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協和キリンとは

協和キリン株式会社は、日本を代表するバイオ医薬品メーカーの一つであり、東京都千代田区大手町一丁目9番2号に本社を構えています。1949年7月に設立され、キリンホールディングス株式会社の連結子会社として東京証券取引所プライム市場に上場しています。資本金は約267億円、従業員数は連結で約6,000人規模です。企業理念として「すべての患者さんの笑顔のために」を掲げ、革新的な医薬品の研究開発を通じて世界中の人々の健康に貢献することを目指しています。
協和キリンの事業は、従来の化学合成医薬ではなく、バイオテクノロジーを用いた抗体医薬・再生医療・細胞治療を中心としています。特に同社が得意とするのは「抗体医薬品」であり、モノクローナル抗体や抗体融合タンパクといった高機能なバイオ医薬を開発・製造しています。これらの製品は主にがん、血液疾患、腎疾患、免疫疾患など、従来の治療では十分な効果が得られにくい分野に用いられています。
主力製品には、腎性貧血治療薬「ネスプ(Nesp)」や、骨疾患治療薬「ロモソズマブ(Evenity)」、成人T細胞白血病リンパ腫治療薬「ポテリジオ(Poteligeo)」などがあり、いずれも世界的に販売されています。また、抗体技術を用いた血液がん治療薬「モガムリズマブ」や、希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の開発にも積極的です。
グローバル展開にも非常に力を入れており、北米・欧州・アジア太平洋地域に研究・販売拠点を設置。特に欧州や米国では、がんや免疫疾患領域での臨床開発を拡大しています。近年では米国のバイオベンチャー企業との提携や買収を通じて、最先端バイオ技術を取り入れたパイプライン強化を進めています。海外売上比率はすでに50%を超えており、国内製薬会社の中でも高い国際競争力を誇ります。
研究開発への投資も積極的で、年間の研究開発費は約900億円規模にのぼります。特に「抗体エンジニアリング技術」「糖鎖工学」「抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)制御技術」など独自の技術基盤を持ち、創薬から製造、臨床まで自社で一貫して行う体制を整えています。これにより、新薬開発のスピードと品質を両立させています。
また、同社はESG(環境・社会・ガバナンス)経営にも注力しており、倫理的な臨床試験運営、サステナブルな原材料調達、環境負荷の低減などを積極的に推進しています。女性研究者の登用やダイバーシティにも配慮し、グローバル企業としての社会的責任を重視しています。
財務面では、売上・利益ともに堅調で、2023年12月期の連結売上高は約4,825億円、営業利益は約611億円、純利益は約510億円を計上。営業利益率は12%前後と安定しており、自己資本比率も70%を超える強固な財務体質です。配当も安定的で、配当性向は40%前後を維持しています。
総合的に見て協和キリンは、伝統的な国内医薬メーカーから「グローバル・バイオ医薬企業」へと進化を遂げた企業です。安定した財務基盤と確立された抗体技術を背景に、がんや希少疾病など高難度領域で世界市場に挑戦しています。今後も国内外での臨床開発や新薬承認の進展により、長期的な成長が期待される企業といえます。
協和キリン 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022年12月期 | 398,371 | 65,341 | 67,572 | 53,573 | 99.7 | 51 |
| 2023年12月期 | 442,233 | 92,563 | 97,246 | 81,188 | 151.0 | 56 |
| 2024年12月期 | 495,558 | 89,221 | 83,453 | 59,870 | 113.1 | 58 |
| 2025年12月期(予想) | 478,000 | 74,000 | 74,000 | 57,000 | 108.9 | 60 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位:百万円) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2022年12月期 | 48,672 | -17,185 | -29,032 |
| 2023年12月期 | 115,551 | -20,382 | -32,535 |
| 2024年12月期 | 67,884 | -142,387 | -84,697 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022年12月期 | 16.4% | 7.0% | 5.6% | ― | ― |
| 2023年12月期 | 20.9% | 9.7% | 7.9% | ― | ― |
| 2024年12月期 | 18.0% | 7.0% | 5.6% |
高値平均 28.6倍 安値平均 20.4倍 |
1.49倍 |
| 2025年12月期(予想) | 15.4% | 6.6% | 5.3% | 22.33倍 | ― |
出典元:四季報オンライン
投資判断
協和キリンは、バイオ医薬品に特化した製薬会社で、抗体医薬を中心に高い技術力と安定した業績を持っています。近年の業績を見ると、2022年は営業利益65,341百万円、経常利益67,572百万円、純利益53,573百万円と堅調に推移し、2023年には営業利益92,563百万円、純利益81,188百万円と大幅な増益を記録しました。主力製品の抗体医薬「ポテリジオ」や「ロモソズマブ(Evenity)」が好調に推移したことが大きな要因です。2024年は一部の薬剤の売上減少や開発費の増加で営業利益が89,221百万円、純利益が59,870百万円と減益となりましたが、それでも業界平均を大きく上回る水準を維持しています。
