株価
東京鐵鋼とは

東京鐵鋼株式会社は、電炉中堅に位置づけられる鉄鋼メーカーで、建築・土木分野向けの鉄筋コンクリート用棒鋼を主力とする企業である。栃木県小山市に本社工場を構え、青森県八戸市にも生産拠点を持ち、鉄スクラップを原料とした電気炉による製鋼を行っている。社名が似ている東京鋼鐵という会社が同じ小山市に工場を持つが、資本関係はなく別会社である。
事業の中心は建設業界向けで、鉄筋コンクリート用棒鋼を軸に、機械式継ぎ手、鉄筋定着金物、鉄筋加工製品などを製造・販売している。とりわけ圧接を不要とするネジ節棒鋼と、それに対応する機械式継ぎ手の分野では国内シェアが過半を占めており、この分野では事実上のトップランナーとなっている。施工現場での圧接作業を省略できることから、工期短縮や省人化に直結し、建設現場の人手不足という構造的課題に適合した製品群となっている。
東京鐵鋼の最大の特徴は、単に鉄筋という「モノ」を供給するメーカーではなく、建設現場の省力化や効率化を実現する「ソリューション提供型」の企業である点にある。一般的な建設資材メーカーがゼネコンの購買部門を主な窓口とするのに対し、同社は設計部門という上流工程に入り込み、設計初期段階から建設プロジェクトに関与する。これにより、施工する建築物にとって最適な工法や資材を提案することが可能となり、建設トータルコストの削減という形でゼネコンや施主に明確なメリットを提供している。
この設計段階からの関与が、東京鐵鋼の収益構造を市況依存から部分的に切り離している要因でもある。鉄鋼業界は本来、鋼材市況や建設需要に強く左右される循環型ビジネスだが、同社の場合は高付加価値製品と工法提案を組み合わせることで、価格競争に陥りにくいポジションを確立している。ネジ節棒鋼や継ぎ手は、単価だけでなく施工効率や安全性まで含めた評価がなされるため、単純な市況悪化局面でも一定の需要が維持されやすい。
こうした技術提案力は短期間で構築できるものではなく、長年にわたるゼネコンとの信頼関係、設計図面を読み解き課題を抽出できる人材の育成、開発部門と営業・技術部門の一体運営など、地道な積み重ねによって支えられている。現在では技術提案に関わる部門が100名以上の体制となっており、研究機関、大学の研究室、設計事務所、ゼネコンとの共同開発プロジェクトを通じて、最先端技術や顧客ニーズを先取りした製品・工法の開発を行っている。この体制が、他社の追随を許さない競争優位性の源泉となっている。
生産面では、本社工場と八戸工場を活用し、多品種・小ロットにも対応できる柔軟な製造体制を整えている。グループ会社には、資源リサイクルを担う会社、鉄スクラップの販売会社、物流・配送会社、建材製造・販売会社、人材派遣会社などがあり、原料調達から製造、販売、物流、人材までをグループ内で補完できる体制を構築している。これにより、電炉メーカーとして重要なスクラップ調達の安定性やコスト管理力を高めている。
総合すると、東京鐵鋼は電炉中堅という規模でありながら、建築用棒鋼、とりわけネジ節棒鋼と継ぎ手という高付加価値分野で圧倒的なポジションを築き、設計段階から入り込む技術提案力を武器に、建設現場の省力化を支援する独自のビジネスモデルを確立している。単なる市況循環株というよりも、技術と提案力によって選ばれ続ける「ソリューション型鉄筋メーカー」としての性格が強い企業だと言える。
東京鐵鋼 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 EPS (円) |
一株配当 DPS (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 62,391 | 7,514 | 7,524 | 4,980 | 534.1 | 70 |
| 連22.3 | 66,089 | -192 | -644 | -4,724 | -518.1 | 20 |
| 連23.3 | 79,229 | 4,355 | 4,944 | 3,657 | 405.3 | 110 |
| 連24.3 | 79,617 | 10,624 | 11,412 | 7,887 | 884.9 | 270 |
