株価
牧野フライス製作所とは

牧野フライス製作所は、東京都目黒区に本社を置く、日本を代表する大手工作機械メーカーである。マシニングセンタやフライス盤、放電加工機を中心とした高精度加工機の製造・販売を行っており、工作機械業界の上位企業に位置付けられている。東証プライム市場に上場しており、キャッチフレーズは「クオリティ・ファースト」である。
同社はNC工作機械や複合加工機の分野で先駆的な存在として知られ、特にマシニングセンタの技術力において国内で高い評価を受けてきた。量産品よりも、多品種・多オプション・高剛性といった高級機志向が強く、価格競争に陥りやすい汎用機ではなく、高付加価値分野を主戦場としている点が大きな特徴である。顧客層は金型メーカーが多く、近年は航空機・航空宇宙産業向けの高精度加工需要の取り込みも進めている。
事業の柱はマシニングセンタであり、横形、立形、5軸制御マシニングセンタをはじめ、グラファイト加工機、微細精密加工機、NC放電加工機、ワイヤ放電加工機、レーザ加工機、NCフライス盤などを幅広く展開している。金型加工や精密部品加工、航空機部品など、高度な加工精度と安定性が求められる分野で強みを発揮している。
また、ハードウェアだけでなく、CAD/CAM、マシン制御ソフトウェア、オペレーティングソフトウェア、アプリケーションソフトウェア、ネットワークモニタリングシステムなど、ソフトウェア・デジタル分野にも注力している。加工状況や稼働状態を遠隔で把握し、生産効率の向上や予防保全を可能にする仕組みを提供しており、単なる機械メーカーにとどまらず、スマートファクトリー化を支援するパートナーとしての位置付けを強めている。
自動化分野への取り組みも早く、1970年代から生産自動化に着手してきた。マシニングセンタ、制御装置、搬送車、ロボット、コンベア、運用ソフトウェアを組み合わせた自動化ソリューションを提供し、顧客の生産量増加、品質向上、コスト削減を支援している。グループ会社であるマキノジェイ株式会社は、自動車や二輪車、建機、農機など量産部品加工向けに、短期間で生産ラインを立ち上げるターンキーソリューションを提供するエンジニアリングカンパニーとして位置付けられている。
主な国内拠点は、目黒区の本社をはじめ、名古屋支店、大阪支店などがあり、販売・サービス体制を整えている。関連会社には、マキノジェイ、マキノ電装、牧野技術サービス、牧野フライス技研、マキノ・ロジスティックス、海外ではマキノコリアなどがあり、製造から販売、保守、エンジニアリングまで一貫した体制を構築している。
近年は、投資ファンドであるMBKパートナーズと組み、MBO(経営陣による買収)を通じて非上場化を目指す動きが進んでおり、短期的な市場評価に左右されにくい経営体制への移行が注目されている。高付加価値・高精度という従来の強みを維持しつつ、中長期視点での事業強化を進める局面にある企業といえる。
牧野フライス製作所 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株配当 DPS(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 116,737 | -3,612 | -1,374 | -2,703 | -110.8 | 20 |
| 連22.3 | 186,591 | 11,300 | 14,274 | 12,042 | 499.2 | 60 |
| 連23.3 | 227,985 | 17,492 | 19,906 | 16,073 | 671.9 | 150 |
| 連24.3 | 225,360 | 16,372 | 18,918 | 15,981 | 670.6 | 150 |
| 連25.3 | 234,216 | 18,516 | 20,090 | 14,415 | 613.2 | 180 |
| 連26.3予 | 240,000 | 21,500 | 22,000 | 18,000 | 769.5 | 0 |
| 連27.3予 | 260,000 | 23,500 | 24,000 | 19,500 | 833.6 | 0 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 連23.3 | 2,948 | -8,793 | -340 |
| 連24.3 | 12,910 | -6,411 | -6,390 |
| 連25.3 | 13,571 | -13,877 | -6,726 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 7.6 | 8.1 | 4.6 | – | – |
| 連24.3 | 7.2 | 7.2 | 4.4 | – | – |
| 連25.3 | 7.9 | 6.3 | 3.9 |
13.1(高) 6.7(安) |
1.07 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
直近の業績を見ると、売上高は連24.3で2,253億、連25.3で2,342億、連26.3予で2,400億と緩やかな増収基調にある。工作機械メーカーとしては堅調な推移であり、受注環境が極端に悪化している状況ではないことが読み取れる。
利益面では、営業利益が連24.3で163億、連25.3で185億、連26.3予で215億と着実に拡大している。経常利益も189億→200億→220億、純利益も159億→144億→180億と、25.3期に一時的な減益はあるものの、26.3期は再び増益に転じる見通しである。利益水準自体は安定しており、収益力が大きく崩れている様子はない。
収益性を見ると、営業利益率は2023年7.6%、2024年7.2%、2025年7.9%と、7%台で安定して推移している。工作機械業界としては標準からやや良好な水準だが、突出して高いわけではない。ROEは8.1%→7.2%→6.3%、ROAは4.6%→4.4%→3.9%と、年々低下しており、資本効率はやや悪化傾向にある点が気になる。
バリュエーション面では、2025年の実績PERは高値平均13.1倍、安値平均6.7倍とレンジが広く、景気循環による評価変動の大きさが表れている。PBRは1.0倍とほぼ解散価値水準であり、資産面から見ると過度な割高感はない。一方で、ROEが6.3%にとどまる中でPBR1倍という評価は妥当水準とも言える。
以上を総合すると、牧野フライス製作所は売上・利益ともに安定感はあるが、成長性や資本効率が高い企業とは言い難い。営業利益率は安定しているものの、ROE・ROAが低下傾向にあり、企業価値を大きく押し上げる材料は現時点では限定的である。
投資判断としては、高成長を狙う銘柄ではなく、業績の底堅さとPER・PBRの水準を見ながら評価する典型的な循環株という位置付けになる。PERが安値圏に近づく局面では下値余地は限定的と考えられる一方、ROEの低下が続く限り、大きな再評価は起きにくい。中立からやや慎重寄りのスタンスで、景気サイクルを意識した投資が前提となる銘柄である。
配当目的とかどうなの?
