株価
ワコムとは

ワコム株式会社は埼玉県加須市に本社を置く入力インターフェース機器メーカーで、ペンタブレットおよびデジタルペン分野で世界的に高いシェアを持つ企業である。東京証券取引所プライム市場に上場しており、ペン入力技術を核としたハードウェアとソリューションをグローバルに展開している。
クリエイター向け描画タブレットでは長年トップクラスのシェアを維持し、プロの制作現場では事実上の標準機器として扱われることが多い。社名はワールドとコンピューターを組み合わせた造語で、人とコンピューターの調和を意味する「和」の思想を込めている。
同社は1984年に世界初のコードレスデジタイザを開発し、1987年には電磁誘導方式による電池不要のペンタブレットを実用化した。この電磁誘導方式はペン側に電源を必要とせず高精度の筆圧検知が可能で、現在も同社の中核技術となっている。1991年公開のディズニー映画のデジタル制作に採用されたことを契機に、従来CAD用途中心だったデジタイザをデジタルアート制作ツールとして普及させ、市場そのものを拡大した。1990年代後半には世界シェア首位を確立し、多数の関連特許を保有しながら技術優位性を維持している。
事業は大きくブランド製品事業とテクノロジーソリューション事業の2つに分かれる。ブランド製品事業では自社ブランドのペンタブレットや液晶ペンタブレットを展開し、イラスト・漫画・ゲーム・映像制作・工業デザイン・写真編集などの制作現場で利用される。
主力製品には入門向けのIntuos、プロ向けのIntuos Pro、画面に直接描画できるCintiqシリーズ、PC一体型のMobileStudio Proなどがある。筆圧8192段階の検知や低遅延描画性能などが特徴で、制作会社やスタジオの業務機器として利用されることが多い。近年は低価格帯製品の競争激化により、プロ向け高付加価値製品の比率を高める方向へシフトしている。
テクノロジーソリューション事業では、スマートフォン、タブレット、ノートPCメーカーに対してペンセンサーシステムをOEM供給している。サムスンのGalaxyシリーズに代表されるモバイル機器に同社のデジタルペン技術が採用されており、この分野が現在の収益の中心となっている。教育用デジタル教材、電子ノート、電子署名、金融・行政の手続きなど手書き入力の需要拡大に伴い、入力装置からデジタルインクプラットフォームへと事業領域を広げている。ペンの軌跡情報を生体情報として扱う技術により本人認証用途への応用も進めている。
かつては自社ブランド製品が主力だったが、2010年代後半以降は競合製品の増加により収益構造が変化し、OEM供給事業が売上の過半を占めるようになった。コロナ禍では在宅需要によりクリエイター向け製品が急増したが、その後は反動減となり、現在はモバイル機器向けペン技術が業績の柱となっている。北米・欧州・中国などに拠点を持つ海外売上比率の高いグローバル企業であり、ハードウェアメーカーでありながらインターフェース技術企業としての性格を強めている。
このようにワコムは単なる周辺機器メーカーではなく、人間の手書き行為をデジタル化する入力技術を提供する企業として、クリエイティブ制作分野とモバイル機器分野の双方で事業を展開している企業と位置付けられる。
ワコム 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連21.3 | 108,531 | 13,407 | 14,090 | 10,225 | 63.0 | 19特 |
| 連22.3 | 108,790 | 13,023 | 14,351 | 10,954 | 68.0 | 20 |
| 連23.3 | 112,730 | 2,013 | 2,867 | 1,792 | 11.3 | 20 |
| 連24.3 | 118,795 | 7,058 | 9,852 | 4,561 | 29.6 | 20 |
| 連25.3 | 115,681 | 10,209 | 10,394 | 5,224 | 37.0 | 22 |
| 連26.3予 | 110,000 | 11,500 | 11,500 | 8,500 | 63.2 | 22〜25 |
| 連27.3予 | 115,000 | 12,300 | 12,300 | 9,000 | 66.9 | 22〜25 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023 | -1,056 | -3,142 | 1,069 |
| 2024 | 17,476 | -2,281 | -6,432 |
| 2025 | 8,330 | -2,274 | -13,170 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率(%) | ROE(%) | ROA(%) | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 1.7 | 4.4 | 2.3 | – | – |
| 2024 | 5.9 | 12.6 | 5.7 | – | – |
| 2025 | 8.8 | 16.9 | 7.3 | 27.2〜48.0 | 3.21 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
売上は1187億円から1156億円から1100億円予想と規模自体は拡大しておらず、むしろ微減に近い推移になっている。一方で営業利益は70億円から102億円から115億円予想、経常利益は98億円から103億円から115億円予想、純利益は45億円から52億円から85億円予想と利益は大きく伸びており、売上成長ではなく採算改善による増益局面に入っていると読み取れる。
営業利益率は1.7%から5.9%から8.8%へと急上昇しており、コスト構造や製品ミックスの改善が起きている状態にある。ROEは4.4%から12.6%から16.9%、ROAは2.3%から5.7%から7.3%へ改善しており、資本効率は低収益企業水準から成長企業水準へと変化している。利益率と資本効率の同時改善は事業構造の転換局面で見られやすい数値となっている。
ただし株価評価はPER27.2倍から48.0倍、PBR3.2倍とすでに高い成長期待を織り込んだ水準にある。売上が伸びていない中で利益のみが伸びている状態は、改善余地が一巡した後に成長率が鈍化しやすい特徴を持つ。つまり、現在の株価は「改善継続」を前提として成立している価格帯であり、横ばい成長に落ち着くと評価調整が起きやすい位置にある。
数値を総合すると、業績は明確な回復トレンドにあるが株価はすでに回復を通過し成長期待段階へ入っている。割安感による投資対象ではなく、利益成長の継続性に依存する銘柄であり、増益が続けば評価維持、成長が鈍化すればバリュエーション縮小という性格が強いと整理できる。投資判断としては回復株の初動ではなく中盤以降の段階にある状態と読み取れる。
配当目的とかどうなの?
