株価
キリンホールディングスとは

キリンホールディングス株式会社は、日本を代表する大手総合飲料・食品メーカーであり、ビールや清涼飲料、医薬・ヘルスサイエンス分野まで幅広い事業を展開しています。設立は1907年2月23日で、2007年に持株会社体制へ移行しました。本社は東京都中野区中野四丁目10番2号にあります。資本金は約1,020億円、連結従業員数は約3万2千人、2024年の連結売上収益は約2兆3,000億円規模です。
キリングループは「食と健康」をテーマに事業を多角化しており、主に次の3つの領域で構成されています。
第一は飲料・酒類事業です。キリンビール株式会社、キリンビバレッジ株式会社を中心に、ビールや発泡酒、チューハイなどのアルコール飲料、そして清涼飲料やミネラルウォーターなどを製造・販売しています。主力ブランドには「キリン一番搾り」「キリンラガービール」「キリンのどごし〈生〉」「キリン氷結」などがあり、長年にわたり日本国内のビール市場を牽引しています。清涼飲料では「生茶」「午後の紅茶」「キリンレモン」「ファイア」などが代表的です。特に「午後の紅茶」は発売から30年以上愛され続けるロングセラーブランドであり、健康志向を反映した無糖・機能性シリーズも展開しています。
第二はヘルスサイエンス事業です。これはキリンホールディングスが近年注力している分野で、ビール醸造で培った発酵・微生物技術を応用し、健康食品や機能性素材、バイオ関連製品を開発しています。代表的な製品には「iMUSE(イミューズ)」シリーズがあり、免疫機能をサポートするプラズマ乳酸菌を活用した飲料やサプリメントが好調です。グループ会社のファンケルとも協業し、栄養・美容・健康分野のシナジーを強化しています。また、バイオ医薬品や遺伝子研究にも力を入れており、「食」だけでなく「医」に踏み込んだ総合ヘルスケア企業を目指しています。
第三は国際事業です。オーストラリアのライオン社、ミャンマーのキリンミャンマー、ブラジルやアジア諸国の飲料メーカーなど、世界各地で事業を展開しています。特にオセアニア地域ではクラフトビールや乳製品のブランドを保有し、現地の食文化に合わせた商品を展開しています。海外売上比率は年々高まっており、グローバル市場での収益拡大が成長戦略の柱となっています。
さらに、キリンホールディングスはサステナビリティ経営を強く掲げており、「共通価値の創造(CSV)」を経営理念に据えています。これは、社会課題の解決と企業価値の向上を同時に実現するという考え方で、環境・社会・ガバナンス(ESG)の観点から多くの取り組みを行っています。具体的には、水資源の保全、再生可能エネルギーの導入、CO₂排出削減、容器リサイクルの推進、バリアフリー店舗の拡大、地域農業との共創などです。
また、研究開発にも積極的で、長年にわたり培ってきた発酵技術と生命科学を融合させることで、新しい素材や機能性成分の開発に取り組んでいます。これにより、飲料メーカーから“健康科学企業”への転換を進めています。
総合的に見ると、キリンホールディングスは「おいしさ」と「健康」の両立を目指す日本を代表する総合食品・ヘルスサイエンス企業です。ビールや飲料の伝統的な強みを維持しながらも、発酵・バイオ技術を基盤とした新事業の育成を進めており、国内外で持続的成長を目指す姿勢が特徴的です。
キリンホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株当り配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022.12 | 1,989,468 | 116,019 | 191,387 | 111,007 | 135.1 | 69 |
| 2023.12 | 2,134,393 | 150,294 | 197,049 | 112,697 | 139.2 | 71 |
| 2024.12 | 2,338,385 | 125,340 | 139,721 | 58,214 | 71.9 | 71 |
| 2025.12予 | 2,440,000 | 192,000 | 230,000 | 150,000 | 185.2 | 74 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位:百万円) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2022.12 | 135,562 | -10,399 | -167,835 |
