株価
イビデンとは

イビデン株式会社は、岐阜県大垣市神田町2丁目1番地に本社を置く、日本を代表する電子部品メーカーです。1912年に「揖斐川電力」として創業し、当初は水力発電事業を行っていました。その後、時代の変化に合わせて電力から化学、そして電子分野へと事業を転換し、現在では半導体関連や環境関連製品を中心とする高付加価値メーカーとしてグローバルに展開しています。東京証券取引所プライム市場および名古屋証券取引所プレミア市場に上場しており、資本金は約641億円、従業員数は連結で約1万3千人規模です。代表取締役社長は河島浩二氏です。
イビデンの主力は「電子事業」と「セラミック事業」の2本柱です。電子事業では、スマートフォンやパソコン、サーバーなどに搭載される高密度プリント配線板(HDI基板)や、半導体パッケージ基板を製造しています。特にパッケージ基板は、米インテルをはじめとする世界的な半導体メーカー向けに供給しており、世界でもトップクラスのシェアを誇ります。微細加工技術や高多層化技術に強みを持ち、5G通信・AI・データセンター・車載用半導体などの成長分野にも対応できる体制を整えています。
セラミック事業では、自動車の排気ガスをクリーンにするディーゼル微粒子捕集フィルター(DPF)や触媒担体(サブストレート)を製造しています。これらはディーゼル車やハイブリッド車などの環境対応車に欠かせない部品であり、欧州・北米・アジアの自動車メーカーに供給しています。また、電動車(EV)や水素社会の到来を見据え、次世代の環境材料や新規用途の開発も進めています。
さらに、カーボンやセラミックの材料技術を応用した新規分野にも挑戦しており、電子部品の放熱・絶縁材料、エネルギー関連の高温部材などにも事業を拡大しています。製造拠点は国内のほか、マレーシア、中国、フィリピン、アメリカなど海外にも展開しており、グローバルに安定した供給体制を築いています。
イビデンの企業理念は「人と技術の調和による社会への貢献」。創業以来、「技術革新を通じて社会の発展に貢献する」という姿勢を貫いており、環境負荷の低減・省エネ・リサイクルなどのESG(環境・社会・ガバナンス)経営にも積極的に取り組んでいます。
主要取引先にはインテル、トヨタ自動車、デンソーなど国内外の大手企業が名を連ねており、電子部品とセラミックという異なる分野を掛け合わせた「ハイブリッド型製造業」として、今後も高収益・高技術志向の経営を継続しています。
イビデン 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 連23.3 | 417,549 | 72,362 | 76,176 | 52,187 | 373.7 | 50 |
| 連24.3 | 370,511 | 47,568 | 51,140 | 31,490 | 225.4 | 40 |
| 連25.3 | 369,436 | 47,621 | 47,890 | 33,704 | 241.3 | 40 |
| 連26.3予 | 415,000 | 55,000 | 51,000 | 34,000 | 243.5 | 40 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位:百万円) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 125,748 | -104,019 | 92,585 |
| 2024年3月期 | 145,231 | -77,274 | 67,526 |
| 2025年3月期 | 118,895 | -164,182 | -7,113 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 17.3% | 12.4% | 6.0% | ― | ― |
| 2024年3月期 | 12.8% | 6.3% | 2.7% | ― | ― |
| 2025年3月期 | 12.8% | 6.8% | 3.1% |
高値平均 29.1倍 安値平均 15.4倍 |
3.40倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
イビデン株式会社は、岐阜県大垣市に本社を置く電子部品メーカーで、半導体パッケージ基板や高密度プリント配線板、そして自動車用セラミック部品などを手がけています。1912年に揖斐川電力として創業し、現在では電子とセラミックの2本柱で事業を展開しています。世界的に見ても、インテルなど大手半導体メーカー向けの高機能パッケージ基板を供給することで知られており、日本を代表する高付加価値素材メーカーの一つです。
業績面では、2023年3月期の売上高417,549百万円、営業利益72,362百万円、経常利益76,176百万円、純利益52,187百万円と非常に好調な決算でした。営業利益率は17.3%と高水準を維持し、ROEも12.4%、ROAが6.0%と高い収益性を示していました。しかし2024年3月期は、半導体需要の調整やスマートフォン市場の一服などにより減益となり、営業利益47,568百万円、純利益31,490百万円と減速しました。ただし2025年3月期では、営業利益47,621百万円、純利益33,704百万円とほぼ横ばいを維持し、業績の底打ちが確認されています。
利益率の推移を見ると、営業利益率は2023年17.3%→2024年12.8%→2025年12.8%と安定的。ROEは12.4%→6.3%→6.8%と緩やかに回復しており、ROAも6.0%→2.7%→3.1%と改善傾向にあります。これらの指標から、2024年を底に回復基調へ向かっていることが分かります。財務体質も非常に健全で、営業キャッシュフローは毎年プラスを維持しており、設備投資を積極的に行いながらも自己資本比率は高水準を保っています。
株価指標では、2025年の実績PERが高値平均29.1倍、安値平均15.4倍、PBRが3.40倍とされています。PER30倍近辺はやや割高ですが、同社の事業特性を考えると「高収益・高技術型メーカー」として市場からプレミアム評価を受けている状態です。インテルやTSMCなど主要半導体メーカー向けの製品供給が続く限り、長期的な成長期待は依然として高いといえます。
また、セラミック事業では自動車の排ガス浄化用フィルター(DPF)を製造しており、欧米や新興国向けに需要を確保しています。環境規制の強化に伴い、電動車(EV)向けの新素材開発や水素関連分野への参入も進めており、将来的な事業多角化にも期待が持てます。
配当は安定しており、2023年は50円、2024年と2025年は40円を維持。配当利回りは約2%前後と高くはありませんが、財務基盤の堅実さとキャッシュフローの強さから減配リスクは小さいと見られます。中期的には業績回復とともに再び増配する可能性もあります。
総合的に判断すると、イビデンは短期的には横ばいからやや上昇トレンド、長期的には半導体市況の回復を背景に再成長が期待できる中長期保有向けの成長株です。
PER15〜20倍程度の水準(株価調整局面)で買いを検討するのが理想であり、将来の半導体サイクル上昇局面では再び高収益期に戻る可能性があります。配当目的よりも成長性を重視する投資家に適した銘柄といえるでしょう。
配当目的とかどうなの?
