株価
味の素とは

味の素株式会社は、日本を代表する総合食品・バイオ企業で、創業から100年以上にわたって世界の「食」と「健康」を支えてきた企業です。1909年にうま味調味料「味の素」が誕生し、以来“おいしさと健康の両立”を企業理念として発展を続けています。本社は東京都中央区京橋一丁目15番1号にあり、1925年12月17日に設立されました。資本金は約798億円、グループ全体の従業員数は約3万4千人にのぼります。現在では世界35か国・地域に117の生産拠点を持ち、東証プライム市場に上場しているグローバル企業です。
味の素の事業は主に「食品事業」と「アミノサイエンス事業(バイオ・ファインケミカル)」の2つに分かれています。食品事業では、うま味調味料やだし調味料、冷凍食品、加工食品、レトルト、インスタント食品などを製造・販売しています。「味の素」「ほんだし」「Cook Do」「丸鶏がらスープ」「ギョーザ」などは国内でも非常に有名なブランドで、日本の家庭料理に欠かせない存在となっています。また、海外でも「Ajinomoto」ブランドはアジアや南米を中心に高い知名度を持ち、各国の食文化に合わせた製品開発を行っています。近年では健康志向の高まりを受けて、減塩・低脂肪・高たんぱく食品の開発にも力を入れています。
もう一つの柱であるアミノサイエンス事業では、味の素が長年培ってきたアミノ酸の研究と発酵技術を活用し、医薬品原料、健康補助素材、動物飼料用アミノ酸、電子材料、化成品などを幅広く手がけています。この分野は味の素の科学技術を応用した「バイオ×化学」の融合領域であり、食品メーカーの枠を超えた研究開発型の事業となっています。特に医薬・健康分野では、アミノ酸を使った点滴液やサプリメント、スポーツ栄養食品の開発を進めており、機能性素材の分野で世界トップクラスの技術力を持っています。
健康・機能性食品事業も拡大しており、「アミノバイタル」「メディミル」などのブランドを通じて、スポーツ栄養や高齢者向け栄養ケア製品を提供しています。これらの商品はアミノ酸の研究成果を応用したもので、筋肉維持や疲労回復、免疫サポートなどの効果が期待されています。
経営方針としては「アミノサイエンスで人と地球のWell-beingに貢献する」というビジョンを掲げ、2030年に向けた中期経営計画を推進しています。環境負荷の低減や食品ロス削減、カーボンニュートラルへの取り組みなど、サステナブル経営にも積極的です。さらに、世界中の食文化や健康課題を解決することを目的に、アミノ酸の科学を基盤とした新たな価値創造を目指しています。
味の素の海外売上比率はすでに50%を超えており、東南アジアでは家庭の約9割が同社の製品を利用しているとも言われます。アメリカでは「Ling Ling」ブランド、ヨーロッパでは「Aji-no-moto」ブランドが定着しており、グローバルブランドとして確固たる地位を築いています。
まとめると、味の素株式会社は単なる食品メーカーではなく、「アミノ酸研究を基盤に食・健康・環境の3領域で世界に貢献する科学企業」です。調味料のリーディングカンパニーとしての伝統を守りながら、バイオ・健康・環境分野に事業を広げ、持続的な成長と社会的価値の両立を目指している企業です。
味の素 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
純利益 (百万円) |
一株益(EPS) (円) |
一株配当(DPS) (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 1,359,115 | 148,928 | 140,033 | 94,065 | 88.0 | 34 |
| 2024.3 | 1,439,231 | 146,682 | 142,043 | 87,121 | 83.7 | 37 |
| 2025.3 | 1,530,556 | 113,968 | 108,330 | 70,272 | 69.8 | 40 |
| 2026.3(予) | 1,618,000 | 180,700 | 178,400 | 120,000 | 123.2 | 48 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 (単位:百万円) |
営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 117,640 | -30,087 | -111,061 |
| 2024.3 | 168,074 | -132,434 | -6,753 |
| 2025.3 | 209,898 | -77,382 | -137,684 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | PER(高値平均) | PER(安値平均) | PBR(実績) | ROE | ROA |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 10.9% | ― | ― | ― | 12.2% | 6.2% |
| 2024.3 | 10.1% | ― | ― | ― | 10.6% | 4.9% |
| 2025.3 | 7.4% | 37.0倍 | 26.2倍 | 6.19倍 | 9.4% | 4.0% |
出典元:四季報オンライン
投資判断
味の素株式会社は、食品とアミノサイエンスの両分野で世界的に事業を展開している大手総合食品メーカーです。提示された数値をもとに判断すると、業績はやや変動があるものの、基礎体力の強さが際立っており、中長期的には成長が見込める銘柄といえます。
まず、売上高は2023年の1兆3,591億円から2025年には1兆5,305億円まで増加しており、堅調な成長を続けています。営業利益は2023年に1,489億円、2024年に1,466億円とほぼ横ばいでしたが、2025年には1,139億円まで一時的に減少しています。これは原材料費や為替の影響を受けた一過性の要因で、2026年3月期の予想では1,807億円まで回復が見込まれており、利益の底打ち感が出ています。
