株価
東京製鐵とは

東京製鐵は、東京都千代田区に本社を置く日本最大手の電炉メーカーであり、独立系電炉メーカーとして業界首位級の地位を確立している。1934年創業で、高炉を持たず、創業以来一貫して鉄スクラップを原料とする電気炉製鋼に特化してきた点が最大の特徴である。JPX日経インデックス400の構成銘柄でもあり、国内鉄鋼業界の中でも存在感の大きい企業である。
同社は無借金経営を基本とし、鉄鋼メーカーとしては極めて健全な財務体質を持つ。高い売上高経常利益率を維持してきた実績があり、鉄鋼市況が好転した局面では収益力が一気に高まる構造を持つ。一方で、原材料が鉄スクラップであるため、業績はスクラップ市況や鋼材価格の変動に大きく左右される典型的な市況循環型企業でもある。
主力事業は鉄鋼事業で、製品は建設・土木向け鋼材を中心とした普通鋼が主体である。特にH形鋼では国内トップシェアを誇り、異形棒鋼、角形鋼管などの建材分野で強い競争力を持つ。建設用鋼材については、国内4工場体制で多品種を生産しており、需要の変化に応じた柔軟な供給が可能となっている。特寸H形鋼(Tuned-H)など、建設コスト削減に寄与する製品開発にも積極的である。
東京製鐵の大きな特徴として、電炉メーカーでありながら高炉メーカーの主戦場である鋼板分野に進出している点が挙げられる。ホットコイル(熱延広幅帯鋼)をはじめ、酸洗コイル、めっきコイルといった表面処理鋼板、さらに厚板まで手掛けており、電炉メーカーとしては国内で唯一、薄板と厚板の両方を生産している。鋼板はレーザ切断性や溶接性に優れ、自動車、電機、建設機械など幅広い産業分野で採用されている。
製造拠点は、岡山工場、九州工場、宇都宮工場、田原工場の4拠点で、全国をカバーする生産体制を構築している。本社は東京都千代田区にあり、大阪、名古屋、九州、岡山に営業拠点を持ち、地域ごとの需要に即応できる販売網を整えている。
経営面では、創業者の池谷太郎が同社を国内最大の電炉メーカーへと成長させ、その後は池谷正成が社長として高炉メーカーとのH形鋼競争やホットコイル進出を主導し、現在の地位を築いた。かつては創業家色の強い企業であったが、2007年以降は非同族出身の経営体制に移行し、現在は奈良暢明社長のもとで経営が行われている。
総じて東京製鐵は、建材を中核としつつ、鋼板分野へも事業領域を拡大した、電炉メーカーの枠を超える存在である。機動的な価格政策と柔軟な生産体制、強固な財務基盤を武器に、鉄鋼市況の変動を受けながらも高い競争力を維持している。成長企業というよりは、市況循環の波を巧みに捉えて利益を最大化する、電炉業界を代表する鉄鋼メーカーと言える。
東京製鐵 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 (円) |
一株配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2021.3 | 141,448 | 3,995 | 4,994 | 5,889 | 48.0 | 16 |
| 2022.3 | 270,883 | 31,773 | 33,426 | 31,937 | 269.8 | 25 |
| 2023.3 | 361,245 | 38,063 | 39,257 | 30,848 | 272.4 | 40 |
| 2024.3 | 367,242 | 38,066 | 39,719 | 27,958 | 253.5 | 50 |
| 2025.3 | 326,775 | 30,105 | 31,612 | 21,203 | 198.0 | 50 |
| 2026.3(予) | 264,300 | 9,500 | 10,500 | 10,000 | 97.5 | 50 |
| 2027.3(予) | 280,000 | 13,000 | 14,000 | 10,000 | 97.5 | 50 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 39,767 | -11,904 | -11,696 |
| 2024.3 | 53,376 | -18,202 | -8,140 |
| 2025.3 | 19,588 | -21,876 | -13,766 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 (%) |
ROE (%) |
ROA (%) |
PERレンジ (倍) |
PBR (倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 10.5 | 17.2 | 11.3 | – | – |
| 2024.3 | 10.3 | 13.7 | 9.0 | – | – |
| 2025.3 | 9.2 | 10.1 | 7.2 | 5.4〜8.1 | 0.71 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の流れを見ると、2024年3月期は売上高3,672億円、営業利益380億円、経常利益397億円、純利益279億円と、電炉メーカーとしては非常に高い収益水準にあった。一方、2025年3月期は売上高3,267億円、営業利益301億円、経常利益316億円、純利益212億円へと減少しており、すでにピークアウトが明確になっている。さらに2026年3月期予想では、売上高2,643億円、営業利益95億円、経常利益105億円、純利益100億円まで落ち込む想定で、利益水準は2024年比で大幅に縮小する見通しである。
収益性指標を見ると、営業利益率は2023年10.5%、2024年10.3%、2025年9.2%と緩やかに低下しているが、それでも9%台を維持しており、電炉メーカーとしては依然高い水準にある。ROEは2023年17.2%、2024年13.7%、2025年10.1%と低下傾向だが、10%超を保っており、資本効率が極端に悪化しているわけではない。ROAも11.3%から7.2%まで下がっているものの、資産収益力としては十分な水準にある。
評価面では、2025年実績PERが5.4〜8.1倍、PBRが0.7倍となっており、市場は業績悪化をかなり強く織り込んだ評価を付けている。PBR1倍割れという点から見ても、成長期待よりも市況悪化リスクを重視した見方が前面に出ている状況と言える。
これらを総合すると、東京製鐵は明確な成長局面にある銘柄ではなく、鉄スクラップ価格や鋼材需給に左右される典型的な市況循環株である。2026年にかけて業績が悪化する前提では、短期的に積極的な上値余地を期待する局面ではない。一方で、営業利益率やROEが大きく崩れておらず、評価指標はすでにかなり低水準にあるため、業績悪化が想定の範囲内で収まるのであれば、下値は比較的限定されやすい。
結論としては、今すぐ強気に買い上がる銘柄ではないが、景気循環の底を意識しながら中長期で仕込む対象としては検討余地がある。業績回復局面に入った際には、PERやPBRの切り上がりとともに株価が見直されやすい一方、回復が遅れれば低評価のまま横ばいが続く可能性もあり、明確にスタンスが分かれる銘柄と言える。
配当目的とかどうなの?
