株価
冨士ダイスとは

冨士ダイスは、超硬合金製の耐摩耗工具・金型を専門とする日本の製造業であり、この分野で国内トップクラスのシェアを持つ企業である。本社は東京都大田区下丸子に置き、創業以来一貫して超硬耐摩耗工具に特化した事業を展開してきた。
冨士ダイスは、ものづくりに不可欠な金型・工具の中でも、特に高精度かつ高耐久が求められる「超硬耐摩耗工具」にこだわり続けてきたメーカーである。量産製品の品質は工具の精度によって左右されることから、同社では自社製品を「生命工具」と位置付けている。工具や金型の精度が顧客製品の品質、ひいては製品の価値そのものを決定づけるという考え方が、企業文化として根付いている。
主力製品は、超硬合金製の耐摩耗工具および金型であり、粉末冶金用金型を中心に、自動車部品、産業機械、電子部品などの量産工程で使用されている。冨士ダイスの製品は、耐摩耗性、寸法精度、寿命の長さに優れ、大量生産ラインの安定稼働を支える存在となっている。
事業の大きな特徴は、完全な受注生産と直接販売を基本とするビジネスモデルにある。既製品を大量に販売するのではなく、顧客の製造する製品や工程に合わせて仕様を細かく調整したオーダーメイド品を提供している。約70種類にも及ぶ原料粉末の調合から、設計、焼結、機械加工、検査までを自社で一貫して行う製販一体体制を構築しており、少量多品種かつ高付加価値な受注に柔軟に対応できる点が強みである。
焼結技術や材料設計技術は同社の中核であり、長年の技術蓄積によって高精度・高品質な超硬製品を安定的に供給している。顧客との関係も単なる売り手と買い手ではなく、製品開発段階から関与し、最適な工具・金型を一緒に作り上げていく姿勢を重視している。
取引先は非常に幅広く、インフラ設備、高層ビル、光通信、輸送用機械、コンピュータ、医療機器、家電、生活用品など、多様な産業分野に広がっている。グループ全体で約3,000社と取引実績があり、特定業界への依存度が低い点も事業の安定性につながっている。
財務面では、創業以来一度も赤字に陥ったことがなく、長期にわたって黒字経営を継続している点が大きな特徴である。高い自己資本比率と潤沢な手元資金を有しており、景気変動や経済危機に対しても耐性の高い堅固な財務基盤を維持している。
全体として冨士ダイスは、派手な成長を狙う企業ではなく、超硬耐摩耗工具というニッチだが日本のものづくりに不可欠な分野で、技術力と信頼を積み重ねてきた企業である。受注生産・直接販売による高付加価値モデル、約3,000社に及ぶ顧客基盤、創業以来の黒字経営という特徴を併せ持つ、極めて堅実で安定感のある製造業と位置付けられる。
冨士ダイス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 14,247 | 96 | 300 | 468 | 23.5 | 22 |
| 連22.3 | 16,874 | 1,113 | 1,202 | 790 | 39.9 | 22 |
| 連23.3 | 17,179 | 1,150 | 1,225 | 1,292 | 65.2 | 32 |
| 連24.3 | 16,678 | 809 | 882 | 709 | 35.7 | 32 |
| 連25.3 | 16,595 | 488 | 603 | 426 | 21.4 | 40 |
| 連26.3予 | 17,700 | 550 | 650 | 430 | 21.8 | 40 |
| 連27.3予 | 18,000 | 620 | 720 | 470 | 23.9 | 40 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 775 | -712 | -453 |
| 2024.3 | 2,050 | -1,656 | -651 |
| 2025.3 | 1,800 | -849 | -659 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年 | 営業利益率 | ROA | ROE | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 6.6% | 4.9% | 6.3% | – | – |
| 2024 | 4.8% | 2.7% | 3.4% | – | – |
| 2025 | 2.9% | 1.6% | 2.0% | 23.8〜33.1倍 | 1.10倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
2024年3月期は売上が約166.7億円、営業利益が8.0億円、経常利益が8.8億円、純利益が7.0億円である。営業利益率は4.8%と、それまでより低下しているものの、まだ一定の利益水準は維持できていた。ROEは3.4%、ROAは2.7%で、資本効率は高いとは言えないが、極端に悪い水準でもなかった。
2025年3月期になると、売上は約165.9億円とほぼ横ばいである一方、営業利益は4.8億円、経常利益は6.0億円、純利益は4.2億円へと大きく減少している。営業利益率は2.9%まで低下し、ROEは2.0%、ROAは1.6%と、収益性と資本効率の悪化がはっきり表れている。売上が落ちていないにもかかわらず利益が急減している点から、コスト構造や採算面に弱さが出ている局面といえる。
2026年3月期予想では、売上は約177.0億円とやや回復する見通しだが、営業利益は5.5億円、経常利益は6.5億円、純利益は4.3億円にとどまり、2024年の利益水準には戻らない想定となっている。営業利益率の大幅な改善は前提とされておらず、低収益体質が続く見通しであることが読み取れる。
評価面を見ると、2025年時点の実績PERは23.8倍から33.1倍とかなり高い水準にある。一方でPBRは1.1倍で、資産面から見ても割安感はない。ROEが2.0%という低い水準にとどまっている状況を踏まえると、このPBR水準も必ずしも低いとは言えず、利益力に対して株価評価が先行している印象が強い。
営業利益率は2023年の6.6%から2024年4.8%、2025年2.9%へと急速に低下しており、ROE、ROAも同様に一貫して悪化している。収益性と資本効率が明確に下向いている中で、PERだけが20倍超で評価されている点は、数値の整合性という観点ではかなり厳しい。
これらを総合すると、冨士ダイスは売上自体は比較的安定しているものの、稼ぐ力と資本効率が急速に弱まっている局面にある。PBRは1倍超で下値余地もあり、PERは高水準で、現状の利益規模を正当化できる評価とは言いにくい。上記数値だけで判断するなら、現時点は割安株でも成長株でもなく、利益低下局面に対して株価評価が追いついていない状態といえる。投資判断としては慎重、もしくは弱めであり、営業利益率やROEが底打ちし、回復に転じる兆しが確認できるまでは、積極的に買う局面ではない。
配当目的とかどうなの?
