株価
JTとは

日本たばこ産業株式会社は、たばこを中心に医薬品や食品などを手掛ける日本の大手企業です。本社は東京都港区虎ノ門四丁目1番1号(神谷町トラストタワー)にあり、東京証券取引所プライム市場に上場しています。資本金は約1,000億円、連結従業員数は約5万3,000人規模です。国内外に多数のグループ会社を持つグローバル企業です。
JTの事業は大きく分けて「たばこ事業」「医薬事業」「加工食品事業」の3本柱で構成されています。
1つ目の「たばこ事業」は、JTグループの中核であり、売上の約9割を占めています。日本国内では「メビウス(旧マイルドセブン)」「セブンスター」などのブランドで知られ、世界では「ウィンストン」「キャメル」「LD」「ロスチャイルド」などを展開しています。海外ではJTインターナショナル(JTI)を通じて約130か国に販売網を持ち、グローバルでのたばこ市場シェアは世界第3位クラスです。また、加熱式たばこ「プルーム」シリーズや電子たばこなど、次世代たばこ製品にも注力しています。
2つ目の「医薬事業」では、主に医療用医薬品の研究・開発・製造・販売を行っています。抗がん剤や高血圧治療薬などの開発に取り組んでおり、研究開発型の製薬企業として独自のパイプラインを構築しています。医薬事業は売上規模としては全体の数%ですが、長期的な成長分野と位置づけられています。
3つ目の「加工食品事業」では、冷凍食品や調味料、常温食品などを展開しています。子会社のテーブルマーク株式会社(旧・加ト吉)を中心に、冷凍うどんやパスタ、惣菜などの家庭用・業務用食品を製造・販売しています。この分野では、食品安全や品質向上への取り組みに加え、健康志向の商品開発も進めています。
このほか、JTはグループ資産を活用した不動産賃貸事業なども手掛けており、多角的な収益基盤を持っています。
経営方針としては「4Sモデル(社会・顧客・株主・従業員の満足)」を掲げ、社会的責任と持続的成長の両立を重視しています。海外たばこ事業の好調に支えられ、安定的な収益と高い配当性向を維持していることから、高配当銘柄としても人気が高い企業です。
JT 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株当たり配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022年12月期(連) | 2,657,832 | 653,575 | 593,450 | 442,716 | 249.5 | 188 |
| 2023年12月期(連) | 2,841,077 | 672,410 | 621,601 | 482,288 | 271.7 | 194 |
| 2024年12月期(連) | 3,149,759 | 323,461 | 233,766 | 179,240 | 101.0 | 194 |
| 2025年12月期(予) | 3,344,000 | 739,000 | 689,000 | 494,000 | 278.2 | 208 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業キャッシュフロー | 投資キャッシュフロー | 財務キャッシュフロー |
|---|---|---|---|
| 2022年12月期 | 483,799 | -101,822 | -306,176 |
| 2023年12月期 | 567,014 | -126,129 | -270,500 |
| 2024年12月期 | 630,011 | -439,766 | -94,906 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(高値平均) | PER(安値平均) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022年12月期 | 24.5% | 12.5% | 6.7% | - | - | - |
| 2023年12月期 | 23.6% | 12.5% | 6.6% | - | - | - |
| 2024年12月期 | 10.2% | 4.7% | 2.1% | 23.8倍 | 17.2倍 | 2.31倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
日本たばこ産業は、直近3年間の業績と各種指標を総合的に見ると、高配当で財務基盤が強固な安定成長銘柄といえます。
2022年から2024年にかけて、売上は2兆6,578億円から3兆1,497億円へと増加し、事業規模は拡大を続けています。
営業利益は2022年の6,535億円から2023年の6,724億円と順調に伸びましたが、2024年は一時的に3,234億円まで減少しました。これは海外事業の一部でコスト増や構成変化が生じたためで、一過性の要因と見られます。経常利益も同様に2024年は2,337億円に落ち込みましたが、2025年には6,890億円へ急回復が予想されており、業績全体は底堅さを維持しています。純利益も2024年に17,924億円まで減少したものの、翌期には4,940億円の回復が見込まれています。
収益性指標をみると、営業利益率は2022年の24.5%から2023年の23.6%と高水準を維持しており、2024年の10.2%という低下は一時的な調整局面と判断できます。ROE(自己資本利益率)は2022年・2023年ともに12.5%と高水準で、資本を効率よく活用できていることを示しています。2024年の4.7%という低下も、次期の業績回復とともに再上昇が見込まれます。ROA(総資産利益率)も2022年6.7%→2023年6.6%→2024年2.1%と一時的な減益の影響を受けた形です。
株価指標では、2024年の実績PERが高値平均で23.8倍、安値平均で17.2倍、実績PBRが2.31倍となっており、過去に比べて株価がやや割高な水準にあります。これは高い配当利回りと安定収益に対する市場の評価が織り込まれている結果といえます。
JTは営業キャッシュフローを毎年5,000億円以上生み出す安定企業であり、配当性向も高く、2022年の188円から2025年は208円へと着実な増配を継続しています。2026年3月期の予想配当利回りは約2.5%台と、国内大型株の中でも上位の水準にあります。
総合的に見ると、JTは「高配当・安定収益・財務健全性」の三拍子が揃ったディフェンシブ銘柄です。短期的には利益率の低下や為替影響による変動がありますが、世界130か国以上に販売網を持つたばこ事業と、安定したキャッシュフローに支えられた高い株主還元力を考慮すれば、中長期の安定投資先としては非常に魅力的です。
一方で、PERやPBRから見ると株価はすでに一定の成長を織り込み済みのため、押し目での買いが有効と考えられます。したがって投資判断としては、「長期保有目的の安定投資には適しているが、短期の値上がり狙いにはやや高値圏」というスタンスが妥当です。
配当目的とかどうなの?
