株価
日精樹脂工業とは

日精樹脂工業は、プラスチック射出成形機の最大手メーカーとして知られ、射出成形機本体に加えて金型、成形自動システム、計測機器などの周辺機器まで幅広く展開する総合成形機メーカーである。本社および主力工場は長野県埴科郡坂城町に置かれ、国内外の成形現場を支える産業インフラ型企業として長い歴史を持つ。近年はTOYOイノベックスと共同で持株会社を設立し、経営統合を進めるなど、業界再編を見据えた戦略的な動きも特徴的である。
同社の事業の中核は射出成形機であり、横型射出成形機、竪型射出成形機、専用射出成形機など、多様な用途に対応したラインアップを揃えている。自動車部品、家電、電子機器、医療機器、日用品、包装容器など、射出成形が用いられるほぼすべての分野を顧客としており、国内外で高い納入実績を持つ。また、射出成形機単体の販売にとどまらず、金型、成形支援システム、成形自動化設備を含めたトータル提案を行っている点が強みである。
技術面では「成形現場が着眼点」という思想を掲げ、他社にない発想に基づく商品開発を行ってきたことが特徴である。特に、電気式射出成形機と並行して、油圧源をサーボモータで駆動するハイブリッド式射出成形機を展開している点は、同社の独自性を象徴している。ハイブリッド式では直圧型締機構を採用し、型締力を均一に金型へ伝達することで高品質成形を可能としている。この特性を生かし、省エネルギー成形法「N-SAPLI」を開発し、不良低減、サイクルアップ、金型や成形機の耐久性向上、メンテナンス負荷低減といった効果を実現している。
さらに、設置効率や作業性を高めた製品開発にも力を入れており、従来機より2クラス小型化したハイブリッド式横型FWXシリーズや、低床設計で作業性に優れた竪型TWXシリーズなど、成形現場の生産性向上を強く意識した機種を展開している。これらは設備スペースの制約が厳しい現場や多品種少量生産の現場で高い評価を得ている。
環境対応にも早くから取り組んでおり、海洋プラスチック問題が注目される以前から、環境対応素材や新素材の成形技術開発を進めてきた。省エネ性能の向上とあわせ、環境負荷低減を前提とした成形技術を重要な開発テーマとしている。
IoTやDX分野でも先行しており、1984年には多数台成形機の群管理システムを実用化するなど、早期からデジタル化に取り組んできた。現在は、OPC-UAやEUROMAPといった国際標準に対応し、成形機をHUBとする「N-Constellation」構想を推進している。クラウドを活用した遠隔監視・遠隔操作、成形条件のデジタル管理など、スマートファクトリー対応を進めている点も特徴である。
グループ会社には、日精メタルワークスや日精ホンママシナリーなどがあり、部品加工や特殊機械分野を含めたグループ体制を構築している。歴史的には、国産初の自動車プラモデルキット開発に関与した実績もあり、プラスチック成形技術の蓄積という点では国内有数の存在である。現在でも、射出成形機のプラモデルをノベルティとして自社開発するなど、技術へのこだわりが随所に見られる。
全体として日精樹脂工業は、射出成形機最大手としての規模と実績を持ちながら、独創的技術開発、環境対応、IoT・DX、業界再編を見据えた経営統合まで含めて進化を続ける企業である。設備投資サイクルの影響は受けやすいものの、成形現場に密着した技術力と総合力を背景に、プラスチック成形分野の中核を担う企業と位置付けられる。
日精樹脂工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益(EPS) (円) |
一株当り配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連19.3 | 44,065 | 3,510 | 3,593 | 2,589 | 129.6 | 30 |
| 連20.3 | 38,801 | 1,100 | 1,130 | 644 | 32.3 | 20 |
| 連21.3 | 41,604 | 1,145 | 1,070 | 598 | 30.7 | 20 |
| 連22.3 | 48,731 | 2,577 | 2,940 | 2,680 | 137.4 | 30 |
| 連23.3 | 52,205 | 2,682 | 2,427 | 1,835 | 94.1 | 35 |
| 連24.3 | 47,068 | 1,724 | 1,340 | 376 | 19.6 | 35 |
| 連25.3 | 47,493 | 442 | 343 | 76 | 4.0 | 35 |
| 連26.3予 | 44,200 | 500 | 450 | 270 | 14.0 | 37 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(百万円) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | -4,152 | -1,576 | 6,127 |
| 2024 | -8,222 | -4,244 | 9,268 |
| 2025 | -3,824 | -1,123 | 3,181 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROA | ROE | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 5.1% | 2.3% | 4.6% | — | — |
| 2024 | 3.6% | 0.4% | 0.9% | — | — |
| 2025 | 0.9% | 0.0% | 0.1% |
123.5(高値平均) 89.0(安値平均) |
0.45 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
直近の業績を見ると、日精樹脂工業は売上規模を維持している一方で、利益水準が大きく悪化している。
連24.3は売上470.6億円、営業利益17.2億円、経常利益13.4億円、純利益3.7億円であった。これに対し、連25.3は売上474.9億円と横ばいながら、営業利益4.4億円、経常利益3.4億円、純利益0.7億円まで急減している。連26.3予では売上442.0億円、営業利益5.0億円、経常利益4.5億円、純利益2.7億円と一定の回復が見込まれているが、依然として連24.3の水準には大きく届いていない。
収益性の推移を見ると、営業利益率は2023年5.1%、2024年3.6%、2025年0.9%と3年連続で低下している。売上が大きく崩れていないにもかかわらず利益率が急低下している点から、価格競争や固定費負担、設備投資サイクルの悪化が強く影響していることが読み取れる。
資本効率はさらに厳しい。ROEは2023年4.6%、2024年0.9%、2025年0.1%とほぼゼロ水準まで低下しており、ROAも2023年2.3%から2025年0.0%まで悪化している。これは、現状では株主資本や総資産を使って十分な利益を生み出せていない状態であり、企業価値の増加が止まっていることを示している。
株価評価の面では、2025年の実績PERは高値平均123.5倍、安値平均89.0倍と極端に高い水準にある。一方で実績PBRは0.4倍と低位にとどまっている。これは「資産価値から見れば割安に見えるが、利益が極端に小さいためPERが異常値になっている」状態であり、PBRの低さだけを理由に割安と判断するのは危険である。
以上を総合すると、日精樹脂工業は売上規模は維持しているものの、利益、収益性、資本効率が著しく悪化しており、現状の業績水準では高いPERを正当化できない。PBRは低いが、それは業績不振を反映した結果であり、数字だけで判断する限りでは割安株ではなく、明確な業績回復が確認できるまで慎重姿勢が妥当な銘柄と判断できる。
配当目的とかどうなの?