冨士ダイスを配当目的で見た場合、結論から言うと「数字だけ見ればそこそこ魅力はあるが、安心して配当狙いと言い切れる状況ではない」という評価になる。予想配当利回りは2026年3月期で3.60%、2027年3月期も3.60%とされており、水準だけ見れば日本株の中ではやや高めで、高配当寄りの部類に入る。利回りだけを基準にすれば、配当目的として検討対象に入る数字である。
ただし、利益とのバランスを見ると注意点が多い。2025年3月期の純利益は約4.2億円、2026年3月期予想でも約4.3億円と低水準で推移している。一方で配当は40円を維持する計画であり、利益に対する配当の比率はかなり高くなっている構造である。営業利益率は2023年の6.6%から2024年4.8%、2025年2.9%へと急低下しており、ROEは2.0%、ROAは1.6%と、配当を安定的に支えるだけの収益力が十分とは言いにくい。
PBRは1.1倍と特別に低いわけではなく、ROEが2%台にとどまっている現状では、資本効率面から見た余裕も大きくない。創業以来黒字という企業体質や財務の堅さはあるものの、足元の利益水準を見る限り、今後も同水準の配当を無理なく増やしていける状況とは言えない。
以上を踏まえると、冨士ダイスは配当利回りだけを見ると魅力はあるが、その配当は「利益成長に裏打ちされた高配当」ではなく、「利益が低下する中でも維持している配当」という性格が強い。配当がすぐに大きく減るとは限らないものの、利益低迷が長引けば将来的な減配リスクは否定できない。
上記数値だけで判断するなら、配当目的で積極的に安心して買う銘柄というより、配当水準は評価しつつも、収益性の回復を確認するまで慎重に見るべき銘柄である。高配当狙いの主力に据えるより、限定的・補助的な位置付けが妥当と言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
冨士ダイスは、超硬合金製の耐摩耗工具・金型を主力とするメーカーであり、受注生産・直接販売を基本とした高付加価値型のビジネスモデルを持つ企業である。現在の株価は1,110円であり、この水準を起点に今後5年間の値動きを考える。直近の業績を見ると、売上高は160億円台後半で比較的安定して推移しているものの、利益面は明確に悪化している。営業利益は2024年に約8億円あったものが、2025年には約4億円まで減少し、2026年予想でも約5億円と低水準にとどまっている。
営業利益率は2023年の6.6%から2024年4.8%、2025年には2.9%まで低下しており、収益力の低下がはっきり表れている。ROEは6.3%から2.0%、ROAも4.9%から1.6%へと下がっており、資本効率も急速に悪化している。一方、株価評価を見ると、2025年時点の実績PERは23.8倍から33.1倍と高水準で、PBRも1.1倍と、利益水準に対して株価は決して割安ではない。
良い場合は、利益率の低下が2026年を底に止まり、超硬耐摩耗工具の受注環境が徐々に改善するシナリオである。売上は170〜180億円規模で安定し、営業利益率が4%前後まで回復、ROEも3%台まで戻る。市場からは「高成長ではないが、技術力と財務の堅さを持つ安定配当銘柄」として再評価され、PBRは1.1倍から1.4倍程度まで見直される。この場合、5年後の株価は1,400円〜1,700円程度が視野に入る。
中間の場合は、業績が会社計画どおりに推移し、売上は横ばい、利益水準も低位で安定するケースである。営業利益率は3%前後、ROEは2%台にとどまり、大きな改善は見られない。評価面ではPERは20〜25倍、PBRは1.0〜1.2倍程度で推移し、市場評価は中立に落ち着く。この場合、株価は現在値近辺を中心に推移し、5年後の水準は1,050円〜1,250円程度となり、配当を受け取りながらの横ばい推移が想定される。
悪い場合は、利益低下が想定以上に長期化し、営業利益率が2%台前半まで低下するシナリオである。ROE・ROAもさらに悪化し、配当維持が重荷と見なされる。市場からは「低収益体質が固定化した企業」と評価され、PERは15倍前後、PBRは0.7〜0.8倍程度まで切り下がる可能性がある。この場合、5年後の株価は700円〜900円程度まで下落するリスクがある。
総合すると、冨士ダイスは高成長を狙う銘柄ではなく、ニッチ分野での技術力と財務の安定性を背景に、配当を含めた緩やかなリターンを期待するタイプの銘柄である。ただし足元では収益性と資本効率の低下が顕著で、株価評価は利益水準に対してやや高い。今後5年間では中間シナリオが最も現実的であり、値上がり益よりも配当を受け取りながら、収益性の回復を待つ展開になりやすい銘柄と言える。
この記事の最終更新日:2026年1月14日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す