株価
豊田自動織機とは

豊田自動織機は、トヨタグループの本家・源流にあたる中核企業であり、日本の自動車産業そのものの出発点となった企業である。1926年に豊田佐吉によって株式会社豊田自動織機製作所として設立され、現在のトヨタ自動車は1937年に自動車部門が分社化して誕生した。愛知製鋼などのグループ主要企業も同社から派生しており、文字通りトヨタグループの祖業を担う存在である。本社は愛知県刈谷市に置かれ、地元では「織機」の通称で呼ばれることも多い。
現在の豊田自動織機は、繊維機械メーカーという枠を超え、産業車両、自動車部品、完成車生産までを手がける総合製造業となっている。事業の柱は大きく、産業車両事業、自動車事業、繊維機械事業に分かれるが、売上の過半を占めるのは産業車両事業である。「トヨタL&F」ブランドで展開するフォークリフトは世界トップシェアを誇り、自動倉庫や無人搬送車なども含め、物流の自動化・省人化需要を背景にグローバルで強い競争力を持っている。
自動車関連では、トヨタ自動車向けを中心にエンジン、カーエアコン用コンプレッサー、電子機器、鋳造品、電動化関連部品などを開発・製造している。特にカーエアコン用コンプレッサーは世界トップシェアを持つ主力製品である。また、完成車事業としてはRAV4やそのOEM車であるスズキ・アクロスなどの組み立ても担っており、トヨタグループ内で重要な生産機能を果たしている。近年はEV用充電スタンドや車載電池など、電動化関連分野への対応も進めている。
繊維機械事業は創業の原点であり、自動織機やエアジェット織機などで世界トップクラスのシェアを持つ。売上構成比は小さいものの、技術力とブランドの象徴的存在であり、社名から「自動織機」を外さなかった理由にもなっている。
グループ内での立ち位置としては、豊田自動織機は現在もトヨタ自動車の大株主であり、同時にトヨタグループ各社の株式を多数保有してきた。しかし、保有資産に対して自社の時価総額が相対的に低い「資産価値株」としての側面が強く、敵対的買収リスクが意識された経緯がある。このため2000年代以降、トヨタグループによる持株比率引き上げが進み、現在はトヨタ自動車が支配株主となっている。近年では、トヨタなどによるTOBを通じた再編・非上場化の思惑が市場で意識されやすい銘柄でもある。
一方で、2024年にはエンジン認証試験の不正問題が発覚し、特別調査委員会の報告書では、トヨタからの受託比率が高いことによる「受託体質」や、自律的に課題を発見・解決する力の弱さが指摘された。これは同社がグループ中核であるがゆえの構造的課題を示している。
総合すると、豊田自動織機はフォークリフトを中心とした産業車両で世界トップクラスの競争力を持ち、自動車部品・完成車生産でもトヨタグループに不可欠な存在である一方、グループ再編や資本政策、不祥事対応といった要素が企業評価に大きく影響しやすい企業でもある。事業の実力と資産価値、そしてトヨタグループ本家という特殊な立ち位置を併せ持つ、非常に特徴的な企業と言える。
豊田自動織機 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
税前利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 (円) |
一株配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 21.3 | 2,118,302 | 118,159 | 184,011 | 136,700 | 440.3 | 150 |
| 22.3 | 2,705,183 | 159,066 | 246,123 | 180,306 | 580.7 | 170 |
| 23.3 | 3,379,891 | 169,904 | 262,967 | 192,861 | 621.2 | 190 |
