株価
東レとは

東レ株式会社は、日本を代表する総合素材メーカーであり、1926年1月に「東洋レーヨン株式会社」として設立されました。本社は東京都中央区日本橋室町2丁目1番1号の日本橋三井タワーにあり、大阪にも中之島三井ビルディング内に本社機能を持つ二本社制を採用しています。現在は東京証券取引所プライム市場に上場しており、資本金は約1,478億円、連結従業員数は約4万8千人、連結子会社は約200社にのぼります。
東レは「Innovation by Chemistry(化学による革新)」を企業スローガンに掲げ、素材技術を通じて社会課題の解決と持続可能な成長を目指しています。創業当初はレーヨンの製造からスタートしましたが、現在では繊維、樹脂、炭素繊維、水処理膜、医薬品など、幅広い先端素材を展開するグローバル企業へと成長しました。
主な事業分野は5つあります。
1つ目は「繊維事業」で、ナイロン、ポリエステル、アクリルなどの合成繊維を中心に、糸や織編物、不織布、人工皮革、衣料品などを製造しています。ユニクロなどアパレル企業への素材供給でも知られ、衣料用から産業資材まで幅広く展開しています。
2つ目は「機能化成品事業」で、エンジニアリングプラスチックやフィルム、電子情報材料、ファインケミカルなどを製造しています。これらは自動車、電子部品、包装材、ディスプレイなどの幅広い産業で利用されており、特にエンジニアリングプラスチック分野では国内トップクラスの技術力を持っています。
3つ目は「炭素繊維複合材料事業」で、炭素繊維およびその複合材料を製造・販売しています。航空機、自動車、風力発電、スポーツ用品などの軽量化需要に対応しており、ボーイング社など世界的企業にも材料を供給しています。炭素繊維分野では世界最大級のメーカーとして知られています。
4つ目は「環境・エンジニアリング事業」で、水処理用の逆浸透膜(RO膜)や濾過膜を中心に、環境・エネルギー関連設備、建築・土木資材、産業機械などを提供しています。世界的な水資源問題の解決に貢献する技術として評価が高く、海外でも上下水処理プラントに採用されています。
5つ目は「ライフサイエンス事業」で、医薬品、医療機器、診断薬などを開発・販売しています。特に腎疾患治療薬や人工腎臓用膜、血液浄化関連製品に強みを持ち、医療・健康分野にも積極的に進出しています。
また、研究開発にも力を入れており、素材開発から環境・医療・エネルギー分野まで幅広い分野で新技術を生み出しています。カーボンニュートラル社会の実現に向け、再生可能エネルギーや電動車向け素材、リサイクル技術の開発などにも注力しています。
直近の業績では、2025年3月期の連結売上高は約2兆5,600億円、純利益は約780億円を見込み、緩やかな回復傾向にあります。セグメント別では、繊維が約39%、機能化成品が約37%、炭素繊維が約12%、環境・エンジニアリングが約9%、ライフサイエンスが約2%を占めています。株価指標では、PER約17倍、PBR約0.8倍、配当利回りは約2%前後で推移しています。
東レは、化学と素材の力で世界の産業や生活を支える企業であり、環境問題の解決や先端技術分野の発展に欠かせない存在となっています。
東レ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株当り配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 2,489,330 | 109,001 | 111,870 | 72,823 | 45.5 | 18 |
| 2024.3 | 2,464,596 | 57,651 | 59,567 | 21,897 | 13.7 | 18 |
| 2025.3 | 2,563,280 | 127,453 | 114,288 | 77,911 | 48.9 | 18 |
| 2026.3(予) | 2,670,000 | 134,000 | 120,000 | 82,000 | 54.2 | 20 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023.3 | 145,213 | -102,724 | -57,378 |
| 2024.3 | 185,680 | -120,997 | -70,370 |
| 2025.3 | 255,033 | -63,198 | -188,520 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績・平均) | PBR(実績) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023.3 | 4.3% | 4.7% | 2.2% | - | - |
| 2024.3 | 2.3% | 1.2% | 0.6% | - | - |
| 2025.3 | 4.9% | 4.5% | 2.3% | 高値平均:34.3倍/安値平均:24.7倍 | 0.84倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
