株価
ブラザー工業とは

ブラザー工業は、プリンターや複合機などのデジタル印刷機器を主力とする日本の大手電機メーカーであり、ミシンを祖業としながら事業の中核を大きく転換してきた企業である。本社は愛知県名古屋市瑞穂区に置き、東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場している。売上の大半を海外が占めており、日本よりも北米や欧州でのブランド力が特に強い点が大きな特徴である。
社名の由来は、創業者・安井兼吉が立ち上げた安井ミシン商会を、息子兄弟が継承する際に「安井ミシン兄弟商会」と改称したことにあり、その兄弟を意味する英語のBrotherが社名として採用された。創業は1908年と古く、日本の製造業の中でも長い歴史を持つ企業である。
現在のブラザー工業の主力事業は、プリンター・複合機・ファクシミリなどのプリンティング機器である。特にSOHO向けや中小規模オフィス向けの複合機に強みを持ち、北米市場ではトップクラスのシェアを誇る。ハードウェアの販売に加え、消耗品や保守を含む継続収益モデルを構築しており、安定したキャッシュフローを生み出す事業構造となっている。生産は中国や東南アジアを中心に行い、販売は欧米市場が中心という国際分業型のビジネスモデルを採用している。
ミシン事業は同社の原点であり、現在でも家庭用・工業用ともに世界トップクラスのシェアを持つ。家庭用ミシンはブランド力が高く、工業用ミシンではIoT対応機種など高付加価値分野にも注力している。日本国内ではJUKIが工業用ミシンで世界首位とされるが、ブラザーはプリンターや産業機器などへの多角化に成功したことで、ミシン事業の競争力も維持してきた。
産業機器分野では、工作機械や工業用ミシン、ガーメントプリンター、減速機などを展開している。特にCNCタッピングセンター「SPEEDIO」シリーズは、製造業向けの省スペース・高速加工機として評価が高く、同社が近年注力する分野の一つとなっている。加えて、英国ドミノ社を中核とするコーディング・マーキング機器やデジタル印刷機事業も展開しており、食品・飲料・医薬品向けなど安定需要を持つ産業分野に強みを持つ。
過去にはオートバイ、白物家電、電子オルガンなど多様な事業に進出した歴史があるが、現在は収益性と技術的親和性の高い分野に経営資源を集中している。また、通信カラオケJOYSOUNDを手掛けるエクシングを傘下に持つなど、コンテンツ分野にも事業を広げてきた。
全体としてブラザー工業は、ミシンで培った精密制御・機構設計技術を基盤に、プリンターを主柱とするデジタル印刷機器、産業機器、ミシンという複数の事業を展開するグローバルメーカーである。特定分野への依存度が過度に高くならない分散型の事業構造を持ち、海外市場を主戦場とすることで安定した収益基盤を築いている企業と位置付けられる。
ブラザー工業 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
税前利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益 (円) |
一株当り配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ◇21.3 | 631,812 | 42,731 | 42,944 | 24,520 | 94.4 | 60 |
| ◇22.3 | 710,938 | 85,501 | 86,429 | 61,030 | 234.9 | 64 |
| ◇23.3 | 815,269 | 55,378 | 56,953 | 39,082 | 152.7 | 68 |
| ◇24.3 | 822,930 | 49,792 | 52,523 | 31,645 | 123.8 | 84 |
| ◇25.3 | 876,558 | 69,888 | 74,694 | 54,778 | 214.3 | 100 |
| ◇26.3予 | 900,000 | 82,000 | 84,000 | 63,000 | 250.4 | 100 |
| ◇27.3予 | 920,000 | 83,000 | 85,000 | 63,500 | 252.4 | 100〜104 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業キャッシュフロー (百万円) |
投資キャッシュフロー (百万円) |
財務キャッシュフロー (百万円) |
|---|---|---|---|
| 連23.3 | 14,432 | -32,198 | -36,638 |
| 連24.3 | 141,028 | -42,068 | -61,584 |
| 連25.3 | 90,023 | -48,152 | -34,609 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER (高値平均/安値平均) |
PBR |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 6.7% | 6.5% | 4.5% | – | – |
| 2024 | 6.0% | 4.7% | 3.5% | – | – |
| 2025 | 7.9% | 7.9% | 5.8% | 18.7倍/13.2倍 | 1.15倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
まず業績の推移を見る。◇24.3の売上高は8,229億円、営業利益は497億円、経常利益は525億円、純利益は316億円である。◇25.3では売上高が8,765億円へ拡大し、営業利益698億円、経常利益746億円、純利益547億円と利益面が大きく改善している。◇26.3予では売上高9,000億円、営業利益820億円、経常利益840億円、純利益630億円が見込まれており、売上・利益ともに拡大基調が続く前提となっている。
収益性を見ると、営業利益率は2023年6.7%、2024年6.0%、2025年7.9%となっている。24年に一度低下したものの、25年には大きく改善しており、利益率の水準そのものも製造業としては比較的高い。売上拡大と同時に利益率を引き上げている点は、事業構造の安定性を示している。
資本効率の面では、ROEが2023年6.5%、2024年4.7%、2025年7.9%と推移している。24年は一時的に低下したが、25年には改善し、7%台後半まで回復している。ROAも2023年4.5%、2024年3.5%、2025年5.8%と同様の動きであり、資産に対する収益力も再び高まっていることが読み取れる。
株価指標を見ると、2025年の実績PERは高値平均18.7倍、安値平均13.2倍で推移している。安定した利益成長を背景に、相場環境によっては中〜やや高めの評価が許容される水準にある。PBRは1.1倍であり、純資産に対してはややプレミアムが付いた評価となっている。
以上を総合すると、ブラザー工業は売上・利益ともに拡大基調にあり、営業利益率、ROE、ROAはいずれも改善傾向で、かつ水準そのものも安定している。PBRは1倍をやや上回り、資産価値面での割安感は限定的だが、利益成長と収益の安定性を踏まえると一定の評価が付いている状態といえる。投資判断としては、割安株というより、安定した収益基盤と中期的な成長を前提に評価される局面にある銘柄と整理できる。
配当目的とかどうなの?
