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IDECとは

IDEC株式会社は、制御機器専業メーカーとして、操作スイッチや表示ランプなどのHMI分野に強みを持つファクトリーオートメーション関連企業である。1945年の創業以来、人と機械をつなぐ操作・制御・安全技術を中核に事業を展開してきた。本社は大阪市淀川区に所在し、東京証券取引所プライム市場に上場している。
同社は、押ボタンスイッチ、表示灯、非常停止スイッチ、セレクタスイッチなどの操作用機器を主力とし、リレー、プログラマブルコントローラ、プログラマブル表示器、センサ、安全関連機器、防爆機器まで幅広い制御機器を手がけている。これらは工作機械、産業用ロボット、搬送装置、半導体製造装置、食品機械など、多様な産業分野で使用されており、機械制御の基礎部品として組み込まれている。
近年は単体製品の供給にとどまらず、課題解決型の提案を重視した事業展開を進めている。制御機器の組み合わせによる制御装置やFAシステムの提供に加え、安全機器を軸としたソリューション提案を強化している。協働ロボットを活用した協調安全ロボットシステムなど、人と機械が同じ空間で作業する現場を想定した分野にも取り組んでいる。
安全機器分野は同社の重要な事業領域であり、安全スイッチ、安全ドアロック、安全センサなどを通じて、国際安全規格に対応した製品群を展開している。機械安全の要求が高まる中で、ハードウェアだけでなくシステム全体として安全を設計する提案力を高めている点が特徴である。
事業の多角化としては、再生可能エネルギー分野への取り組みも行っており、メガソーラー関連事業や産業用太陽光発電システム設備の提供なども手がけている。FA分野に近接した技術を活用しながら、周辺領域への展開を進めている。
M&Aも成長戦略の一つとなっている。2017年にはフランスの産業用スイッチメーカーであるAPEM社を買収し、スイッチ事業の強化とグローバル展開を進めた。続いて、自動認識機器メーカーのウェルキャット、接触センサメーカーの東京センサ、さらに2023年にはフランスの自律型電動ホイール専門企業ez-Wheel社を買収し、製品領域と技術領域の拡張を図っている。
2024年3月期の製品別売上構成は、HMIが47%と最大を占め、次いでインダストリアルコンポーネンツ16%、安全・防爆16%、オートメーション&センシング14%、システム5%、その他2%となっている。操作・表示と安全関連が売上の中心であり、同社の事業特性を反映した構成となっている。
地域別売上では、日本が37%、米州20%、EMEAが21%、アジア・パシフィックが22%となっており、海外売上高比率は63%に達している。特定地域への依存度は低く、グローバルに分散した事業構造を持っている。
国内には技術研究センターをはじめ、尼崎、福崎、滝野など複数の事業所や物流拠点を有しており、研究開発、生産、物流を一体で支える体制を構築している。グループ会社には、制御機器の製造・販売、物流、制御盤、協調安全ロボット、太陽光発電設備などを担う子会社があり、事業領域ごとに機能分担がなされている。海外では、米国、シンガポール、台湾、中国などに製造・販売拠点を展開している。
全体としてIDECは、制御機器専業メーカーとして操作・表示・安全という基礎領域に強みを持ち、単体製品からシステム・ソリューションへと事業の重心を広げている企業である。製造業の自動化・安全要求の高度化を背景に、課題解決型提案を軸とした事業構造への転換を進めている点が特徴といえる。
IDEC 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益EPS(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 53,983 | 4,041 | 4,104 | 2,803 | 92.8 | 50 |
| 連22.3 | 70,789 | 9,672 | 10,398 | 7,896 | 264.1 | 100記 |
| 連23.3 | 83,869 | 14,060 | 14,403 | 10,144 | 348.4 | 130 |
| 連24.3 | 72,711 | 6,276 | 6,920 | 4,407 | 150.1 | 130 |
| 連25.3 | 67,380 | 3,652 | 3,477 | 1,778 | 60.4 | 130 |
| 連26.3予 | 70,000 | 5,250 | 5,500 | 3,800 | 128.7 | 130 |
| 連27.3予 | 73,500 | 6,500 | 6,800 | 4,600 | 155.8 | 130 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 連23.3 | 7,009 | -3,110 | -4,403 |
| 連24.3 | 5,504 | -1,922 | -4,462 |
| 連25.3 | 11,248 | -4,097 | -2,905 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年 | 16.7 | 17.3 | 9.7 | — | — |
| 2024年 | 8.6 | 6.7 | 4.1 | — | — |
| 2025年 | 5.4 | 2.8 | 1.6 | 20.4〜28.4 | 1.31 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
連24.3の売上高は727億円、営業利益は62億円、経常利益は69億円、純利益は44億円である。連25.3は売上高673億円、営業利益36億円、経常利益34億円、純利益17億円となっている。連26.3予では売上高700億円、営業利益52億円、経常利益55億円、純利益38億円という計画である。
売上高は23年をピークに24.3、25.3と減少し、26.3予でやや回復する想定となっている。ただし水準としては23年のピークには戻らず、事業規模は一段縮小した状態での持ち直しにとどまる。売上の動き以上に、利益面の変動が大きい点が特徴的である。
営業利益は24.3の62億円から25.3で36億円へ大きく減少しており、26.3予でも52億円と完全な回復には至らない。経常利益、純利益も同様の動きで、25.3は明確な利益悪化局面に入っている。純利益は24.3の44億円から25.3で17億円まで落ち込み、26.3予でも38億円とピーク水準には届かない。
収益性を見ると、営業利益率は2023年16.7%、2024年8.6%、2025年5.4%と3年間で急低下している。かつては2桁後半の高収益体質であったが、直近では5%台まで低下しており、構造的に収益力が落ちていることが数値からはっきり読み取れる。
資本効率も同様に悪化している。ROEは2023年17.3%から2024年6.7%、2025年2.8%まで低下している。ROAも9.7%から4.1%、1.6%と大きく落ち込んでおり、利益減少がそのまま効率指標に反映されている。資本や資産を使って利益を生み出す力は、直近ではかなり弱まっている状態にある。
株価評価を見ると、2025年の実績PERは安値平均で20.4倍、高値平均で28.4倍と、利益水準に対しては高めの評価レンジにある。PBRは1.3倍で、純資産に対しては一定の評価が付いているが、ROEが3%前後まで低下している状況を踏まえると、割安感があるとは言いにくい水準である。
これらの数値だけで投資判断を整理すると、この企業は過去に高い利益率と資本効率を誇っていたが、直近3年で収益性と効率性が急速に悪化している。26.3予では利益回復を見込んでいるものの、営業利益率、ROE、ROAの水準は依然として低く、以前の稼ぐ力を取り戻したとは言えない。
一方で、株価評価はPER20倍超、PBR1倍台と、利益低迷を十分に織り込んだ水準とは判断しづらい。数値上は、業績が底打ちし、今後明確な回復トレンドに入ることを前提に評価されている状態にある。
総合すると、現時点では「回復前提の評価」が先行しており、利益率や資本効率の実際の改善が確認されない限り、数値だけを見る投資判断では慎重姿勢が妥当と整理できる。利益の持続的な回復が確認できれば見方は変わるが、現状では過去の高収益期と同じ評価軸で見る段階にはない。
配当目的とかどうなの?
