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JFEホールディングスとは

JFEホールディングスは、日本を代表する大手鉄鋼メーカーの一角であり、日本製鉄や神戸製鋼所と並ぶ「鉄鋼御三家」として知られています。本社は東京都千代田区内幸町にあり、2002年に川崎製鉄と日本鋼管(NKK)が経営統合して誕生した企業です。創業から20年以上が経ち、現在はグループ全体で約6万人を超える従業員を抱える巨大企業となっています。資本金は約1,713億円で、東証プライム市場に上場しています。代表取締役社長は北野嘉久氏です。
JFEホールディングスは持株会社として、グループ全体の経営戦略や資金管理、リスクコントロールを統括しており、その傘下に「JFEスチール」「JFEエンジニアリング」「JFE商事」という三つの主要子会社を持っています。この3社がそれぞれ鉄鋼、インフラ・環境、商社機能を担い、日本国内だけでなく世界規模で事業を展開しています。
中核となるのがJFEスチールです。日本国内では千葉・倉敷・福山といった大規模製鉄所を保有し、自動車、造船、建設、エネルギーなど多様な分野に高品質な鉄鋼製品を供給しています。特に自動車用の高張力鋼板(ハイテン材)や、電動車向けのモーター用電磁鋼板など高付加価値製品に強みを持っています。また、地球環境への対応にも力を入れており、水素を活用した次世代製鉄技術「水素還元製鉄」や、CO₂排出削減を目的とした電炉化など、カーボンニュートラル社会に向けた取り組みを積極的に進めています。
JFEエンジニアリングは、社会インフラ・エネルギー・環境分野のプラント建設や施設運営を担う事業会社です。ごみ処理発電設備、水処理プラント、橋梁や港湾構造物、風力発電施設など、社会を支える設備を国内外で多数手掛けています。特に再生可能エネルギー分野への進出を強化しており、風力発電やバイオマス発電、メタネーション技術など、エネルギー循環型社会に対応した事業を拡大しています。
JFE商事はグループの商社部門であり、鉄鋼製品や原材料、非鉄金属、化学製品、エネルギー関連製品などを取り扱っています。国内外に幅広いネットワークを持ち、原材料の調達から販売までを一貫して行うサプライチェーンを構築しています。自動車・建設・機械業界向けの鋼材供給では高いシェアを持ち、アジアや北米を中心にグローバル展開を強化しています。
経営方針としては「環境と成長の両立」を掲げており、グループ全体でCO₂排出量を2030年度までに2013年度比で30%削減する目標を設定しています。これは業界内でも先進的な取り組みであり、鉄鋼業界全体の脱炭素化をリードする動きといえます。また、老朽化した製鉄所の刷新や高効率な電炉への転換など、次世代型の生産構造へのシフトも進めています。
業績面では、売上高はおおむね4兆〜5兆円規模、営業利益率は6〜8%前後を維持しています。ROEは一桁後半から10%台前半を確保しており、資本効率も改善傾向です。PBRは0.6倍前後と割安圏にあり、株価的にはバリュー株としての魅力が高い位置にあります。配当も安定しており、業績に応じて増配する方針をとっています。
総じて、JFEホールディングスは「鉄」「環境」「エネルギー」を軸に、日本の社会基盤を支える総合インフラ企業です。伝統的な製鉄業を軸にしながらも、再生可能エネルギーや環境関連技術への投資を進め、脱炭素社会に対応した持続可能な成長を目指しています。保守的な財務体質と高い技術力を持ち、今後も安定的に利益と配当を生み出せる長期保有向きの企業といえます。
JFEホールディングス 公式サイトはこちら直近の業績・指標
| 決算期 | 売上高(百万円) | 営業利益(百万円) | 経常利益(百万円) | 純利益(百万円) | 一株益(円) | 一株配当(円) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 5,268,794 | 225,086 | 210,282 | 162,621 | 280.7 | 80 |
| 2024年3月期 | 5,174,632 | 287,003 | 268,386 | 197,421 | 323.3 | 100 |
