株価
帝人とは

帝人株式会社は、大阪府大阪市北区中之島と東京都千代田区霞が関の2か所に本社を構える、日本を代表する総合化学・素材メーカーです。1918年に人造絹糸(レーヨン)製造を目的として設立され、100年以上の歴史を持つ老舗企業です。現在は、繊維や化学素材だけでなく、医療・ヘルスケア事業など幅広い分野に事業を展開しています。
帝人の事業は大きく「マテリアル」「ヘルスケア」「ソリューション・その他」の3本柱で構成されています。
まず、マテリアル事業では、ポリエステル繊維やアラミド繊維などの高機能素材を中心に、自動車、航空機、防護服、光通信など多様な分野で使用される製品を開発・供給しています。特にアラミド繊維(耐熱・高強度素材)「テクノーラ」「トワロン」などは世界的に高い評価を受けており、米欧の市場でも強い存在感を持っています。また、ポリカーボネート樹脂や複合材料(CFRPなど)といった軽量素材を活用し、自動車の軽量化や環境負荷低減に貢献しています。
次に、ヘルスケア事業では、医薬品、在宅医療機器、医療用繊維、人工関節、バイオ医薬、再生医療関連製品などを手掛けています。特に在宅酸素療法(HOT)機器や睡眠時無呼吸症候群向け装置など、在宅医療分野で高いシェアを持ち、医療機関だけでなく患者の生活支援にも注力しています。医薬品分野では、抗がん剤や骨粗しょう症治療薬などを展開し、近年はバイオ医薬品の開発にも力を入れています。
さらに、ITや流通を活用したソリューション事業にも取り組んでおり、素材の製造だけでなく、製品の販売・流通・データ活用など、社会課題に対応する新しいビジネスモデルの構築も進めています。帝人は単なる素材メーカーにとどまらず、「素材と医療を融合したソリューション企業」への転換を目指しています。
近年は、環境・エネルギー問題に対応するため、リサイクル繊維やバイオマス由来の樹脂開発など、サステナブル素材の研究開発を推進しています。世界的な脱炭素の流れに合わせて、エコ素材事業の比率を高める方針を掲げており、ESG経営にも積極的です。
総合的に見ると、帝人株式会社は高機能素材と医療技術の両面を強みに持つ、技術志向型の企業です。伝統ある繊維メーカーから進化を遂げ、現在では「マテリアル × ヘルスケア × デジタル」を融合した多角的な企業グループとして、国内外で安定した事業基盤を築いています。
帝人 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高 (百万円) |
営業利益 (百万円) |
経常利益 (百万円) |
当期純利益 (百万円) |
一株当たり利益 (円) |
一株当たり配当 (円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 1,018,751 | 12,863 | 9,100 | -17,695 | -92.0 | 40 |
| 連24.3 | 1,032,773 | 13,542 | 15,564 | 10,599 | 55.1 | 30 |
| ◇25.3 | 1,005,471 | -71,828 | -78,038 | 28,347 | 147.2 | 50 |
| ◇26.3予 | 860,000 | 20,000 | 16,000 | 12,000 | 62.2 | 50 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 (単位:百万円) |
営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 55,086 | -52,427 | 7,180 |
| 2024年3月期 | 69,451 | -46,052 | -43,159 |
| 2025年3月期 | 69,843 | 52,517 | -134,459 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 1.2% | -4.2% | -1.5% | ― | ― |
| 2024年3月期 | 1.3% | 2.3% | 0.8% | ― | ― |
| 2025年3月期 | -7.2% | 6.5% | 2.6% |
実績PER 高値平均:29.7倍 安値平均:22.1倍 |
実績PBR:0.61倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
帝人株式会社は、ここ数年で業績の振れ幅が非常に大きく、投資判断としては「慎重に様子を見たい再建途中の銘柄」です。
営業利益は2023年に128億円、2024年に135億円とほぼ横ばいでしたが、2025年には718億円の赤字に転落しています。経常利益も2024年の155億円の黒字から2025年には780億円の赤字となり、本業・金融収支の両面で損失が発生しています。一方で純利益は283億円の黒字を確保していますが、これは一時的な特別利益や資産売却益が要因であり、実質的な事業収益の改善とは言えません。
