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資生堂とは

資生堂株式会社は、日本を代表する化粧品メーカーであり、世界的なビューティーカンパニーとして高い知名度を誇る企業です。1872年に銀座で日本初の洋風調剤薬局として創業し、1927年に株式会社として設立されました。本社は東京都中央区銀座7丁目にあり、創業の地・銀座には現在もシンボル的存在である「資生堂パーラー」や「資生堂ギャラリー」を構えています。
資本金は約645億円、連結従業員数は約2万7,000人。グループ会社は国内外合わせて70社以上を抱え、120以上の国と地域で事業を展開しています。2024年の連結売上高は約9,900億円に達し、日本を代表する総合美容企業として世界の化粧品市場で確固たる地位を築いています。企業理念は「Beauty Innovations for a Better World(美の力でよりよい世界を)」であり、美容を通じて社会や人々の生活を豊かにすることを目指しています。
資生堂の事業は主に化粧品事業を中心に構成され、スキンケア、メイクアップ、フレグランス、ヘアケア、ボディケアなど幅広い分野をカバーしています。スキンケア領域では「クレ・ド・ポー ボーテ」「エリクシール」「HAKU」「SHISEIDO」などのブランドが主力です。メイクアップでは「マキアージュ」や「インテグレート」、UVケアでは「アネッサ」など、国内外で高いシェアを誇るブランドを展開しています。
また、プレミアムブランドだけでなく、グローバル市場向けの高級スキンケアブランド「NARS」や「Drunk Elephant」などの海外ブランドも保有しており、欧米・中国・東南アジアなどでも積極的に販売を拡大しています。特に中国市場は第2の柱と位置づけており、現地でのマーケティングやオンライン販売に注力しています。
販売チャネルは多岐にわたり、国内外の百貨店、専門店、ドラッグストア、免税店(トラベルリテール)、直営のECサイト、越境ECなどを通じて幅広い消費者層へ商品を届けています。また、美容カウンセリングを通じた接客販売や、AIによる肌診断アプリなどのデジタル施策にも積極的で、顧客体験型ビジネスへと進化しています。
さらに、資生堂は化粧品以外にも美容サロン事業やレストラン「資生堂パーラー」の運営、美容人材の育成、スキンケア研究を応用した健康・ウェルネス領域への進出など、幅広いビューティービジネスを展開しています。研究開発にも力を入れており、肌科学、再生医療、アンチエイジング、機能性素材などの分野でグローバルな研究拠点を持っています。
近年は「スキンビューティー企業」への変革を掲げ、化粧品メーカーから“肌と心の健康”を支えるトータルビューティー企業へと進化しようとしています。美容とテクノロジーを融合させた事業モデルを打ち出し、AI・データ分析・皮膚科学を活用した個別最適な美容提案を行うなど、従来の化粧品ビジネスの枠を超えた取り組みが進んでいます。
資生堂は、長い歴史と伝統を守りながらも、常に新しい価値を創造してきた企業です。銀座発のブランドとしての信頼性と、世界中の消費者に支持されるブランド力を兼ね備えたグローバル企業であり、これからも美を通じて社会に貢献していく姿勢を明確に打ち出しています。
資生堂 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 年度 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022年12月期 | 1,067,355 | 46,572 | 50,428 | 34,202 | 85.6 | 100(記念配含む) |
| 2023年12月期 | 973,038 | 28,133 | 31,037 | 21,749 | 54.4 | 60 |
| 2024年12月期 | 990,586 | 7,575 | -1,265 | -10,813 | -27.1 | 40 |
| 2025年12月期(予想) | 995,000 | 13,500 | 14,500 | 6,000 | 15.0 | 40 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期 | 営業キャッシュフロー(百万円) | 投資キャッシュフロー(百万円) | 財務キャッシュフロー(百万円) |
|---|---|---|---|
| 2022年12月期 | 46,735 | -41,308 | -52,418 |
| 2023年12月期 | 89,026 | -35,536 | -75,642 |
