株価
三井化学とは

三井化学株式会社は、日本を代表する総合化学メーカーで、東京都中央区八重洲二丁目2番1号の八重洲セントラルタワーに本社を置いています。1955年7月に設立され、1962年に東京証券取引所へ上場しました。連結従業員数は約1万7,000人。世界30か国以上に生産・販売拠点を持ち、グローバルに事業を展開しています。
三井化学は、石油化学を中心とした基礎素材メーカーから脱却し、機能性化学、モビリティ、ライフ&ヘルスケア、ICT分野などの高付加価値事業へと軸足を移してきました。企業理念として「社会課題を化学の力で解決する」を掲げ、持続可能な社会の実現を目指しています。
事業は大きく4つの分野に分かれています。
まず1つ目のモビリティソリューション事業では、自動車向けの高機能樹脂やウレタン製品、エラストマー素材を開発しています。軽量化や燃費向上、安全性向上を支える素材を自動車メーカーに供給しており、燃料タンク材や内装部材、シートクッション材など幅広く使用されています。電気自動車(EV)や自動運転社会の拡大により、今後さらに需要拡大が期待される分野です。
2つ目のライフ&ヘルスケアソリューション事業では、人々の健康や快適な生活を支える素材を提供しています。主力製品にはメガネレンズ材料「MRシリーズ」や医療用樹脂、不織布、オーラルケアやスキンケア製品向けの化学素材、さらに農薬・肥料関連の化学品などがあります。特に視力矯正や医療、衛生用品の分野で世界的な競争力を持ち、生活に密接した製品を多く手がけています。
3つ目のICTソリューション事業では、半導体製造や電子機器用の高機能材料を提供しています。光学フィルム、フォトレジスト材料、リチウムイオン電池用素材など、スマートフォンやディスプレイ、5G通信機器などの基幹技術を支える分野です。高純度化学品や光学材料の品質の高さで、国内外の電子部品メーカーから高い評価を得ています。
4つ目のベーシック&グリーン・マテリアルズ事業では、石油化学を基盤とした基礎化学品の製造を行うと同時に、環境対応型の「グリーンケミカル」にも力を入れています。フェノール、ポリウレタン、ポリエチレン、PTAなどの基礎素材のほか、バイオマス原料を使ったプラスチックや再生可能素材を開発し、カーボンニュートラル社会への貢献を目指しています。
また、三井化学は研究開発にも非常に積極的です。東京・袖ケ浦にある総合研究所を中心に、AIやデータサイエンスを活用した素材設計、バイオマス化学、リサイクル技術などの分野で最先端の研究を進めています。年間の研究開発費は500億円を超え、大学や他企業との連携によるオープンイノベーションにも力を入れています。
経営面では、連結売上高が1兆7,000億円規模、営業利益は800億円前後で推移しています。石油化学市況に左右される部分はありますが、機能性材料やライフサイエンス事業の成長が全体の安定化に貢献しています。営業利益率はおおむね4〜6%で、自己資本比率は40%前後と健全な財務体質を維持しています。
三井化学は中期経営計画の中で、2030年までに「環境」「ヘルスケア」「ICT」の3分野を成長の柱とし、従来の石油化学依存から脱却する方針を掲げています。再生可能エネルギーやカーボンニュートラルに関連する素材開発を強化し、持続可能な社会の実現を目指しています。
総合的に見ると、三井化学は化学業界の中でも早くから構造転換を進めてきた企業であり、技術力と環境対応力を兼ね備えた「次世代型総合化学メーカー」です。環境・ヘルスケア・ICTという成長分野に注力することで、将来的に安定した利益成長と社会的評価の両立が期待できる企業といえます。
三井化学 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 1,879,547 | 128,998 | 117,278 | 82,936 | 431.2 | 120 |
| 2024年3月期 | 1,749,743 | 74,124 | 73,331 | 49,999 | 263.0 | 140 |
| 2025年3月期 | 1,809,164 | 78,336 | 71,647 | 32,242 | 170.6 | 150 |
| 2026年3月期(予想) | 1,770,000 | 98,000 | 90,000 | 55,000 | 292.1 | 150 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位:百万円) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 101,241 | -106,340 | 2,542 |
| 2024年3月期 | 161,339 | -123,939 | -26,016 |
| 2025年3月期 | 200,501 | -165,012 | -74,437 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 6.8% | 10.5% | 4.0% | ― | ― |
| 2024年3月期 | 4.2% | 5.7% | 2.2% | ― | ― |
| 2025年3月期 | 4.3% | 3.8% | 1.4% |
高値平均 17.9倍 安値平均 12.4倍 |
0.81倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
三井化学は、化学業界の中でも総合力のある大手メーカーで、石油化学からモビリティ、ヘルスケア、ICT分野まで幅広く展開しています。ここ数年の業績をみると、一時的な減益局面はあるものの、収益体質は安定しており、財務面も健全です。