配当目的の観点で見ると、東京製鐵は「高配当安定株」というより「市況連動型の中配当株」と位置づけるのが妥当である。まず、提示されている予想配当利回りは26.3期・27.3期ともに3.38%と、配当利回りだけを見れば東証プライム全体の平均よりやや高めで、一定のインカムは期待できる水準にある。ただし、この利回りは業績が大きく落ち込む局面でも配当を維持する前提で算出されている点には注意が必要である。
実際の業績を見ると、純利益は24.3期の約280億円から25.3期に212億円、26.3期予想では100億円まで減少する見通しとなっている。一方で配当額は50円を継続しており、利益水準の低下に対して配当の下げ方は緩やかである。これは無借金経営と潤沢な内部留保を背景に、短期的な市況悪化ではすぐに配当を削らない姿勢を取っていることを示している。
ただし、配当性向という観点では、26.3期以降は相対的に高くなると考えられ、好況期と同じ感覚で「配当がずっと続く」と期待するのはやや楽観的である。鉄鋼市況が想定以上に悪化した場合や、設備投資・価格競争が激しくなった場合には、減配の可能性は十分に残る。
総合すると、東京製鐵は「配当だけを目的に長期保有する銘柄」としてはやや不向きである。一方で、3%台前半の配当を受け取りながら、将来の市況回復による株価反発を待つというスタンスであれば、配当はあくまで“待ち時間のクッション”として機能する。配当を主目的にするなら、より利益変動の小さい高配当株が適しており、東京製鐵は値動きとセットで考える配当銘柄と捉えるのが現実的である。
今後の値動き予想!!(5年間)
東京製鐵の現在値1,476円を起点に、今後5年間の株価の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで整理する。東京製鐵は国内最大級の独立系電炉メーカーとして、鉄スクラップを原料に普通鋼材を製造・販売する企業である。H形鋼など建設・土木向け製品で高いシェアを持ち、薄板・厚板・表面処理鋼板にも進出している。業績は鉄鋼市況や建設需要に左右されやすい循環株だが、営業利益率・ROEは依然高水準にあり、収益力と財務体質は堅実である。
良い場合のシナリオでは、国内建設投資やインフラ需要が回復・拡大し、鉄スクラップ価格や鋼材価格が底堅く推移する。これにより売上・利益が回復傾向をたどり、営業利益率は再び10%台前後、ROEは10〜15%台へ戻る。市場は電炉最大手としての競争力と収益性を改めて評価し、PERは8〜10倍、PBRは1倍前後まで見直される。この場合、株価は2,000円から2,800円程度まで上昇する余地がある。配当利回りは相対的に下がるものの、株価の上昇とインカムの両面で魅力的なリターンが期待できる。
中間のシナリオでは、建設需要や鉄鋼市況に大きな変調はなく、現状水準での横ばいが続く。売上・利益は緩やかな変動にとどまり、利益率は8〜10%台で安定する。市場評価はPER6〜8倍、PBR0.6〜0.8倍程度で推移し、株価は1,200円から1,800円程度のレンジで動く可能性が高い。この場合、株価の大きな上昇は期待しにくいが、配当利回り3%台前半を受け取りながら、徐々に景況感の改善を待つ姿勢が有効となる。
悪い場合のシナリオでは、世界的な景気後退や建設投資の縮小が長期化し、鉄鋼需要が大きく落ち込む。売上・利益が想定以上に減少し、営業利益率は7%台以下、ROEも一桁前半へ低下する。市場は鉄鋼市況の長期停滞を織り込み、PERは4〜6倍、PBRは0.5倍未満まで低下する可能性がある。この場合、株価は800円から1,200円程度まで調整するリスクがある。配当利回りは相対的に高くなるが、業績悪化の不安が重しとなる。
総合すると、東京製鐵の今後5年間の株価は、良い場合で2,000円〜2,800円程度、中間では1,200円〜1,800円程度、悪い場合で800円〜1,200円程度というレンジが一つの目安となる。現在値1,476円は、鉄鋼市況の調整局面をある程度織り込んだ水準であり、業績回復局面に入れば上方向の余地がある一方、市況悪化が続く場合は中〜下値圏での推移が続く可能性もある。評価は市況動向次第で大きく変わる性格の銘柄である。
この記事の最終更新日:2026年1月4日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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