株価
長府製作所とは

長府製作所は、山口県下関市に本社を置く住宅設備機器メーカーで、石油給湯器分野では国内首位級のシェアを持つことで知られている。給湯機器と空調機器を事業の中核に据え、一般住宅向けを中心に長年安定した需要を取り込んできた企業である。東証プライム市場に上場しており、キャッチフレーズは快適をもっとたっぷり。住宅の快適性と省エネルギーを両立させる製品開発を軸に、堅実な経営を続けている。
事業の中心は給湯関連機器で、石油給湯器、石油ボイラー、ガス給湯器、エコキュート、電気温水器などを幅広く展開している。特に石油給湯器と太陽熱温水器では国内トップクラスの生産シェアを誇り、寒冷地や戸建住宅を中心に根強い需要を持つ。石油という熱源はオール電化やガスに比べて地味な印象を持たれがちだが、寒冷地での安定性や即応性といった実用面での強みがあり、長府製作所はこの分野で長年培った技術力とブランド力を有している。
給湯機器に加えて空調機器も重要な柱であり、ルームエアコン、温水熱源機付エアコン、温風暖房機、温水暖房システムなどを手がけている。給湯と暖房を組み合わせた住宅全体の熱エネルギー管理を得意としており、単体製品だけでなくシステムとして提案できる点が同社の特徴である。売上構成では給湯機器と空調機器の2部門で全体の約9割を占めており、事業の軸が明確でブレが少ない。
また、太陽熱利用給湯システムや太陽熱温水器などのソーラー関連機器も展開しており、再生可能エネルギー分野にも早くから取り組んできた。電気やガスに依存しすぎないエネルギーの多様化という観点では、長府製作所の製品群は一定の存在感を持っている。近年はエコフィール、エコジョーズ、エコキュートといった高効率型製品の拡充を進め、省エネ性能や環境負荷低減を重視した製品戦略を明確にしている。
住宅設備分野としては、システムバス、浴槽、洗面化粧台、システムキッチンなども手がけており、給湯を起点に水回り全体へと事業領域を広げている。大手住宅設備メーカーと比べると規模は大きくないものの、戸建住宅向けを中心とした実需に密着した商品展開が特徴で、更新需要を着実に取り込むビジネスモデルとなっている。
海外展開については、過去には欧州向けに空調機器の輸出を行い一定の売上規模を確保していたが、円高や中国製品との価格競争の激化を背景に縮小した経緯がある。その後は価格競争を避け、欧州、米国、オーストラリアなどを中心に、環境配慮型で付加価値の高い製品を選別して展開する方針へと転換している。現時点で海外売上比率は高くないが、無理な拡大を避けた慎重な海外戦略を取っている点は同社らしい保守的な姿勢と言える。
財務面では、自己資本比率が9割を超える非常に高い水準にあり、上場企業の中でもトップクラスの健全性を誇る。借入依存度が極めて低く、景気後退局面でも財務リスクが小さい点は大きな強みである。住宅設備という成熟市場に属しながらも、安定したキャッシュフローを生み出し、堅実に内部留保を積み上げてきた結果といえる。
総合的に見ると、長府製作所は急成長を狙うタイプの企業ではなく、石油給湯器首位級というニッチだが確固たるポジションを軸に、給湯と空調を中心とした住宅設備分野で安定収益を積み重ねていく堅実型メーカーである。環境配慮型製品への対応やエネルギー多様化の流れに一定の適応力を持ちつつ、強固な財務基盤を背景に長期的な安定経営を志向する企業と位置付けられる。
長府製作所 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連22.12 | 49,792 | 2,969 | 5,370 | 3,866 | 111.6 | 38 |
| 連23.12 | 48,506 | 3,343 | 5,668 | 3,998 | 117.1 | 43 |
| 連24.12 | 46,123 | 1,745 | 4,492 | 3,139 | 92.5 | 46 |
