株価
第一三共とは

第一三共株式会社は、日本を代表する総合製薬メーカーのひとつであり、医療用医薬品を中心に研究・開発・製造・販売を行うグローバル企業です。本社は東京都中央区日本橋本町三丁目5番1号にあり、資本金は500億円、東京証券取引所プライム市場に上場しています。
第一三共は「イノベーションにより人々の健康と未来に貢献する」を企業理念に掲げ、世界中の患者のQOL(生活の質)の向上を目指した医薬品の開発を進めています。特に「がん」「循環器」「感染症」などの領域に強みを持ち、革新的な医薬品を生み出しています。
中でも現在の成長を牽引しているのが、抗体薬物複合体(ADC)技術を用いたがん治療薬「エンハーツ(ENHERTU)」です。この薬は自社で開発した独自のADC技術「DXdテクノロジー」を活用しており、がん細胞にピンポイントで薬剤を届けるという革新的な仕組みを持っています。アストラゼネカ社と提携し、乳がん・胃がん・肺がんなど複数のがん種で世界的に販売が進んでおり、同社の収益の柱となっています。2024年度には世界売上高が約1兆円規模に迫る勢いで、第一三共を世界の製薬大手と肩を並べる存在へ押し上げました。
一方で、がん領域以外にも多くの医薬品を展開しています。代表的な製品には、高血圧治療薬「オルメテック(Olmetec)」、抗血小板薬「エフィエント(Effient)」、糖尿病治療薬「テネリア(Tenelia)」などがあります。これらは国内外で長年使用されている信頼性の高い製品であり、安定収益を支える基盤となっています。
また、一般用医薬品(OTC薬)分野では、子会社の「第一三共ヘルスケア株式会社」が「ルル」シリーズ(風邪薬)、「ガスター10」(胃薬)、「マキロン」(消毒薬)、「トランシーノ」(美白・しみ対策医薬品)など、生活に密着したブランドを展開しています。これにより、第一三共グループは医療機関向けの処方薬から一般消費者向けの市販薬まで幅広くカバーしています。
研究開発体制も非常に充実しており、研究開発費は年間で約2,500億円と日本の製薬企業の中でもトップクラスです。東京・神奈川・群馬を中心に国内研究拠点を持ち、海外ではアメリカ、ドイツ、インドなどにも研究施設を設置しています。近年はがん領域に続く成長分野として、mRNAワクチンや遺伝子治療、核酸医薬、免疫療法の研究にも力を入れています。
財務面でも非常に健全で、自己資本比率は60%前後、営業利益率は15%前後と高水準を維持しています。キャッシュフローも潤沢であり、今後も研究開発への投資と株主還元を両立する方針を打ち出しています。
海外展開にも積極的で、現在では米国、欧州、アジアの三極体制を確立しています。特に米国市場では、がん治療薬「エンハーツ」や新開発の「ダトポタマブ デルクステカン(Datopotamab Deruxtecan)」の承認申請が進んでおり、将来的にはアストラゼネカやロシュといった欧米大手に並ぶグローバルメガファーマの仲間入りを目指しています。
さらに、環境・社会・ガバナンス(ESG)経営にも力を入れており、環境負荷の低減、医薬品アクセスの拡大、ジェンダー平等の推進などにも積極的です。国連グローバル・コンパクトにも署名しており、持続可能な社会の実現に貢献する企業姿勢を明確にしています。
まとめると、第一三共は日本国内のみならず世界規模で新薬開発を進める「グローバル創薬企業」であり、特にがん治療分野において世界市場をリードする存在です。安定した財務基盤と高い研究力を背景に、今後も中長期的な成長が見込まれる日本屈指の製薬会社といえます。
第一三共 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ◇23.3 | 1,278,478 | 120,580 | 126,854 | 109,188 | 57.0 | 30 |
| ◇24.3 | 1,601,688 | 211,588 | 237,234 | 200,731 | 104.7 | 50 |
| ◇25.3 | 1,886,256 | 331,925 | 355,631 | 295,756 | 156.0 | 60 |
| ◇26.3予 | 2,000,000 | 350,000 | 370,000 | 300,000 | 162.1 | 78 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業CF(百万円) | 投資CF(百万円) | 財務CF(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 114,514 | -257,782 | -89,594 |
| 2024年3月期 | 599,258 | -282,636 | -123,564 |
| 2025年3月期 | 53,842 | 334,170 | -377,769 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PBR(倍) | PER(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 9.4% | 7.5% | 4.3% | ― | ― |
| 2024年3月期 | 13.2% | 11.8% | 5.7% | ― | ― |
| 2025年3月期 | 17.5% | 18.2% | 8.5% | 3.77倍 | 高値平均:58.3倍 安値平均:33.9倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
第一三共は、業績・財務・株価指標のすべてが非常に良好で、今後も中長期での成長が期待できる「買い優良株」と判断できます。
まず、業績面では2023年から2025年にかけて売上高・利益ともに力強く伸びています。
営業利益は1,205億円 → 3,319億円へと約3倍に増加、経常利益も1,268億円 → 3,556億円へと拡大しています。純利益も2年間で約2.7倍の2,957億円に到達しており、極めて高い成長性を示しています。