| 2023.12 | 203,206 | -226,091 | 35,909 |
| 2024.12 | 242,844 | -329,375 | 58,125 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値平均) | PER(安値平均) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022.12 | 5.8% | 11.3% | 4.3% | – | – | – |
| 2023.12 | 7.0% | 9.9% | 3.9% | – | – | – |
| 2024.12 | 5.3% | 4.9% | 1.7% | 21.8倍 | 17.6倍 | 1.56倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
キリンホールディングスは、ビール・飲料・ヘルスサイエンスの三本柱で事業を展開する総合飲料企業です。国内では「キリン一番搾り」「のどごし〈生〉」「氷結」「生茶」「午後の紅茶」などの主力ブランドを抱え、長年にわたり消費者に浸透してきたブランド力を持ちます。また、清涼飲料や健康食品に加え、バイオ技術を活かした医療・ヘルスサイエンス事業にも積極的に進出しており、「飲料メーカーから健康科学企業へ」の転換を掲げています。
業績の推移を見ると、2022年の売上高は1兆9,894億円、2023年は2兆1,343億円、2024年は2兆3,383億円と順調に拡大しています。特に海外市場の伸びや新製品の投入が寄与しました。しかし利益面では、2023年に営業利益1,502億円と好調だったものの、2024年は1,253億円と減少しました。純利益も1,126億円から582億円へと大きく減益となり、利益率の低下が目立ちます。営業利益率は5.8%→7.0%→5.3%へ、ROEは11.3%→9.9%→4.9%、ROAも4.3%→3.9%→1.7%と悪化しており、コスト高や海外子会社の一部不振が響いたと見られます。
2025年12月期の会社予想では、営業利益1,920億円、経常利益2,300億円、純利益1,500億円と大幅な回復を見込んでいます。これは主に、ビール原材料価格の落ち着きや値上げ効果、ファンケルなどのヘルスサイエンス事業の収益改善、そして国内外でのコスト最適化によるものです。業績が底を打ったと考えられ、今後2~3年で再び収益性の高い構造に戻る可能性があります。
株価指標を見ると、2024年の実績PERは高値平均21.8倍、安値平均17.6倍、PBRは1.56倍です。日本の食品・飲料大手としてはやや割高に見えますが、業績回復を前提とすれば、PER15倍前後までの調整余地があり、中長期的な買い場ともいえます。
キャッシュフローを見ても、2024年は営業CFが2,428億円と堅調で、本業からの資金創出力は高い水準を維持しています。一方で投資CFはマイナス3,293億円と大きく、ヘルスサイエンス事業への研究開発投資や海外子会社への資本投入が増加しています。これは将来成長を見据えた積極的な投資と評価できます。財務CFはプラス581億円と、資金調達によって事業拡大を支えています。
同社はブランド力・技術力・海外展開のいずれも安定しており、ディフェンシブ性の高い企業です。短期的には原材料高や為替影響で利益が圧迫されていますが、中期的にはヘルスサイエンス事業の拡大と、アジア市場の成長によって再成長が見込まれます。特に、プラズマ乳酸菌を用いた「iMUSE」シリーズや、ファンケルとの共同開発による健康食品・サプリメント分野が成長ドライバーになる可能性が高いです。
投資判断としては、短期的にはやや割高で株価の上昇余地は限定的ですが、今後3~5年のスパンで見ると業績回復が見込まれ、安定した配当を得ながら長期保有するのに適した銘柄です。2024年の一時的な減益を業績転換のタイミングと捉え、株価が調整した局面での買い下がり戦略が有効と考えられます。
総合的に見ると、キリンホールディングスは「ディフェンシブかつ中期成長型の安定銘柄」。短期での値上がりを狙うよりも、ヘルスサイエンス事業の進展と業績回復を待ちながら、配当+中期の株価上昇を狙う長期保有型の投資先として有望です。
配当目的とかどうなの?