| 連25.12予 | 47,000 | 1,700 | 4,500 | 2,200 | 64.7 | 46〜48 |
| 連26.12予 | 48,000 | 1,900 | 4,700 | 3,200 | 94.1 | 46〜50 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022年12月期 | 2,918 | 553 | -1,953 |
| 2023年12月期 | 4,888 | -3,843 | -2,371 |
| 2024年12月期 | 2,582 | -579 | -1,561 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROA(%) | ROE(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年12月期 | 6.8 | 2.8 | 3.0 | – | – |
| 2024年12月期 | 3.7 | 2.1 | 2.3 |
高値平均22.2 安値平均17.1 |
0.51 |
| 2025年12月期(予) | 3.6 | 1.5 | 1.6 | 31.83 | – |
出典元:四季報オンライン
投資判断
2023年12月期から2026年12月期予想までの数字を見ると、まず売上高は485億、461億、470億、480億と大きな成長も減少もなく、ほぼ横ばいで推移している。需要自体は安定しており、事業が急激に縮小しているわけではないことは分かる。一方で利益面を見ると印象はかなり違う。営業利益は2023年の33億から2024年には17億へとほぼ半減し、2025年予想でも17億、2026年予想でも19億と、低い水準から抜け出せていない。売上が維持されているにもかかわらず利益が大きく落ちている点から、本業の収益力が明確に低下していることが読み取れる。
経常利益は2023年56億、2024年44億、2025年予想45億、2026年予想47億と、営業利益ほどは落ちていない。これは本業以外の収益や財務面の安定性による部分が大きく、裏を返せば事業そのものの稼ぐ力は弱まっているということでもある。純利益も2023年39億から2024年31億、2025年予想22億と減少しており、利益のピークはすでに過ぎている印象が強い。
収益性の指標を見るとさらに傾向がはっきりする。営業利益率は2023年6.8%から2024年3.7%、2025年3.6%と急低下しており、収益構造が悪化していることが数字にそのまま表れている。ROEは3.0%から2.3%、1.6%へ、ROAも2.8%から2.1%、1.5%へと年々下がっており、資本や資産を使って利益を生み出す力が弱くなっている。自己資本が厚い会社であることを考慮しても、ROE1%台という水準は株主目線ではかなり物足りない。
株価指標に目を向けると、2024年の実績PERは17.1倍から22.2倍のレンジで、極端な割高感はない。一方で2025年予想PERは31.8倍と急上昇している。これは成長期待によるものではなく、利益が落ち込む前提のためにPERが跳ね上がっている状態であり、内容としてはあまり良い高PERではない。PBRは0.5倍と低水準だが、ROEが1〜2%台であることを考えると、市場が低評価を付けている理由ははっきりしており、単純な割安とは言いにくい。
以上の数字だけを総合すると、売上は安定しているが、本業の稼ぐ力は弱くなり、収益性と資本効率は明確に悪化している。PBRは低いものの、それを正当化するだけのROE改善は見られず、むしろ利益低下によってPERは上昇している。成長株として見る材料は乏しく、割安株として見ても決め手に欠ける位置づけである。
このため、提示された数値だけで判断するなら、積極的に買いに行く局面ではなく、業績の底打ちや営業利益率の回復が確認できるまでは様子見が妥当と考えられる。安定企業ではあるが、数字上は攻める理由よりも慎重になる理由の方が多い、という評価になる。
配当目的とかどうなの?
