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三菱ケミカルグループとは

三菱ケミカルグループ株式会社は、東京都千代田区丸の内一丁目一番一号のパレスビルに本社を置く日本を代表する総合化学メーカーであり、三菱グループの中核企業の一つです。東京証券取引所プライム市場に上場しています。
同社は2005年10月3日に設立され、かつての三菱化学ホールディングスを前身としています。2022年にグループブランドを「三菱ケミカルグループ」に統一し、グローバル一体経営を進めています。資本金は約500億円、連結従業員数は約6万3千人、連結売上収益はおよそ4兆4千億円規模となっています。
グループ全体では、世界40か国以上に拠点を持ち、化学素材、機能樹脂、炭素繊維、産業ガス、医薬・ヘルスケアなど多岐にわたる事業を展開しています。日本国内では最大級の化学メーカーであり、世界でも有数の総合素材企業の一つです。
経営理念として「KAITEKI(カイテキ)」という独自のコンセプトを掲げ、環境・健康・快適の三つをバランスよく実現する持続可能な社会の構築を目指しています。
事業内容は大きく六つの分野に分かれています。
一つ目はスペシャリティマテリアルズ事業です。電子部品や自動車、医療機器、食品包装などに使われる高機能フィルムやエンジニアリングプラスチックを中心に、軽量で環境に優しい素材を開発・製造しています。EVやスマートフォン部材など、幅広い分野で世界的に採用されています。
二つ目はアドバンストソリューションズ事業です。電子・半導体・ディスプレイ・電池・水処理・医薬品原料など、先端産業を支える高機能材料を展開しています。特にリチウムイオン電池向け電解液や絶縁素材では世界的なシェアを持ち、脱炭素社会に貢献する製品群が強みです。
三つ目はアドバンストコンポジット&シェイプス事業です。炭素繊維複合材料や高耐熱プラスチックを扱い、航空機・モビリティ・エネルギー分野で軽量化と高強度を両立した製品を提供しています。炭素繊維の技術は世界トップクラスで、航空機部品や風力発電ブレードにも採用されています。
四つ目はMMA(メタクリル酸メチル)およびデリバティブズ事業です。透明樹脂のアクリル(PMMA)や塗料用原料となるMMAモノマーを製造販売し、世界シェアは約三割を占めます。建築資材や自動車ランプ、ディスプレイなど幅広い分野で利用されています。
五つ目はベーシックマテリアルズ&ポリマーズ事業です。石油化学を基盤とし、エチレン・プロピレン・ポリエチレン・ポリプロピレンなどを製造しています。また、再生可能原料を使ったバイオプラスチックや生分解性樹脂など、環境対応型の新素材にも注力しています。
六つ目は産業ガス事業です。グループ会社の日本酸素ホールディングスを通じて、鉄鋼・化学・医療・半導体などに産業用ガスや医療用酸素を供給しています。エネルギー効率化やCO2削減にも貢献する事業です。
さらに、ライフサイエンス分野では医薬品原薬・中間体やバイオ技術、機能性食品素材の開発も進めています。環境・社会課題の解決を目指し、リサイクル技術、バイオマス原料、CO2回収・再利用(CCUS)などにも取り組んでいます。
中期経営計画「Forging the Future 2025」では、高付加価値事業へのシフトと構造改革を進め、不採算事業の整理やグローバル統合を行いながら、収益性と持続成長の両立を目指しています。EV化・脱炭素・デジタル化といった社会の変化に対応し、研究開発費も年間千億円規模にのぼります。
三菱ケミカルグループは、化学の力で社会課題を解決し、「人と社会のより良い未来をつくる」ことを使命としています。環境配慮型製品の拡充、リサイクル技術の確立、CO2排出削減などを通じて、KAITEKI経営のもとで持続可能なグローバル成長を続けています。
三菱ケミカルグループ 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 4,634,532 | 182,718 | 167,964 | 96,066 | 67.6 | 30 |
| 2024年3月期 | 4,387,218 | 261,831 | 240,547 | 119,596 | 84.1 | 32 |
| 2025年3月期 | 4,407,405 | 196,694 | 150,695 | 45,020 | 31.6 | 32 |
| 2026年3月期(予想) | 3,700,000 | 202,000 | 165,000 | 145,000 | 106.7 | 32 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 355,189 | -247,632 | -60,783 |
| 2024年3月期 | 465,146 | -246,087 | -241,724 |
| 2025年3月期 | 552,847 | -275,434 | -246,654 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PBR(実績) | PER(高値平均) | PER(安値平均) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 3.9% | 6.1% | 1.6% | ― | ― | ― |
| 2024年3月期 | 5.9% | 6.7% | 1.9% | ― | ― | ― |
| 2025年3月期 | 4.4% | 2.5% | 0.7% | 0.62倍 | 18.1倍 | 14.0倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
三菱ケミカルグループは、日本を代表する総合化学メーカーであり、化学・素材分野で世界的に事業を展開する巨大企業です。近年は環境対応や再生素材などの分野に注力しながらも、景気循環や原材料コストの影響を受けやすい体質を持っています。直近3年の業績データを見ると、売上高は横ばいですが、利益面では変動が大きく、収益性に課題が残る状況です。
2023年3月期の営業利益は1,827億円、経常利益は1,679億円、純利益は960億円でした。翌2024年3月期は一時的に増益となり、営業利益2,618億円、経常利益2,405億円、純利益1,196億円と改善しました。しかし2025年3月期には再び減益となり、営業利益1,966億円、経常利益1,506億円、純利益450億円に縮小しました。化学セクター全体に見られる原料高・販売価格下落・需要減退の影響を大きく受けた結果です。