この急成長の主因は、がん治療薬「エンハーツ(ENHERTU)」の世界的な販売拡大です。
アストラゼネカ社との提携を通じて、乳がん・肺がん・胃がんなど複数領域で適応拡大が進んでおり、アメリカ・欧州・中国など主要市場で販売が好調です。
この製品は第一三共独自のADC(抗体薬物複合体)技術「DXdテクノロジー」を採用しており、今後も他の新薬パイプラインへの応用が期待されています。
利益率の推移を見ると、営業利益率は9.4% → 13.2% → 17.5%と3年連続で改善しており、製薬業界でもトップクラスの収益性を確立しつつあります。
ROEも7.5% → 11.8% → 18.2%と大幅に上昇し、資本効率の高さが際立っています。ROAも4.3% → 8.5%と改善しており、総資産を効率的に利益へ転換できていることを示しています。
一方で、PBRが3.77倍、PERが高値平均58倍・安値平均33倍とやや高めに位置しており、株価はすでに成長を織り込みつつあります。
ただし、製薬業界における新薬開発の成功は収益の飛躍的な拡大につながるため、この「プレミアム評価」は正当化できる水準です。
特にADC分野では世界でも数少ない成功企業であり、今後の適応拡大・新薬承認によってさらに業績が上振れる可能性があります。
財務体質も極めて健全で、自己資本比率は60%前後、営業キャッシュフローも安定。
配当も30円 → 50円 → 60円 → 78円と増配を続けており、株主還元にも積極的です。
総合的に見ると、第一三共は「国内製薬企業の枠を超えたグローバルメガファーマ」として確固たる地位を築きつつあります。
研究開発力、収益性、財務基盤のどれを取っても非常に優れており、短期的な値動きに左右されず、中長期での株価上昇・安定配当を狙える投資先として評価できます。結論としては、今の水準でも中長期で「買い」判断が妥当であり、今後5年~10年でさらなる収益拡大と株主価値の向上が見込まれる銘柄です。
配当目的とかどうなの?
第一三共は、配当目的の投資先としても魅力がありますが、性質としては「高配当銘柄」ではなく「安定的に増配していく成長配当銘柄」です。
現在の予想配当利回りは2026年3月期・2027年3月期ともに2.31%で、国内製薬大手としては標準的な水準です。ただし注目すべきは、ここ数年の増配ペースです。2023年に30円だった配当が2024年には50円、2025年には60円、2026年には78円と、わずか3年間で約2.5倍に増えています。これは利益成長に裏づけられたもので、今後も安定した増配が期待できます。
第一三共は、がん治療薬「エンハーツ(ENHERTU)」を中心に業績が急拡大しており、営業利益率やROEも大幅に改善しています。営業キャッシュフローも潤沢で、研究開発投資を積極的に行いながら配当を増やせるだけの財務余力があります。そのため、配当性向を無理に引き上げず、業績の伸びに応じて配当を増やす健全な方針を取っています。
また、同社は減配リスクが極めて低い点も特徴です。製薬業界は景気変動の影響を受けにくく、医薬品需要が安定しているため、業績の落ち込みによって配当が途絶える可能性は小さいと考えられます。さらに、がん治療薬の適応拡大や新薬パイプラインの進展によって、今後も長期的に収益基盤が強化されていく見通しです。
総合的に見ると、第一三共は短期での高配当を狙う銘柄ではありませんが、長期で安定した増配を期待できる「成長型配当株」です。長期保有で配当と株価上昇の両方を狙えるため、安定志向の投資家にとって非常にバランスの取れた投資先といえます。
今後の値動き予想!!(5年間)
現在の第一三共の株価は3,368円です。この株価を基準にして、今後5年間の値動きを「良い場合」「中間の場合」「悪い場合」で予想すると次のようになります。
良い場合は、主力のがん治療薬「エンハーツ」を中心にグローバルでの販売がさらに拡大し、業績が大きく伸びるシナリオです。新薬の開発や適応拡大も順調に進み、営業利益率は15%以上、ROEも18%前後を維持。利益成長が続くことで投資家の評価も高まり、株価は5年後に5,000円から6,000円程度まで上昇する可能性があります。研究開発と利益成長の両立に成功すれば、製薬業界の中でも世界的なトップ水準の企業としてさらに存在感を高めるでしょう。
中間の場合は、業績は堅調に推移するものの、研究開発費や薬価改定、競合などの影響で成長ペースがやや落ち着くケースです。
営業利益率は12〜15%前後で安定し、ROEは15%程度を維持。業績は横ばいに近いながらも堅実に推移し、配当も継続的に増加。この場合、株価は5年後に4,000円から4,500円程度で推移する見込みです。大きな伸びはなくても、長期で保有すれば安定したリターンが期待できます。
悪い場合は、新薬開発の遅れや海外市場での競争激化、薬価引き下げなどの要因で業績が鈍化するパターンです。営業利益率が10%台前半に低下し、ROEも10%を下回る可能性があります。市場からの評価が下がると株価は5年後に2,500円から2,800円程度まで下落するリスクもあります。ただし第一三共は財務基盤が非常に強いため、極端な悪化や減配の可能性は低いと考えられます。
総合的に見ると、第一三共は新薬開発力とグローバル展開の両面で強みを持ち、将来性は高い企業です。短期的な上下はあっても、中長期での成長と配当の両立が期待できる銘柄であり、5年後の想定株価レンジは「良い場合 5,000〜6,000円」「中間 4,000〜4,500円」「悪い場合 2,500〜2,800円」と予想されます。
安定成長を狙う長期投資には向いている企業です。
この記事の最終更新日:2025年11月9日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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