水準である。派手さはないが、着実に稼げている企業という印象が強い。
評価面を見ると、2025年の実績PERは8.0倍〜14.1倍とレンジが低く、PBRも0.9倍台と1倍前後にとどまっている。営業利益率7%台、ROE9%台という実力に対して、株価は割高感がなく、むしろ慎重に評価されている水準といえる。成長期待が過度に織り込まれていない分、下値の堅さが意識されやすい。
総合すると、コニシは売上規模が大きく、営業利益率・ROEともに安定しており、建築・住宅・インフラ関連という事業特性から中長期的な需要も見込みやすい。一方で、急成長する企業ではなく、業績は緩やかな増減にとどまる可能性が高い。
結論として、上記数値だけで判断する限り、コニシは高成長株ではないが、収益力と財務の安定性、割安感のある評価水準を併せ持つ銘柄である。大きな値上がりを狙うよりも、安定した利益と配当を前提に、中長期でじっくり保有する投資に向いた企業という投資判断になる。
配当目的とかどうなの?
コニシを配当目的で見ると、結論としては「高配当株ではないが、安定配当を狙うには十分に現実的な銘柄」という評価になる。予想配当利回りは2026年3月期、2027年3月期ともに2.85%と、日本株全体の平均とほぼ同水準である。4〜5%を狙うような高配当投資には物足りないが、極端に低いわけでもなく、安定志向のインカム投資としては許容範囲に入る水準といえる。
業績とのバランスを見ると、営業利益は年間100億円前後を安定して確保しており、営業利益率も7%台後半と製造業としては堅実である。ROEも9%台を維持しており、本業の稼ぐ力は十分にある。そのため、配当原資は本業の利益で無理なく賄えており、配当の持続性という点では安心感がある。
キャッシュフロー面でも、営業CFは安定してプラスで、設備投資や成長投資を行いながらも、財務CFはマイナスで推移している。これは借入返済や配当支払いを着実に行っていることを示しており、配当を無理に積み増しているわけではない堅実な資金運用である。減配リスクは相対的に低い。
一方で、今後の配当について急激な増配が期待できるかというと、その可能性は高くない。成長率が緩やかで、事業も成熟しているため、配当利回りは今後も2%台後半から3%前後で安定する可能性が高い。株価が大きく上昇しない限り、利回りが跳ね上がる展開も考えにくい。
総合すると、コニシは「高配当を狙う銘柄」ではなく、「安定した利益と配当を長く受け取りたい投資家向け」の銘柄である。配当利回り2.85%という水準を受け入れられ、ディフェンシブ性と割安感を重視するのであれば、配当目的としても十分に検討余地のある企業といえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
コニシの現在値は1,330.0円である。同社は住宅・建築分野に強い接着剤のトップメーカーとして、「ボンド」ブランドを中心に安定した売上・利益を確保している。営業利益率は7%台前後、ROE・ROAも堅実で、評価面ではPERが8〜14倍、PBRは約1倍程度と過度な割高感はなく、配当利回りは約2.85%と平均的な水準にある。この前提を踏まえ、現在値1,330円を起点にした今後5年間の株価の値動き予想(良い場合・中間・悪い場合)を整理する。
良い場合のシナリオでは、住宅・建築向け需要が堅調に続き、耐震補強やインフラ補修といった長期的なテーマが追い風となる。主力の接着剤・シーリング材だけでなく、化成品商事や高付加価値製品が寄与し、売上・利益ともに計画を上回る伸びを示す展開を想定する。この場合、営業利益率やROEが再び上向き、業績改善が株価に反映されやすくなる。PERが過去平均レンジまで上昇し、評価倍率の改善を伴う上昇が期待できる。5年後の株価は1,800円〜2,200円程度まで上昇する可能性がある。安定配当に加え、業績改善と評価倍率の上昇が株価を押し上げる好シナリオである。
中間のシナリオでは、住宅市場や建築関連需要は概ね横ばいで推移するものの、大きな落ち込みもない展開となる。主力製品は堅調だが、利益率や資本効率の改善は限定的で、営業利益は100億円台を維持するものの、大幅な拡大には至らない。この場合、PERは市場全体の動向に従い、8〜10倍程度で推移しやすく、株価は1,200円〜1,500円程度のレンジで推移しやすい。配当利回り2.8%前後を維持できるため、インカムゲインを主体とした投資家には安心感のある動きとなる。
悪い場合のシナリオでは、建築関連需要の低迷やコスト増が利益を圧迫する展開を想定する。営業利益率の低下が続き、純利益も鈍化、市場評価が低下することでPERが再び8倍以下へ沈む可能性がある。また、競合環境や原材料価格の上昇が収益を削る状況も考えられる。この場合、株価は1,000円〜1,150円程度まで下落するリスクがあり、配当利回りは相対的に上昇しても、株価下落がトータルリターンを圧迫する可能性がある。
総合すると現在値1,330円はコニシの堅実な事業基盤とディフェンシブ性をある程度織り込んだ水準にある。良い場合はPER改善と業績拡大を背景に2,000円前後までの上昇余地があり中間シナリオでは現状水準近辺でのレンジ推移、悪い場合では1,000円台前半への下押しリスクが意識される。今後5年間の値動きは住宅・建築市場の動向と収益率の改善度合い、そして市場評価の変化が最大の分岐点となる銘柄である。
この記事の最終更新日:2025年12月30日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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