予想配当利回りは連26.3で4.09%と、数値だけを見ると高配当水準に入る。インカム目的の投資家にとっては一見すると魅力的に見える利回りである。ただし、利益との関係を見ると注意が必要である。連25.3の純利益は0.7億円と極めて低水準であり、連26.3予でも純利益は2.7億円にとどまる。一株益は14.0円予想であるのに対し、配当は37円と、利益水準を大きく上回る配当となっている。このため、配当性向は非常に高く、利益だけで配当を十分に賄えている状態とは言い難い。
収益性や資本効率を見ても、営業利益率は2025年で0.9%、ROEは0.1%、ROAは0.0%と、事業としての稼ぐ力はほぼ失われている水準である。こうした中で4%超の配当利回りが成立しているのは、業績の強さによるものではなく、株価水準の低下や過去の配当水準を維持している結果であると判断できる。
また、PERは89.0倍〜123.5倍と極端に高く、PBRは0.4倍と低いという歪んだ評価状態にある。これは配当利回りが高く見える一方で、利益水準が著しく低下していることを示しており、配当の持続性に対する市場の警戒感が背景にあると考えられる。
以上を総合すると、日精樹脂工業は「配当利回りの数字」だけを見ると魅力的だが、利益・収益性・資本効率の現状を踏まえると、配当目的の安定インカム銘柄とは言い難い。現状の配当は業績回復を前提とした維持配当の色合いが強く、業績が想定どおり回復しなければ減配リスクを内包している。配当目的で見るなら、主力で安心して持つ銘柄ではなく、高利回りだが不安定要素の大きい補助的ポジション、もしくは業績回復を確認してから検討すべき銘柄と位置付けるのが妥当である。
今後の値動き予想!!(5年間)
日精樹脂工業の現在値は904.0円である。この水準を起点に今後5年間の値動きを考える。日精樹脂工業は射出成形機の最大手であり、設備投資サイクルの影響を強く受ける典型的な資本財メーカーである。直近数年は売上規模を維持しながらも、営業利益率・ROE・ROAが大きく低下しており、現在の株価は業績不振と先行き不透明感をかなり織り込んだ水準にある。PBRは0.4倍台と低く、資産価値からは割安に見える一方、利益水準が極端に低いため、株価の方向性は今後の業績回復の有無に大きく左右される局面にある。
良い場合は、世界的な設備投資が回復し、射出成形機需要が底打ちから回復局面に入るシナリオである。売上が再び500億円規模に近づき、営業利益率が3%〜5%程度まで戻れば、利益水準は明確に改善する。この場合、ROE・ROAも回復基調となり、市場は「業績回復局面入り」と評価を切り替える可能性がある。PBRが0.8倍〜1.0倍程度まで見直されると、5年後の株価は1,300円〜1,700円前後まで上昇する余地がある。配当利回りも高水準を維持できれば、値上がり益と配当の両立が期待できる展開となる。
中間のケースは、設備投資環境は徐々に改善するものの、本格回復には至らず、利益水準も低位での持ち直しにとどまるシナリオである。営業利益率は1%〜2%台、ROEは1%前後で推移し、企業価値の大きな伸びは見込めない。この場合、市場評価は現在と大きく変わらず、PBR0.4倍〜0.6倍程度で推移する可能性が高い。株価は700円〜1,100円程度のレンジでの往来となり、5年後も現在水準付近で落ち着く展開が想定される。配当を受け取りながら様子を見る保有スタンスが中心となる。
悪い場合は、世界景気の低迷が長期化し、設備投資が想定以上に回復しないシナリオである。この場合、売上は伸び悩み、営業利益率は1%未満にとどまり、ROE・ROAも低水準が続く可能性が高い。利益が十分に出ない状況が続けば、配当の見直しや減配が意識され、市場評価はさらに慎重になる。PBRは0.3倍前後まで切り下げられる可能性があり、5年後の株価は500円〜700円程度まで下落するリスクも否定できない。
総合すると、日精樹脂工業は現在値904円という水準において、業績不振をかなり織り込んだ「回復待ち」の局面にある銘柄である。良いシナリオでは業績回復とともに大きなリターンが狙える一方、回復が遅れれば長期停滞や下振れもあり得る。今後5年間は、射出成形機需要と設備投資環境の改善を確認できるかどうかが、株価の方向性を決定づける最大のポイントとなる。
この記事の最終更新日:2026年1月18日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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