| 2024年12月期 | 48,403 | -83,738 | 23,357 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(倍) | PBR(倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022年12月期 | 4.3% | 5.6% | 2.6% | ― | ― |
| 2023年12月期 | 2.8% | 3.5% | 1.7% | ― | ― |
| 2024年12月期 | 0.7% | -1.8% | -0.9% | 高値平均:105.5倍 安値平均:62.5倍 |
1.67倍 |
| 2025年12月期(予想) | 1.3% | 0.9% | 0.4% | 171.4倍(予想) | ― |
出典元:四季報オンライン
投資判断
資生堂は、日本を代表する化粧品メーカーであり、「クレ・ド・ポー ボーテ」や「エリクシール」など、世界的に高いブランド価値を持つ企業です。しかし、直近数年間の業績と各種指標を詳しく見ると、成長の勢いが鈍化し、投資判断としては慎重さが求められる局面にあります。
まず2022年12月期は、売上高1兆673億円、営業利益465億円、経常利益504億円、純利益342億円と堅調な業績でした。この年はコロナ禍からの回復期にあたり、国内外での化粧品需要が戻りつつありました。営業利益率4.3%、ROE5.6%、ROA2.6%と適正水準を維持し、配当も100円(記念配含む)と高水準を維持していました。ブランド力を背景に高価格帯化粧品が伸び、円安効果も業績を下支えしました。
ところが2023年12月期になると、中国・アジア市場での高級化粧品の需要鈍化や、販売費・広告宣伝費の増加、円安による原材料コストの上昇などが影響し、業績が悪化します。売上高は9,730億円へ減少し、営業利益は281億円、純利益は217億円まで落ち込みました。営業利益率2.8%、ROE3.5%、ROA1.7%と、収益性が目に見えて低下しています。市場の消費回復が想定より遅れたこと、また新製品投入のタイミングが重なり利益率が圧迫されたことが要因です。
さらに2024年12月期は厳しい年となり、営業利益はわずか76億円、経常利益はマイナス12億円、純利益はマイナス108億円と赤字転落。営業利益率は0.7%、ROEはマイナス1.8%、ROAもマイナス0.9%となっています。中国での需要低迷が長引き、海外旅行者の戻りも限定的だったため、インバウンド需要も完全には回復していません。円安による輸入コストの増加が続いたことも利益を圧迫しました。また、構造改革費用や販売網の再編コストも発生しており、短期的な収益をさらに押し下げました。
2025年12月期は黒字転換を目指しており、売上高9,950億円、営業利益135億円、経常利益145億円、純利益60億円を計画しています。営業利益率は1.3%、ROE0.9%、ROA0.4%と小幅ながら改善が見込まれています。主力の「クレ・ド・ポー ボーテ」や「NARS」などの海外ブランドを中心に再成長を図るほか、デジタル領域やスキンケア分野への集中投資も継続しています。しかしながら、依然として利益水準は低く、PERは予想ベースで171倍、PBR1.67倍とかなりの割高圏にあります。現状の収益力からみて、株価は業績に比してやや先行気味です。
総合的に見ると、資生堂は長期的には世界的なブランド価値と研究開発力を強みに持ち、スキンケア・美容科学分野では圧倒的な存在感を誇ります。サステナブル経営への意識も高く、環境負荷低減型容器や植物由来原料の開発など、社会的責任を果たす姿勢も評価されています。一方で、収益の柱である中国・アジア市場の回復が鈍いこと、円安によるコスト増、販売費増加などが利益を圧迫し、現時点では本格的な業績回復には至っていません。
また、資生堂は研究開発費が売上の3~4%と高く、短期的な利益率は低下しやすい構造です。そのため投資家にとっては、短期での値上がり益よりも「ブランド再生と利益構造改善を見守る中長期投資銘柄」として位置づけるのが現実的です。配当は安定的に支払われているものの、2024年以降は減配傾向にあり、配当利回りも大きくは望めません。
結論として、資生堂は長期的なブランド価値と世界展開力に魅力がある一方、短期的な業績リスクが大きい“再構築期の銘柄”といえます。今後、中国市場の需要回復やコスト構造改革が成功すれば再び高収益企業に戻る可能性もありますが、現段階では「中立~やや慎重」な投資判断が妥当です。長期的な視点で業績の底打ちを確認してから投資するのが望ましいでしょう。
配当目的とかどうなの?