| 24.3 | 3,833,205 | 200,404 | 309,190 | 228,778 | 736.9 | 240 |
| 25.3 | 4,084,984 | 221,695 | 351,463 | 262,312 | 857.0 | 280 |
| 26.3予 | 4,000,000 | 100,000 | 230,000 | 180,000 | 599.1 | 0 |
| 27.3予 | 4,150,000 | 240,000 | 370,000 | 270,000 | 898.6 | 0 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 23.3 | 194,964 | -427,642 | 183,690 |
| 24.3 | 443,590 | 47,903 | -209,491 |
| 25.3 | 171,578 | -43,403 | -198,654 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 23.3 | 5.0% | 5.0% | 2.4% | – | – |
| 24.3 | 5.2% | 3.7% | 2.0% | – | – |
| 25.3 | 5.4% | 5.3% | 2.7% | 10.1〜18.1倍 | 1.09倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績規模を見ると、売上高は2024年で3兆8,332億円、2025年で4兆849億円と、日本でも屈指の巨大企業であることが分かる。営業利益は2,000億円前後、純利益も2,000億円を超えており、絶対額としての稼ぐ力は非常に大きい。2024年から2025年にかけては売上・利益ともに順調に拡大しており、産業車両や自動車関連事業が好調だったことが数字から読み取れる。
一方で、2026年予想では営業利益が1,000億円まで大きく落ち込む見通しとなっており、利益の振れ幅がかなり大きい企業である点がはっきりしている。売上高は4兆円規模を維持するものの、利益が半減する予想になっていることから、外部環境や一時的要因の影響を強く受けやすい体質であることがうかがえる。
収益性の指標を見ると、営業利益率は2023年から2025年にかけて5.0%から5.4%へと緩やかに改善しているが、水準自体は決して高くない。ROEは5%前後、ROAは2%台と低く、資本効率・資産効率は明確に弱い部類に入る。これは、トヨタグループの中核として巨大な資産や持株を抱え、安定性を重視する構造である一方、効率よく利益を回す企業ではないことを示している。
評価面に目を向けると、2025年実績PERは安値で10.1倍、高値でも18.1倍と比較的低水準で、PBRも1.0倍前後にとどまっている。市場はこの企業を高成長株として評価しているのではなく、資産価値と安定収益をベースにした控えめな評価を与えていることが分かる。数字だけを見る限り、割高感はなく、むしろ「成長しない前提」で価格が付いている印象が強い。
また、2026年予想で配当がゼロとされている点は、通常の業績悪化というより、トヨタグループ再編やTOB、資本政策といった特殊要因を強く意識した動きと見るのが自然である。これは、株主還元よりもグループ全体の構造対応を優先する局面にあることを示唆している。
これらを総合すると、豊田自動織機は売上規模と事業の安定性は極めて高いが、利益率や資本効率は低く、業績成長で株価が大きく上がるタイプの企業ではない。一方で、PER・PBRが低く、資産価値やグループ戦略に支えられた下値の堅さは意識されやすい。
結論として、提示された数値だけで判断するなら、豊田自動織機は「成長株ではなく、資産株・特殊要因株」に近い性格の銘柄であり、事業の成長性よりも、トヨタグループ再編やTOBといった資本イベントをどう見るかが投資判断の中心になる企業だと言える。
配当目的とかどうなの?