予想配当利回りは2025年12月期、2026年12月期ともに2.24%とされており、水準としては高配当とは言えず、東証全体の平均と比べてもやや低めから中程度に位置する。インカム狙いで明確に魅力がある水準ではないが、極端に低いわけでもない、というのが率直な印象である。
配当の裏付けとなる利益水準を見ると、2023年から2025年にかけて純利益は39億→31億→22億と減少しており、利益面は明らかに下り坂にある。それでも配当は46円前後を維持する見通しであり、短期的には配当を重視する姿勢が読み取れる。ただし、EPSは117円→92円→64円と低下しており、配当性向は上昇していると考えられる。これは余力のある成長配当というより、安定配当を優先している構図である。
一方で、ROEは1%台まで低下しており、資本効率はかなり低い。これは裏を返せば、自己資本が非常に厚く、財務に余裕があることを意味する。そのため、短期的に配当が急減するリスクは小さく、減配耐性は比較的高いと考えられる。営業キャッシュフローも安定して黒字であるため、配当原資そのものが枯渇している状況ではない。
ただし、配当利回りが2.24%にとどまる中で、株価の値上がり益も期待しにくい状況では、配当目的としての総合的な魅力は限定的になる。高配当株のように配当だけで十分なリターンを狙える銘柄ではなく、あくまで安定性重視の補助的なインカム銘柄という位置づけになる。
結論として、長府製作所は配当目的として「悪くはないが強くもない」。高配当を狙う投資には向かず、減配リスクの低さと財務の安定感を評価して、ポートフォリオの守りの一部として保有するタイプの銘柄である。配当利回りそのものに期待するよりも、業績がこれ以上悪化しないことを前提に、安定配当を淡々と受け取る投資に向いた会社だと判断できる。
今後の値動き予想!!(5年間)
長府製作所の現在値2,047.0円を基準に、今後5年間の値動きを考えます。長府製作所は石油給湯器で国内首位級のシェアを持ち、給湯・空調といった住宅インフラ分野を支えるメーカーである。事業は成熟市場に属しており、売上高は大きく伸びない一方、需要の安定性は高い。ただし近年は原材料高やコスト上昇の影響を受け、営業利益率は低下傾向にあり、ROE・ROAも1〜2%台と低水準にとどまっている。市場からは「財務は非常に強いが、資本効率が低く成長感に乏しい企業」と見られやすい状況にある。
良い場合は、原材料価格が落ち着き、価格改定や製品構成の見直しによって営業利益率が4〜5%台まで回復するシナリオである。石油給湯器に加え、省エネ型給湯機や太陽熱関連製品の採算が改善し、利益の底打ちが明確になれば、ROEも3%台後半から4%程度まで戻る可能性がある。そうなれば「低効率だが安定して稼げる会社」として評価が見直され、PBRは0.8〜1.0倍程度、PERも20倍前後が許容される水準となる。配当の安定感も評価され、5年後の株価は2,800円〜3,400円程度まで上昇する展開が考えられる。
中間の場合は、売上は横ばいを維持し、利益も緩やかに回復するが、営業利益率は3%台後半で頭打ちとなるケースである。ROE・ROAは低水準のままで、市場評価も大きく変わらない。PBRは0.6〜0.7倍程度、PERは20倍前後で推移し、配当利回り2%台を維持することで一定の下支えが入る。この場合、株価は大きなトレンドを描かず、上下動を繰り返しながらも、5年後の水準は2,100円〜2,500円程度に収まるイメージとなる。値上がり益よりも安定配当を重視する投資家向けの推移である。
悪い場合は、原材料高や需要減速が再燃し、価格転嫁が十分に進まず、営業利益率が3%を下回る状態が続くシナリオである。利益低迷が長期化すると、ROEは1%台にとどまり、資本効率の低さが一段と意識される。市場の評価はさらに慎重になり、PBRは0.5倍前後まで低下する可能性がある。配当は維持される公算が大きいものの、株価は上値を抑えられ、5年後には1,500円〜1,900円程度まで下落し、環境次第では1,400円台まで調整するリスクも否定できない。
総合すると、長府製作所は高成長を狙う銘柄ではなく、住宅インフラを支える安定事業と強固な財務を背景に、配当を受け取りながら保有するタイプの企業である。5年間では中間シナリオが最も現実的で、大きな値上がりは期待しにくい一方、急落リスクも限定的という位置づけになる。明確な営業利益率の回復が確認できれば上振れ余地はあるが、現状では配当を軸にした守りの投資向けの銘柄といえる。
この記事の最終更新日:2026年1月10日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す