株価
マブチモーターとは

マブチモーター株式会社は、千葉県松戸市に本社を置く小型電動モーター専業メーカーであり、車載用小型モーター分野で世界トップクラスの地位を確立している企業である。特に自動車の電動ドアミラー用小型直流モーターでは世界シェア8割以上を占めるとされ、ミラー用をはじめとする車載用途で事実上の世界標準的な存在となっている。
一般には、黄色い化粧箱に入った工作用モーターや、ミニ四駆、ラジコン、模型用モーターで知られているが、現在の売上の中心はホビー用途ではない。主力は自動車部品メーカーや家電・生活用品メーカー向けに直接供給されるBtoB製品であり、売上構成は自動車電装機器向けが約75%、理美容機器や電動工具などを含むライフ・インダストリー機器向けが約25%となっている。自動車向けではドアミラー、ドアロック、パワーシート、空調関連などに用いられ、1台の自動車に多数のマブチ製モーターが搭載されているケースも多い。
同社の強みは、小型・軽量・低消費電力でありながら量産性と信頼性を両立させた直流モーター技術にある。1947年に創業者の馬渕健一がフェライト永久磁石を用いた小型マグネットモーターを発案し、従来主流だった電磁石界磁モーターに比べて大幅な小型化と省電力化を実現したことが出発点となっている。1954年に東京科学工業株式会社を設立し、玩具や模型向けモーターを量産化、1958年に開発したFタイプモーターによって「マブチ」の名は世界的に広く知られるようになった。
1960年代以降は模型・ホビー用途で世界的評価を獲得する一方、1960年にテープレコーダー用精密モーター、1975年に自動車用ドアミラー向けモーターの販売を開始し、精密機器分野と自動車電装分野へ本格的に進出した。価格競争力と性能のバランスが評価され、自動車、家電、工具、生活用品など幅広い分野で採用が拡大していった。1971年に社名を現在のマブチモーター株式会社へ変更している。
生産体制の面では、日本企業の中でも非常に早い段階から海外生産へ舵を切った点が特徴である。1964年に香港へ進出し、1987年には中国・大連に外資系単独資本企業として生産拠点を設立した。現在では中国、ベトナムなどアジアを中心とした海外工場で全量生産を行っており、日本国内には本社と研究開発拠点のみを置く体制となっている。これにより、低コスト大量生産とグローバル供給を両立させている。
製品分野は車載用小型モーターを中核としつつ、理美容機器、電動工具、家電、医療・ヘルスケア機器など民生・産業用途にも広がっている。過去には乾電池やニッケルカドミウム電池の販売も行っており、モーターと電源を組み合わせた製品展開を行っていた時期もある。また、水中モーターやレーシング模型向けモーターなど、用途特化型の製品も数多く手がけてきた。
全体としてマブチモーターは、車載用小型モーターというニッチだが数量規模の大きい分野で圧倒的な世界シェアを持ち、全量海外生産によるコスト競争力と長年蓄積された量産技術を武器に、グローバル自動車産業と生活機器産業を下支えする存在となっている。ホビー用途で培われた技術を起点に、自動車電装分野へ事業軸を移しながら成長してきた点が、この企業の事業構造と歴史を特徴づけている。
マブチモーター 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連22.12 | 156,706 | 10,824 | 21,473 | 14,295 | 110.4 | 67.5 |
| 連23.12 | 178,663 | 15,536 | 26,994 | 19,416 | 150.5 | 75 |
| 連24.12 | 196,212 | 21,644 | 32,448 | 12,831 | 101.0 | 76 |
| 連25.12予 | 193,000 | 24,000 | 25,000 | 18,500 | 150.6 | 78〜80 |
| 連26.12予 | 206,000 | 25,500 | 26,700 | 17,700 | 144.1 | 78〜82 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022 | 10,206 | -10,468 | -10,088 |
| 2023 | 31,741 | -15,608 | -11,849 |
| 2024 | 40,133 | -15,750 | -16,183 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 8.6 | 6.3 | 5.7 | – | – |
| 2024 | 11.0 | 4.0 | 3.6 | 15.4〜21.1 | 1.13 |
| 2025 | 12.4 | 5.7 | 5.2 | 20.4 | – |
出典元:四季報オンライン
投資判断
売上高は23.12期に1,786億、24.12期に1,962億と増加しており、事業規模は拡大している。25.12期予想では1,930億とやや減収の前提になっているが、26.12期予想では2,060億と再び増収が見込まれている。営業利益は23.12期が155億、24.12期が216億と大きく伸び、25.12期予想では240億、26.12期予想では255億と増益基調が続く前提となっている。
一方で純利益は23.12期194億から24.12期128億へ大きく減少しており、営業利益や経常利益の動きとは乖離が見られる。その後は25.12期に185億まで回復し、26.12期は177億とやや減少する見通しとなっている。
営業利益率は2023年8.6%、2024年11.0%、2025年12.4%と年々改善しており、収益構造が着実に強化されていることが読み取れる。一方でROEは2023年6.3%、2024年4.0%、2025年5.7%、ROAは2023年5.7%、2024年3.6%、2025年5.2%と、いずれも中低位で推移している。営業利益率が改善している割に、資本効率や資産効率の水準は高くなく、利益が資本全体に十分には回っていない構造がうかがえる。
バリュエーション面では、2024年の実績PERは高値平均21.1倍、安値平均15.4倍となっており、2025年予想PERも20.4倍と20倍前後の水準にある。利益改善を前提とした評価が一定程度織り込まれている一方で、2024年の実績PBRは1.1倍と低く、資産価値に対してはほぼ等倍に近い評価にとどまっている。
これらの数値だけを見ると、マブチモーターは売上規模の拡大とともに営業利益率の改善が進んでいるが、ROEやROAは低位にとどまり、資本効率の面では強さが見られない状態にある。株価評価はPERではやや高め、PBRでは低めという組み合わせになっており、成長期待と資本効率の低さが同時に織り込まれている状況と整理できる。事実ベースでは、急成長株というよりも、収益性を改善しながら評価の定まりどころを探っている段階の企業、という位置づけになる。
配当目的とかどうなの?
