株価
奥村組とは

株式会社奥村組は、大阪府大阪市阿倍野区に本社を置く総合建設会社(ゼネコン)です。1938年に設立され、戦前から日本のインフラ整備に携わってきた老舗企業であり、現在は東京証券取引所プライム市場に上場しています。資本金は約198億円、従業員数は連結で約2,500名規模です。
同社の事業は大きく「土木事業」「建築事業」「投資開発事業」の3分野で構成されています。
土木事業では、トンネル・ダム・橋梁・道路・鉄道・港湾・空港滑走路など、国や自治体からの公共工事を中心に多くの実績を持っています。特にトンネル工事に強みを持ち、国内トップクラスのシェアを誇ります。また、耐震・免震技術や地盤改良など、安全性と技術力を重視した施工を得意としています。
建築事業では、オフィスビル、商業施設、病院、教育施設、集合住宅、物流センターなど幅広い分野で設計・施工を手掛けています。民間案件にも積極的で、近年は再開発や都市型施設の建設、再生可能エネルギー施設の建設なども増加しています。特に地震に強い構造設計や環境対応型建築(ZEB/省エネ建築)への取り組みが進んでおり、企業価値の向上に貢献しています。
投資開発事業では、自社が保有する不動産を活用した開発・賃貸・管理業務を展開しています。オフィスビルや商業施設などの運営を通じて安定収益を確保しており、建設請負に依存しない収益構造の強化を進めています。また、再生可能エネルギー分野にも積極的で、バイオマス発電所の建設・運営や再エネ関連インフラ整備に取り組んでいます。
奥村組の強みは、長年にわたり培ってきた高度な技術力と施工品質にあります。トンネル掘削技術、耐震補強、コンクリート構造物の長寿命化など、独自の技術開発を進めており、国土交通省などの公共機関から高い評価を受けています。また、研究開発施設「技術研究所」を持ち、AI・ICT・BIM/CIMなど最新技術を活用した建設の効率化や安全管理の高度化にも力を入れています。
経営面では財務基盤が非常に安定しており、自己資本比率は70%を超える高水準を維持しています。無借金経営に近い堅実な財務体質で、業界の中でも財務の健全性はトップクラスです。加えて、安定した業績を背景に、株主還元にも積極的で、安定配当を継続しています。
経営理念は「誠実・努力・奉仕」であり、社会インフラを支える使命を重視しています。環境対応や労働安全の分野でも先進的な取り組みを行い、「安全第一」「人を大切にする企業」として地域社会からの信頼が厚い企業です。
奥村組 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益(EPS) (円) |
一株配当(DPS) (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 249,442 | 11,847 | 12,908 | 11,261 | 306.1 | 223 |
| 連24.3 | 288,146 | 13,708 | 14,878 | 12,493 | 339.3 | 237 |
| 連25.3 | 298,222 | 9,731 | 8,926 | 2,722 | 74.0 | 216 |
| 連26.3予 | 298,500 | 10,800 | 11,500 | 10,000 | 278.8 | 220 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 (単位:百万円) |
営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023 | 17,900 | 772 | -1,571 |
| 2024 | -17,139 | 1,458 | -4,304 |
| 2025 | -11,828 | -1,492 | 12,070 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | 実績PER(高値平均) | 実績PER(安値平均) | 実績PBR |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023 | 4.7% | 6.5% | 3.2% | ― | ― | ― |
| 2024 | 4.7% | 6.6% | 3.2% | ― | ― | ― |
| 2025 | 3.2% | 1.5% | 0.6% | 32.6倍 | 22.9倍 | 1.00倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
奥村組は、売上規模が安定しており、財務体質も堅実な中堅ゼネコンです。ただし、直近の業績推移をみると、2023年・2024年は堅調だったものの、2025年は利益が大きく落ち込んでおり、注意が必要な局面にあります。
まず、売上高は2023年に約2,494億円、2024年に約2,881億円、2025年に約2,982億円と着実に拡大しています。一方で、営業利益は2023年の118億円から2025年には97億円へ減少し、営業利益率も4.7%→4.7%→3.2%と下がっています。利益率低下の要因は、資材価格や人件費の上昇、工事採算の悪化などが考えられます。
経常利益も129億円→89億円と減益し、純利益は特に落ち込みが大きく、112億円→27億円と一時的に大幅減少しています。ROEも6.5%→6.6%→1.5%、ROAも3.2%→3.2%→0.6%と低下しており、企業の収益効率は弱含みです。
株価指標を見ると、2025年の実績PERは高値平均32.6倍、安値平均22.9倍、PBRは1.00倍と、利益の落ち込みに対してはやや割高感のある評価になっています。現状の低利益水準を前提とすると、株価はやや先行して高めに評価されている印象です。
ただし、奥村組は財務面では非常に健全で、自己資本比率が70%を超えるなど業界でも屈指の安定性を誇ります。借入依存度が低く、資金繰りにも余裕があります。また、受注残も豊富で、再生可能エネルギーや都市再開発案件など今後の成長余地は確保されています。
したがって投資判断としては、短期では利益率の低下がネガティブ要因ですが、中長期では堅実な経営基盤と受注拡大が下支え要因となり得ます。
現状の株価水準(PER20倍台)はやや割高気味で、今すぐの買いタイミングとは言いづらいですが、今後業績が回復基調に戻る兆しが見えれば、長期投資対象として再評価される可能性があります。
総合的には、「短期的には様子見、中長期では安定重視の投資先」として位置づけられる銘柄です。
配当目的とかどうなの?
