株価
大和工業とは

大和工業株式会社は、電炉大手として知られる独立系の鉄鋼グループで、建築・土木向けのH形鋼を主力製品とする企業である。単なる鉄鋼メーカーではなく、現在はヤマトスチール株式会社や大和軌道製造株式会社などを傘下に置く純粋持株会社の性格が強く、グループ全体の戦略立案と資本管理を担う中核企業となっている。
1944年に川西航空機の協力工場として設立され、戦後の需要変化を受けて鉄道向け軌道用品の製作・修理へと事業を転換した。その後、1956年に電気炉を完成させ、本格的に鉄鋼事業へ参入している。高炉メーカーとは異なり、スクラップを原料とする電炉を中心に据えた事業モデルを早期から確立し、独立系電炉メーカーとして成長してきた点が同社の大きな特徴である。
2003年には、鉄鋼事業および重工加工品事業をヤマトスチールとして分社化し、持株会社体制へ移行した。これにより、国内外の事業会社を束ねるグループ経営へと舵を切り、資本効率や投資判断を重視する経営スタイルが明確になっている。国内ではH形鋼や鉄筋といった建設用鋼材を中心に、安定した需要を背景とした事業基盤を維持している。
一方で、大和工業の最大の特徴は海外事業の比重の大きさにある。タイや韓国には子会社を持ち、これらの事業規模は日本国内とほぼ同水準にまで拡大している。さらに米国では、子会社および持分法適用会社を通じた事業展開を行っており、その規模は国内事業を大きく上回る水準にある。ベトナム、バーレーン、サウジアラビアにも合弁会社を持ち、地域分散の効いたグローバルな電炉鉄鋼グループを形成している。
この海外展開の構造上、特に米国の関連会社から得られる利益は、持分法による投資損益として営業外損益に計上される。そのため、営業利益と経常利益の間に大きな差が生じることが多く、表面的な利益構造を見誤りやすい企業でもある。実態としては、海外事業、とりわけ米国の業績動向がグループ全体の収益を大きく左右しており、景気循環や建設投資の影響を受けやすい反面、好況期には高い収益力を発揮しやすい構造となっている。
環境面では、電炉を中核とするスクラップリサイクル型の製鉄プロセスを採用しており、脱炭素や循環型社会との親和性が高い事業モデルを持つ。高炉に比べてCO2排出量が少ない点は、長期的には競争力の源泉となり得る要素であり、今後の環境規制強化局面においても相対的に有利な立場にある。
グループ全体では、鉄鋼事業を中心に、軌道用品、産業廃棄物処理、車両解体・港湾運送など周辺分野にも事業を展開しており、鉄鋼製造を核としながらも裾野の広い事業構造を形成している。総じて、大和工業は国内需要に依存しすぎず、海外、とりわけ米国を軸とした事業展開と、電炉という事業特性を活かした安定した財務体質を併せ持つ、独自色の強い鉄鋼グループと位置づけられる。
大和工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 EPS (円) |
一株配当 DPS (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 136,025 | 10,018 | 21,569 | 4,984 | 75.3 | 80 |
| 連22.3 | 150,029 | 13,290 | 57,646 | 39,917 | 618.6 | 160 |
| 連23.3 | 180,438 | 16,813 | 90,494 | 65,317 | 1,025 | 300 |
| 連24.3 | 163,479 | 17,282 | 99,223 | 70,018 | 1,099 | 400特 |
| 連25.3 | 168,268 | 11,493 | 54,402 | 31,833 | 502.5 | 400記 |
| 連26.3予 | 156,000 | 3,500 | 56,000 | 38,000 | 625.5 | 400 |
| 連27.3予 | 160,000 | 5,000 | 60,000 | 42,000 | 691.3 | 400 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 連23.3 | 52,654 | -10,346 | -17,719 |
| 連24.3 | 80,915 | -33,292 | -21,256 |
| 連25.3 | 71,028 | -85,679 | -42,987 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 (%) |
ROA (%) |
ROE (%) |
PER (倍) |
PBR (倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 9.3 | 12.6 | 14.8 | – | – |
| 2024 | 10.5 | 11.5 | 13.3 | – | – |
| 2025 | 6.8 | 4.8 | 5.7 | 10.5(高) / 6.7(安) | 1.24 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず利益水準を見ると、連24.3では売上1634億円に対して営業利益172億円、経常利益992億円、純利益700億円と、営業段階よりも経常・最終利益が極端に大きい。これは本業の鉄鋼事業に加えて、持分法投資利益など営業外収益の寄与が非常に大きい構造をそのまま表している。営業利益率も10.5%と電炉メーカーとしてはかなり高水準で、ROE14.8%、ROA12.6%と資本効率も非常に良かった局面だった。
連25.3になると様子が変わる。売上は1682億円と微増しているが、営業利益は114億円まで減少し、純利益も318億円まで大きく落ち込んでいる。営業利益率は6.8%、ROEは5.7%、ROAは4.8%まで低下しており、本業の収益力と資本効率が一気に悪化していることが数字からはっきり読み取れる。ここだけを見ると、稼ぐ力が落ちた会社という印象になる。
ただし、連26.3予を見ると営業利益は35億円とさらに弱い一方で、経常利益は560億円、純利益は380億円と25.3実績を上回る水準が見込まれている。この乖離は、営業外で稼ぐ力が依然として非常に大きいことを示しており、大和工業の本質的な収益源が国内の鉄鋼本業よりも海外投資・持分利益にあることを改めて確認させる数字になっている。
評価面では、2025年の実績PERは高値平均で10.5倍、安値平均で6.7倍、PBRは1.2倍程度となっている。ROEが5%台まで低下している局面としては、決して高い評価ではなく、むしろ慎重な水準にあると言える。一方で、ROEが低いにもかかわらずPBRが1倍を割り込んでいない点から、市場はこの会社を単なる不振企業ではなく、循環的に利益が戻る可能性のある企業として見ていることも分かる。
総合的に見ると、短期的には営業利益率・ROE・ROAがはっきり悪化しており、成長性や高収益性を評価して買う局面ではない。一方で、経常利益・純利益は依然として大きく、PERやPBRも低めのレンジに収まっているため、業績循環を前提に中長期で構えるなら割安寄りに見える局面と言える。
この数字だけで判断するなら、大和工業は今まさに本業が弱い底の局面にあり、短期の値上がり期待よりも、海外持分利益と配当を軸に、いずれ営業利益率やROEが戻ることを待てる投資家向けの銘柄、という位置づけになる。
配当目的とかどうなの?
