株価
タツモとは

タツモは、半導体製造装置およびウェハー搬送装置を主力とする装置メーカーであり、洗浄装置、プリント配線板向け装置、液晶・有機ELディスプレイ関連装置まで事業領域を広げてきた企業である。近年はM&Aを積極的に活用し、洗浄装置や基板関連装置などを取り込み、製品ラインアップの拡充を進めている点が特徴である。加えて、装置事業とは別に、金型製作や樹脂成形といったモノづくり分野も手がけており、装置開発で培った精密加工技術を横展開している。
本社は岡山県岡山市北区にあり、半導体・液晶関連という先端分野を主戦場としながら、地方発の装置メーカーとして独自の地位を築いている。特にパワー半導体向けの貼合・剥離装置では、世界市場で約9割という極めて高いシェアを持ち、ニッチ分野ながらグローバルで圧倒的な存在感を示している。この分野はEV、再生可能エネルギー、産業機器向け需要の拡大とともに中長期的な成長が期待されている。
沿革を見ると、1972年に電子機器部品の製造・修繕を目的として岡山県井原市で創業した。社名のタツモは創業者ゆかりの僧侶の名に由来する。1980年に半導体製造用の全自動レジスト塗布装置を開発したことを契機に、半導体製造装置分野へ本格参入し、翌年からは東京応化工業を通じて装置販売を開始した。この技術基盤が、現在の中核事業へと発展している。
その後、事業拡大に伴い上場を果たし、JASDAQ、東証二部、東証一部を経て、現在は東証プライム市場に上場している。本社は業容拡大に合わせて複数回移転し、2019年には岡山リサーチパークへ移転している。
事業構成は大きく3つに分かれており、半導体製造装置、ウェハー搬送装置、洗浄装置、ディスプレイ向けコーター装置などを含むプロセス事業が売上高の約8割を占める主力である。次いで、表面処理用機器事業が約2割、金型・樹脂成形事業が数%を占める構成となっている。プロセス事業では、半導体前工程を中心に、顧客の製造プロセスに深く入り込むカスタマイズ型の装置供給を行っている。
技術面では、1980年に開発した半導体ウェハー向けレジスト塗布装置の技術を応用し、1989年には液晶用カラーフィルター製造装置を開発している。当時、四角形基板への均一塗布が難しいという課題に対し、基板を密閉空間に収め、その空間ごと回転させる独自方式を考案し、差別化技術として確立した。
全体としてタツモは、半導体設備投資の波を受けやすい装置メーカーでありながら、パワー半導体向けという成長分野で世界トップクラスの競争力を持ち、M&Aによる事業補完と技術の横展開によって事業基盤を強化している企業である。中小型装置メーカーながら、特定分野での圧倒的シェアと技術力を武器に、グローバル市場で存在感を発揮している点が最大の特徴といえる。
タツモ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益 EPS(円) | 一株当たり配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連22.12 | 24,356 | 2,806 | 3,138 | 2,263 | 162.1 | 21 |
| 連23.12 | 28,161 | 3,654 | 3,890 | 2,356 | 161.3 | 24 |
| 連24.12 | 35,865 | 5,917 | 5,998 | 4,247 | 289.9 | 33 |
| 連25.12予 | 36,000 | 5,000 | 5,100 | 3,500 | 241.9 | 34〜36 |
| 連26.12予 | 27,000 | 4,000 | 4,000 | 2,800 | 193.5 | 34〜36 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(百万円) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2022年 | -1,513 | -669 | 4,098 |
| 2023年 | -350 | -1,258 | 3,211 |
| 2024年 | 7,506 | -1,710 | -3,163 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年 | 12.9% | 11.9% | 4.9% | – | – |
| 2024年 | 16.4% | 17.5% | 8.6% |
高値平均 17.3倍 安値平均 7.9倍 |
1.47倍 |
| 2025年予 | 13.8% | 14.4% | 7.1% | 11.22倍 | – |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の流れを見ると、2023年から2024年にかけては明確な拡大局面にあった。売上は280億円台から350億円台へ伸び、営業利益は36億から59億、純利益も23億から42億へと大きく増えている。この2024年は利益率の面でもピークで、営業利益率16.4%、ROE17.5%、ROA8.6%と、製造業、とくに半導体装置メーカーとしてはかなり高い水準に達している。単純に量を売ったというより、利益をしっかり取れる局面だったことが数字から分かる。
一方で、2025年以降を見ると雰囲気は変わる。売上は横ばいだが、営業利益は50億、純利益は35億へと減少予想になっており、利益のピークアウトがはっきりしている。営業利益率も13.8%、ROE14.4%、ROA7.1%と依然高水準ではあるものの、2024年の勢いが続く前提ではない。2026年予想ではさらに利益規模が縮小しており、業績は明確に循環色の強い動きになっている。
バリュエーションを見ると、2024年の実績PERは高値平均で17倍、安値平均で7倍台と非常に幅が広い。これは市場がこの会社を安定成長株としてではなく、業績の山と谷がはっきりした銘柄として評価していることを示している。2025年の予想PERは11倍台で、利益減少を織り込んだ水準と考えると、割安とも割高とも言い切れない中立的な位置にある。PBRは1.4倍で、ROEが14%前後出ていることを考えると、理屈の上では妥当な評価に近い。
配当については、EPSに対して配当額は控えめで、配当性向は低い水準にとどまっている。数字を見る限り、配当を目的に長期で持つタイプの銘柄ではなく、あくまで業績サイクルに合わせて評価が上下する株だと判断できる。
これらを総合すると、この会社は収益力そのものは非常に高いが、すでに業績の天井を打った後の局面に入っている可能性が高い。PERも中立水準で、成長期待を上乗せして買う段階ではない。一方で、ROEや営業利益率を見る限り、事業の質が低下しているわけではないため、業績悪化局面で評価が大きく下がるような場面があれば検討余地は出てくる。結論として、この数値だけで判断するなら、今は積極的に買い上がる局面ではなく、業績サイクルを理解した上で安くなったところを待つ中立からやや慎重寄りの判断になる。
配当目的とかどうなの?