提示されている数値だけを見ると、配当目的としては「中立からやや前向き」と整理できる。予想配当利回りは25.12期、26.12期ともに2.69%と、国内株の中では平均的からやや高めの水準にある。極端に高配当というほどではないが、インカム目的として最低限の水準は確保されている。配当額も75円台から78〜82円へと緩やかな増配傾向が示されており、配当姿勢は比較的安定している。
純利益は年によって振れがあるものの、25.12期、26.12期ともに170〜180億円規模の黒字が見込まれており、営業利益も増益基調にあるため、配当の原資という点では無理のない範囲に見える。営業キャッシュフローも大きく積み上がっていることから、配当の継続性に対する不安は数値上は小さい。
一方で、ROEは5%前後と低位で、PBRも1倍前後にとどまっており、企業としては内部成長力が高いとは言いにくい。そのため、今後も大幅な増配を継続していくというよりは、安定配当を維持するスタンスに近いと読み取れる。
以上を踏まえると、マブチモーターは高配当銘柄ではないものの、利回り約2.7%の安定配当を狙うインカム投資としては一定の適性がある。一方で、配当成長や高利回りを重視する投資スタイルにとっては、主力候補というより「安定枠」に位置づけられる銘柄、という評価になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
マブチモーターの現在値1,449円を基準に、今後5年間の株価の値動きを考える。同社は車載用小型モーターで世界トップクラスのシェアを持ち、特にドアミラー用モーターでは事実上の世界標準となっている。全量海外生産によるコスト競争力と、長年蓄積された量産技術を背景に安定した事業基盤を有している。一方で、事業の中心は自動車向けであり、自動車生産台数やモデルサイクルの影響を受けやすい点、またROEが5%前後と資本効率が高くない点が株価の前提条件となる。
良い場合は、世界的な自動車生産が安定的に拡大し、EV・ハイブリッド車の普及によって車両1台当たりの搭載モーター数が増加するシナリオである。車載向け小型モーターの数量成長が続き、営業利益率は12%台まで改善する。純利益は180〜200億円規模で安定し、配当も緩やかな増配が続く。この場合、市場は安定成長型のグローバル部品メーカーとして評価し、PERは18〜22倍程度が許容される。1株益150円前後×PER18〜22倍を前提にすると、5年後の株価は2,700円〜3,300円程度まで上昇する展開が想定される。
中間のケースでは、自動車生産は横ばいから緩やかな成長にとどまり、数量増加と価格競争が相殺される形で業績は安定推移するシナリオである。営業利益率は11%前後、純利益は150〜180億円規模で推移する。配当利回りは2%台後半を維持しつつ、市場評価は落ち着き、PERは14〜18倍程度に収れんする。この場合、1株益140〜150円前後×PER14〜18倍を前提にすると、5年後の株価は1,900円〜2,600円程度となり、現在値から緩やかな上昇、もしくはレンジ推移が想定される。
悪い場合は、世界的な自動車市場の停滞や景気後退が長期化し、車載向け部品の需要が想定以上に落ち込むシナリオである。価格競争が激化し、営業利益率は9%台まで低下する。純利益は120億円前後に縮小し、ROEの改善も進まない。この場合、市場評価は防御的な部品メーカー水準へと切り下がり、PERは10〜12倍程度まで低下する可能性がある。1株益120円前後×PER10〜12倍を前提にすると、5年後の株価は1,200円〜1,500円程度まで下落する展開も想定される。
総合すると、マブチモーターの株価は現在値1,449円において、安定した事業基盤と配当利回りを評価する一方で、高成長や高ROEは織り込まれていない水準にある。今後5年間の値動きは、自動車生産の安定性と車載モーター数量の増加がどこまで続くかによって左右されやすく、ハイグロース株というよりは、安定性と景気感応度を併せ持つ部品メーカーとしての性格が強い銘柄と整理できる。
この記事の最終更新日:2026年2月1日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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