経常利益は2023年の1,400億円から2025年に1,083億円と減少しましたが、翌年の予想で1,784億円とV字回復が見込まれています。純利益も2025年には702億円まで減少したものの、2026年には1,200億円に回復する見通しです。EPS(一株当たり利益)は69.8円から123.2円へ大きく増加する見込みで、収益体質の改善が確認できます。
営業利益率は2023年の10.9%から2025年には7.4%まで一時的に低下していますが、2026年の改善が期待されます。ROE(自己資本利益率)は12.2%から9.4%に下がったものの、依然として高水準であり、資本を効率的に運用できている優良企業の部類に入ります。ROA(総資産利益率)も4.0%と堅調で、財務体質の健全さを示しています。
株価指標では、2025年の実績PERが高値平均37倍、安値平均26倍、PBRが6.19倍と、やや割高感があります。これは、味の素が単なる食品メーカーではなく、グローバルなアミノ酸事業を展開する成長企業として市場からプレミアム評価を受けていることが要因です。短期的には割高な水準で株価の上値は重いかもしれませんが、長期的にはブランド力と成長戦略が株価を下支えする可能性が高いです。
全体的に見ると、味の素は一時的な利益減を挟みながらも、本業の収益力や財務体質は極めて安定しており、キャッシュフローも堅調です。特に、海外売上比率が5割を超えており、今後もアジア・南米・欧米での需要拡大が期待されます。さらにアミノ酸を活用した医薬・健康関連分野の拡大により、企業価値は中長期的に上昇していくと考えられます。
結論として、味の素は短期的には株価がやや割高ですが、長期的な成長余地と安定した収益性を兼ね備えた「中長期保有向けの安定成長株」と言えます。景気変動に強く、ブランド価値・グローバル展開・技術力のいずれも高水準で、長期投資に適した優良銘柄です。
配当目的とかどうなの?
味の素株式会社は、配当目的の投資として考える場合、安定性は高いが利回りはやや低めの銘柄です。
2026年3月期の予想配当利回りは1.08%と、東証プライム上場企業の平均(約2.3〜2.5%)を下回っています。そのため、「高配当株」としての魅力はやや乏しい一方で、安定した配当政策と増配傾向が特徴の企業です。
味の素は創業以来、一度も大幅な減配を行っておらず、業績に応じて着実に配当を引き上げてきた実績があります。2023年の年間配当34円から2026年予想では48円へと増配が続いており、3年間で約1.4倍の伸びを見せています。この安定した増配は、収益力の強さと財務の健全性を反映したものです。
また、同社は「アミノサイエンスによる持続的成長」を掲げており、安定したキャッシュフローを確保しながら株主還元を強化しています。自己資本比率が高く、営業キャッシュフローも右肩上がりのため、今後も減配リスクは極めて低いと考えられます。
ただし、株価水準が高くPBR6倍を超えているため、相対的に利回りが低く見えるという面もあります。言い換えれば、配当で収益を得るというよりは、「長期保有での株価上昇+安定配当」で総合リターンを狙うタイプの銘柄です。
総合的に見て、味の素は配当金額自体は小さいものの、増配の継続性と企業の安定性に優れた“安心して持てる配当株です。
配当狙いというより、長期で株価成長と安定した利益還元の両方を求める投資家に向いている銘柄と言えます。
今後の値動き予想!!(5年間)
味の素株式会社の現在の株価を4,438円とした場合、今後5年間の株価の動きを「良い場合」「中間」「悪い場合」で考えると以下のようになります。
【良い場合】
2026年以降、業績が順調に回復し、アミノ酸事業や機能性食品、冷凍食品などの収益が拡大していくパターンです。営業利益率は10%前後、ROEも12%以上に改善し、グローバル展開による収益拡大が株価を押し上げます。
市場からの評価も高まり、PERが35〜40倍の範囲に上昇することで株価は5年後に5,800円〜6,200円程度まで上がる可能性があります。
配当も増配が続き、48円から55円前後まで上昇すれば、配当利回りも安定しながら総合的なリターンが期待できます。
【中間の場合】
業績は堅調に推移するものの、原材料費の上昇や為替の影響が残り、営業利益率は8〜9%前後で落ち着くパターンです。
PERは30倍前後で推移し、市場評価も現在と大きくは変わりません。この場合、株価は5,000円〜5,400円前後で推移する見込みです。
配当は48円から52円前後に増配する可能性があり、安定的に緩やかな上昇を見込めます。
【悪い場合】
原材料価格の高騰、円高、競合激化などで利益が圧迫されるケースです。営業利益率が7%を下回り、ROEも9%を切ると、市場の評価が下がります。
PERも25〜28倍程度まで低下し、PBRも5倍前後にとどまる見通しとなり、株価は4,200円〜4,400円前後まで下落する可能性があります。
配当は維持されるものの、増配の余地は小さく、49円〜50円程度にとどまると予想されます。
【まとめ】
味の素は、短期的には株価がやや割高な水準にありますが、財務体質が強く、海外展開による収益基盤が確立しているため、中長期的には成長が期待できる企業です。
悪化しても大きく下がりにくい一方で、好業績が続けば緩やかに上昇する安定型の銘柄です。
5年後の見通しとしては、良い場合で6,000円台、中間で5,000円台、悪い場合でも4,200円前後にとどまる可能性が高く、長期保有向けの「堅実な成長株」と言えます。
この記事の最終更新日:2025年11月4日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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