2025年12月期の会社予想では、営業利益74,000百万円、経常利益74,000百万円、純利益57,000百万円と見込まれています。これは短期的に研究開発費が増えているための一時的な調整であり、今後の成長のための投資といえます。
収益性の面でも、営業利益率は2022年16.4%、2023年20.9%、2024年18.0%、2025年15.4%と推移しており、製薬業界の平均である10%前後を大きく上回っています。ROE(自己資本利益率)も2023年9.7%、2024年7.0%、2025年6.6%と良好で、ROA(総資産利益率)も5%台を維持しています。資本効率や収益力のバランスは非常に安定しています。
株価指標をみると、2024年の実績PERが高値平均28.6倍、安値平均20.4倍、PBR1.49倍、2025年の予想PERは22.33倍です。PER20倍前後であればやや高めではあるものの、協和キリンの安定的な利益体質や研究開発の将来性を考慮すると妥当な水準です。医薬品開発の成功による業績拡大余地もあり、投資家から一定のプレミアム評価を受けているといえます。
総合的に判断すると、協和キリンは短期的な値動きよりも、長期的な成長と安定性を重視する投資家に適した銘柄です。財務体質が非常に健全で、自己資本比率は70%を超え、営業キャッシュフローも潤沢で、減配リスクが低い点も魅力です。
したがって、投資判断としては「中長期保有に適した安定成長株」と言えます。バイオ医薬という成長分野で確固たる地位を築いており、今後の新薬承認や海外展開が進めば再び高収益期に戻る可能性があります。株価の短期的な上昇は限定的かもしれませんが、堅実な成長と安定した配当を期待できる、安心感のある銘柄です。
配当目的とかどうなの?
協和キリンは、配当目的の投資としても比較的安定した銘柄です。
現在の予想配当利回りは2025年12月期・2026年12月期ともに2.47%で、東証プライム全体の平均(約2%前後)をやや上回る水準です。利回りそのものは高配当株とまでは言えませんが、協和キリンの特徴は「安定した増配姿勢」と「強固な財務基盤」にあります。
同社はバイオ医薬品の開発に多額の研究開発費を投じながらも、営業キャッシュフローをしっかり確保できており、過去10年以上にわたり減配をしていません。2022年に1株51円だった配当は、2023年に56円、2024年に58円、2025年には60円を予定しており、着実な増配傾向が続いています。
配当性向は40%前後と無理のない水準にあり、財務的な余裕も十分です。自己資本比率は70%を超えており、製薬業界でも屈指の健全性を誇ります。将来的にも安定した配当を維持できる可能性が高く、景気の変動による減配リスクも限定的です。
総合的に見ると、協和キリンは「高配当株」ではなく「安定配当株」に分類されます。配当金を継続的に受け取りたい投資家にとっては非常に安心感があり、特に長期保有で配当+株価上昇の両方を狙うタイプの銘柄といえます。
したがって、短期で配当利回りを重視する投資先というよりは、中長期で安定したインカムゲインを得たい投資家に向いた堅実な銘柄です。
今後の値動き予想!!(5年間)
協和キリンの現在の株価は2,421.5円です。ここから今後5年間の値動きを、良い場合・中間の場合・悪い場合の3つのシナリオで考えてみます。
まず良い場合ですが、バイオ医薬や希少疾病用医薬品の開発が順調に進み、新薬が複数承認されてグローバル展開が大きく進むシナリオです。主力の抗体医薬「ポテリジオ」や骨疾患治療薬「ロモソズマブ(Evenity)」の販売が伸び、営業利益率も改善。ROE・ROAも上昇して収益性が強化されます。市場からの評価も高まり、PERが25倍前後まで上がれば、株価は5年後に3,800円〜4,200円程度まで上昇する可能性があります。これは現在値からおよそ+60〜+70%の上昇です。
次に中間の場合では、国内の薬価引き下げや競合の影響はあるものの、主力薬の売上は堅調で、研究開発も継続して進むパターンです。営業利益率は15〜18%前後、ROEは6〜7%台を維持し、安定した成長を続けるでしょう。株価はPER20〜23倍程度で推移し、5年後には2,800円〜3,200円程度まで上昇する可能性があります。現在の株価から見て+15〜+30%ほどの上昇が期待できます。
最後に悪い場合では、薬価改定による収益圧迫や、研究開発費の増加、海外市場での競争激化などが重なり、業績が伸び悩むシナリオです。営業利益率は15%前後、ROEも6%程度に低下し、市場の評価も下がります。PERは18倍前後に落ち着き、株価は5年後に2,000円〜2,200円程度まで下がる可能性があります。つまり、現在値と比べて横ばいから10%程度の下落リスクがあります。
総合的に見ると、協和キリンは研究開発力が高く、財務基盤も強固で、配当も安定しているため、中長期的な保有には適した銘柄です。短期的な値動きは限定的ですが、長期では新薬開発や海外展開の進展により株価上昇が期待できるでしょう。悪い場合でも大きく崩れる可能性は低く、安定配当を受け取りながら成長を待つタイプの投資先としては十分に魅力があります。
この記事の最終更新日:2025年11月8日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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