奥村組は、配当目的の投資として非常に魅力的な銘柄です。
過去数年間にわたって安定した配当を続けており、2023年に223円、2024年に237円、2025年に216円、そして2026年は220円の配当予想となっています。業績に多少の波はあるものの、減配幅が小さく、一貫して高水準の配当を維持しています。
特に注目すべきは、2026年3月期の予想配当利回りが4.49%と非常に高い点です。建設業界の中でもトップクラスの配当利回りを誇り、安定したインカム収入を重視する投資家にとって魅力的な水準です。
奥村組は自己資本比率が70%を超える健全な財務体質を維持しており、借入金も少なく、内部留保も潤沢です。そのため、業績が一時的に低下しても配当を維持できる余力があります。実際に2025年は純利益が一時的に減少しましたが、配当は200円台を維持し、安定還元の姿勢を崩していません。
また、会社は長期的に株主還元を重視しており、無理のない範囲での増配も期待できます。景気の波に左右されにくい公共事業や大型インフラ案件の受注を多く抱えていることも、配当の安定性を支える要因です。
総合的に見ると、奥村組は「業績の安定+高配当+財務健全性」の三拍子がそろった企業です。長期保有で配当収入をコツコツ積み上げたい投資家にとって、安心して持てる堅実な高配当銘柄といえます。
今後の値動き予想!!(5年間)
奥村組の現在値は4,890円です。
ここから今後5年間の株価の動きを「良い場合」「中間」「悪い場合」の3つのシナリオで考えます。
良い場合
公共事業や再開発案件の受注が増え、利益率が改善するパターンです。建築と土木の両部門で採算の良い案件が増え、ROEや営業利益率が上向くことで投資家からの評価が高まります。バイオマス発電など再生可能エネルギー関連の事業も収益を押し上げる形となり、PERがやや高めの水準で推移しても株価が上昇していく可能性があります。この場合、5年間で6,500円〜7,500円程度まで上昇する見込みです。増配の可能性もあり、安定成長型の優良株として見直される展開です。
中間の場合
売上は横ばいで、利益率も現状水準を維持するケースです。業績は安定しているが大きな成長材料はなく、株価は落ち着いた推移になります。配当は200円台で維持され、利回り4%台の高水準が支えとなって、長期保有の安定銘柄として評価され続けます。この場合、株価は4,500円〜5,500円程度でのレンジ推移が想定されます。短期的な値上がりは限定的ですが、配当を受け取りながらじっくり保有するのに向いた展開です。
悪い場合
資材価格の上昇や人手不足の影響で工事採算が悪化し、利益率が低下するケースです。公共投資が減少し、民間案件の採算も厳しくなるとROEやROAがさらに低下し、PERが切り下がって評価が落ち込みます。業績悪化によって株価は3,200円〜3,800円程度まで下落する可能性があります。もっとも、奥村組は財務基盤が非常に強く、自己資本比率も高いため、長期的な経営危機に陥るリスクは低いと見られます。
総合的に見ると、奥村組は大きく値上がりを狙う銘柄ではなく、安定した業績と高い配当利回りを魅力とする「堅実な長期保有型株」といえます。
良い場合には上昇余地があり、悪い場合でも急落は限定的とみられるため、リスクを抑えて安定したインカムを得たい投資家に向いている銘柄です。
この記事の最終更新日:2025年11月2日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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