株価
理想科学工業とは

理想科学工業は、高速印刷技術に強みを持つ事務機器メーカーであり、学校教育関連を主要顧客とする独自色の強い企業である。本社は東京都港区芝五丁目に置き、通称RISOとして国内外で事業を展開している。
1946年に謄写版印刷業として創業し、印刷機器と消耗品の開発・製造・販売を軸に成長してきた。事業の柱は、デジタル孔版印刷機「リソグラフ」を中心とする孔版事業と、高速インクジェットプリンター「オルフィス」「VALEZUS」などを展開するインクジェット事業である。いずれも高速性と低ランニングコストを特長とし、大量印刷を必要とする学校、官公庁、オフィスで広く利用されている。
リソグラフは、孔版印刷の仕組みを応用したデジタル印刷機で、一度の製版で大量印刷が可能なため、印刷枚数が増えるほど単価が下がる構造を持つ。1980年代以降、マイコン搭載やデジタル製版、2色・両面印刷対応などの進化を重ね、近年では毎分190枚という高速印刷を実現している。消耗品であるインクやマスターの継続供給が収益の安定性を支えている。
高速インクジェットプリンター「オルフィス」は、ライン型インクジェット方式を採用し、A3サイズ相当を一気に印刷できる点が特徴である。独自開発の油性顔料インクにより、高速かつ両面印刷でも安定した品質を実現している。2000年代以降、毎分100枚超から160枚、さらに165枚へと高速化を続け、世界最速クラスの性能を維持している。プロダクション市場向けには「VALEZUS」を投入し、A4カラー両面で毎分300枚超の印刷能力を持つ装置を展開している。
近年は印刷機器単体にとどまらず、学校向けソリューションサービス「スクリレ」や、文書の見やすさを定量評価するクラウドサービス「ヨミヤス」、デジタル教材「デジパル」など、教育分野を軸としたデジタルサービスにも事業領域を広げている。さらに、パッケージ向けオンデマンド印刷用のインクジェットプリントエンジン「Integlide」を展開し、産業用途への展開も進めている。
かつては家庭用簡易孔版印刷機「プリントゴッコ」が国民的ヒット商品となったが、PCとプリンターの普及により2008年に本体販売を終了している。この経験を経て、現在はBtoB市場、とりわけ教育・業務用途に特化した事業構造へと明確にシフトしている。
総じて理想科学工業は、高速・低コスト印刷というニッチだが明確な強みを持ち、学校教育分野を基盤に、印刷機器と消耗品、デジタルサービスを組み合わせた安定型ビジネスを展開するメーカーと位置付けられる。
理想科学工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益EPS (円) |
一株配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 68,434 | 1,395 | 1,925 | 1,651 | 23.8 | 20 |
| 連22.3 | 69,313 | 4,164 | 4,644 | 3,578 | 52.6 | 50 |
| 連23.3 | 74,655 | 5,955 | 6,201 | 4,624 | 68.9 | 60 |
| 連24.3 | 74,602 | 5,256 | 6,202 | 4,831 | 72.7 | 50 |
| 連25.3 | 78,723 | 6,183 | 6,364 | 4,088 | 62.8 | 50 |
| 連26.3予 | 77,200 | 5,300 | 5,700 | 4,500 | 70.8 | 50 |
| 連27.3予 | 79,000 | 5,800 | 6,200 | 4,000 | 63.0 | 50 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF (百万円) |
投資CF (百万円) |
財務CF (百万円) |
|---|---|---|---|
| 連23.3 | 5,644 | -742 | -4,443 |
| 連24.3 | 6,482 | -1,305 | -5,602 |
| 連25.3 | 3,347 | -8,303 | -1,465 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER | PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 7.9% | 7.1% | 5.4% | – | – |
| 2024 | 7.0% | 7.2% | 5.4% | – | – |
| 2025 | 7.8% | 6.1% | 4.5% | 16.0〜24.1倍 | 1.23倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
売上高は2024年3月期が約746億円、2025年3月期が約787億円、2026年3月期予想が約772億円と、大きな成長ではないが概ね横ばいから緩やかな増減の範囲で推移している。営業利益は2024年が約52億円、2025年が約61億円、2026年予想が約53億円で、利益水準も売上と同様に安定的だが、拡大基調とは言い切れない。経常利益は2024年約62億円、2025年約63億円、2026年予想約57億円とほぼ同水準で推移している。純利益は2024年約48億円から2025年約40億円に減少し、2026年予想では約45億円とやや持ち直す想定になっている。
営業利益率は2023年7.9%、2024年7.0%、2025年7.8%で、8%前後の水準を維持している。高収益企業ではないが、製造業としては比較的安定した利益率と言える。ROEは2023年7.1%、2024年7.2%、2025年6.1%と7%前後で推移しており、資本効率は低くも高くもない中位水準である。ROAは2023年5.4%、2024年5.4%、2025年4.5%と、資産規模に対する収益性はやや低下傾向が見られる。
2025年時点の株価指標では、実績PERが16.0倍〜24.1倍のレンジにあり、利益成長が緩やかな企業としては割高感と割安感の中間的な水準にある。PBRは1.23倍で、資産価値に対して大きく割安でも割高でもなく、事業の安定性を反映した評価水準と読み取れる。
総合すると、理想科学工業は売上・利益ともに大きな成長は見込めない一方、営業利益率7〜8%、ROE6〜7%と安定した数値を維持している企業である。株価指標も極端な割安感はなく、事業の成熟度と安定性を織り込んだ水準にある。投資判断としては、高成長や急激な利益拡大を期待する局面ではなく、安定した業績推移を前提に中立的に評価されやすい銘柄と位置付けられる。
配当目的とかどうなの?
