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神戸製鋼所とは

株式会社神戸製鋼所は、兵庫県神戸市中央区に本社を置く、日本を代表する総合素材・機械メーカーです。戦前から製鉄・非鉄金属分野で日本の重工業を支えてきました。現在は東証プライム市場に上場しており、資本金は約2,509億円、連結従業員数は約38,000人規模にのぼります。代表取締役社長は勝川四志彦氏です。
神戸製鋼所は「KOBELCO(コベルコ)」のブランド名でも知られており、鉄鋼、アルミ・銅などの非鉄金属、建設機械、エンジニアリング、電力事業といった多角的な事業を展開しています。これにより、単なる鉄鋼メーカーではなく、幅広い素材・機械・エネルギー分野を横断する“複合産業グループ”として発展してきました。
主力の「鉄鋼事業」では、自動車や造船、建設、産業機械など幅広い業界に向けて、高品質な鋼板、棒鋼、鋼管、線材などを製造しています。特に自動車用の高張力鋼板(ハイテン材)や機械用特殊鋼に強みがあり、国内外の大手メーカーに供給しています。また、環境対応型の電気炉技術やエネルギー効率改善技術などにも注力しており、カーボンニュートラル対応を見据えた製造プロセス改革を進めています。
次に「アルミ・銅事業」では、軽量かつ高強度な素材の需要拡大を背景に、自動車軽量化部品、電子部材、エアコン用熱交換器などへの供給を拡大しています。近年では、アルミ押出材や銅板の高性能化を進め、電動車(EV)や通信機器向けに新規需要を開拓中です。
「建設機械事業」も神戸製鋼の柱の一つで、油圧ショベルやクレーンなどの建設機械を製造しています。ブランド名「KOBELCO建機」として国内外で高い評価を得ており、特にアジア・北米市場での販売比率が高いのが特徴です。省エネ性と作業効率に優れた次世代型ショベルを開発し、環境規制にも対応しています。
「エンジニアリング事業」では、鉄鋼プラント、都市インフラ設備、圧縮機、環境・エネルギープラントなどを手掛けています。製鉄所で培った技術をもとに、廃棄物リサイクル設備や発電プラント、製造ライン向けシステムを国内外で受注しており、神戸製鋼の技術力を支える重要な事業分野です。
また、他社にはない特徴として「電力事業」にも進出しており、兵庫県神戸市灘区や真岡市などで大規模な火力発電所を運営。製鉄事業で培ったエネルギー供給ノウハウを活かして、関西電力や他社への電力販売を行っています。これにより、エネルギー事業も神戸製鋼の安定収益源の一つになっています。
経営面では、かつてのデータ改ざん問題などを契機に、品質管理体制の再構築と経営ガバナンスの強化を進めました。現在では再発防止策を徹底し、企業イメージの回復と信頼性向上を重視した経営に転換しています。また、「KOBELCOビジョン2030」を掲げ、環境負荷低減や資源循環、脱炭素社会への貢献を柱に新たな成長戦略を推進しています。
業績面では、鉄鋼市況の変動を受けながらも安定的に黒字を確保しており、営業利益率は概ね6〜8%台で推移しています。ROEも改善傾向にあり、PBRは1倍を下回る水準で推移しているため、依然としてバリュー株としての魅力があります。配当も安定的で、財務体質の強化と株主還元の両立を図っています。
総じて、神戸製鋼所は「鉄・アルミ・機械・電力」の4本柱による分散型経営を実現しており、景気変動に強い企業構造を持っています。製造業の基盤を支えながら、再生可能エネルギーやEV関連素材などの成長分野にも積極的に取り組んでおり、伝統的な重工業メーカーから“持続可能な総合素材企業”へと変貌を遂げつつあります。
神戸製鋼所 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 2,472,508 | 86,365 | 106,837 | 72,566 | 183.8 | 40 |
| 2024年3月期 | 2,543,142 | 186,628 | 160,923 | 109,552 | 277.4 | 90 |