まず業績の推移ですが、2023年3月期の営業利益は約1,289億円、純利益は約829億円でした。翌2024年3月期は、原料高や化学品市況の悪化で営業利益が741億円、純利益が499億円に減少。しかし2025年3月期にはやや回復し、営業利益783億円、純利益322億円と持ち直しています。営業利益率は6.8%から4.2%、そして4.3%と推移しており、利益率は低下気味ながらも安定した黒字を維持しています。
ROE(自己資本利益率)は2023年が10.5%、2024年が5.7%、2025年が3.8%と下がっており、企業の収益効率はやや鈍化しています。ROA(総資産利益率)も4.0%から1.4%に低下しましたが、これは市場環境による一時的な要因が大きいと見られます。
株価指標をみると、2025年の実績PERは高値平均17.9倍、安値平均12.4倍で、PBRは0.81倍と1倍を下回っています。PBRが1倍を切っているということは、会社の純資産価値よりも株価が割安な水準にあるということを意味します。そのため、短期的な景気変動に左右されやすい化学セクターの中では、比較的「割安感が強い」状態です。
財務面では営業キャッシュフローが着実に増加しており、事業からの現金創出力は高まっています。また、配当も安定しており、2023年に120円、2024年に140円、2025年には150円へと増配。2026年も150円を維持する見通しです。こうした点から、株主還元姿勢は非常に堅実です。
総合的に判断すると、三井化学は「短期的な成長株」ではなく、「安定性重視のバリュー株」としての魅力が強い企業です。景気や原油価格の影響で業績が変動しやすい面はありますが、研究開発力と環境対応素材への転換が進んでおり、長期的には再評価される可能性があります。
結論として、今の株価水準は割安圏にあり、長期的な視点では「配当を受け取りながら保有するのに適した銘柄」です。短期ではやや上値が重いものの、3年から5年のスパンで見れば、業績回復とともに株価が上昇に転じる可能性が十分にあります。
配当目的とかどうなの?
三井化学は、配当目的での投資にも十分向いている銘柄です。
まず、2026年3月期の予想配当利回りは4.15%と高水準です。これは化学業界の中でも上位に入る利回りで、日経平均銘柄の平均的な利回り(2%台)を大きく上回っています。高配当でありながら、業績の波に左右されにくく、安定して配当を支払っている点が大きな特徴です。
配当の推移を見ると、2023年に120円、2024年に140円、2025年・2026年には150円と増配傾向にあります。減配したことはほとんどなく、業績が一時的に落ち込んだ年でも配当を維持しており、株主還元の姿勢が非常に強い会社です。
また、営業キャッシュフローも着実に増加しており、2025年3月期には約2,000億円に達しています。これは事業活動から得られる現金がしっかりとあることを示しており、配当金の支払い余力が十分にあるということです。財務面も健全で、自己資本比率は40%を超えており、配当を継続する体力があります。
株価指標を見ても、PBRが0.8倍台と割安な水準にあり、株価が大きく動かなくても配当だけで年4%以上のリターンが期待できます。そのため、短期的な値上がりを狙うよりも、安定した配当を毎年受け取る「長期保有向けの銘柄」として魅力があります。
まとめると、三井化学は「高配当」「減配リスクが低い」「財務が安定している」という3点がそろった、長期投資に向いた銘柄です。特に安定したインカムゲイン(配当収入)を重視する投資家にとっては、安心して保有できる優良株といえます。
今後の値動き予想!!(5年間)
三井化学の現在の株価は3,610円です。ここから今後5年間の値動きを、良い場合・中間の場合・悪い場合の3つのシナリオで考えてみます。
まず良い場合ですが、世界的に環境意識が高まり、三井化学が注力している高付加価値事業(モビリティ、ヘルスケア、ICT、グリーンマテリアルなど)が順調に成長するケースです。石油化学依存からの脱却が進み、営業利益率が5~6%台に回復、ROEも7~8%程度まで改善します。PERも20倍前後まで上昇すれば、株価は5年後に4,800円から5,200円程度まで上がる可能性があります。現在値から見ると約30~40%の上昇です。
次に中間の場合です。景気や原材料価格の影響を受けつつも、高機能素材やリサイクル関連事業が業績を下支えし、収益が横ばいからやや回復するパターンです。営業利益率は4~5%台で安定し、ROEは4~5%程度。市場からの評価も大きくは変わらず、PERは14~17倍、PBRは0.8~0.9倍程度で推移します。この場合、株価は5年後に3,800円から4,300円程度となり、現在より5~20%ほどの上昇が期待できます。
最後に悪い場合です。原油価格の高騰や世界景気の停滞で化学品需要が落ち込み、収益が悪化するケースです。営業利益率は3%前後に低下し、ROEも2~3%と低水準になります。PERは12倍前後、PBRは0.7倍程度に下がる可能性があり、株価は5年後に3,000円から3,300円程度まで下落するリスクがあります。現在値からみると10%前後の下落です。
総合的に見ると、三井化学は景気や資源価格の影響を受けやすい一方で、環境対応型素材やヘルスケア事業への転換を進めており、中長期的には成長が期待できる企業です。現在の株価水準はPBR0.8倍台と割安圏にあり、配当利回りも4%台と高めです。したがって、短期的な値動きよりも、長期で安定した配当を受け取りつつ、将来的な株価上昇を狙う投資スタイルに向いていると言えます。
この記事の最終更新日:2025年11月8日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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