イビデン株式会社は、配当目的の投資としては正直あまり向いていません。
現在の予想配当利回りは0.39%(連26.3期)とかなり低い水準で、東証プライム上場企業の平均(約2%前後)と比べても明確に見劣りします。これは、同社が利益を株主還元よりも研究開発・設備投資・次世代技術への投資に重点配分しているためです。
もともとイビデンは「半導体パッケージ基板」と「セラミック部品」という高技術・資本集約型の分野に強みを持っており、新製品ラインの立ち上げやクリーンルーム設備など、毎年多額の投資を必要とします。そのため、利益が出ても再投資に回す比率が高く、配当性向も抑えめに設定されています。
配当金の推移を見ると、2023年3月期は50円、2024年・2025年・2026年は40円で横ばいとなっており、「減配リスクは低いが、増配の期待も小さい」という安定型の配当方針です。
財務体質は健全で、営業キャッシュフローも十分に確保されているため、配当維持の確実性は高いと言えますが、「配当利回り狙い」で購入するほどの魅力は現時点ではありません。
したがって、イビデンは配当で安定収入を得る目的ではなく、業績回復や半導体需要の再拡大を狙った中長期のキャピタルゲイン(値上がり益)目的の銘柄として位置づけるのが妥当です。今後、半導体サイクルの上昇や新工場の稼働が進めば、利益成長に伴い増配余地も出てくる可能性がありますが、現段階では「成長投資優先・低利回り安定配当」の企業という評価になります。
今後の値動き予想!!(5年間)
イビデン株式会社の現在の株価は12,820円です。ここから今後5年間の値動きを、良い場合・悪い場合・中間の場合の3つのシナリオで考えてみます。
まず良い場合ですが、半導体市場が再び拡大し、イビデンの主力である半導体パッケージ基板の需要が大きく伸びるシナリオです。インテルやTSMCなど大手半導体メーカー向けの供給が増え、業績が回復基調に転じます。営業利益率も15%前後まで改善し、利益が増えることで株価も再評価されます。この場合、PERが25倍程度まで上昇し、株価はおおよそ20,000円〜22,000円程度まで上昇する可能性があります。設備投資の成果や技術的優位性が維持できれば、過去の最高値を超える展開も十分に考えられます。
次に中間の場合は、半導体需要が安定的に推移し、イビデンも堅実に利益を確保するシナリオです。営業利益率は12〜13%で推移し、ROEも7%前後を維持。セラミック事業が下支えとなり、全体的には安定成長が続きます。この場合のPERは18〜20倍程度が目安となり、株価は13,000円〜16,000円程度で推移する可能性が高いです。大きな上昇はないものの、堅実な企業として横ばいから緩やかな上昇基調が続くでしょう。
最後に悪い場合ですが、半導体需要の回復が遅れ、電子部品の価格競争が激化するシナリオです。インテル向けの出荷が減少したり、新規投資が重荷となった場合は、利益率が10%を下回る可能性もあります。セラミック事業もEVシフトで需要が減少すれば収益が圧迫されます。その場合、PERが15倍を下回り、株価は9,000円〜10,000円程度まで下落するリスクがあります。ただしイビデンは財務体質が非常に強く、キャッシュフローも安定しているため、極端な悪化や倒産リスクは低いと考えられます。
総合的に見ると、イビデンは技術力とブランド力が高く、半導体市況に強く連動する「業績連動型の成長株」です。短期的には変動が大きいですが、長期的に半導体需要が拡大すれば再び高値を目指す可能性があります。したがって、今後5年間での想定レンジはおおよそ9,000円〜22,000円で、安定期は13,000円〜16,000円を中心に推移すると見られます。中長期では成長を重視する投資家に向いており、半導体サイクルの上昇局面で大きなリターンを狙える銘柄と言えるでしょう。
この記事の最終更新日:2025年11月8日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

コメントを残す