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東海カーボンとは

東海カーボン株式会社は、日本を代表する炭素製品メーカーであり、100年以上の歴史を持つ老舗企業です。本社は東京都港区北青山にあり、1918年(大正7年)に設立されました。ガラス・土石製品業種に分類され、東京証券取引所プライム市場に上場しています。もともとは「電気炉向け黒鉛電極」を中心とした製造業からスタートし、現在では世界的なカーボン素材メーカーとして幅広い分野に事業を展開しています。
同社の主力事業は「炭素製品」「カーボンブラック」「ファインカーボン」「工業炉」「摩擦材・負極材」の5つに大きく分けられます。
まず、核となるのが黒鉛電極事業です。これは、鉄スクラップを溶かしてリサイクルする「電気炉製鋼法」で使われる必須部材であり、鉄鋼産業にとって欠かせない素材です。東海カーボンはこの分野で国内首位クラスのシェアを誇り、海外でも北米・欧州・アジアに製造拠点を持ち、グローバルに供給しています。電気炉向け需要は世界的な環境負荷低減の流れとともに拡大しており、再生鋼材を中心とした脱炭素型の鉄鋼生産を支える企業として注目されています。
次に、カーボンブラック事業です。これはタイヤや自動車部品などに使われる補強材で、ゴムの耐摩耗性や強度を高める役割を果たします。東海カーボンは国内外に生産拠点を持ち、世界の主要タイヤメーカーに製品を供給しています。また、自動車業界の電動化に合わせて、電池部材や樹脂コンパウンド向けにも用途を拡大しています。
また、近年成長が著しいのがファインカーボン事業です。ここでは半導体製造装置や電子デバイス向けに、高精度の炭素製品を提供しています。シリコンカーバイド(SiC)や高純度グラファイトなど、耐熱・耐薬品性・導電性に優れた材料を開発しており、先端産業分野での需要が急増しています。特にSiCパワー半導体関連の装置部材としての採用が進んでおり、今後の成長エンジンと位置づけられています。
工業炉事業では、鉄鋼・セラミックス・電子部品などの製造工程で使用される炉や耐火物を設計・製造し、企業の生産効率化を支えています。加えて、摩擦材事業では自動車ブレーキパッド用の摩擦材を供給し、交通インフラの安全性向上にも貢献しています。さらに、リチウムイオン電池向けの負極材など、新エネルギー関連分野にも進出しています。
こうした複数の事業を展開することで、東海カーボンは景気や業界の波に強い「分散型の経営基盤」を確立しています。鉄鋼業界が低迷しても電子・自動車関連が補うなど、収益源が複数ある点が大きな強みです。また、積極的な海外展開も特徴で、米国・欧州・アジアなど世界20か国以上に拠点を持ち、売上の約6割を海外市場が占めています。
企業理念としては「カーボンの力で持続可能な社会を創る」を掲げ、環境技術や脱炭素社会への貢献を重視しています。黒鉛電極のリサイクルやカーボンブラックの再利用、CO₂削減プロセスの改良など、環境負荷低減への取り組みを積極的に進めています。また、ESG経営にも力を入れており、環境・社会・ガバナンスの各分野で国際的な基準に沿った経営体制を整備しています。
まとめると、東海カーボンは「古いが新しい素材メーカー」です。創業100年以上の歴史を持ちながら、黒鉛電極などの伝統的な事業を土台に、半導体・EV(電気自動車)・エネルギーなど次世代分野へと軸を広げています。素材産業の中でも、鉄鋼から電子、環境分野まで幅広く関わる企業であり、今後も世界の産業発展と脱炭素社会の実現に貢献していく存在です。
東海カーボン 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2022年12月期 | 340,371 | 40,588 | 42,521 | 22,418 | 105.2 | 30 |
| 2023年12月期 | 363,946 | 38,728 | 41,607 | 25,468 | 119.5 | 36 |
| 2024年12月期 | 350,114 | 19,386 | 22,579 | -56,736 | -265.9 | 30 |
| 2025年12月期(予想) | 330,000 | 26,500 | 25,200 | 12,600 | 59.0 | 30 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位:百万円) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2022 | 41,205 | -49,900 | -10,629 |
| 2023 | 62,074 | -47,632 | -14,512 |
| 2024 | 64,471 | -70,777 | 9,410 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 決算期 | 営業利益率 | ROE | ROA | PBR | PER |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022 | 11.9% | 8.3% | 3.8% | ― | ― |
| 2023 | 10.6% | 7.8% | 3.9% | ― | ― |
| 2024 | 5.5% | -19.6% | -8.9% | 0.73倍 | 高値平均 12.1倍/安値平均 8.7倍 |
| 2025(予想) | 8.0% | 4.3% | 1.9% | ― | 17.65倍(連25.12) |
出典元:四季報オンライン
投資判断
東海カーボンは、炭素製品を中心に手がける素材メーカーで、ここ数年は業績の波がやや大きくなっています。数字を見ると、2022年と2023年は堅調で、営業利益率も10%前後と利益率の高い安定した状態が続いていました。売上も拡大し、純利益も2万億円台をキープしており、本業の収益力はしっかりしていました。