予想配当利回りは◇26.3、◇27.3ともに3.09%となっている。日本株全体の中では中位からやや高めの水準であり、極端に高配当という位置付けではないが、インカムを意識する投資家にとって無視できない水準ではある。
業績面を見ると、◇25.3から◇26.3予にかけて売上高は8,765億円から9,000億円へ、純利益は547億円から630億円へと拡大する前提となっており、利益水準自体は配当を支えるだけの余力がある。営業利益率も25年に7.9%まで改善しており、収益性が悪化する局面にはない。
一方で、利回りが3%前後にとどまっている点から、同社の株主還元は「高配当を前面に出すタイプ」ではなく、業績成長と配当のバランスを取る姿勢がうかがえる。PBRが1.1倍、PERが13倍台〜18倍台で推移していることを踏まえると、配当だけを目的に長期保有するというより、安定配当を受け取りながら、業績拡大に伴う株価水準の変化も合わせて見るスタンスに向いた銘柄と整理できる。
総合すると、ブラザー工業は配当利回り3%前後の「安定配当型」に近い位置付けであり、高配当株を狙う投資対象というよりは、業績の安定性を前提に、配当を下支えとして中長期で保有するタイプの銘柄といえる。
今後の値動き予想!!(5年間)
ブラザー工業の現在値3,234.0円を基準に、今後5年間の株価の値動きを考える。同社はプリンター・複合機を主軸とするデジタル印刷機器メーカーであり、ミシンや産業機器も含めた分散型の事業構造を持つ。売上の大半を海外が占め、特に北米・欧州でのブランド力が高い点が特徴で、景気変動の影響は受けるものの、単一事業に依存しない安定性を備えている。
良い場合は、プリンター・複合機事業での収益力が維持・改善し、消耗品を含むストック型収益が堅調に積み上がるシナリオである。加えて、工作機械や工業用ミシン、ドミノ事業などの産業機器分野が安定成長を続け、営業利益率は8%前後で定着する。ROEも8%前後を維持できれば、市場からは「安定成長型のグローバル製造業」として評価されやすい。この場合、PERはやや高めのレンジでも許容され、5年後の株価は4,200円〜5,000円程度まで切り上がる展開が考えられる。
中間のケースでは、プリンター需要は成熟市場として横ばいで推移し、産業機器事業が下支えとなって全体業績は安定するが、大きな成長には至らない。営業利益率は6%台後半〜7%前後、ROEは6〜7%程度で推移し、評価倍率も現在水準近辺で落ち着く。この場合、株価は大きなトレンドを作らず、2,900円〜3,700円程度のレンジでの推移が中心となる。リターンは配当を含めたトータルリターン重視となり、値幅は比較的限定的になりやすい。
悪い場合は、プリンター市場の競争激化や価格下落が進み、収益性が低下するシナリオである。産業機器分野も設備投資抑制の影響を受け、利益成長が鈍化する。営業利益率は6%を下回り、ROE・ROAも低下することで、市場は成長期待を引き下げる。この場合、PERは低位で推移し、評価の調整が進む可能性がある。5年後の株価は2,300円〜2,800円程度まで下振れする展開も想定される。
総合すると、ブラザー工業の株価は現在値3,234.0円において、業績の安定性と配当利回りを一定程度織り込んだ水準にある。今後5年間は、高成長株というより、安定した収益基盤と中期的な成長をどこまで維持できるかが評価軸となる。配当を下支えにしつつ、事業全体の収益性が維持・改善されれば上値余地があり、逆に収益力が低下すれば評価調整が起きやすい。投資スタンスとしては、安定配当を受け取りながら業績動向を確認する中長期目線の銘柄と位置付けられる。
この記事の最終更新日:2026年1月25日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す