株価
日産化学とは

日産化学株式会社は、東京に本社を置く日本の大手化学メーカーであり、機能性材料や農薬、医薬品、化学製品など幅広い分野で事業を展開しています。1921年に設立され、100年以上の歴史を持つ老舗企業で、東証プライム市場に上場しています。本社は東京都中央区日本橋二丁目5番1号(日本橋高島屋三井ビルディング)にあり、資本金は約189億円です。
日産化学は「化学で未来を変える」という企業理念のもと、独自の技術開発力を活かして高付加価値の化学製品を世界中に提供しています。事業は大きく「機能性材料事業」「ライフサイエンス事業」「化学品事業」「ヘルスケア事業」の4つに分かれています。
まず、機能性材料事業では、液晶ディスプレイ用配向膜材料「サンエバー」シリーズをはじめとした液晶材料、半導体向けフォトレジスト材料、CMPスラリー、フォトマスクブランクスなどを開発・製造しています。これらの製品はスマートフォン、テレビ、パソコンなどの電子機器に不可欠であり、特に液晶用配向膜では世界トップクラスのシェアを持っています。
次に、ライフサイエンス事業では農薬や農業関連製品を中心に展開しています。除草剤「グレムリン」や殺虫剤「ディアナ」など、環境に配慮した農薬を開発しており、世界各国の農業生産を支えています。また、農薬原体や中間体、植物成長調整剤などの製造も行っており、安全で効率的な農業ソリューションの提供に注力しています。
化学品事業では、医薬品や電子材料の原料となる基礎化学品や機能性化学品を取り扱っています。無機化学品や高純度薬品、有機合成化学品など、幅広い産業分野に素材を供給しており、産業基盤を支える役割を担っています。
ヘルスケア事業では、医薬品の原薬や中間体、診断薬向け素材などの開発を行っています。製薬会社との連携によって創薬支援も行っており、医療分野への展開を強化しています。また、動物用医薬品やバイオ関連製品など、ライフサイエンス全般に関わる分野にも事業を広げています。
近年は、環境・ESGへの取り組みも積極的に行っており、二酸化炭素排出削減、水資源の有効利用、化学物質管理、生物多様性保全などに注力しています。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)を活用して生産性向上と研究効率化を進めており、将来に向けた持続可能な成長を目指しています。
まとめると、日産化学はディスプレイ・半導体・農薬・医薬といった多様な分野で世界的に高い技術力を持つ企業です。特に液晶や半導体関連素材は世界でも評価が高く、今後は環境対応型の新素材やバイオテクノロジー分野でも成長が期待されています。老舗でありながら研究開発型の先端化学メーカーとして進化を続けており、安定した収益基盤と成長性の両面を持つ優良企業といえます。
日産化学 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 228,065 | 52,283 | 55,793 | 41,087 | 291.4 | 164 |
| 連24.3 | 226,705 | 48,201 | 51,629 | 38,033 | 272.8 | 164 |
| 連25.3 | 251,365 | 56,833 | 58,018 | 43,043 | 313.3 | 174 |
| 連26.3(予) | 270,000 | 61,800 | 62,000 | 46,500 | 344.7 | 176〜190 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 35,226 | -19,643 | -25,030 |
| 2024年3月期 | 33,701 | -18,741 | -22,101 |
| 2025年3月期 | 59,178 | -17,612 | -35,650 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | 実績PER(高値平均) | 実績PER(安値平均) | 実績PBR |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 22.9% | 18.8% | 13.7% | ― | ― | ― |
| 2024年3月期 | 21.2% | 16.7% | 11.7% | ― | ― | ― |
| 2025年3月期 | 22.6% | 18.4% | 13.0% | 23.3倍 | 16.6倍 | 2.97倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
日産化学は、化学メーカーの中でも特に収益力と安定性が高い企業です。営業利益率やROE、ROAの水準から見ても、非常に効率的で安定した経営を続けていることが分かります。
2023年3月期の営業利益は522億円、経常利益558億円、純利益410億円で、営業利益率は22.9%と極めて高水準でした。2024年3月期はやや減益となったものの、営業利益482億円、営業利益率21.2%と依然として高い利益率を維持しています。そして2025年3月期には再び回復し、営業利益568億円、営業利益率22.6%と増益が見込まれています。このように、売上が大きく変化しなくても高い利益率を維持しており、コスト管理力や高付加価値製品の比率の高さが際立っています。
ROEは2023年が18.8%、2024年が16.7%、2025年が18.4%と、製造業の平均(おおむね8〜10%)を大きく上回っており、資本効率の良さが目立ちます。ROAも13%前後と高く、資産をうまく活用して利益を上げている点が評価できます。つまり、無駄のない経営で利益を効率的に生み出している企業といえます。
株価指標を見ると、2025年の実績PERは高値平均23.3倍、安値平均16.6倍、PBRは2.97倍です。PER20倍前後であれば成長企業としては妥当な評価範囲であり、PBR3倍近い水準も高収益企業特有のプレミアム評価といえます。株価はすでに一定の成長を織り込んでいるため、割安感は薄いものの、利益の安定性と成長余地を考えると納得できる水準です。
総合的に見ると、日産化学は営業利益率22%台、ROE18%前後という高収益体質を持ち、化学業界の中でも際立って優れた企業です。半導体材料や液晶配向膜などの分野で高いシェアを持ち、これらの製品が今後の成長ドライバーとなります。業績は安定しており、財務基盤も堅固なため、景気変動にも強いタイプの銘柄です。
投資判断としては、短期的に急騰を狙う銘柄ではありませんが、業績の安定性と成長性の両面から見て長期保有に向いた優良株といえます。株価水準はやや高めでも、押し目を待って買うことで堅実なリターンが期待できます。
まとめると、日産化学は営業利益率22%超、ROE18%前後と非常に高収益で、今後も電子材料や高機能化学品の分野で成長が続く見込みです。PER23倍、PBR2.97倍は高めではあるものの、財務の安定性と収益力の高さを考えれば妥当な評価です。安定成長型の優良銘柄として、長期保有に適した投資先といえます。
配当目的とかどうなの?