キリンホールディングスは、2025年12月期の予想配当が74円で、予想配当利回りは約3.4%と、国内大型株の中では比較的高い水準にあります。これは、安定配当と緩やかな増配を続ける企業として評価できるポイントです。
キリンは以前から「安定配当+業績に応じた柔軟な株主還元」を掲げており、ここ数年は連続で増配を実施しています。2022年は69円、2023年は71円、2024年も71円、そして2025年は74円予想と、4年連続の増配となる見込みです。業績の波がある中でも減配を避け、安定的な株主還元を行っている点は大きな魅力です。
さらに、営業キャッシュフローは毎年2,000億円を超える規模を維持しており、本業からの資金創出力が高いことから、配当の原資は十分確保されているといえます。財務体質も健全で、自己資本比率は45%前後と安定しています。つまり、無理に配当を出しているわけではなく、持続可能な範囲での安定配当を行っている企業です。
一方で、株価の値上がりを狙う成長投資銘柄というよりは、「ディフェンシブな高配当株」としての性格が強い点には注意が必要です。大幅な株価上昇よりも、毎年確実に配当を受け取れる安心感を重視する投資家に向いています。
また、今後のヘルスサイエンス事業(プラズマ乳酸菌、ファンケルとの協業など)の成長が軌道に乗れば、営業利益率の改善によりさらなる増配余地も期待できます。配当性向も50%前後を維持しており、余裕のあるバランスです。
総合的に見ると、キリンホールディングスは
- 減配リスクが極めて低く、安定的な株主還元を継続
- 利回り3%台の水準で、食品・飲料業界内でも上位の高配当水準
- 長期的に見ても配当+株価安定が期待できるディフェンシブ銘柄
といえます。
したがって、配当目的の長期保有には非常に向いた銘柄です。
毎年の安定配当を受け取りながら、業績回復やヘルスケア事業拡大による株価上昇を待つ、インカム+中期成長の両取りを狙える投資先といえるでしょう。
今後の値動き予想!!(5年間)
キリンホールディングスの現在値は2,172円です。ここから5年間の株価推移を、「良い場合」「中間」「悪い場合」の3つのシナリオで予想します。
良い場合(強気シナリオ)
国内飲料事業の利益率改善と、ファンケルやプラズマ乳酸菌などのヘルスサイエンス事業が成長軌道に乗るケースです。海外事業も順調に拡大し、ROEが8〜10%台まで回復。営業利益は2,000億円規模を維持し、PERが18倍前後まで見直されると仮定すると、株価は3,200〜3,600円前後まで上昇する可能性があります。配当も増配が続き、年間80〜85円水準となれば、配当利回りは2.5〜3%台を維持。長期保有によるキャピタルゲインとインカムゲインの両取りが狙える展開です。
中間の場合(標準シナリオ)
国内外ともに堅調だが、目立った成長は限定的なケースです。利益率は6〜7%程度で横ばい、PERは15倍前後を維持。業績は安定しており、配当も緩やかに増加します。この場合、株価は2,400〜2,700円前後で推移する可能性が高く、配当を受け取りながら安定保有できる銘柄として評価されます。大きな上昇は見込みにくいものの、食品・飲料業界のディフェンシブ株としてはリスクが小さく、長期投資に向いた展開といえます。
悪い場合(弱気シナリオ)
国内市場の停滞や、海外事業での為替リスク・原材料高の再燃などにより収益が悪化するケースです。営業利益率が4%台に低下し、ROEも4%前後に下がると、投資家の評価が厳しくなりPERは12倍前後に縮小。この場合、株価は1,800〜1,900円程度まで下落するリスクがあります。配当は維持される見込みですが、成長期待が薄れるため、値動きの重い展開が続くでしょう。
まとめ
総合的に見ると、キリンホールディングスは収益基盤が安定しており、景気変動にも強い「ディフェンシブ銘柄」です。短期的な急騰は見込みにくいものの、今後のヘルスサイエンス分野の伸び次第では長期的な株価上昇が期待できます。
したがって、現状の株価水準(2,172円)は中長期の安定保有には適した水準といえます。業績回復が確認されれば、3,000円台回復も十分射程に入るでしょう。
この記事の最終更新日:2025年11月4日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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