| 2025年3月期 | 4,859,647 | 165,068 | 144,315 | 91,867 | 144.4 | 100 |
| 2026年3月期(予想) | 4,750,000 | 140,000 | 110,000 | 75,000 | 117.8 | 80 |
出典元:四季報オンライン
キャッシュフロー
| 決算期(単位:百万円) | 営業CF | 投資CF | 財務CF |
|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 395,797 | -274,308 | -110,175 |
| 2024年3月期 | 478,967 | -325,259 | -45,487 |
| 2025年3月期 | 378,968 | -283,179 | -157,435 |
出典元:四季報オンライン
バリュエーション
| 年度 | 営業利益率 | ROE | ROA | PER(実績・倍) | PBR(実績・倍) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2023年 | 4.2% | 7.6% | 2.9% | ― | ― |
| 2024年 | 5.5% | 8.0% | 3.4% | ― | ― |
| 2025年 | 3.3% | 3.6% | 1.6% | 高値平均 10.8倍 安値平均 7.0倍 |
0.45倍 |
出典元:四季報オンライン
投資判断
JFEホールディングスは、国内鉄鋼業界で日本製鉄・神戸製鋼と並ぶ大手の一角を担う企業であり、近年の業績指標を見ると、景気変動の影響を受けつつも、一定の収益性と財務安定性を維持している点が特徴的です。
まず、営業利益の推移を見ると、2023年2250億円 → 2024年2870億円 → 2025年1650億円と、一時的に増益したのち減益傾向にあります。経常利益も2100億円 → 2680億円 → 1440億円、純利益も1626億円 → 1974億円 → 918億円と推移しており、2025年は鉄鋼市況の調整局面に入っていることが伺えます。需要の鈍化や原材料価格の変動、エネルギーコストの上昇などが圧迫要因となっています。
しかしながら、営業利益率を見ると2023年4.2% → 2024年5.5% → 2025年3.3%と推移しており、業界全体の市況悪化の中でも一定の採算を確保しています。ROEは7.6% → 8.0% → 3.6%、ROAは2.9% → 3.4% → 1.6%と2025年は低下していますが、鉄鋼業の構造上、設備投資負担が大きい中でこの水準は許容範囲です。
特に注目すべきは、2025年のPERが高値平均10.8倍、安値平均7.0倍、PBRが0.45倍という非常に割安な評価にあることです。PBRが0.5倍を下回る水準は、企業価値が純資産より低く評価されていることを示し、株価が大幅に割安である可能性を示唆しています。株式市場では「過剰に悲観的に見られている」状態に近く、将来的な回復を見越した中長期の買い場とも捉えられます。
一方で、短期的な業績は減益基調にあり、特に2025年のROE3.6%はやや物足りない水準です。利益率の低下が続く場合、株価がしばらく低迷する可能性も否定できません。しかし、鉄鋼セクター特有の景気循環を考えると、今後の反発局面では利益率改善とともに株価が上昇に転じる可能性もあります。
JFEホールディングスはエンジニアリング事業や商社機能も持ち、鉄鋼以外の収益源を確保しているため、長期的には安定性のあるビジネスモデルです。また、PBR0.45倍という指標から見ても、すでに市場は最悪期をある程度織り込んでおり、配当利回りも相対的に高いことから、下値リスクは限定的と見られます。
総合的に判断すると、短期的には業績の鈍化で株価の伸び悩みが続く可能性がありますが、財務体質と株価水準を踏まえると、中長期的には割安バリュー株として投資妙味が高い銘柄です。特に鉄鋼価格が回復局面に入れば利益率は改善し、ROEも再び上向く可能性が高いため、長期保有での資産形成や配当狙いには十分適しています。
配当目的とかどうなの?
