株価
日東工器とは

日東工器は、配管の簡易接続器具である迅速流体継手の最大手として知られる、日本の機械機器メーカーである。本社は東京都大田区にあり、水、油、ガスなど各種流体配管を安全かつ迅速に接続・分離できる製品を中核に、産業インフラを支える分野で高い存在感を持っている。
同社は1956年10月、創業者である御器谷俊雄が、自ら開発したエアマイクロメータの製造・販売を目的として設立した。その後、流体制御や接続技術へと事業を広げ、現在の主力である迅速流体継手事業を確立した。1995年に株式を店頭登録し、1998年に東証2部、2000年には東証1部へ上場するなど、長年にわたり堅実な成長を続けてきた企業である。
最大の特徴は、迅速流体継手、いわゆるカプラ製品における圧倒的な商品力と技術力にある。工具を使わずに配管の着脱が可能なこの製品は、生産ラインの段取り替え時間短縮や作業者の安全性向上に直結するため、自動車、工作機械、半導体製造装置、建設機械、化学プラント、医療機器、食品工場など幅広い分野で使用されている。日東工器はこの分野で国内トップクラスのシェアを持ち、耐久性、密閉性、安全性といった品質面で高い評価を受けている。
製品の多くは自社開発によるものであり、用途別・流体別に細かく設計された豊富なラインアップを持つ点が強みである。このため、単純な価格競争に陥りにくく、顧客の設備に深く組み込まれることで長期的な取引関係を築きやすい事業構造となっている。
迅速流体継手に加え、省力化機械工具事業も重要な柱である。磁気ボール盤を中心とした加工機器は、鉄骨加工や建設、造船などの分野で広く使われており、この分野でも最大手クラスの地位を確立している。また、リニア駆動ポンプとその応用製品では、定量性や静音性、応答性が求められる用途に対応し、研究装置や産業機器向けに独自技術を活かした製品を展開している。
さらに、建築機器分野ではドアクローザなどを手掛けており、産業用途に限らず建築分野にも事業領域を広げている点が特徴である。いずれの分野でも、派手な量産型製品よりも、品質や信頼性が重視される領域を狙っている。
海外展開にも積極的で、アジア、北米、欧州を中心に製造・販売拠点を展開している。迅速流体継手は世界共通のニーズがある製品であり、海外売上比率の拡大は中長期的な成長テーマとなっている。一方で、為替や海外景気の影響も受けやすく、グローバル展開と安定経営のバランスを取りながら事業を進めている。
全体として日東工器は、迅速流体継手というニッチだが不可欠な分野で確固たる地位を築き、自社開発製品を武器に長期的な安定需要を確保してきた企業である。高成長を追うタイプではないが、産業現場に深く根付いた製品群と海外展開による緩やかな成長を特徴とする、堅実型の機械メーカーといえる。
日東工器 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 22,533 | 2,091 | 2,266 | 1,549 | 76.1 | 31 |
| 連22.3 | 25,281 | 3,355 | 3,514 | 1,927 | 95.0 | 40.5 |
| 連23.3 | 28,091 | 3,665 | 3,818 | 2,625 | 129.5 | 53 |
| 連24.3 | 27,072 | 2,680 | 2,821 | 1,841 | 93.5 | 43 |
| 連25.3 | 27,256 | 2,342 | 2,510 | 1,345 | 71.9 | 39 |
| 連26.3予 | 27,300 | 1,500 | 1,700 | 650 | 34.6 | 40 |
| 連27.3予 | 27,900 | 1,610 | 1,810 | 1,160 | 61.8 | 40 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 2,299 | 4,652 | -1,498 |
| 2024.3 | 2,307 | -333 | -3,740 |
| 2025.3 | 2,709 | -6,852 | -1,385 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 13.0% | 4.5% | 3.9% | – | – |
| 2024 | 9.8% | 3.1% | 2.8% | – | – |
| 2025 | 8.5% | 2.3% | 2.0% | 18.5〜25.7倍 | 0.62倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
2024年3月期は売上約270億円に対し、営業利益は約26億円、経常利益は約28億円、純利益は約18億円である。営業利益率は9.8%と製造業としてはまだ悪くない水準だが、過去と比べると低下傾向にある。ROEは3.1%、ROAは2.8%と、資本効率はかなり低めで、稼ぐ力は強いとは言えない。
2025年3月期になると、売上は約272億円とほぼ横ばいで推移しているものの、営業利益は約23億円、経常利益は約25億円、純利益は約13億円へと減少している。営業利益率は8.5%まで下がり、ROEは2.3%、ROAは2.0%とさらに悪化している。売上が伸びない中で利益率が下がっており、事業環境やコスト構造の影響を受けやすい状態にあることが読み取れる。
2026年3月期予想では、売上は約273億円と引き続き横ばいだが、営業利益は約15億円、経常利益は約17億円、純利益は約6億円まで落ち込む見通しとなっている。利益水準は2024年と比べて大きく縮小する計画であり、短期的には収益力の回復よりも低下局面が続く前提になっている。
評価面を見ると、2025年時点の実績PERは18.5倍から25.7倍と幅はあるものの、利益水準や成長性を考えると割高感がある。一方でPBRは0.6倍と低く、純資産面だけを見ると割安に見える。ただし、ROEが2%台まで低下している現状では、PBRが低いのは資本を十分に活かせていない結果とも言え、単純に割安とは判断しにくい。
これらを総合すると、日東工器は売上の安定性はあるものの、営業利益率、ROE、ROAが年々低下しており、収益力と資本効率の弱さがはっきり表れている。PBRの低さは下値の支えにはなり得るが、利益が減少している局面でPERが高めな点は評価面の重さにつながる。
上記数値だけで判断するなら、現状は割安修復や成長を狙って積極的に買う局面ではなく、利益低下がどこで止まるかを見極める段階にある。安定事業ではあるが、収益性の改善が確認できるまでは慎重、もしくは中立からやや弱めの投資判断が妥当と言える。
配当目的とかどうなの?