結論から言うと、配当目的にはまったく向かない銘柄という評価になる。提示されている数値では、連26.3・連27.3ともに予想配当利回りは0.00%となっており、少なくとも今後2期については配当収入を一切期待できない。インカムゲインを目的とした投資の対象にはならず、配当目的で保有する理由は見当たらない。
業績自体を見ると、営業利益・経常利益・純利益はいずれも黒字で、26.3期予では営業利益215億、純利益180億と収益力は十分にある。それにもかかわらず無配を選択している点から、会社側は利益の株主還元よりも、内部留保の積み増しや事業投資を優先している姿勢が読み取れる。
過去には配当を実施していたものの、今後はMBOを見据えた資本政策や、非上場化を前提とした財務運営を意識している可能性が高く、安定配当や累進配当といった方針とは性格が異なる。短期的にも中期的にも、配当復活を前提とした投資は組み立てにくい状況である。
総合すると、牧野フライス製作所は「配当を取りに行く銘柄」ではなく、「事業価値やMBOに伴う株価変動を狙う銘柄」である。配当目的の投資家にとっては完全にミスマッチであり、インカム狙いであれば他銘柄を選ぶべきである。
今後の値動き予想!!(5年間)
牧野フライス製作所は、金型・精密部品・航空機向けを中心に高付加価値のマシニングセンタを展開する工作機械メーカーであり、業績・株価ともに設備投資サイクルの影響を強く受ける循環株である。現在の株価は10,750円であり、この水準を起点に今後5年間の値動きを考える。
直近の業績を見ると、売上は2,250億円台から2,400億円規模へと緩やかに拡大し、営業利益は160億円台から210億円超へと着実に増加している。営業利益率は7%台で安定しており、工作機械業界としては堅実だが、突出して高い水準ではない。ROEは8%台から6%台へ低下、ROAも4%台から3%台へとじりじり下がっており、資本効率の面では改善余地が残る。一方、PERは6.7〜13.1倍と循環株らしく振れ幅が大きく、PBRは1.0倍前後と解散価値に近い評価にとどまっている。
良い場合は、世界的な設備投資需要が想定以上に底堅く推移し、金型・航空機向けの高精度加工需要が継続するシナリオである。牧野フライス製作所は量産向けではなく多品種・高剛性の高級機に強みを持つため、価格競争に巻き込まれにくく、利益率の安定が見込める。営業利益は200億円超が定着し、営業利益率も7〜8%台を維持する。ROEは大きく跳ねないものの、業績の安定性が評価され、PERは過去レンジ上限の12〜13倍水準が許容される。この場合、5年後の株価は13,000円〜16,000円程度が視野に入る。
中間の場合は、設備投資は好不況を繰り返しながらも大きく崩れず、売上・利益は緩やかな増減にとどまるケースである。売上は2,400〜2,600億円規模、営業利益は200億円前後で推移し、営業利益率は7%台で安定する。市場評価は循環株として抑制され、PERは8〜10倍、PBRは1倍前後で落ち着く。この場合、5年後の株価は9,000円〜11,500円程度となり、現在値近辺を中心としたレンジ相場が続く可能性が高い。値上がり益よりも、景気サイクルに応じた売買タイミングが重要になる局面である。
悪い場合は、世界景気の後退や製造業の設備投資抑制により、受注が大きく落ち込むシナリオである。売上・利益ともに縮小し、営業利益率は6%前後まで低下する。ROE・ROAもさらに悪化し、市場は業績ピークアウトを強く意識する。評価は過去の安値圏に押し戻され、PERは6〜7倍、PBRも1倍を下回る水準まで調整される。この場合、5年後の株価は6,000円〜8,000円程度まで下落するリスクがある。
総合すると、牧野フライス製作所は高配当や急成長を期待する銘柄ではなく、技術力と高付加価値製品による業績の底堅さを評価する循環株である。配当が見込めない局面ではインカム狙いには不向きだが、PERが低位に沈んだ局面では下値余地が限定的になりやすい。一方で、設備投資回復期には株価の戻りも比較的大きく、5年間では中間シナリオが最も現実的と考えられる。景気サイクルとMBOを巡る動向を意識しながら、メリハリのある値動きを前提に向き合うべき銘柄と言える。
この記事の最終更新日:2026年1月13日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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