| 連25.3 | 82,593 | 14,676 | 15,059 | 10,853 | 1,239 | 375 |
| 連26.3予 | 77,000 | 12,000 | 12,000 | 8,450 | 992.0 | 300 |
| 連27.3予 | 80,000 | 13,000 | 13,000 | 9,000 | 1,057 | 300〜310 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 連23.3 | 6,879 | -1,630 | -756 |
| 連24.3 | 12,089 | -4,562 | -3,055 |
| 連25.3 | 8,183 | -5,596 | -4,762 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 (%) |
ROA (%) |
ROE (%) |
PER (倍) |
PBR (倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 5.4 | 5.2 | 7.9 | – | – |
| 2024 | 13.3 | 10.1 | 14.8 | – | – |
| 2025 | 17.7 | 13.3 | 18.1 | 5.7(高) / 2.6(安) | 0.86 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の水準を見ると、連24.3では売上796億円に対して営業利益106億円、経常利益114億円、純利益78億円という水準だった。これだけでも電炉中堅としては十分高い利益水準だが、連25.3になると売上は825億円と緩やかな増加にとどまる一方、営業利益は146億円、経常利益150億円、純利益108億円へと大きく伸びている。売上の伸び以上に利益が拡大していることから、単なる市況回復だけでなく、採算性の高い製品構成や価格条件が強く効いていた局面だったと読み取れる。
収益性指標を見ると、この変化はさらに明確になる。営業利益率は2023年の5.4%から、2024年には13.3%、2025年には17.7%まで一気に上昇している。これは鉄鋼業界の中でもかなり高い水準で、東京鐵鋼が単なる市況任せではなく、高付加価値型の収益構造を持っていることを数字が裏付けている。ROEも7.9%から14.8%、さらに18.1%へと急改善し、ROAも5.2%から13.3%まで上昇しており、資本と資産の両方を効率よく使えている状態にある。
連26.3予では、売上770億円、営業利益120億円、純利益84億円と、25.3からはやや減少する計画になっている。ただし、それでも24.3を上回る利益水準であり、急激な失速というよりは高水準からの調整と見るのが自然である。少なくとも、この予想数字を見る限り、利益構造が一気に崩れる前提にはなっていない。
一方で、株式市場での評価を見ると、この高い収益力が十分に反映されているとは言いにくい。2025年実績PERは高値平均でも5.7倍、安値平均では2.6倍と極めて低い水準にある。PBRも0.86倍と1倍を下回っており、ROE18.1%という数字と比べると明らかに評価は抑えられている。これは東京鐵鋼が市況循環の影響を強く受ける鉄鋼株であることから、好業績が一時的と見なされやすい構造をそのまま反映している。
総合すると、東京鐵鋼は足元では営業利益率・ROE・ROAが非常に高い水準にあり、数字だけ見れば収益力はピーク圏に近い。一方で、PERやPBRはその水準に見合うほど上がっておらず、市場は将来の減益や市況悪化をかなり強く織り込んでいる状態と言える。
この数値だけで判断するなら、東京鐵鋼は「業績は強いが評価は極めて低い」局面にあり、短期的にはピークアウト懸念がつきまとうものの、それを前提にしても評価が低すぎる水準にある。市況が大きく崩れず、利益水準がある程度維持されるだけでも、見直し余地は大きい。一方で、市況悪化が深刻化した場合は、利益の振れ幅も大きくなるため、値動きは荒れやすい。高収益と高リスクが同居するが、数字だけを見れば、リスクを強く織り込んだ分だけリターン余地も大きい銘柄、という判断になる。
配当目的とかどうなの?