資生堂を配当目的で考える場合、結論から言えば「配当狙いの銘柄としてはやや物足りない」といえます。
まず、同社の2025年12月期・2026年12月期の予想配当利回りはいずれも1.55%で、東証プライム上場企業の平均(概ね2.3〜2.5%)を下回ります。しかも2022年には記念配当を含む100円を出していましたが、2023年には60円、2024年には40円と減配傾向が続いています。これは、業績が低迷し、純利益が大幅に減少または赤字に転じたためであり、配当性向を維持する余力が低下していることを示しています。
資生堂は中長期的に「安定配当」よりも「成長投資」を重視する経営方針を取っています。研究開発費やブランド再構築への投資、海外市場でのマーケティング強化などに多くの資金を振り向けており、短期的な高配当を志向していません。そのため、現状では「配当利回りを求める投資家」にはあまり向いていない銘柄です。
ただし、資生堂は財務基盤が比較的健全で、自己資本比率も50%前後を維持しています。仮に業績が改善し、営業利益率が3〜4%程度まで回復すれば、再び年間配当を増やす可能性はあります。将来的に中国市場や北米市場での高級ブランド事業が再成長すれば、配当利回りも2%台に戻る余地はあります。
したがって現時点では、資生堂は「配当を重視する長期保有銘柄」ではなく、「成長回復を待つ中長期投資対象」と見るのが現実的です。
安定したインカム狙いなら他銘柄の方が有利ですが、資生堂のブランド再生が成功した場合には、将来的に配当の増加も期待できるため、「将来の成長とブランド価値を信じて保有するタイプの銘柄」と位置づけるのが適しています。
今後の値動き予想!!(5年間)
資生堂の現在株価は2,571円です。ここから今後5年間の値動きを「良い場合」「中間」「悪い場合」で予想すると、次のような展開が考えられます。
良い場合
資生堂が掲げる中期経営計画「SHIFT 2025 and Beyond」が順調に進み、収益構造の改革が実を結ぶシナリオです。特に、主力ブランドである「クレ・ド・ポー ボーテ」や「エリクシール」、海外ブランドの「NARS」「Drunk Elephant」などが好調に推移し、中国やアジア市場の需要が回復します。さらに、デジタル販売(越境EC)や免税店向けトラベルリテールも再び伸び、ブランド価値の再評価が進む可能性があります。
この場合、営業利益率は5〜7%まで改善し、ROEやROAもプラス圏で安定。株式市場でも高級ブランド企業として再評価され、海外投資家の資金が戻るでしょう。業績の回復とともに株価は上昇し、5年後には5,000円から6,500円程度まで上昇する可能性があります。中長期のブランド復活がうまくいけば、再び国内を代表する優良銘柄に返り咲く可能性があります。
中間の場合
構造改革は進むものの、回復のスピードが緩やかなシナリオです。中国市場では一定の回復が見られるものの、競争激化や景気変動によって安定性を欠きます。為替変動や原材料費の上昇が利益を圧迫し、営業利益率は2〜3%程度で停滞する可能性があります。
それでも、赤字からは脱却し、純利益は黒字を維持できると見られます。ブランド力と国内外での安定した販売チャネルに支えられ、株価も少しずつ回復。配当利回りは1.5%前後を維持し、保有していても損をしにくい中立的な銘柄になります。
この場合、5年後の株価は3,000円から3,800円前後と予想され、緩やかな上昇トレンドを描く展開になるでしょう。
悪い場合
構造改革やブランド再生がうまく進まず、中国での販売が低迷を続けるシナリオです。さらに、原材料コストや為替の悪化が重なり、収益改善が遅れた場合、営業利益率は1%を下回り、ROEやROAも低迷します。
この場合、国内需要も頭打ちとなり、競合ブランド(国内外)との価格競争に苦しむ可能性があります。販売促進費の増加やブランド維持コストが重荷となり、再び赤字に陥るリスクも否定できません。
市場では成長性の乏しさが意識され、投資家の評価が下がり、株価は現在値から下落。5年後には1,800円から2,200円程度、悪ければ1,600円台まで下落する可能性もあります。
まとめ
資生堂は世界的に高いブランド力を持ち、再建が軌道に乗れば大きな上昇余地を秘めています。しかし、直近の業績や利益率を見る限り、まだ回復過程にあり、外部環境にも左右されやすいのが現状です。
したがって、現時点では「短期の値上がりを狙う銘柄」ではなく、「ブランド再生と収益改善を長期で見守る投資銘柄」として捉えるのが現実的です。中期的には3,000円前後、長期的には5,000円以上を目指すシナリオもありますが、まずは業績回復が本物かどうかを慎重に見極めることが大切です。
この記事の最終更新日:2025年11月9日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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