JFEホールディングスは、配当目的での投資を考えるうえで非常に魅力的な銘柄の一つです。予想配当利回りは2026年3月期・2027年3月期ともに4.44%と高水準で、東証プライム市場の平均(おおよそ2%台)を大きく上回っています。
同社は「業績連動型の配当+安定配当」を基本方針としており、利益が増えた時は積極的に還元し、減益時でも極端な減配は避ける方針を取っています。実際、過去数年を見ても配当水準は安定しており、2023年に80円、2024年に100円、2025年も100円を維持、そして2026年予想でも80円と、比較的堅実な範囲に収まっています。鉄鋼業界は景気循環の影響を受けやすい業種ですが、JFEは多角的な事業ポートフォリオを持つため、配当の安定性が高い点が特徴です。
財務面でも、営業キャッシュフローは毎期プラスを維持し、2025年も3,789億円を確保しており、投資CF・財務CFを差し引いた後もフリーキャッシュフローは堅調です。借入依存度も高くなく、安定したキャッシュ創出力を背景に配当を支える基盤がしっかりしています。PBRも0.45倍と割安で、株価が低評価に置かれている今は、配当利回りが相対的に高くなっています。
ROEは2024年時点で8.0%、2025年予想で3.6%と一時的に低下する見通しですが、これは鉄鋼市況の一服によるもので、構造的な問題ではありません。JFEはエンジニアリングや商社事業など非鉄鋼分野の利益比率を高めており、業績の下振れリスクをある程度吸収できる体質になっています。そのため、長期的に安定した配当を得ながら保有するには非常に向いた銘柄といえます。
結論としては、JFEホールディングスは「配当+割安株価」を両立しているバリュー銘柄です。4.4%という高利回りを維持しながら、景気回復局面では株価上昇も期待できるため、中長期でのインカムゲイン狙いに最適な銘柄です。減配リスクも低く、配当を受け取りながら安心して保有できる鉄鋼セクターの代表的な高配当株といえるでしょう。
今後の値動き予想!!(5年間)
JFEホールディングスの現在値は1,800.5円です。ここから5年間の値動きを考えると、鉄鋼市況の動向や世界経済、脱炭素関連の設備投資などの影響を大きく受けると見られます。直近の業績を見ると、営業利益や純利益は2024年度をピークにやや減益傾向にありますが、依然として配当利回り4.4%前後という高水準を維持しており、株価はPBR0.45倍と明らかに割安な水準にあります。ここからの5年間は、「世界のインフラ需要が堅調に推移するか」「鉄鋼価格が安定するか」「エネルギーコストを吸収できるか」がポイントになります。
良い場合のシナリオとしては、世界的に再生可能エネルギーや脱炭素関連の投資が拡大し、鉄鋼や構造材の需要が強まる展開です。特にJFEは製鉄だけでなく、エンジニアリングや商社事業も展開しており、環境プラントや風力関連などの新領域でも収益を上げています。こうした分野が業績を押し上げ、営業利益率が6〜7%台、ROEが8〜10%程度まで回復すれば、市場の評価も改善し、PER10倍前後まで買われる可能性があります。その場合、株価は2,600円〜3,000円前後まで上昇しても不思議ではありません。高配当を維持しつつ株価上昇も狙える、理想的な成長パターンです。
中間のシナリオでは、世界経済は安定しているものの鉄鋼需要は横ばいで、利益も現状水準で推移するような展開です。原材料価格やエネルギーコストの上昇をある程度吸収できても、収益の伸びは限定的になります。この場合、営業利益率は5%前後、ROEは7〜8%程度に落ち着き、PERも7〜8倍付近で評価されるでしょう。株価は2,100円〜2,400円程度で推移し、配当を受け取りながら安定的に保有できる展開になります。景気の波に左右されにくく、長期保有で配当を重視する投資家にとっては理想的な安定シナリオです。
悪い場合のシナリオでは、世界的な景気後退や中国の鉄鋼過剰供給、円高による輸出採算の悪化、原料価格の高騰などが重なり、利益が大きく落ち込むケースです。営業利益率は3%台前半、ROEも3〜4%程度に低下し、PERが5倍以下、PBRも0.4倍を割り込むような評価になる可能性があります。その場合、株価は1,300円〜1,500円あたりまで下落するリスクがあります。ただし、JFEはキャッシュフローが安定しており、鉄鋼以外の事業も抱えているため、減配や無配のリスクは低く、配当が一定の下支えになると考えられます。
総じて、JFEホールディングスは短期的には景気や資源価格に左右されるものの、財務基盤は堅実であり、配当収入を得ながら中長期での株価回復を狙える銘柄です。現状の1,800円台という株価は、割安で高配当が得られる好位置にあるといえます。5年間のスパンで見れば、悪くても安定配当を確保し、中間以上のシナリオでは株価上昇と配当の両取りが狙える堅実な投資先として魅力が高いです。
この記事の最終更新日:2025年11月10日
※本記事は最新の株価データに基づいて作成しています。

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