結論から言うと、タツモは配当目的の銘柄ではない。まず、予想配当利回りが連25.12、連26.12ともに1.28%という時点で、インカム狙いとしては明確に低い水準である。一般的に配当目的で選ばれる銘柄は、最低でも3%前後、安定配当株であれば4%超を一つの目安にされることが多く、それと比べると見劣りははっきりしている。
次に、利益との関係を見ると、EPSは2025年予想で241円、2026年予想で193円ある一方、配当は34〜36円にとどまっている。配当性向は15%前後と低く、会社としては利益を積極的に株主へ還元する姿勢ではなく、内部留保や将来投資を優先していることが数字から分かる。この点でも、高配当株や安定配当株の性格とは一致しない。
さらに、業績の安定性という観点でも配当目的には向きにくい。2024年は利益のピーク局面だったが、2025年以降は営業利益・純利益ともに減少予想となっており、業績ははっきりとサイクル型で動いている。こうした企業は、景気や設備投資環境次第で利益が大きく振れやすく、将来にわたって安定した増配や高水準配当を期待しにくい。
その一方で、配当が極端に不安定というわけでもない。利益水準に対して配当額は控えめに設定されているため、業績が多少悪化しても配当が急減するリスクは相対的に低い。あくまで「少額だが維持されやすい配当」という位置づけであり、保険的に配当が付いていると考えるのが現実的である。
まとめると、この銘柄は配当を目的に保有する価値は低く、配当はあくまでおまけに近い存在である。主な投資軸は、業績サイクルやバリュエーションの変化を捉えるキャピタルゲインであり、インカム重視の投資家には向かない。配当目的で選ぶなら、他にもっと適した銘柄が多数ある、という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
タツモの現在値は2,646円である。この水準を起点に今後5年間の値動きを考えると、同社の株価は半導体設備投資の循環、特にパワー半導体や前工程向け装置の受注タイミングに大きく左右されやすい。タツモは貼合・剥離装置やレジスト塗布装置など、特定工程で高い競争力を持つ一方、装置産業特有の業績変動の大きさを避けられない企業である。過去の数字を見ても、設備投資が活発な局面では利益が急拡大し、投資が一服すると利益が大きく縮小する傾向がはっきりしている。
良い場合は、パワー半導体や次世代半導体向け投資が想定以上に拡大し、貼合・剥離装置を中心に受注が再び増勢に転じるシナリオである。この場合、営業利益率は再び15%前後まで回復し、ROEも15%超を維持する高収益体質に戻る可能性がある。市場はこうした業績回復を素直に評価しやすく、PERは過去の高評価局面に近い15倍前後まで許容される余地がある。EPSが250円前後まで回復すれば、5年後の株価は3,800円〜4,500円程度まで上昇する展開が考えられる。配当利回りは低いままだが、キャピタルゲイン狙いとしては十分に妙味がある状態となる。
中間のケースは、半導体設備投資が大きく崩れない一方で、明確な拡大局面にも入らず、業績が循環的に上下を繰り返すシナリオである。この場合、営業利益率は13%前後、ROEは13〜14%程度で推移し、利益水準も現在の会社予想を中心に横ばい圏で推移する可能性が高い。市場評価は中立的となり、PERは10倍前後に収れんしやすい。この前提では、5年後の株価は2,200円〜3,000円程度のレンジに収まり、現在値2,646円はほぼ妥当な水準といえる。大きな値上がりは期待しにくいが、極端な下落も起こりにくい安定寄りの推移となる。
悪い場合は、半導体設備投資が想定以上に長期低迷し、受注環境が大きく悪化するシナリオである。売上・利益ともに縮小し、営業利益率は10%前後まで低下、ROEも10%を下回る水準に落ち込む可能性がある。この場合、市場は装置メーカーのリスクを強く意識し、PERは7倍前後まで切り下げられることが想定される。EPSが150円前後に低下すれば、5年後の株価は1,200円〜1,600円程度まで下落するリスクがある。配当は維持される可能性が高いが、利回りは低く、株価下落を補うほどの支えにはなりにくい。
総合すると、タツモは技術力と高収益性を持つ一方で、業績サイクルの影響を強く受ける典型的な装置メーカーである。現在値2,646円は中間シナリオの中心付近に位置しており、割安とも割高とも言い切れない水準である。良いシナリオでは着実な上値余地があるが、悪化局面では下振れリスクも大きい。今後5年間での投資成否は、半導体設備投資の波をどのタイミングで捉えるかに大きく左右される銘柄といえる。
この記事の最終更新日:2026年1月17日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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