| 2025年3月期 | 2,555,031 | 158,721 | 157,192 | 120,180 | 304.6 | 100 |
| 2026年3月期(予想) | 2,480,000 | 130,000 | 110,000 | 100,000 | 253.2 | 80 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位:百万円) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 119,692 | -97,267 | -85,564 |
| 2024年3月期 | 205,284 | -53,724 | -81,213 |
| 2025年3月期 | 148,261 | -113,873 | -96,227 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績・倍) | PBR(実績・倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年 | 3.4% | 7.9% | 2.5% | ― | ― |
| 2024年 | 7.3% | 10.3% | 3.7% | ― | ― |
| 2025年 | 6.2% | 10.3% | 4.1% | 高値平均 6.9倍 安値平均 3.7倍 |
0.62倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
神戸製鋼所は、直近3年間の業績推移を見ると、景気循環型の鉄鋼業の中でも比較的安定した収益体質を確立しており、収益・指標面から判断すると「中長期的に堅実なバリュー株」といえます。
まず、営業利益は2023年86,365百万円から2024年186,628百万円へと倍増し、その後2025年も158,721百万円と高水準を維持しています。経常利益も同様に2023年106,837百万円から2024年160,923百万円、2025年157,192百万円と推移しており、鉄鋼事業に加えアルミ・銅、機械、電力などの多角経営が下支えしています。純利益も72,566百万円 → 109,552百万円 → 120,180百万円と右肩上がりで、安定的な利益成長が続いています。
営業利益率は2023年3.4%から2024年7.3%へと大きく改善し、2025年も6.2%を維持。ROEは7.9% → 10.3% → 10.3%、ROAは2.5% → 3.7% → 4.1%と着実に改善しています。これらの数値から見ても、資本効率と収益性の両方が上昇しており、鉄鋼市況の変動をある程度吸収できる経営体制になっていると判断できます。
一方で、PERは2025年実績ベースで高値平均6.9倍、安値平均3.7倍、PBRは0.62倍と非常に割安水準にあります。特にPBRが0.6倍台というのは、保有資産価値に対して株価が過小評価されていることを示しており、資産面でも十分な安全余裕があります。株価が同業他社より低めに評価されている背景には、鉄鋼市況の先行き不透明感や中国需要の鈍化懸念がありますが、財務体質は堅実でキャッシュフローも安定しているため、過度な懸念とは言えません。
営業キャッシュフローも安定しており、自己資本比率は約40%台を維持。配当も2024年に90円、2025年には100円と増配傾向にあり、株主還元姿勢も強化されています。業績の山谷はあっても、総じて利益率・ROEともに改善が進んでおり、企業体質は着実に強化されています。
総合的に見ると、神戸製鋼所は短期的な株価変動はあるものの、長期で見れば堅実な成長と高い株主還元を両立できる銘柄です。PER・PBRともに割安であり、鉄鋼セクター全体の調整局面では「押し目買い」が有効な水準といえます。リスク要因としては世界景気の減速やエネルギー価格の高騰がありますが、分散経営と財務の安定性が下支えとなり、下値リスクは限定的です。
結論として、神戸製鋼所は「中長期保有に向いたバリュー&安定配当銘柄」。配当収入を得ながら堅実な株価上昇を期待できる銘柄として、長期投資には非常に適した位置づけです。
配当目的とかどうなの?
