株価
黒崎播磨とは

黒崎播磨は、総合耐火物の大手メーカーであり、耐火れんがや不定形耐火物といった消耗品を主力とする、日本国内有数の耐火物企業である。本社は福岡県北九州市八幡西区に置き、1918年創業の長い歴史を持つ。東京証券取引所プライム市場および福岡証券取引所に上場しており、JPX日経中小型株指数の構成銘柄の一つでもある。日本製鉄グループに属し、同社との関係が事業基盤の中核となっている。
黒崎播磨の主力事業は耐火物事業で、高炉、転炉、電炉、加熱炉などで使用される耐火れんが、不定形耐火物、各種機能性耐火物を製造・販売している。耐火物は高温設備では不可欠な消耗材であり、設備投資の有無に関わらず操業量に応じた需要が発生する点が特徴である。このため、鉄鋼業の操業が継続する限り一定の需要が見込め、事業の安定性を支えている。特に日本製鉄向けの比率が高く、同社製鉄所構内に多数の工場を構えるなど、極めて密接な関係を築いている。
国内では、北九州の本社・八幡工場をはじめ、鹿島、千葉、木更津、名古屋、赤穂、備前、高砂など、全国の主要製鉄拠点周辺に工場を展開している。これにより、顧客の操業現場に近い場所で迅速な供給や施工、補修対応が可能となっており、現場密着型の事業体制が同社の大きな強みとなっている。
事業は単なる耐火物の製造販売にとどまらず、築炉工事、補修、操業改善提案まで含めたエンジニアリングサービスを一体で提供している。これにより顧客との取引関係は長期化しやすく、価格競争に陥りにくい構造が形成されている。また、耐火物の長寿命化、省エネルギー化、CO2排出削減に貢献する高機能製品の開発にも注力している。
近年は海外事業の拡大を加速させており、アジアを中心に北米や欧州などでも事業展開を進めている。国内鉄鋼需要が成熟する中で、海外の鉄鋼生産やインフラ需要を取り込むことで、成長機会の確保と地域分散によるリスク低減を図っている。耐火物という成熟分野にありながらも、海外比率の引き上げによって中長期的な成長余地を模索している段階にある。
資本関係の面では、日本製鉄が2026年2月からTOBを実施する予定とされており、グループ内での位置づけがさらに強まる局面にある。これにより、経営の安定性や事業基盤の強化が期待される一方、上場企業としての独立性は薄れる可能性がある。
全体として黒崎播磨は、耐火物という消耗品ビジネスを軸に、安定需要と現場密着型のサービスを強みとする企業であり、成長性よりも安定性を重視した事業モデルを持つ。一方で、海外展開の拡大や日本製鉄によるTOBといった動きにより、今後は事業と資本の両面で大きな転換点を迎える可能性のある耐火物メーカーと位置づけられる。
黒崎播磨 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 (円) |
一株配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3* | 113,661 | 4,949 | 6,361 | 4,334 | 128.7 | 37.5 |
| 連22.3* | 133,778 | 7,566 | 8,679 | 5,490 | 163.0 | 50 |
| 連23.3* | 165,202 | 11,173 | 12,083 | 8,282 | 245.9 | 72.5 |
| 連24.3* | 177,029 | 14,692 | 16,389 | 12,416 | 368.6 | 100 |
| 連25.3 | 177,921 | 14,082 | 15,316 | 12,535 | 372.2 | 105 |
| 連26.3予 | 180,000 | 15,000 | 15,000 | 15,500 | 460.3 | 0 |
| 連27.3予 | 186,000 | 16,000 | 16,000 | 10,600 | 314.8 | 0 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | 1,001 | -4,514 | 2,863 |
| 2024 | 13,724 | -3,589 | -6,237 |
| 2025 | 3,144 | -4,331 | 986 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER 高値平均/安値平均 |
PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 6.7% | 11.2% | 5.0% | – | – |
| 2024 | 8.2% | 14.2% | 6.9% | – | – |
| 2025 | 7.9% | 13.1% | 6.7% | 9.0倍/4.3倍 | 1.37倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず売上高は、24.3期で約1,770億円、25.3期で約1,779億円、26.3期予で約1,800億円と、緩やかながら増収基調にある。耐火物という成熟産業に属する中では、操業量の回復と海外展開を背景に、安定した事業規模を維持しているといえる。
営業利益は24.3期で約146億円、25.3期で約140億円とやや減少したが、26.3期予では約150億円と再び増益が見込まれている。営業利益率は2023~2025で6.7%、8.2%、7.9%と7~8%台で推移しており、耐火物メーカーとしては標準からやや良好な水準である。大きな改善トレンドではないが、収益構造は比較的安定している。
経常利益は24.3期で約163億円、25.3期で約153億円、26.3期予で約150億円と、横ばいからやや調整する水準にある。一方、純利益は24.3期で約124億円、25.3期で約125億円と安定しており、26.3期予では約155億円と大きな増益が見込まれている。利益水準は高く、事業基盤の強さは維持されている。
資本効率を見ると、ROEは11.2%、14.2%、13.1%と、耐火物という装置・設備型産業としては比較的高い水準を維持している。ROAも5.0%、6.9%、6.7%と改善傾向にあり、資産を使った収益力は安定している。ただし、突出して高いわけではなく、景気や操業度の影響を受けやすい性格は残る。
一方でバリュエーションを見ると、2025年の実績PERは高値平均9.0倍、安値平均4.3倍と低水準で、PBRも1.3倍程度にとどまっている。ROEが13%前後あることを踏まえると、評価は全体として控えめであり、市場は成長性よりも成熟産業としての安定性を重視していることが分かる。
以上を踏まえた投資判断として、黒崎播磨は高成長を期待する銘柄ではないが、営業利益率7~8%、ROE13%前後という水準から見て、事業の収益性と安定性は一定水準にある。一方でPER5~9倍、PBR1.3倍前後という評価は慎重であり、業績が大きく崩れない前提では下値余地は限定的と考えられる。
結論としては、黒崎播磨は派手な成長は見込めないものの、TOBを控えた状況や安定した利益水準を前提に、評価面では割高感のない銘柄である。投資判断としては、成長株ではなく、事業の安定性と評価の低さを重視する中長期目線で検討されるタイプの銘柄と位置づけられる。
配当目的とかどうなの?