まず前提として、連26.3予、連27.3予ともに予想配当利回りは3.74%と、鉄鋼セクターの中ではやや高め、全体相場で見ても悪くない水準にある。極端な高配当ではないが、利回りだけを見て見劣りする数字ではない。
配当の安定性という観点では、24.3は400円(特別含む)、25.3も400円(記念含む)、26.3予も400円と、利益が大きく変動しているにもかかわらず、配当額自体は高い水準を維持している。特に25.3は純利益318億円まで落ち込んでいるが、それでも400円配当を維持している点から、短期の業績悪化で配当を簡単に切る会社ではないことが数字から読み取れる。
一方で注意点もはっきりしている。営業利益は24.3の172億円から25.3は114億円、26.3予では35億円まで急減しており、本業から生まれるキャッシュ創出力は弱い局面にある。この状態が長期化した場合、現在の配当水準は本業利益だけでは支えきれない。実際には、経常利益や純利益が高水準を維持しているため配当は成立しているが、その多くは海外持分利益に依存している構造になっている。
つまり、大和工業の配当は、国内の鉄鋼事業の安定配当というよりも、海外事業・投資利益を含めたグループ全体の稼ぎを前提にした配当である、という点を理解する必要がある。海外市況が悪化した場合には、配当の余力も同時に低下するリスクはある。総合すると、配当利回り3.74%という数字だけを見れば、配当目的としては十分に検討対象になる。ただし、ディフェンシブ銘柄のような毎年安定増配を期待するタイプではなく、業績循環を前提に「減配しにくいが増配も限定的」という位置づけになる。
今後の値動き予想!!(5年間)
大和工業の現在値10,690円を起点に、今後5年間の株価の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで整理する。大和工業は国内有数の電炉メーカーで、H形鋼を主力とする建設・土木向け鋼材を製造する一方、事業構造の大きな特徴として海外展開、特に米国を中心とした持分法適用会社からの利益寄与が非常に大きい企業である。国内本業は鉄鋼市況や建設需要の影響を受けやすい循環型だが、海外事業を含めた経常利益・純利益は長期的に高水準を維持してきた。直近では営業利益率・ROE・ROAが低下しているものの、依然として財務体質は強く、配当水準も高めに維持されている。
良い場合のシナリオでは、米国を中心とした海外建設需要が回復し、持分法投資利益が再び拡大する。国内の電炉・形鋼事業も市況回復により持ち直し、営業利益率は8〜9%程度、ROEも10%前後まで回復する。この局面では、市場は大和工業を「海外で稼ぐ電炉大手」として再評価し、PERは10〜12倍程度まで許容されやすくなる。EPSが700〜800円水準に回復すれば、株価は15,000円前後、環境次第では18,000円程度まで上昇する余地がある。配当も400円水準を維持できれば、値上がり益と配当の両立が期待できる。
中間のシナリオでは、国内本業は低水準のまま推移するが、海外持分利益が大きく崩れず、経常利益・純利益は現状水準で安定する。営業利益率は6%台、ROEは6〜8%程度にとどまり、成長感は乏しいが底堅さは維持される。この場合、市場評価はPER7〜9倍、PBR1.1〜1.3倍程度に収まり、株価は9,000円〜12,000円前後のレンジで上下する可能性が高い。株価の大きな上昇は期待しにくい一方で、配当利回り3〜4%台を受け取りながら保有する銘柄としての位置づけが強まる。
悪い場合のシナリオでは、米国を中心とした海外建設需要が大きく減速し、持分法投資利益が縮小する。国内本業も回復せず、営業利益率は5%未満、ROEも5%を下回る状態が長期化する。この場合、市場は「海外で稼ぐ構造」に対する評価を引き下げ、PERは6倍前後、PBRは1倍割れまで低下する可能性がある。EPSが500円前後にとどまれば、株価は6,000円〜8,000円程度まで調整するリスクがある。配当についても400円維持が難しくなれば、配当目的の買いが弱まり、下値不安が強まる展開になる。
総合すると、大和工業の今後5年間の株価は、良い場合で15,000円〜18,000円程度、中間では9,000円〜12,000円程度、悪い場合で6,000円〜8,000円程度が一つの目安になる。現在値10,690円は、業績調整局面をかなり織り込んだ中間寄りの水準にあり、短期での急騰を狙う位置ではない。一方で、海外事業の回復を前提に中長期で構えるなら上方向の余地は残っており、配当を受け取りながら業績循環を待つ投資家向けの銘柄、という位置づけになる。
この記事の最終更新日:2026年1月4日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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