まず利回り水準そのものはかなり魅力的だと言える。連26.3予、連27.3予ともに予想配当利回りは4.85%で、鉄鋼セクターの中でも高い部類に入る。一般的な高配当株と比べても見劣りしない数字で、表面上は十分に配当目的の候補になる。
配当額の推移を見ると、24.3は270円、25.3は375円と業績拡大に合わせて大きく増配し、26.3予では300円へ減配予想となっている。減配とはいえ、利益水準の調整に合わせた自然な水準であり、無理に高配当を維持している印象はない。純利益は25.3で108億円、26.3予でも84億円と高水準にあり、この範囲で300円配当を出すこと自体に無理は感じにくい。
一方で、この会社の配当を考えるうえで重要なのは安定性よりも変動性である。22.3では赤字に転落し、配当も20円まで落ち込んだ実績があるように、業績が悪化すれば配当は大きく削られる。東京鐵鋼の配当は、毎年一定額を積み上げていくタイプではなく、業績に応じて大きく上下する業績連動型と考えるのが自然だ。
足元の収益力を見ると、営業利益率は2025年に17.7%、ROEは18.1%、ROAは13.3%と非常に高い水準にあり、今は配当を出しやすい局面にある。ただし、26.3予では減益を見込んでおり、今後の市況次第では、さらに配当が調整される可能性は常に残る。
評価面では、PERが2〜5倍台、PBRが0.86倍と低く、株価自体が業績ピークアウトや市況悪化リスクをかなり織り込んでいる。その結果として利回りが高く見えている側面も大きい。つまり、この4.85%という利回りは、安定配当への期待というより、市況循環株としてのリスクプレミアムを含んだ数字だと捉えるべきである。
総合すると、東京鐵鋼は配当目的として見た場合、利回り水準は非常に魅力的だが、配当のブレは大きい。毎年安定した配当を取り続けたい人向けではなく、業績循環を理解したうえで、好業績局面の高配当を取りに行く投資家向けの銘柄と言える。配当を主目的にするなら、減配も織り込んだうえで、株価変動とセットで受け止められるかどうかが判断の分かれ目になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
東京鐵鋼の現在値6,180円を起点に、今後5年間の株価の値動きを良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで整理する。東京鐵鋼は電炉中堅の鉄鋼メーカーで、建築・土木向けの鉄筋コンクリート用棒鋼を主力とする企業である。特に圧接不要のネジ節棒鋼と機械式継ぎ手に強みを持ち、施工の省力化を実現する高付加価値製品で国内シェアの過半を握っている。単なる素材供給にとどまらず、設計段階から建設プロジェクトに関与し、建設トータルコストを下げる技術提案を行う点が特徴であり、市況株でありながら付加価値型の性格が強い。
良い場合のシナリオでは、国内の建設投資や再開発、インフラ更新需要が堅調に推移し、省力化ニーズの高まりを背景にネジ節棒鋼や継ぎ手の採用が一段と広がる。高付加価値製品の比率が高まり、営業利益率は15%前後、ROEも15〜20%台を維持する。市場は東京鐵鋼を「市況依存度の低い高収益型鉄筋メーカー」として再評価し、PERは6〜8倍、PBRも1倍前後まで切り上がる。この場合、株価は10,000円〜14,000円程度まで上昇する余地があり、配当利回りは低下するものの、株価上昇と配当の両面で高いリターンが期待できる。
中間のシナリオでは、建設需要や鉄鋼市況に大きな変動はなく、現在に近い環境が続く。高付加価値製品による利益率の高さは維持されるが、業績は横ばい圏で推移する。営業利益率は10〜15%台、ROEは10%台前半から後半程度に落ち着き、市場評価はPER4〜6倍、PBR0.7〜1.0倍程度にとどまる。この場合、株価は4,000円〜7,000円程度のレンジで推移し、値上がり益は限定的だが、4%台後半の配当利回りを受け取りながら保有する銘柄という位置づけになる。
悪い場合のシナリオでは、国内建設投資が大きく減速し、鉄鋼需要全体が落ち込む。高付加価値製品の強みはあるものの数量減を補いきれず、営業利益率は一桁台、ROEも一桁前半まで低下する。市場は市況循環株としての側面を強く意識し、PERは2〜4倍、PBRは0.5倍前後まで評価が切り下がる可能性がある。この場合、株価は2,500円〜4,000円程度まで下落するリスクがあり、配当も業績に応じて減額される可能性が高まる。
総合すると、東京鐵鋼の今後5年間の株価は、良い場合で10,000円〜14,000円程度、中間では4,000円〜7,000円程度、悪い場合で2,500円〜4,000円程度が一つの目安となる。現在値6,180円は、中間シナリオをやや織り込んだ水準にあり、業績が高水準で定着すれば上方向の余地は大きい。一方で、市況悪化時の下振れ幅も大きいため、東京鐵鋼は配当と高収益を享受しつつ、建設需要と利益率の持続性を見極めながら中長期で向き合うタイプの銘柄と言える。
この記事の最終更新日:2026年1月4日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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