予想配当利回りは26年3月期2.58%、27年3月期も2.58%と中位水準にとどまっている。高配当株と呼べる水準ではなく、インカム目的の主役になる利回りではない。利益は45億円から52億円から85億円予想と増益基調で、一株配当も20円から22円へと小幅増配にとどまっており、利益成長に対して配当の伸びは抑え気味になっている。つまり配当性向を積極的に引き上げる方針ではなく、利益成長を内部留保や事業投資へ回す配分に近い形と読み取れる。
安定配当というよりは業績連動型の配当水準で、景気や利益の変動に影響を受けやすいタイプである。またPER27倍〜48倍、PBR3.2倍という評価水準は配当株に多い低評価安定株の特徴とは逆で、株価はインカムよりも成長期待で形成されている状態にある。
配当利回りが株価の下支えになる構造ではなく、業績の伸びが鈍化した場合には配当より株価変動の影響の方が大きくなる可能性が高い。以上から配当目的の保有対象としての性格は弱く、インカム投資というより値動きと業績成長を前提にした銘柄と整理できる。配当は付随的なリターンであり、主目的に据えるタイプではない。
今後の値動き予想!!(5年間)
ワコムの現在値は850.0円である。売上は横ばい圏だが営業利益は拡大しており、営業利益率は1.7%から8.8%まで上昇、ROEも16%台へ改善している。数量成長ではなく採算改善による増益局面にあり、企業のフェーズとしては回復株から成長評価株へ移行した段階にある。一方でPER27倍〜48倍、PBR3倍台とすでに高い評価を受けており、株価は業績回復の初動ではなく、成長の持続を前提に成立している価格帯に位置している。したがって今後は利益の絶対額よりも「成長率の維持」が株価の方向性を左右しやすい状態にある。
良い場合は、ペンセンサー供給の拡大や高付加価値製品の構成比上昇により利益成長が続くシナリオである。営業利益率が10%前後まで上昇しROE15〜18%程度を維持できれば成長株としての評価が維持され、PER30倍前後が許容される可能性がある。この場合、利益拡大と評価維持が同時に進み、5年後の株価は1,300円〜1,800円程度まで上昇する展開が想定される。上昇は急騰型ではなく、決算ごとに段階的に切り上がる推移になりやすい。
中間の場合は、利益改善が一巡して安定成長に移行するシナリオである。営業利益率は7〜9%前後で横ばい、ROEも10%前後へ収れんし、市場評価はPER20倍前後まで低下すると想定される。この場合、成長株プレミアムがやや縮小し、5年後の株価は750円〜1,000円程度のレンジで推移しやすい。配当利回りは中位水準のため下値はある程度支えられるが、大きなトレンドは出にくい。
悪い場合は、収益率の改善が止まり増益が鈍化するシナリオである。営業利益率が5%台まで低下すると成長評価が崩れ、PER15倍前後まで縮小する可能性がある。その場合5年後の株価は450円〜700円程度まで下落する展開が考えられる。業績悪化というより評価修正による下落の比重が大きくなるタイプの値動きになりやすい。
総合すると、ワコムは現在値850.0円において割安株ではなく成長期待を織り込んだ銘柄であり、上昇余地はあるが評価変動の影響も大きい。業績の伸び率が維持されれば上昇、伸びが鈍化すれば横ばいまたは調整になりやすく、株価は利益水準よりも成長率に反応しやすい性格を持つ銘柄と整理できる。
この記事の最終更新日:2026年2月5日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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