営業利益率の推移を見ると、2023年3.9%、2024年5.9%、2025年4.4%と上昇後に再び低下しており、安定感に欠けます。中核事業のMMAや産業ガスは堅調でしたが、ベーシックケミカルやエンジニアリングプラスチック分野で利益が減少しました。全体としては「収益の源泉が一部事業に偏っている」点がリスクといえます。
ROEは2023年6.1%、2024年6.7%、2025年2.5%と、利益率の低下により資本効率も悪化しました。ROAも同様に2023年1.6%、2024年1.9%、2025年0.7%と減少しており、総資産を活かした利益創出力は落ちています。これは売上規模を維持しながらも、固定費負担と原価率上昇によって利益が圧迫された結果です。
一方で、バリュエーション面を見ると株価はかなり割安です。2025年の実績PBRは0.62倍と1倍を大きく下回り、企業の純資産価値より低い株価水準です。PERは高値平均で18.1倍、安値平均で14.0倍と、業界平均の15〜20倍程度とほぼ同水準に位置しています。過去の収益変動を踏まえても、このPBR水準は市場の過小評価を示唆しています。
財務面では営業キャッシュフローが増加傾向であり、2023年3月期の3,551億円から2025年3月期には5,528億円に増えています。投資キャッシュフローはマイナスで推移していますが、新規設備投資や研究開発への支出を継続しており、長期成長への布石とみられます。財務キャッシュフローも安定しており、自己資本比率も高水準を維持しています。
このように、短期的には業績が減益傾向にあるものの、財務の安定性と世界的な供給網を背景にした底堅さが特徴です。今後の注目ポイントは、脱炭素社会に向けた新素材・再生化学品・電池材料などの成長分野での競争力強化です。グローバルでの研究開発拠点を活かし、EV関連素材やバイオ由来プラスチックの事業拡大が進めば、再び収益拡大が見込まれます。
総合的な投資判断としては、現時点では「割安安定型の長期保有銘柄」といえます。ROE・ROAの低下により短期的な株価上昇は限定的ですが、PBR0.6倍という低水準は下値の堅さを示しており、配当利回りも3%前後と安定しています。中長期では環境・素材関連のテーマ性から再評価余地が高く、景気回復局面での株価反発が期待できます。
したがって投資判断としては、「短期:やや弱含み、中期:横ばい〜回復基調、長期:割安放置からの上昇期待」となります。守りのポートフォリオに組み込むには適した銘柄です。
配当目的とかどうなの?
三菱ケミカルグループは、配当目的での投資にも向いている安定銘柄です。2026年3月期の予想配当利回りは3.84%と、化学業界の中でも比較的高い水準にあります。
同社は「安定配当を重視する」方針を長年続けており、業績が悪化した時期でも減配を避ける傾向があります。実際にここ数年の一株配当は、2023年が30円、2024年と2025年が32円と推移しており、業績が振るわなかった2025年も減配していません。
その背景には、営業キャッシュフローが着実に増加している点があります。2023年3月期の営業CFは約3,550億円でしたが、2025年には5,500億円を超える水準まで拡大しており、配当の原資となる現金収入は安定しています。さらに財務面も堅実で、自己資本比率は40%前後と高く、借入金の水準も無理のない範囲に抑えられています。
会社としては、利益の増減にかかわらず「安定した配当を維持しつつ、将来的な増配を目指す」という方針を明確にしています。そのため、短期的に業績が弱含んでも、配当が極端に減るリスクは小さいと考えられます。
また、株価指標を見ると、PBRは0.62倍と純資産を大きく下回っており、株価は割安水準にあります。現在の株価で3.8%前後の配当が得られるため、実質的には「低リスクの高配当株」として位置づけることができます。
総合的に見ると、三菱ケミカルグループは短期の値上がり益を狙うよりも、長期で安定した配当を受け取るタイプの投資家に向いています。業績が大きく伸びる局面は少ないものの、財務が安定しており、減配リスクが低く、長期保有での利回り重視投資に適した銘柄です。守りのポートフォリオに組み入れるには非常にバランスの良い選択といえます。
今後の値動き予想!!(5年間)
三菱ケミカルグループの現在値は833.2円です。ここから今後5年間の株価の動きを想定すると、良い場合・中間の場合・悪い場合の3つのシナリオが考えられます。
良い場合は、環境対応素材や電池材料、バイオプラスチックなどの成長分野が拡大し、業績が回復して利益率が改善するパターンです。営業利益率が6%台、ROEが6〜7%台に戻れば、株価は再評価されて上昇しやすくなります。この場合、5年後の株価は1,200円から1,400円程度まで上がる可能性があります。配当も安定しているため、値上がり益と合わせて年率6%前後のリターンが期待できます。
中間の場合は、化学業界全体が横ばいで推移し、事業の一部が堅調でも大きな成長が見られない状況です。営業利益率は4〜5%前後で推移し、ROEも3〜4%程度の安定圏となります。この場合、株価は900円から1,000円前後で推移し、3〜4%台の配当を受け取りながら横ばいで推移する形になります。大きな上昇は見込みにくいですが、堅実なインカムゲインを得ることができます。
悪い場合は、景気の悪化や原材料価格の高騰、為替の影響などで利益がさらに落ち込み、営業利益率が3%台、ROEが2%を下回るような状況です。この場合、株価は600円から700円程度まで下落するリスクがあります。ただし、PBRが0.6倍という低い水準にあるため、極端に下がる可能性は小さいと考えられます。
総合的に見ると、現在の株価833円はすでに割安感が強く、下値は限定的です。景気や原料コストの動向次第ではありますが、業績が底打ちすれば再び1,000円台を目指す展開も十分あり得ます。配当利回りが高く、財務基盤も安定しているため、長期的に配当を受け取りながら保有するのに適した銘柄です。
この記事の最終更新日:2025年11月8日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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