営業利益率は2023年で1.2%、2024年1.3%と低水準が続き、2025年にはマイナス7.2%に悪化しています。製造業としてはかなり厳しい利益率で、主力の繊維や化成品事業でコスト増や需要減が影響しています。ROEは2023年マイナス4.2%から2025年に6.5%まで上昇していますが、これはあくまで一時的な利益計上による数値で、安定した収益改善とは言えません。ROAも2.6%にとどまり、総資産を活かしきれていない状況です。
株価指標を見ると、2025年の実績PERは高値平均で29.7倍、安値平均で22.1倍、実績PBRは0.61倍です。PERが高いのは利益が少ないためであり、株価が実際の収益水準よりも期待先行で評価されていることを意味します。PBRが1倍を大きく下回っている点は、株価が純資産よりも安い「資産割安株」としての側面がありますが、現状は業績不安が強く、積極的な買い材料にはなりにくい状態です。
帝人はもともと高機能素材・化学製品に強い企業で、近年は医療・ヘルスケア事業にも注力しています。しかし、主力であるマテリアル事業が赤字となっており、全社的な構造改革の効果がまだ十分に出ていません。キャッシュフローは比較的安定していますが、利益面での不安定さが株価の上値を抑えています。
総合的に見ると、帝人は「長期的に再評価の余地はあるが、短期的にはリスクが高い銘柄」です。PBR0.6倍という低評価は確かに魅力ですが、業績が安定しないうちは市場の信頼が戻りにくい状況です。
したがって現時点での投資判断は「中立からやや慎重」。無理に買いにいくよりも、営業利益が黒字化し、ROEが5%以上の安定的な水準に戻るまで様子を見るのが無難です。再建が進めば中長期的には見直される可能性がありますが、今はあくまで回復を見極める段階にあります。
配当目的とかどうなの?
帝人株式会社は、配当目的の投資としては「やや魅力的な水準」になっています。
2026年の予想配当利回りは4.08%と比較的高い水準です。東証プライム市場の平均利回り(おおむね2.3~2.6%)を大きく上回っており、数字だけ見れば高配当株といえます。
しかし注意したいのは、この高利回りが「業績不振による株価低下の結果」でもある点です。2025年(令和6年3月期)に営業赤字を出しているにもかかわらず、配当を50円維持しているため、企業の姿勢としては株主還元を重視していますが、無理をしている可能性もあります。
帝人は過去にも業績の波が大きく、減配や据え置きを繰り返してきた経緯があります。営業キャッシュフローは安定しているものの、利益率の低下が続いているため、配当の継続性は業績回復にかかっているといえます。
今後、マテリアル事業の収益改善や医療分野の黒字化が進めば、50円配当の維持・増配も期待できますが、もし再び赤字が続く場合には減配リスクが出てくる可能性も否定できません。
総合的に見ると、帝人は「高配当を狙う銘柄としては一応魅力的だが、業績の安定性にやや不安が残る」企業です。安定配当を求めるなら、同水準の利回りで業績がより安定している企業(たとえば商社や電力株など)の方が安心感はあります。
したがって、帝人への配当目的投資は、高利回りを得たいが多少のリスクも許容できる中長期投資家向けといえます。業績回復の兆しが見えてきた時期に仕込むのがより安全です。
今後の値動き予想!!(5年間)
帝人株式会社の現在値1,224円をもとに、今後5年間の株価シナリオを想定すると以下のようになります。
【良い場合】
構造改革が進み、マテリアル事業と医療事業の両方で収益改善が進んだ場合、営業利益率が3~4%台へ回復し、ROEも8%程度まで上昇する可能性があります。
PERも15倍程度まで見直されると仮定すると、株価は1,900円〜2,200円前後まで上昇する見通しです。素材価格の安定と再生医療など新規分野の成長が寄与すれば、長期的に株価は右肩上がりとなるシナリオです。
【中間の場合】
業績が安定するものの大きな成長には至らず、営業利益率が2%前後、ROEも5%程度で推移する場合、株価は1,300円〜1,500円前後で推移する可能性があります。
配当利回り(約4%)が株価の下支えとなり、レンジ相場で横ばいが続く展開が想定されます。長期保有で配当を得ながら、業績の回復を待つ戦略が有効です。
【悪い場合】
構造改革が遅れ、赤字が再び拡大する場合や、世界景気の減速で素材需要が落ち込む場合は、株価が900円〜1,000円台まで下落する可能性もあります。特にマテリアル事業が再び損失を出した場合、減配リスクが浮上し、投資家の信頼が低下する懸念があります。
まとめると、帝人の今後5年間は「業績再建の進展が鍵」です。
高配当であることが株価を支えていますが、実際の上昇には本業の利益回復が不可欠です。
再建が順調に進めば長期的な見直し買いが入り、2,000円台回復も期待できますが、現時点では慎重な姿勢で段階的に投資するのが無難です。
この記事の最終更新日:2025年11月6日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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