日産化学の予想配当利回りは、2026年3月期で3.44%と、化学業界の中では比較的高めの水準です。これは日本企業全体の平均配当利回り(おおよそ2%前後)を上回っており、配当目的でも十分に検討できる銘柄といえます。
同社はもともと高収益体質を持ち、営業利益率が20%を超える安定した利益構造を維持しているため、利益のブレが少なく、安定配当を続けやすい経営基盤を持っています。実際、2023年以降の配当推移を見ると、1株当たり配当は164円 → 174円 → 176〜190円(予想)と、連続増配傾向が続いています。これは経営陣が株主還元を重視している姿勢の表れです。
また、自己資本比率も高く、ROE・ROAが高水準で推移していることから、配当余力にも十分な余裕があります。仮に業績が横ばいでも、安定的なキャッシュフローに支えられて配当が維持される可能性が高いです。
一方で、今後は成長投資(研究開発や設備増強)にも積極的な姿勢を見せており、配当よりも中長期の企業価値向上を優先する局面も考えられます。そのため、急激な増配を期待するよりは「安定した高水準の配当が続く銘柄」と見るのが現実的です。
まとめると、日産化学の配当利回り3.44%は、株主還元を重視する投資家にとって魅力的な水準です。業績の安定性やキャッシュフローの強さを考えると、配当目的でも安心して保有できる優良株といえます。短期の値上がり益を狙うよりも、長期で配当と安定成長を享受するタイプの投資が向いている銘柄です。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在の日産化学の株価は5,102円です。ここから今後5年間の値動きを、良い場合・中間・悪い場合の3つのシナリオで考えます。
良い場合は、半導体や電子材料の需要が世界的に拡大し、日産化学が得意とする液晶配向膜や半導体材料の販売が順調に伸びるケースです。営業利益率は23%前後、ROEは20%近くまで上昇し、利益成長が続きます。株価指標面でもPERが25倍程度まで見直されると見込まれ、この場合、株価は5,102円から7,800円〜8,300円程度まで上昇する可能性があります。配当も増配傾向が続き、5年後には利回りが4%台に乗る可能性があります。
中間の場合は、市場全体は安定して推移し、日産化学も安定的な収益を維持するシナリオです。営業利益率は22%前後、ROEは17〜18%程度を維持。大きな成長はないものの、収益の安定性から株価はじわじわと上昇し、PERは18〜20倍程度で推移する見込みです。この場合、株価は5,800円〜6,300円程度に落ち着くと想定されます。配当は3%前後の利回りを維持し、安定したインカムリターンが期待できます。
悪い場合は、半導体需要の鈍化や原材料費の上昇、円高の進行などが重なり、収益が悪化するケースです。営業利益率は18〜19%まで低下し、ROEは15%を下回る可能性があります。市場の評価も低下し、PERは15倍以下まで縮小する可能性があります。この場合、株価は4,000円〜4,400円程度まで下落するリスクがあります。配当は減配の可能性もありますが、財務が健全なため無配になる可能性は低いと考えられます。
まとめると、良い場合は8,000円前後まで上昇し、中間では6,000円前後、悪い場合は4,000円台までの下落が想定されます。日産化学は高収益体質と安定した配当を両立しているため、短期的な値上がりを狙うよりも、長期的に堅実な資産形成を目指す投資家に向いた銘柄です。
この記事の最終更新日:2025年11月8日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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