まず予想配当利回りを見ると、2026年、2027年ともに0.00%となっており、少なくとも向こう数年間は配当収入を期待できない状況にある。過去には1株240円、280円と一定の配当実績があったものの、それが継続される前提は崩れている。数字だけを見る限り、会社は配当を出す意思を意図的に止めていると判断するのが自然である。
事業規模自体は売上高4兆円規模、平時であれば純利益2,000億円超を稼ぐ体力があり、「業績悪化で配当が出せない企業」ではない。それにもかかわらずゼロ配当としている点は、株主還元よりも資本政策やグループ再編を優先していることをはっきり示している。これは配当を重視する投資家にとっては明確なマイナス材料になる。
また、ROEは5%前後、ROAは2%台と資本効率は低く、もともと高配当を安定的に出し続けるタイプの企業ではない。評価もPBR1倍前後と、市場はこの企業を「配当で報いる企業」として見ていないことが数字から読み取れる。
これらを踏まえると、豊田自動織機は配当を目的に長期保有する銘柄としては適さない。配当の再開時期や水準も不透明であり、インカムゲイン狙いで持つ合理性はない。もし投資するとすれば、配当ではなく、トヨタグループ再編やTOBなどの資本イベントを期待する、もしくは資産価値に着目するという視点になる。結論として、提示された数値だけで判断するなら、豊田自動織機は配当目的では明確に対象外であり、インカム狙いの投資家にとっては避けるべき銘柄だと言える。
今後の値動き予想!!(5年間)
豊田自動織機の今後5年間の株価がどのように動くのかを考えるうえで、最も重要な要素になるのは、「事業成長」ではなく、トヨタグループ再編やTOBなどの資本政策がどう進むのかという点だと言える。豊田自動織機はトヨタグループの本家・源流企業であり、フォークリフトを中心とした産業車両や自動車部品、完成車組立などを担う中核企業だが、営業利益率は5%前後、ROEも5%前後と、成長企業というより安定企業の色合いが強い。株価は事業成長よりも、グループ内での位置付けや資本関係の変化に強く左右されやすい銘柄である。
現在の株価は19,450円前後。PERは10〜18倍、PBRは1倍前後と、株価はすでに「低成長・低還元」を前提とした水準にある。実際、2026年・2027年は配当ゼロ予想となっており、市場も配当や成長ではなく、「何か起きるかどうか」を見ながら評価している状態だと言える。つまり豊田自動織機は、期待先行型というよりも、イベント待ちで持たれやすい銘柄であり、そのイベントの有無によって5年後の株価は大きく変わる。
まず、良いシナリオから考えると、ここではトヨタ自動車を中心としたグループ再編が進み、豊田自動織機がTOBや非上場化の対象になるケースを想定する。この場合、事業の成長性に関係なく、株価には一定のプレミアムが乗りやすい。過去の日本企業の再編事例を踏まえると、現在値から20〜40%程度の上振れは十分に考えられ、TOB価格が提示されれば株価は23,000円〜27,000円程度まで評価される可能性がある。これは業績による上昇ではなく、資本政策主導で一気に株価が切り上がる展開である。
次に中間のシナリオは、再編やTOBといった決定的な材料は出ないものの、トヨタグループ内での中核的な役割は維持され、業績も大崩れせずに推移するケースだ。営業利益率は5%前後、ROEも低水準のままで、成長期待は乏しいが、PBR1倍前後という評価が下支えとなり、大きく売られることもない。この場合、株価は18,000円〜22,000円程度のレンジで上下しながら推移し、5年後も現在値付近、もしくはやや上程度に落ち着く可能性が高い。時間をかけて横ばいに近い値動きになるイメージである。
一方、悪いシナリオとして考えられるのは、グループ再編やTOBへの期待が後退し、さらに配当ゼロの状態が長期化するケースだ。業績自体は急激に悪化しなくても、「低成長・低還元企業」という評価がより強まり、投資家の関心が薄れる可能性がある。この場合、PBR1倍割れが意識され、株価は15,000円〜17,000円程度まで下落する場面も想定される。ただし、トヨタグループの本家という立ち位置や財務の安定性を考えると、企業価値が大きく毀損するような深刻な下落リスクは限定的と見られる。
こうして3つのシナリオを総合して考えると、豊田自動織機は事業内容や収益力で株価が大きく伸びる銘柄ではない一方、トヨタグループ再編という特殊要因を常に内包しており、その動き次第で評価が大きく変わる“振れ幅のある銘柄”であることが分かる。
結局のところ、豊田自動織機の株価は「フォークリフトがどれだけ売れるか」や「利益率がどこまで上がるか」ではなく、「トヨタグループがこの会社をどう扱うのか」という一点で決まりやすい。このため、成長株として長期保有する魅力は乏しいが、資本再編やTOBといったイベントを見据えて持つのであれば、独特の魅力を持つ銘柄だと言える。総じて豊田自動織機は、安定企業でありながら、将来は資本政策次第で大きく評価が変わる、リスクとリターンの性格がはっきりしたタイプの企業である。
この記事の最終更新日:2026年1月16日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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