予想配当利回りは連26.3、連27.3ともに4.44%と、日本株全体で見ても高めの水準に位置している。数字だけを見ると、インカム目的としては一見魅力的な水準である。一方で、利益水準との関係を見る必要がある。純利益は連25.3で17億円まで落ち込み、連26.3予でも38億円と、過去のピーク水準には戻らない想定となっている。これに対して配当は、連24.3から連27.3予まで130円を維持する計画であり、利益の増減に比べて配当水準はほぼ固定されている。
このため、直近では配当性向が高まりやすい構造になっている。特に連25.3はEPSが60.4円で配当130円となっており、利益だけを見ると配当が上回る状態であった。連26.3予ではEPS128.7円と配当130円がほぼ同水準となり、利益が回復すればギリギリで整合するが、余裕がある配当とは言いにくい。
キャッシュフローを見ると、営業CFは2025年に112億円と大きく改善しており、配当の原資はキャッシュ面では一定程度確保されている。一方で、投資CFは継続的にマイナスであり、設備投資や事業基盤への支出も続いている。配当は営業CFから賄えているが、利益水準が低い中での高配当維持は、今後の資金配分次第で調整される可能性を残す。
これらの数値だけから配当目的として整理すると、利回り4%台という点では魅力はあるものの、利益に対する配当の余裕は小さい。業績が計画どおり回復すれば配当維持は可能だが、利益回復が遅れたり再び悪化した場合には、配当水準の見直しが行われる余地もある。
したがって、この銘柄は、安定した高配当を長期にわたって受け取りたい投資家向けというより、業績回復を前提に高い利回りを享受する局面型の配当銘柄と整理できる。配当目的で見る場合は、利回りの高さだけでなく、今後の利益回復の持続性を併せて確認する姿勢が必要になる。
今後の値動き予想!!(5年間)
IDEC株式会社の現在値は2,923.0円である。同社は制御機器専業メーカーとして、操作スイッチや表示ランプなどのHMI分野に強みを持ち、安全機器や課題解決型提案を軸に事業を展開してきた。一方で、直近数年は売上・利益ともにピークアウト後の調整局面にあり、営業利益率、ROE、ROAといった収益性・効率性指標は大きく低下している点が、現在の株価水準を考える前提条件となる。
良い場合は、FA投資の回復や安全機器需要の持ち直しが進み、売上高が再び成長軌道に戻るシナリオである。利益率の低下に歯止めがかかり、営業利益率が7〜8%程度まで回復、ROEも一桁後半まで改善する。市場は業績の底打ちと回復を評価し、PERは18〜22倍程度で落ち着くと仮定すると、5年後の株価は4,200円〜5,000円程度まで上昇する展開が想定される。
中間の場合は、売上は横ばいから小幅な回復にとどまり、利益率も大きく改善しないシナリオである。営業利益率は5〜6%台、ROEは5%前後で推移し、過去の高収益体質には戻らない。市場評価は現在と同程度のPER15〜18倍程度に収れんし、この場合、5年後の株価は2,700円〜3,400円程度となり、現在値近辺を中心としたレンジ推移が想定される。
悪い場合は、FA投資の回復が遅れ、安全機器や制御機器の需要が想定ほど戻らないシナリオである。売上は伸び悩み、営業利益率は5%を下回る水準で停滞する。ROEは一桁前半にとどまり、市場は収益力低下を重く見て評価を切り下げる。PERが12〜14倍程度まで低下すると仮定すると、5年後の株価は1,800円〜2,300円程度まで下落する展開も想定される。
総合すると、IDECの株価は現在値2,923.0円において、業績悪化後の回復期待と慎重な見方が拮抗した水準にある。今後5年間の値動きは、利益率と資本効率がどの水準で底打ちし、どこまで回復できるかが最大の分岐点となる。高収益期への回帰が実現すれば上振れ余地がある一方、回復が鈍ければレンジ相場にとどまる、あるいは下振れする可能性も併せ持つ銘柄と整理できる。
この記事の最終更新日:2026年2月4日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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