しかし、2024年は状況が一変し、純利益がマイナス5,600億円規模の大幅赤字に転落しました。これは一時的な減損損失や市況悪化などの影響が大きく、営業利益率も5.5%まで低下。ROEやROAもそれぞれマイナスに転じており、企業としての採算性に厳しさが出た年でした。ただ、営業利益自体は黒字を確保しているため、本業が完全に崩れたわけではありません。
2025年の予想では、営業利益率が8%台まで回復、純利益も1,260億円の黒字見込みとなっており、EPSも59円と再びプラスに戻る見通しです。つまり、2024年の赤字は一時的と見られ、企業としては再建フェーズに入っていると考えられます。
株価指標を見ても、2024年の実績PERは高値平均で12倍、安値平均で8.7倍、PBRは0.73倍と、資産価値に対してかなり割安な水準にあります。これは市場が短期的な業績悪化を織り込みつつも、中長期的な回復をある程度信じているサインです。2025年の予想PERは17倍台と、再び平均的なレンジに戻る可能性があります。
総合的に見ると、東海カーボンは「一時的に業績を落としたが、回復力はある企業」と言えます。資産面から見れば下値リスクは限定的で、PBR0.7倍台は割安の部類。ただし、2024年の赤字がどこまで影響を残すか、利益体質が再び安定するかどうかが重要なポイントになります。
配当も30円を維持しており、無配にはなっていない点は投資家にとって安心材料です。短期での急騰を狙うよりも、今は「業績回復を確認してから中期保有する」くらいのスタンスが良いでしょう。つまり、今は焦らず、業績の底打ちとROE・ROAの改善を見極める段階です。
要するに、東海カーボンは“底値圏での再評価待ち銘柄”。財務体質に問題はなく、業績が正常化すれば株価の見直し余地は十分ありますが、過去のような安定成長を取り戻すまでは慎重に見守るのが賢明です。
配当目的とかどうなの?
東海カーボンを配当目的で見る場合、悪くない選択ではありますが、いくつか注意点もあります。現在の予想配当利回りは3.03%と東証プライム平均を上回っており、数字だけ見れば比較的高配当な部類に入ります。実際に、2024年に大幅赤字を出した年でも30円の配当を維持しており、株主還元の意識はかなり強い企業です。この点は評価できます。
ただし、業績が安定していないのが最大の懸念点です。2024年には大きな損失を計上しており、2025年に黒字化を見込むとはいえ、純利益はまだ回復途上にあります。1株益(EPS)が59円に対して配当が30円ということは、配当性向がおおよそ50%を超える水準になるため、業績が再び悪化した場合には減配の可能性も残っています。企業としては無理をしてでも配当を維持している印象があり、今後も同じ配当を続けられるかは利益の安定次第です。
一方で、PBRが0.7倍前後と低く、資産価値に比べて株価は割安な水準です。そのため、株価が大きく下がるリスクは比較的限定的で、ある程度の底堅さはあります。つまり、今の東海カーボンは「大きく伸びる成長株」ではなく、「業績が戻るのを待ちながら配当をもらう割安株」という立ち位置です。
もし配当目的で買うなら、短期的な値上がりを狙うというよりも、業績が落ち着くまで腰を据えて持つスタンスが合っています。業績が正常化してROEや営業利益率が回復してくれば、株価にも見直しが入る可能性が高いです。
総合的に言えば、東海カーボンは「そこそこの利回りを維持しながら、回復を待てる銘柄」。高配当株のような安定感まではありませんが、割安な今の株価水準で中期的に保有するには悪くない選択です。リスクを理解したうえで、配当とリバウンドの両方を狙うなら検討に値する銘柄だと思います。
今後の値動き予想!!(5年間)
東海カーボンの現在値988.9円を基準に、今後5年間の値動きを考えると、業績の回復度合いによってかなり結果が分かれそうです。
まず、良い場合のシナリオとしては、2025年の黒字回復をきっかけに営業利益率やROEが改善し、企業価値が見直されるパターンです。仮に営業利益率が安定して8%以上を維持し、PERが20倍近くまで評価されれば、株価はゆるやかに上昇し、5年後には1800円〜2000円程度まで上がる可能性があります。PBRも1倍を回復すれば、東海カーボンが再び割安株から成長株として見られるようになる展開です。
一方、悪い場合は、2024年の赤字のように利益が安定せず、市況や原材料価格の変動で業績が再び落ち込むケースです。この場合、PERは10倍以下にとどまり、PBRも0.6倍前後で推移するでしょう。市場の信頼が戻らず、株価は横ばいかやや下落して、5年後も700円〜900円程度で推移する可能性があります。最悪の場合、減配や再赤字で投資家の関心が薄れ、再評価が難しくなるかもしれません。
中間的なケースでは、2025年以降に黒字化を果たしても大幅成長まではいかず、安定配当と緩やかな業績回復が続くパターンです。この場合、PERは15倍前後、PBRは0.8〜1.0倍あたりに落ち着き、株価は5年で10〜40%程度の上昇が見込めます。価格にするとおおよそ1100円〜1400円前後が現実的なレンジです。
つまり、東海カーボンは今が一つの底値圏であり、これから業績回復が本物であれば中長期的に上向く余地があります。逆に、再び減損や景気後退の影響を受けるようだと長い停滞もあり得ます。配当をもらいながら様子を見る投資スタイルが最も現実的で、「安値圏で拾って業績次第で上を狙う銘柄」といえるでしょう。
この記事の最終更新日:2025年11月9日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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