黒崎播磨を配当目的という観点で見ると、結論としては配当目的には向かない銘柄になる。まず予想配当利回りは、連26.3・連27.3ともに0.00%とされており、少なくとも今後数年は配当を受け取る前提での投資は成立しない。インカム目的で一般的に意識される2〜3%水準とは完全に異なり、配当株として見る余地はない。
業績面を見ると、営業利益は年140〜150億円規模、純利益も100億円超と、利益を出せない会社ではない。それにもかかわらず配当がゼロ予想となっている点は、業績悪化ではなく資本政策上の判断によるものと考えるのが自然である。すでに日本製鉄によるTOBが予定されており、経営の重点は株主還元ではなく、グループ内での資本整理や経営統合に置かれている局面にある。
キャッシュフローを見ても、営業CFは年によって振れが大きく、投資CFは安定してマイナスで推移している。フリーCFは潤沢とは言えず、もともと安定配当を積み上げるタイプの企業ではない。そこにTOB前提の経営判断が重なり、配当は事実上停止されている状態といえる。
また、PERやPBRが低めに見えるとしても、配当がない以上、配当利回りによる下値の支えは期待できない。株価の評価軸は配当ではなく、TOB条件や統合後の扱いといった特殊要因に完全に移っている。以上を踏まえると、黒崎播磨は配当を受け取りながら長期保有する銘柄ではなく、インカム重視の投資対象からは外れる。現在の株価は配当ではなく資本再編を前提とした局面にあり、配当目的という観点では対象外と判断するのが妥当である。
今後の値動き予想!!(5年間)
黒崎播磨について、現在値4,160円を起点に、今後5年間の株価の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで整理する。前提として、黒崎播磨は国内大手の耐火物メーカーであり、営業利益率7〜8%、ROE13%前後という堅実な収益性を持つ一方、PERは4〜9倍、PBRは約1.4倍と市場評価は控えめである。配当は予想でゼロとなっており、株価評価は事業の成熟性と特殊な資本政策(日本製鉄によるTOBを含む)を意識したものになっている。
良い場合のシナリオでは、鉄鋼業や非鉄金属、セメント、ガラスといった耐火物需要の主力市場が国内外で堅調に推移し、特に新興国での設備投資が拡大する。また海外事業の拡大が計画どおり進み、売上と利益の底上げにつながる。耐火物の高機能製品や省エネ・環境対応製品へのシフトが進み、収益性も改善する。この場合、市場評価は慎重さを多少緩めてPERが7〜9倍程度まで広がる可能性があり、株価は5,000円から5,500円前後まで上昇する余地がある。配当がない状況でも、事業基盤の堅牢性と海外展開への期待が評価され、値上がり益を中心としたリターンが期待できる展開となる。
中間のシナリオでは、耐火物の需要はおおむね横ばいで推移し、国内鉄鋼業の操業度合いも大きな変動はない。売上と利益は緩やかな増減にとどまり、営業利益率は7〜8%台で安定する。この場合、市場評価は引き続き慎重なままでPERは5〜7倍、PBRは1〜1.5倍の範囲に収まる。株価は3,800円〜4,800円程度のレンジで推移し、配当がないため評価改善は主にPERの動きに依存する。値上がり益は限定的だが、安定した収益基盤が下支えとなる展開になる。
悪い場合のシナリオでは、世界的な景気後退や鉄鋼・非鉄の設備投資縮小が長期化し、耐火物需要が大幅に減少する。売上・利益ともに鈍化し、営業利益率やROEが低下する局面を迎える。この場合、市場は慎重さを強めてPERを4倍前後、PBRを1倍割れにまで切り下げる可能性がある。株価は3,000円〜3,500円程度まで調整するリスクがあり、配当がないため下値余地が評価倍率の低下によって拡大しやすい。ただし、事業基盤そのものは比較的強固であるため、長期にわたる急落トレンドには入りにくい。
総合すると、黒崎播磨の今後5年間の株価は、良い場合で5,000円〜5,500円程度、中間では3,800円〜4,800円程度、悪い場合でも3,000円〜3,500円程度というレンジ感が想定される。現在値4,160円は、事業基盤の安定性と控えめな市場評価を織り込んだ水準であり、配当ではなく事業評価と特殊な資本政策を前提に向き合う銘柄と考えられる。
この記事の最終更新日:2026年1月4日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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