日東工器を配当目的で見た場合、正直なところ「やや物足りない」という評価になる。予想配当利回りは2026年3月期で2.08%、2027年3月期も2.08%とされており、日本株全体の中では平均よりやや低めの水準である。高配当株として注目される3〜4%台には届かず、配当利回りを主目的に選ぶ銘柄ではない。
配当の安定性という点では一定の評価はできる。業績が減速している局面でも、配当は40円水準を維持する計画となっており、急激な減配を繰り返すタイプの企業ではない。ただし、これは裏を返せば、利益が減っても配当を維持している状態であり、余裕をもって増配できるほどの収益力があるわけではない。
実際に数値を見ると、純利益は2024年の約18億円から2025年は約13億円、2026年予想では約6億円まで減少する見通しである。一方で配当は40円前後を維持しており、配当性向はかなり高くなっていく構造である。ROEやROAも2%前後まで低下しており、高収益を背景にした安定配当とは言い難い。
以上を踏まえると、日東工器は「配当がゼロになるリスクは低いが、利回りで魅力を感じる銘柄ではない」という位置付けになる。配当目的単独で保有するには利回りが低く、利益の減少が続けば将来的な減配リスクも完全には否定できない。配当を主目的に投資するのであれば、より利回りが高く、利益水準に余裕のある企業の方が適している。日東工器は、あくまで事業の安定性を評価したうえで、その補助的なリターンとして配当を受け取る銘柄であり、高配当狙いの投資戦略には向かないといえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
日東工器は、配管の簡易接続器具である迅速流体継手を主力とする産業機器メーカーであり、ニッチ分野で高いシェアを持つ安定型の企業である。現在の株価は1,917円であり、この水準を起点に今後5年間の値動きを考える。
直近の業績を見ると、売上高は270億円前後で推移しており、大きな成長はないものの比較的安定している。一方で、営業利益は2024年に約26億円、2025年に約23億円、2026年予想では約15億円と減少傾向にあり、収益力は明確に弱含んでいる。営業利益率も13%台から9%台、さらに8%台へと低下しており、過去と比べると利益体質は悪化している。ROEは4%台から2%台、ROAも3%台から2%台へと下がっており、資本効率はもともと高くないうえに、さらに低下している点が特徴である。評価面ではPBRは0.6倍前後と低いが、実績PERは18倍から25倍と、利益水準に対しては割安とは言いにくい位置にある。
良い場合は、利益の下落が一巡し、迅速流体継手を中心とした主力事業の安定性が改めて評価されるシナリオである。売上は大きく伸びないものの、コスト抑制や価格改定により営業利益率が8%台で下げ止まり、ROEも3%前後まで回復する。市場からは「低成長だが安定収益の堅実企業」として評価され、PBRは0.6倍台から0.9倍前後まで修復される。この場合、5年後の株価は2,300円〜2,700円程度が視野に入る。
中間の場合は、業績が会社計画どおりに推移し、売上は横ばい、利益水準も低位で安定するケースである。営業利益率は7〜8%台、ROEは2%台にとどまり、高収益企業としての評価は得られない。評価指標も大きくは動かず、PERは15〜20倍、PBRは0.6〜0.8倍程度で推移する。この場合、株価は現在値近辺を中心に推移し、5年後の水準は1,800円〜2,100円程度となる。値上がり益よりも配当を受け取りながらの保有が主なリターン源となる。
悪い場合は、利益減少が想定以上に長期化し、営業利益率が6%台まで低下するシナリオである。ROE・ROAもさらに悪化し、配当維持が負担と見なされることで市場評価は厳しくなる。PERは10〜12倍まで切り下がり、PBRも0.5倍前後まで低下する可能性がある。この場合、5年後の株価は1,200円〜1,500円程度まで下落するリスクがある。
総合すると、日東工器は高成長を狙う銘柄ではなく、ニッチ分野での競争力と事業の安定性を背景に、緩やかな値動きと配当を期待する堅実型の銘柄である。一方で、収益性と資本効率の低下が続いており、株価の大きな上昇には利益体質の改善が不可欠となる。今後5年間では中間シナリオが最も現実的で、景気や業績次第で上下に振れつつも、全体としてはレンジ内で推移しやすい銘柄と言える。
この記事の最終更新日:2026年1月14日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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