理想科学工業を配当目的で見ると、「高配当ではないが、安定インカム狙いとしては成立する水準」と整理できる。まず予想配当利回りは、連26.3・連27.3ともに3.95%と、製造業の中では比較的高めの水準にある。突出した高配当ではないものの、インカム目的としては十分に意識される利回りである。
配当の裏付けとなる業績を見ると、営業利益率は7〜8%前後で安定しており、急拡大はないが大きく崩れる兆しも見られない。純利益は年度によって増減があるものの、赤字に転落するような状況ではなく、一定の利益水準を維持している。EPSに対する配当額も、無理に引き上げている印象はなく、利益の範囲内で配当を出している形になっている。
ROEは6〜7%台、ROAは4〜5%台と、資本効率は高水準ではないが、安定的に推移している。これは「利益を積極的に拡大して株価を押し上げる企業」というより、「事業規模を維持しつつ、安定的に利益と配当を回す企業」であることを示している。PBRも1.23倍と極端な割高感はなく、配当余力を削ってまで株主還元をしている状況ではない。
これらを踏まえると、理想科学工業の配当は「大きく増配を期待するタイプ」ではなく、「業績が大きく崩れない限り、現行水準を継続するタイプ」に近い。3.9%前後の利回りを安定的に受け取りたい投資家にとっては相性が良い一方、連続増配や配当成長を重視する投資スタイルにはやや物足りない可能性がある。結論として、配当目的での投資は十分に成立するが、位置付けとしては高配当株というより、業績安定型の中配当銘柄であり、インカム重視の中長期保有向きの銘柄と評価できる。
今後の値動き予想!!(5年間)
理想科学工業の現在値1,264.0円を基準に、今後5年間の株価の値動きを考える。同社は高速印刷機を主力とする事務機器メーカーであり、学校教育関連を中心とした安定需要を基盤に事業を展開している。売上・利益は大きく伸びる局面ではないが、営業利益率は7〜8%台、ROEも6〜7%前後を維持しており、成熟企業として比較的安定した収益構造を持つ。株価水準も高成長期待を織り込む段階ではなく、配当利回りと事業の安定性を前提とした評価にとどまっている。
良い場合は、学校向け印刷需要が底堅く推移し、高速インクジェット機や関連サービスの更新需要が着実に積み上がるシナリオである。利益率が現行水準を維持し、純利益も安定的に推移すれば、市場からは「安定収益・安定配当銘柄」として評価されやすくなる。この場合、PERは20倍前後、PBRも1.3〜1.5倍程度まで容認され、5年後の株価は1,600円〜1,900円程度まで緩やかに上昇する展開が考えられる。配当を受け取りながらの緩やかなキャピタルゲインが中心となる。
中間のケースは、事業環境に大きな変化はなく、売上・利益ともに横ばい圏で推移するシナリオである。営業利益率やROEも現状水準を維持し、市場評価も大きく変わらない。この場合、PERは15〜18倍程度、PBRは1.1〜1.3倍に収れんしやすく、株価は現在値を挟んだレンジ推移となる可能性が高い。5年後の株価水準は1,200円〜1,500円程度が想定され、投資リターンの中心は引き続き配当となる。
悪い場合は、学校向け印刷需要の縮小やデジタル化の進展により、装置販売や消耗品収益が徐々に細るシナリオである。利益率が低下し、ROE・ROAも下振れすれば、市場評価は一段と慎重になる。この場合、PERは12倍前後まで低下し、PBRも1倍割れとなる可能性がある。5年後の株価は900円〜1,100円程度まで下落し、配当も維持重視から抑制方向に転じるリスクが出てくる。
総合すると、理想科学工業の株価は現在値1,264.0円において、急成長を期待する局面ではなく、業績の安定性と配当水準を前提とした評価にある。今後5年間は、学校教育分野を中心とした需要の持続性が評価の軸となり、順調なら緩やかに上向き、停滞すれば横ばい、環境悪化時には下振れという比較的穏やかな値動きになりやすい。投資スタンスとしては、キャピタルゲイン狙いよりも、配当を受け取りながら中長期で保有する銘柄と位置付けられる。
この記事の最終更新日:2026年1月24日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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