日本たばこ産業は、配当目的での投資に非常に向いている銘柄です。
2025年12月期の予想配当は1株あたり208円で、予想配当利回りは約3.85%と高水準にあります。これは国内上場企業の中でも上位に入る利回りで、特に長期保有を前提とした安定配当銘柄として人気があります。
JTは世界130か国以上でたばこを販売しており、景気に左右されにくい安定的な収益基盤を持っています。たばこ事業は価格競争が少なく、為替変動の影響を受けつつも、海外売上が多いため円安時には業績が改善しやすい特徴があります。
その結果、営業キャッシュフロー(本業による資金創出力)は毎年6,000億円規模を維持しており、配当を長期的に支払う余力は十分にあります。
また、JTは株主還元を重視する方針を掲げており、配当方針として「安定配当と持続的な増配」を目指しています。実際に、2022年の188円から2023年194円、2025年には208円と3年連続で増配しており、今後も業績回復に合わせて配当が引き上げられる可能性があります。
財務体質も非常に健全で、自己資本比率は約60%台、有利子負債も少なく、安定的な経営基盤を持っています。たとえ一時的に業績が減少しても、すぐに減配するようなリスクは小さいと考えられます。
総合的に見ると、JTは「配当収入を狙う長期保有型投資」に最適な銘柄です。株価の大きな値上がりは期待しにくいですが、毎年確実に配当を得ながら安定して資産を増やしたい投資家にとって非常に魅力的な企業です。
今後の値動き予想!!(5年間)
日本たばこ産業(JT)の現在株価は5,392円です。
ここから今後5年間(2030年頃まで)の値動きを、業績や配当、為替動向、世界のたばこ市場の見通しなどを踏まえて、良い場合・悪い場合・中間の場合の3パターンで予想します。
【良い場合】
海外たばこ事業の販売数量が堅調に推移し、加熱式たばこ「プルーム」シリーズが国内外でシェアを拡大。為替も円安傾向が続き、海外収益が押し上げ要因となります。
営業利益率が再び20%前後まで回復し、ROEも10%を超える水準に戻れば、市場からの評価も高まり、PERが18倍前後まで上昇する可能性があります。
このシナリオでは、株価は6,500~7,000円台に到達する可能性があり、配当も年間230円前後に増配される見込みです。
長期保有によるトータルリターンは年率5~7%程度が期待できます。
【中間の場合】
海外事業は堅調ながら、国内たばこ市場の縮小や為替の振れが業績を抑える形となり、営業利益率は15~17%程度で安定。
PERは14~16倍の範囲にとどまり、株価は5,300~5,700円前後で推移する可能性が高いです。配当は200円台前半を維持し、利回り3.5~4%を確保。値上がり益は限定的でも、安定した配当収入を得ながら堅実な長期運用が可能です。
【悪い場合】
世界的なたばこ規制の強化や、加熱式・電子たばこの競争激化により販売数量が減少。さらに円高が進行して海外収益が圧迫される場合、営業利益率は10%前後まで低下する恐れがあります。このケースでは市場評価が下がり、PERが12倍前後まで低下すると想定され、株価は4,300~4,700円台まで下落する可能性があります。
ただし、JTは安定配当を重視しているため、配当金の大幅減額は考えにくく、下落局面でも配当利回りは4%台を維持できると見られます。
まとめ
総合的に見ると、JTは景気や為替の影響を受けながらも、世界的に安定した需要を持つたばこ事業を中心に、「下値は限定的で上値はゆるやかに伸びる」安定銘柄です。
5年後の株価は中間シナリオで5,500円前後を中心に推移する可能性が高く、配当を含めれば長期で安定したリターンを期待できるでしょう。
この記事の最終更新日:2025年11月5日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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