神戸製鋼所は、配当目的の投資先として非常に魅力のある企業です。予想配当利回りは2026年3月期・2027年3月期ともに4.39%と高く、東証プライム市場の平均を大きく上回る水準にあります。単に高配当というだけでなく、その配当がしっかりと業績とキャッシュフローに裏打ちされている点が大きな強みです。
同社は鉄鋼業だけでなく、アルミ・銅、建設機械、エンジニアリング、電力といった多角的な事業を展開しており、特定の分野に依存しない安定的な収益基盤を築いています。営業キャッシュフローは毎年プラスで推移し、2025年3月期には1,480億円を超える規模を維持。投資や借入のバランスも良く、無理のない財務運営を行っているため、配当の継続性が非常に高い企業です。
過去数年の推移を見ても、2023年に40円だった配当は、2024年に90円、2025年には100円と着実に増配しています。業績の伸びに合わせて株主還元を強化しており、一時的な減益があっても極端な減配を避けるなど、株主との信頼関係を大切にする経営姿勢がうかがえます。
指標面から見ても、PBR0.62倍、PER6倍前後という水準は明らかに割安圏です。資産価値や利益水準に対して株価が低く放置されており、長期的に見れば株価上昇余地も大きいと考えられます。つまり、今の神戸製鋼は「安定した高配当」と「将来の株価上昇」の両方を狙えるバリュー株の典型例です。
また、ROEも10%台を維持しており、資本効率の観点からも悪くありません。利益体質が安定しているため、業績がやや減速したとしても、配当維持の可能性は高いといえます。特に鉄鋼業は景気の波に左右される傾向がありますが、神戸製鋼は電力事業や非鉄金属部門がその下支えになっており、景気変動によるリスクを分散できている点が評価できます。
総じて言えば、神戸製鋼所は「配当をもらいながら安心して長く持てる銘柄」です。4.3%という高い利回りを維持しつつ、今後も業績の安定と増配が期待できるため、長期的なインカムゲインを重視する投資家には最適な企業です。株価が上がらなくても毎年しっかりと配当を得られる安心感があり、景気回復期には配当とともに株価上昇も狙えるという、まさに「安定と収益性を両立した優良バリュー株」と言えます。
今後の値動き予想!!(5年間)
神戸製鋼所の現在値は1,820円です。ここから5年間の値動きを考えると、鉄鋼市況、世界景気の動き、そして脱炭素関連投資の流れによって大きく変わる可能性があります。同社は鉄鋼に加えてアルミ・銅、建設機械、電力など複数の事業を持ち、収益源が分散しているため、鉄鋼専業よりは景気変動に強い体質です。営業利益率やROEも安定しており、財務面でもキャッシュフローが安定している点が評価できます。
良い場合のシナリオでは、世界的なインフラ需要の拡大や再生可能エネルギー関連の設備投資が進み、鉄鋼・非鉄金属の価格が上昇します。加えて、建設機械やアルミ部材など神戸製鋼が得意とする高付加価値製品の需要が拡大し、営業利益率が7〜8%台まで回復。ROEも10%を超え、収益力が明確に上がります。この場合、市場評価も改善してPERが10倍前後まで上がる可能性があり、株価は2,700円〜3,000円程度まで上昇する見通しです。配当も増加傾向を続け、総合的な株主リターンはかなり高くなります。
中間のシナリオでは、世界景気は緩やかに成長する一方で、原材料コストやエネルギー価格の上昇が利益を圧迫します。それでも鉄鋼やアルミの需要は底堅く、神戸製鋼の多角化した事業構造が安定的な収益を支えます。営業利益率は6%台、ROEも9〜10%程度を維持し、配当は現在の水準をキープ。PERは7〜8倍程度で評価され、株価は2,200円〜2,500円前後で推移する可能性が高いです。急成長はしないものの、配当を受け取りながら安定的に保有できる展開です。
悪い場合は、世界的な景気後退や中国からの鉄鋼供給過剰、エネルギーコスト高騰などが重なり、需要が減少するシナリオです。この場合、営業利益率が5%を下回り、ROEも6%台に低下。市場評価も下がりPERが5倍を割り込むような展開になると、株価は1,200円〜1,400円程度まで下落するリスクがあります。ただし、財務基盤が強く配当も維持されるため、長期的な下値は限定的と考えられます。
総じて、神戸製鋼所は短期的な市況変動に左右されやすい一面はあるものの、収益体質は改善傾向にあり、安定配当と割安株価の両面から見ても魅力的なバリュー株です。5年スパンで見れば、悪くても堅実な配当収入を得ながら横ばい、良ければ業績改善とともに株価上昇を狙える可能性があります。長期的な視点で配当をもらいながらじっくり保有するには、非常に相性の良い銘柄だと言えるでしょう。
この記事の最終更新日:2025年11月10日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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