東レの業績を見ると、2024年に一時的な落ち込みが見られるものの、2025年には大きく回復しており、再び成長軌道に戻りつつあります。具体的には、営業利益は2024年の57,651百万円から2025年には127,453百万円へと倍以上に増加し、経常利益も114,288百万円まで回復しています。純利益も77,911百万円と、前期の約3.5倍に伸びており、収益力の改善が明確に表れています。
営業利益率は2023年4.3%、2024年2.3%、2025年4.9%と推移しており、利益率の観点でも2025年にはコロナ後の水準を取り戻しています。ROEも2024年の1.2%から2025年には4.5%へ改善しており、自己資本の効率的な活用が再び進みつつあります。ROAも0.6%から2.3%へ上昇し、資産全体で見ても収益性の回復が確認できます。
バリュエーション面では、2025年の実績PERは高値平均34.3倍、安値平均24.7倍とやや割高な印象ですが、PBRは0.84倍と1倍を下回っており、純資産価値から見れば依然として割安圏です。つまり、短期的な収益水準だけで判断すると高めの評価に見える一方、中長期的には資産価値を考慮すれば見直し余地のある株価水準といえます。
全体として、東レは2024年に一度業績を落としたものの、2025年には利益率・ROE・ROAの全指標で回復を示しています。事業ポートフォリオも多角的で、炭素繊維や水処理膜などの成長分野が収益を支えており、構造的な安定感があります。
したがって、短期的には株価がPER高水準で推移しているため積極的な買いにはやや慎重姿勢が必要ですが、中長期では業績回復と割安なPBRを考慮すれば、じっくりと保有・買い増しを検討できる銘柄と判断できます。
配当も安定しており、2026年3月期は1株あたり20円への増配予定で、安定配当型の長期保有にも向いています。
配当目的とかどうなの?
東レは、配当を安定的に継続している企業であり、長期的に見て「安定配当銘柄」といえます。2023年から2025年まで3期連続で1株あたり18円の配当を維持し、2026年3月期には20円への増配を予定しています。これは業績が回復基調にあることと、キャッシュフローが安定していることを反映しています。
ただし、2026年3月期の予想配当利回りは約2.16%で、配当目的で投資するには少し物足りない水準です。銀行や商社のような高配当株(4~5%前後)と比較するとやや低く、東レの魅力は「高配当」よりも「安定した業績と長期的な成長性」にあります。
営業キャッシュフローが増加し続けている点は評価できます。2023年から2025年にかけて営業CFは1450億円から2550億円へと拡大しており、本業による資金創出力が高まっています。これにより、将来的に配当のさらなる引き上げや自社株買いの余地もあります。
まとめると、
東レは「高利回り狙い」よりも「安定配当+業績回復+株価上昇」を期待する中長期投資向きの銘柄です。今後、炭素繊維や水処理膜などの成長分野が利益を押し上げれば、配当性向の引き上げや増配余地も十分にあると考えられます。
今後の値動き予想!!(5年間)
東レ(の現在値は922.9円です。ここから5年間の株価の動きを想定すると、業績や市場環境によっておおまかに3つの展開が考えられます。
まず、良い場合のシナリオです。炭素繊維や水処理膜などの成長事業が順調に拡大し、海外需要や円安の追い風も続く場合、営業利益率が6%台まで上がり、収益力が大幅に改善します。株式市場でも再評価が進み、PERが25倍前後まで上昇すれば、株価は1,800円前後まで上がる可能性があります。業績回復と成長事業の拡大が重なれば、長期的に高値圏に向かう展開が期待できます。
次に、中間の場合です。素材価格や為替の影響を受けながらも、全体として安定した業績を維持するケースです。この場合、営業利益率は4~5%程度で推移し、株価は1,100円から1,300円の間で落ち着いた動きを見せると考えられます。大きな上昇はないものの、配当を受け取りながら安定的に保有するには十分な水準です。
最後に、悪い場合のシナリオです。世界景気の減速や原材料価格の高騰、円高の進行などが重なり、主力の炭素繊維や化学製品の需要が落ち込むと、営業利益率が3%を割り込み、ROEも2%前後まで低下する可能性があります。この場合、PERも低下して投資家の評価が下がり、株価は600円から700円程度まで下落するリスクがあります。
まとめると、良い場合は約1,800円、中間の場合は1,100円〜1,300円、悪い場合は600円〜700円のレンジを想定できます。東レは安定性の高い素材メーカーであり、短期の値動きよりも長期での業績回復と配当の安定を重視する投資に向いている企業です。
この記事の最終更新日:2025年11月6日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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